実際にあった!?外国人人材の帰国・転職(転籍)事例

【今回のお悩み】

外国人人材を受け入れて約一年、やっと仕事や会社にも慣れて来て、これからどんどん活躍してくれると思っていたのに、急に「国に帰る」と言われてしまって…。
コミュニケーションも取れていたし、仕事も問題ないと思っていたのに、何が不満だったんだろう?

外国人人材の採用、研修、来日にお金や手間をかけたから、まさかすぐにやめることはないだろう…と思っていても、外国人人材からの「突然の帰国・転職(転籍)」宣言は、かなりの高確率で起こりうること。 帰国や転職(転籍)のきっかけになることや、どうしたら避けられるのかをここでは解説していきます。

【外国人人材の声】

外国人人材を雇用するときに、頭をよぎる「いつ帰国するのだろう?」「すぐに転職してしまうのではないか?」という課題。 実際に、外国人人材はどんな時に帰国や転職・転籍を考えるのでしょうか。

日本企業に入るまでに、母国で長い研修や手続きを経てやっと日本へ来ました。でも実際に働きはじめると、思っていた仕事と違っていて…。もっと自分の専門を活かした仕事がしたいので、他の会社に行きたいです。

このケースでは、来日前、企業に入る前に抱いていたイメージと現実に本人がギャップを感じ、最終的に他の企業への転籍を希望するに至りました。

日本では、入社してすぐに実務を任されるということはあまり多くありません。会社全体の業務を知るため、社内のルールを知るため、実務に直接関係のない研修や業務から始めることも多々あると思います。自分の能力を存分に発揮したい、自分の専門分野を極めたいと思って入社した外国人人材にとって、この期間は非常に長く感じられ、したい業務ができないというストレスを強く持ってしまいます。

他のケースも見てみましょう。

仕事は真面目にしているし、同僚の日本人とのコミュニケーションも問題ありません。上司も私を評価してくれていますが、業務量に対する対価が安すぎると思います。それに、今の業務では自分が望むキャリアを積み上げるのは難しいと思うので、違う会社を探しています。

このケースでは、表面上は問題なく周囲もこの外国人人材を高く評価しており、本人が言い出すまで誰もこのように考えていることに気づいていませんでした。

会社や仕事に対して誠実な外国人人材は、自分を採用してくれた会社に対し感謝の気持ちを持ち、与えられた業務をしっかりとこなしてくれます。しかし、会社に対して誠実でいたい、誠実でいようと思うほど、自分の本来やりたいことや言いたいことが言えないでいることが少なくありません。そうなると、社内の人に相談することができずに、自分で悶々と帰国や転職先を考え始めてしまいます。

次のようなケースもあります。

来日前は少なくとも3年は働きたいと思っていました。
でも、来日して働き始めてから一年、慣れない日本での生活と仕事の負担で体調を崩してしまいました。
もうこれ以上体を使う仕事はしたくないので、国へ帰ろうと思います。
(技能実習生・建設業)

これは技能実習生として建設会社で働いていた実習生が、体調を崩したことをきっかけに帰国することになったケースです。

少し前の実習生であれば、「お金」のために自分がどんな状況でも働いて稼ぐという強い意志がありました。しかし現在は、お金だけが目的ではない実習生も増えてきています。そうなると、体調不良、人間関係がうまくいかない、思っていた会社や実習ではない等の大きくはないきっかけから、帰国や転籍を考えるようになってきています。

【課題の解決方法】

では、外国人人材がこれまで見てきたようなケースで「退職」を考えないようにするには、どうしたらよかったのでしょうか。退職理由も考えながら解決策を探ってみましょう。

今回出てきたようなケースを防ぐためには、次の事を意識すると良いですね。

●採用前、入社前に会社や業務のことをきちんと伝える
●密なコミュニケーションを心がける

●外国人人材の適性を考える

では、それぞれのポイントについてもう少し詳しく見ていきます。

解決策① 採用前、入社前に会社や業務のことをきちんと伝える

今回のケースに共通して言えることは、実際に業務を始める前に自分の思い描いていた仕事や生活と、現在の状況がかけ離れているということです。本人以外の人から見れば大したことがないように思えるギャップが、最終的に本人が転職までを考えてしまう大きなものとなります。

このギャップが生じないようにするには、面接、あるいは採用の通知を出す段階で、きちんと本人に伝えておく必要があります。会社の概要や待遇だけでなく、どんな業務をするのか、業務フロー、部署の雰囲気など、動画を使って説明するのも効率的ですし、可能であれば社内や部署で実際に話したり体験就業をしたりしてもらうのも一つの手かもしれません。

解決策② 密なコミュニケーションを心がける

思ったことは外国人人材の方から直接伝えてくれれば良いのに…と思うかもしれませんが、いくら日常会話が上手な外国人人材でも、母語ではない言語で、且つ業務で迷惑をかけてしまう可能性があるような深刻な内容を伝えるのは難しいと感じられます。

少し深刻な内容でも話せるような関係性を作るために、普段日本人側からも積極的に話しかけ、コミュニケーションをとっていきましょう。ちょっとしたコミュニケーションから次第に心を開き、良い関係を築いていくことができます。

外国人人材と円滑にコミュニケーションをとるためには、ぜひ下記の記事も参考になさってください。

解決策③ 外国人人材の適性を考える

外国人人材も、会社を選ぶ際に「自分はこの会社で○○がしたい」「自分の専門を活かしたい」と考え面接を受けます。全ての社員を100%希望通りの業務に就かせることは不可能ですが、希望・適性を考慮することを心がけたり、随時キャリアについて会社と話す機会があるのは良いことです。外国人人材の希望と会社の業務をうまく折り合いをつけながら仕事環境を作っていきましょう。

【まとめ】

ここまで、実際に外国人人材が帰国・転職してしまった事例と、似たようなケースを防ぐための対策方法について見てきました。

外国人人材は、自分のイメージと現在の状況にギャップを感じた時、さらにそれを相談する相手がいない時に、帰国や転職を考えることが多くなる傾向があります。

  • 事前(面接・入社前)に、会社の待遇、仕事環境、会社の方針などを細かく伝えて、入社前と現状のギャップが生まれないように注意する
  • 外国人人材と密にコミュニケーションをとり、良い関係性を保つ

ということを意識することで、帰国や転職を考える外国人人材は減っていくのではないでしょうか。

どちらも、企業側のちょっとした心がけで防ぐことができますので、ぜひ外国人人材に長く活躍してもらうためにも、意識していっていただければと思います。