特定技能2号に必要な資格・試験を解説!【特定技能2号】

熟練した技能を持つ外国人への「特定技能2号」の在留資格について、業種を大幅に拡大する案が政府から発表されました。今回は、そんな「特定技能2号」について、取得に必要な資格や試験を解説していきたいと思います。

特定技能2号の基礎知識に関してはこちらで詳しく解説しています。

特定技能とは

国内の人手不足の解消に繋げるため、4年前に導入されたのが、『特定技能』という在留資格です。

特定技能は、熟練した技能を持ち、即戦力となる外国人を幅広く受け入れる仕組みで、特定技能1号と2号という2種類に分かれています。

特定技能1号は在留期間が最大5年間と定められているため、期間が終了すると母国に帰らなければなりません。一方、2号は更新ができれば無期限で就労することができ、場合によっては家族の帯同も認められます。そのため、日本で長期的に就労したい外国人と、長期的に外国人を雇用したい企業の双方にとって、非常に魅力のある在留資格だと考えられます。

特定技能1号は農業や外食業、宿泊など計12種類の業種があり、現在約14万人がこの資格を取得しています。

その一方で、2号は現在、「建設」と「造船関連」の2業種のみしか存在しません。そのため、2023年2月時点で、特定技能2号の保有者は10名のみで、制度の活用がほとんどされていないのが現状です。

特定技能2号の分野拡大

世界的に人材獲得が激しくなる中、2023年4月、政府はこの特定技能2号について、業種を大幅に拡大する案を発表しました。

今後、製造業、宿泊、外食などの9業種が追加される見込みで、2023年6月にも決定を目指すとのことです。

特定技能に必要な資格・試験

では、外国人が特定技能の資格を取得するには、具体的にどのような要件が必要になるのでしょうか。

以下の表をもとに、1号と2号の違いを解説していきます。

このように、特定技能1号と2号では、求められる技能水準や日本語水準は異なっています。

まず、特定技能1号の取得方法は、技能実習2号を取得しているかどうかによって異なります。技能実習2号は、技能実習2年目以降の在留資格で、習得した技術をさらに熟達させるために設けられた資格です。

この技能実習2号を修了していない場合、業種ごとの特定技能試験に合格する必要があり、さらに、日常会話程度の日本語能力を有することを証明する試験に合格する必要もあります。なお、技能実習から特定技能1号に切り替えを行う場合、一定の日本語能力を有していると推定されるため、日本語試験は免除とされます。

特定技能2号については、1号よりも難しい技能試験に合格する必要がありますが、日本語水準については設けられていません。

特定技能2号の取得要件

特定技能2号を取得するためには、原則として特定技能1号を修了し、さらに特定技能2号の技能試験に合格する必要があります。
特定技能2号の具体的な試験内容については、以下で解説していきます。

特定技能2号の試験内容

では、特定技能2号を取得するためには、具体的にどのような内容の試験を受験する必要があるのでしょうか。

今回は、造船・舶用工業分野を例に、1号との違いを踏まえながら解説していきます。

【試験言語】

1号: 日本語。ただし、専門用語については他の言語を併記することも可能。

2号: 1号と同様。

【実施方法】

1号: 実技試験及び学科試験(ペーパーテスト)

2号: 実技試験のみ

【受験資格】

1号: 満17歳以上の者。

2号: 満17歳以上の者。試験日の前日までに造船・舶用工業において複数の作業員を指揮・命令・管理する監督者としての実務経験を2年以上有する者とする。

【試験水準】

1号: 造船・舶用工業分野の業務に即戦力として従事できる一定の専門性・技能を有することを確認する観点から、実務経験2年程度の者が、事前に当該試験の準備を行わず受験した場合に、7割程度合格できる水準とする。

2号: 特定技能 2 号において求められる技能水準が現行の専門的・技術的分野の在留資格を有する外国人と同等又はそれ以上の高い専門性・技能を要する技能を有することを確認する観点から、全ての向きで適切に溶接を行うことができる技能を問うものとする。

【試験科目】

1号: 実技試験は、①溶接 ②塗装 ③鉄工 ④仕上げ ⑤機械加工 ⑥電気機器組立ての6つの業務区分ごとに試験を実施。

学科試験では、安全衛生並びに各業務区分の作業全般に係る業務上必要となる知識及び能力を確認する。試験時間は60分、問題数は30問とし、真偽法(○×式)とする。

2号: 実技試験は溶接のみ。これに加え、1号と同様の安全衛生等確認試験も実施する。

上記の「溶接」の実技試験内容についても、2号は1号に比べてより難易度が高い試験が実施されます。

しかし、特定技能2号では、1号に比べて全体的な試験内容が少なく、多くの項目は求められていないことがわかると思います。それよりも、現場での監督者としての実務経験が必要となるなど、より即戦力として活躍できるかどうかを判断されることになります。

このように、同じ造船・舶用工業分野であっても、特定技能2号では、他の技能者の指導や管理などの指導的な面も求められることがわかりますね。

いかがでしたか。今回は、特定技能1号と2号のそれぞれの取得要件・資格について解説を行いました。

今後、特定技能2号には新たな業種が追加されるとともに、それぞれの業種の試験内容なども公開されることが予想されるので、日本の労働力不足に悩む事業者は、今後の動向にも注視しておく必要があります。

先ほども述べたように、特定技能2号を取得するには、現時点では原則として1号からの移行しか方法はありません。そのため、1号の期間中、受け入れ企業側が特定技能の人材を2号レベルまで育成するという意識を持つことが重要になります。

そして、今後、特定技能1号を受け入れる際は、2号への移行を見据えた採用や人材育成がポイントになっていくと考えられます。それらを踏まえながら、今後新たに追加される特定技能2号の業種及びそれに伴った資格試験についても注目していきたいところです。


参考:法務省「造船・舶用工業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針に係る運用要領」p1より