外国人材を受け入れる企業が従業員の日本語スキルを確認する際、よく耳にするのが「日本語検定」と「日本語能力試験(JLPT)」です。しかし、この2つは目的や対象、試験内容が異なります。
今回は、「日本語検定」と「日本語能力試験(JLPT)」の違いと、外国人材と企業側、双方の日本語学習のメリットを紹介し、日本語検定がどのように役立つのか解説します。併せて、外国人材を受け入れる企業が日本語検定を支援することのメリットを解説します。ぜひ最後までご覧ください。
日本語検定とは
日本語検定は、日本語を使うすべての人のための検定であり、日本語の総合的な能力を測る検定試験です。「日本語力」の向上による社会全体への貢献を目的とした、文部科学省後援事業です。
日本語検定では、敬語・文法・語彙・言葉の意味・表記・漢字の6領域と総合問題で 日本語力を幅広く測ります。認定された受検級によっては、入学試験や就職試験時に優遇等を受けることができ、 優秀者・優秀団体には文部科学大臣賞などの表彰があります。
検定は年に2回実施され、2024年度には全国47都道府県、69都市に一般会場が設置され、1,180,823名の方が受検しています。
参照元:日本語検定とは?
日本語検定の対象者
日本語検定は、日本語を使う小学生から社会人まで、 幅広い年齢、職業の方が受検しています。 また、日本語を母語としない方も受検しています。
日本語検定は各種学校や企業において、さまざまな形で活用され、それぞれの生活環境で必要な日本語力を測ります。
学習面においては、国語を中心に、各教科の学習の基盤となる日本語力を測り、生活面においては、日常のさまざまな場面で日本語を適切に用いる力を測ります。社会人に関しては、企業活動、社会生活に必須の基礎的な日本語力から、 他者と差がつく豊かな表現力までを測ります。
日本語検定を受ける目的
日本語検定を受ける目的は、大きく分けて3つあります。
まず、敬語や文法、語彙など総合的な日本語力を向上させ、日常生活やビジネスで活用できる実践力を養うことです。次に、検定結果をもとに苦手分野を把握し、効率的に克服するためです。そして、検定合格を通じて、自身の日本語能力を客観的に証明し、進学や就職での信頼性を高めることです。
これらを通じて、受検者は多様な場面で活躍の機会を広げることができます。
参照元:日本語を使うすべての人のために 日本語検定(日本語検定)
日本語検定のレベルと問題構成
日本語検定は、多様な受検者のニーズに応じて7つのレベルに分かれています。それぞれのレベルは、日常生活やビジネスの場面で求められる日本語力を段階的に測定する設計となっています。ここでは、各レベルの概要と問題構成について解説します。
日本語検定のレベル
日本語検定の7つのレベルとその概要は下の表のとおりです。
級 | 目安 | 概要 |
---|---|---|
1級 | 社会人上級レベル | 多彩で豊かな日本語を身につけ、言葉を介して論理的・創造的に思考したり、卓越した表現で物事を伝えたりできる。 |
2級 | 大学卒業~社会人中級レベル | 自立した社会人として必要な日本語を身につけ、企業活動等で必要な円滑なコミュニケーション、文書の適切な読み書きができる。 |
3級 | 高校卒業~社会人基礎レベル | 大学生や社会人として必要な日本語を身につけ、他者とのコミュニケーションや 文章表現を適切に行うことができる。 |
4級 | 中学校卒業レベル | 社会との関わりで必要な日本語の知識を持ち、相手や場面、目的や意図に応じて適切に用いることができる。 |
5級 | 小学校卒業レベル | 日常生活や学習に必要な日本語の知識を持ち、相手や場面に応じて適切に用いることができる。 |
6級 | 小学校4年生レベル | 日常生活や学習に必要な日本語の知識を持ち、相手や場面に応じて適切に用いることができる。考えたことや物事の様子を適切な日本語で表現し、伝えることができる。 |
7級 | 小学校2年生レベル | 身近なことや経験したことを日本語で表現し、伝えることができる。 |
参照元:受検概要・申込(日本語検定)
合格基準は、各級で指定されている総合得点率と、領域別得点率の両方を満たすことです。一つの領域でも50%に満たない場合には認定されないため、敬語・文法・語彙・言葉の意味・表記・漢字の6つの領域でバランスよく得点することが求められます(7級を除く)。
また、各級の指定された総合得点率によっては準級を得られる場合があります。
日本語検定試験の問題構成
日本語検定の問題は、敬語・文法・語彙・言葉の意味・表記・漢字の6領域と総合問題から成ります。これにより、日本語力を幅広く測ります。
「日本語検定」と「日本語能力試験(JLPT)」の違い
「日本語検定」と「日本語能力試験(JLPT)」は、いずれも日本語力を評価する試験ですが、目的や対象、試験内容には大きな違いがあります。それぞれの特徴を比較すると下の表のようになります。
項目 | 日本語検定 | 日本語能力試験(JLPT) |
---|---|---|
対象者 | 日本語ネイティブ&外国人 | 外国人(日本語学習者) |
試験の構成 | 敬語や文化を含む日本語全般 | 語彙・文法・読解・聴解 |
試験の目的 | 正確で適切な日本語運用を評価 | 日本語の基礎能力の証明 |
試験日程 | 年2回(6月、11月) | 年2回(7月、12月) |
活用例 | ビジネスや職場でのコミュニケーション力 | 就労や進学の条件としての活用 |
日本語検定は、日本語を母語とする人々や日本で生活する外国人も含めた幅広い層を対象に、敬語や語彙、文法、漢字など、日本語の総合的な運用能力を測定します。一方、日本語能力試験(JLPT)は、日本語を第二言語として学ぶ外国人を主な対象とし、語彙や文法、読解、聴解の基礎的な能力を評価することに特化しています。
また、日本語検定は日常生活や職場での適切な日本語運用を目指すのに対し、JLPTは主に進学や就職時の基準として用いられるなど、活用の場面にも違いがあります。
両試験はそれぞれの目的に応じた構成や内容になっており、どちらを選ぶべきかは受検者のニーズによって異なります。
日本語能力試験(JLPT)とは
日本語能力試験(JLPT)は、国際交流基金と日本国際協力支援協会が共同で運営している、日本語を母語としない方たちの日本語能力を評価するための試験です。2023年には、92ヶ国から1,265,436名の方が受験しています。ここでは、日本語能力試験(JLPT)について解説します。
日本語能力試験(JLPT)の認知度や普及率
日本語能力試験(JLPT)は、日本語を学ぶ外国人にとって最も認知度が高く、受験者数も年々増加しています。日本語教育業界だけではなく、他の高等教育機関や企業においても広く普及、評価され、採用や進学の基準として広く活用されています。ここでは、日本語能力試験(JLPT)の知名度や普及状況について解説します。
外国人の認知度
日本語能力検定(JLPT)は1984年に始まり、試験会場の拡大により1990年代以降試験会場が増え、2024年現在では世界約250都市以上で実施されており、世界最大規模の日本語の試験となっています。
教育機関や企業での認知度
日本国内では、留学生の入学や就職の基準として広く活用されています。また、海外では大学の入学要件や日本関連の企業での採用基準として採用されている場合があります。
学習者への浸透
毎年約60万人が受験し、2023年度は148万人の応募があり、過去最高の受験者数となりました。日本語学習者にとって、一種の「目標設定」として認識されています。
日本語能力試験の難易度
日本語能力試験(JLPT)は、受験者の日本語能力を次の5つのレベル(N5~N1)で評価します。
レベル | 難易度 | 認定の目安 |
---|---|---|
N5 | 初級の基礎(簡単な日本語を理解するレベル) | 基本的な日本語をある程度理解することができる。 |
N4 | 初級(日常的な表現や基本的な日本語を理解するレベル) | 基本的な日本語を理解することができる。 |
N3 | 中級(日常生活で使われる日本語をある程度理解するレベル) | 日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる。 |
N2 | 中上級(日常的な会話や仕事で必要な日本語を理解するレベル) | 日常的場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い範囲で使われる日本語をある程度理解することができる。 |
N1 | 上級(大学の講義や専門的な内容を理解するレベル) | 幅広い場面で使われる日本語を理解することができる。 |
外国人材を受け入れる企業が抱える課題
外国人材を採用しても「外国人材の定着に苦労している」「日常的なコミュニケーションに課題がある」などの悩みをお持ちの企業も多いことでしょう。ここでは、外国人材を受け入れる企業の抱える主な悩みを解説します。
- 業務指示の誤解や齟齬がある
- マニュアルや安全手順への理解が足りない
- 日常的なコミュニケーションが難しい
業務指示の誤解や齟齬がある
外国人材を受け入れる企業では、言語や文化の違いから業務指示が正確に伝わらず、誤解や齟齬が生じるケースが少なくありません。これは、職場内での報連相(報告・連絡・相談)の欠如や、曖昧な表現の解釈のズレが原因となることが多いです。
マニュアルや安全手順への理解が足りない
職場での安全や効率的な業務遂行には、マニュアルや安全手順の正確な理解が欠かせません。しかし、外国人材が日本語に不慣れであったり、文化的背景が異なる場合、これらの指示を十分に理解できなかったりすることがあります。その結果、手順ミスや業務上のトラブルが発生するリスクが高まります。
日常的なコミュニケーションが難しい
職場における日常的なコミュニケーションは、業務の円滑な遂行や信頼関係の構築において重要な役割を果たします。しかし、外国人材の場合、日本語特有のニュアンスや感情の表現が難しいと感じることが多く、意思疎通に支障をきたすことがあります。その結果、誤解が生じたり、職場の一体感が損なわれたりする可能性があります。
外国人材への日本語学習支援により得られるメリット
企業が日本語検定の取得を支援することで、外国人材の成長を後押しし、企業の業績や評価を向上させる多くのメリットがあります。ここでは、その具体的な内容を深掘りし、外国人材の受入れ企業が得られるメリットを解説します。
- 生産性と業務効率の向上
- 企業の評価と信頼性の向上
- 法令遵守と技能試験合格の支援
- 異文化理解の促進と多様性の活用
- 長期的な人材育成と企業の成長への貢献
生産性と業務効率の向上
日本語能力が向上すると、上司や同僚からの指示を正確に理解できるようになり、外国人材と社員間の意思疎通が円滑になります。その結果、業務指示や報告の誤解が減少し、現場でのミスや遅延、事故のリスクを抑えること可能となります。
また、言語の壁が解消されることで、作業に集中しやすくなり、全体として作業効率と生産性の向上が期待できます。
職場環境の改善と定着率の向上
日本語能力の向上は、職場環境に早く適応できる鍵となります。
外国人材の中には、日本語や職場環境への不適応からストレスを感じ、早期離職を選ぶケースがあります。しかし、日本語の理解が深まることで業務への自信が向上し、職場での孤立感が軽減されます。
その結果、満足度が高まり、離職率が低下します。そのため、受入れ企業は新たな人材採用のコストや再教育の時間的コスト、職場の士気の低下を防ぐことができます。
企業の評価と信頼性の向上
日本語学習を支援することにより、受入れ企業は「外国人材の成長を真剣に支援する責任ある企業」という評価を得ることができます。これは、他の外国人材を受け入れる際の採用競争力や、顧客・取引先からの信頼性の向上につながります。
また、日本語が堪能な外国人材は、企業の戦力として長期的に活躍できる可能性が高くなります。これにより、企業評価も高まります。
法令遵守と技能試験合格の支援
多くの場合、特定技能制度では日本語能力試験の合格が必要です。企業が外国人材の日本語学習を支援することで、特定技能への移行を円滑に進めることが可能です。
これにより、外国人材のキャリアの次のステップを確保し、彼らの長期的な成長を後押しする重要な役割を果たします。
参照元:特定技能ガイドブック~特定技能外国人の雇用を考えている事業者の方へ~(法務省)
異文化理解の促進と多様性の活用
日本語能力が向上することで、外国人材が日本の文化や職場のルールについての理解を深めることができるようになります。これにより、職場内での異文化理解が進み、多様性を活かしたチーム作りが可能になります。
彼らのアイデアや視点を生かした新しい業務改善の提案など、企業にとってプラスの要素が増えます。結果として、企業全体の柔軟性や競争力が強化されます。
長期的な人材育成と企業の成長への貢献
日本語能力の向上の支援をすることは、長期的な人材育成にもつながります。優秀な人材が日本語を習得し、日本での就業を継続することで、企業の成長や国際化への貢献度が高まります。
明光キャリアパートナーズが提供する日本語教育に特化した研修サービス
明光グループでは、これまで40年以上外国人材の日本語教育に携わってきました。今後も外国人材の日本語能力の向上を支援できるよう、豊富な実績から培った知見・ノウハウをもとに、オンラインレッスンやe-ラーニングなどの教育サービスを行っていきます。最後に、明光グローバルが提供するサービス内容を紹介します。
明光グローバルとは
明光グローバルは、外国人材が日本で安心して生活・仕事ができるように、就労支援を実施しています。展開しているサービスは主に次の3つです。
サービス | 詳細 |
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特定技能人材紹介 | ・企業ニーズの把握するための事前面談 ・企業の求める人材を紹介 ・人材の導入から定着までの一貫したコンサルティング |
ITエンジニア紹介 | ・多国籍バイリンガルエンジニアの紹介 ・専門な知見を持つコンサルタントによる選考 ・IT、電気電子、機械設計分野に特化した人材の確保 |
各種教育・研修 | ・eラーニングによる日本語教育(スマホアプリに対応) ・対面/オンラインによる日本語レッスン ・外国籍人材に向けた各種研修プログラム |
明光グローバルの外国人社員向け各種教育・研修サービスの強みは、「実用性の高さ」「カスタマイズ性」「豊富な実績」の3点です。
明光グローバルのグループ会社では、これまで40年以上もの間、学習塾の「明光義塾」をはじめとする教育事業を行っています。そのため、明光グローバルには企業様の状況に応じた実用的な学習コンテンツが蓄積され、最小限の手間やコストで日本語学習のゴールを設計することができます。
e-ラーニング(Japany)
Japanyは、外国人向けオンライン日本語学習ツールです。初心者から上級者まで幅広いレベルに対応しており、学習者のニーズに沿った豊富な教材を提供しています。1,200本以上のレッスン動画をe-ラーニングシステムにて提供しており、時間や場所を問わず効率的に学習を進めることが可能です。
ゼロレベルからでも学べるように多言語翻訳にも対応しており、定着度を測るテストも豊富にそろえてあります。加えて学習者の進捗状況を確認できる管理者サポート機能もあるため、個々の日本語学習プランの組み立てを図れることが人気となっています。
日本語レッスン
日本語レッスンは、明光グローバルの基準を満たしたビジネス経験のあるプロ講師が、「話せる」「書ける」を軸にリアルタイムで行うレッスンです。
明光グローバルの日本語レッスンは「日本語を学ぶ」だけでは終わりません。初心者の方でも基礎から着実にステップアップできるように、わかりやすく丁寧な指導を行っています。さらに、レッスン後は報告書を都度共有することにより、レッスンの内容や上達度を可視化することで個々の日本語能力を着実に伸ばすことができます。
また、介護や建設など業界ごとに特化したレッスン、エンジニア派遣のための面接対策講座、上級ライティングレッスンなど、企業様の課題を解決するための細やかで最適なレッスンプランを柔軟にカスタマイズできることも高い評価を受ける理由の一つとなっています。
日本語能力測定試験
明光グローバルでは、「読む」「書く」「聞く」を測定する「日本語検定」や「日本語能力試験(JLPT)」の試験では測りきれない、コミュニケーション能力・発音・与える印象などより実践的な日本人らしい表現力を総合的に測定する試験『Japany Test』を提供しています。
当社の行うJapany Testは、プロ講師とオンラインの面談形式で行い、評価文付きの個人成績表を発行します。レッスン導入時と終了時の効果測定や外国人材採用時の日本語能力調査、人事評価時の指標として使用することができます。
各種研修
明光グローバルでは、日本で働く外国人材に特化した各種研修を提供しています。企業内で課題となるコミュニケーションの難しさへの第一歩としての異文化理解の研修はもとより、働くうえで必要なビジネスマナー研修、接遇・セールス研修を実施しています。
また、外国人材向けだけではなく、外国人材を受け入れる日本人社員のための研修など各企業の課題に沿った集合研修を展開しています。各分野の経験豊富なプロフェッショナルを招き、企業様の課題に沿った内容にカスタマイズすることにより、外国人材と受け入れる日本企業の架け橋となっています。
まとめ
日本語学習を支援することは、外国人材と企業の双方に大きなメリットをもたらします。
外国人材にとっては、日本語能力の向上が業務遂行や職場での信頼関係構築を支えるだけでなく、キャリアの発展にもつながります。
一方で、企業にとっては生産性や業務効率の向上、職場環境の改善といった成果を通じて、長期的な成長基盤を築く手助けとなります。また、外国人材の定着率が高まることで、新たな採用コストの削減や職場の安定化といった具体的なメリットも期待できます。
このような取り組みは、グローバル化が進展する社会の中で、企業が国際的な競争力を強化し、持続的な成長を遂げるための重要な要素となるでしょう。明光グローバルでは、日本語の習得に向けたきめ細かいサービスを提供しています。少しでもご興味をお持ちの方は、明光グローバルまでお気軽にお問い合わせください。