海外の日本語教育現場の現状
~ベトナム技能実習生送り出し機関の場合~

 現在およそ40万人の外国人が、外国人技能実習制度を利用して日本に滞在しています。国別では、2015年頃までは中国人が多くを占めていましたが、最近ではベトナム人が急増しています。

真面目なベトナム人が日本人の気質に合うなどと言われていますが、来日に希望を持つ実習生と、実習生を受け入れる企業の双方で、来日後のギャップがあることも珍しくありません。今回はそんな中でも言語面にフォーカスしていきます。

技能実習生の多くは、来日前、現地送り出し機関にて数ヶ月の日本語研修を受けます。しかし、実際に現地で実習生が習得する日本語力には限界があり、これが実習生と企業の双方を苦しめていると言えます。では、なぜ実習生は日本語研修を受けるにもかかわらず、十分な日本語能力を身につけられず来日するのでしょうか。

まず、送り出し機関の日本語教師のレベルについて触れたいと思います。送り出し機関に勤める教師の多くの日本語能力はJLPTのN4~N3レベルがほとんどです。この理由として、ベトナム国内で高いレベルの日本語能力を持つベトナム人は、日系企業へ就職することが挙げられます。つまり、送り出し機関の教師の大半は元実習生で、日本に住んだ経験はあってもN4~N3レベルの日本語力かつ日本語を教えるためのしっかりとした研修なども受けていません。

それゆえ、文法の授業や会話の授業がままならない現状があります。教育経験のある日本人教師が在籍する送り出し機関もありますが、給与や就労ビザなどのコストや手間が多くかかることから、一部の送り出し機関を除きほとんどがベトナム人教師で運営されています。

 実際に送り出し機関の教育環境を覗いてみても、十分な学習教材が用意されていない上に、朝から晩までただ教科書の暗記を繰り返すだけのクラスも存在します。

この状況を踏まえると、来日する実習生の日本語レベルに大きな期待はできないということがわかると思います。そのため、入国後に義務付けられている日本語講習に力を入れたり、受け入れる企業が実習生の日本語レベルに配慮した受け入れ環境を用意したりすることが非常に重要だと言えます。