「外国人材に日本語を教えたいけれど、何から教えれば良いのかわからない」そんなお悩みをお持ちの方も少なくありません。初めての日本語指導では、教え方に自信が持てなかったり、どのように進めれば効果的なのか迷ったりすることがあるかもしれません。
今回は、初心者でも安心して日本語を教えられるよう、基本的なステップから、実際の指導で押さえておきたいポイントまでわかりやすく解説します。また、指導を成功させるための心構えや、よくある悩みへの対処法についても紹介します。
初めての日本語指導をスムーズにスタートするためのヒントが詰まった内容ですので、ぜひ参考にしてください。
外国人材に日本語を教える前に知っておきたいこと
外国人材に日本語を教える際には、まず「学習者が何を求めているのか」を把握することが大切です。ここでは、日本語教育の目的や、現在の日本語教育の現状について解説します。
日本語教育の目的
日本語教育の目的は、学ぶ側と教える側で異なります。
教える側の目的はシンプルであり、「日本語学習者がそれぞれの目標を達成できるようサポートすること」に限られます。しかし、「日本語を学ぶ外国人材の目的」となると実に多岐にわたるということが国際交流基金の調査により示されています。
主な学習目的には次のものがあります。
- 日本語そのものへの興味(58.1%)
- 日本語でのコミュニケーション(55.1%)
- 日本のポップカルチャーへの関心(50.6%)
- 就職(42.6%)や進学・在留資格取得(35.0%)
このように、日本語学習の目的は学習者によってさまざまであり、それぞれの目標に応じた適切な指導が求められます。
現在の日本における外国人材学習者数

画像引用元:令和5年度国内の日本語教育の概要(文化庁)
文化庁が発表した「令和5年度国内の日本語教育の概要」によると、2023年11月1日時点で日本語を学ぶ学習者数は263,170人に達していることが明らかになりました。
注目すべきは、前々年度から今年度にかけて、日本語学習者数が右肩上がりに増加している点です。
日本語学習者数は、ここ数年では令和元年度が最も多く、277,857人でした。しかし、コロナ禍の煽りを受けて学習者数が減り、令和3年度には123,408人まで落ち込みました。
その後、経済社会活動が正常化するのに伴って学習者数も増加し、現在ではコロナ禍前とほぼ同水準の数値まで達しています。これは日本語教育の需要が再び高まっていることを示しています。日本語学習への関心が高まる背景には、海外からの留学生や外国人材の増加、日本文化への興味の広がりなどがあると考えられます。
参照元:
外国人材に日本語を教える際の基本ステップ
外国人材に日本語を教える際には、初心者でも無理なく学習できるよう、段階的な指導が重要です。ここでは、外国人材に日本語を教える際の4つのステップを解説します。
- ステップ1:ひらがな、カタカナの読み方、書き方を教える
- ステップ2:簡単な挨拶、自己紹介、日常表現から始める
- ステップ3:視覚教材や具体的な例を活用する
- ステップ4:間違いを恐れずに発話を促す
これらの4つのステップを踏むことで、初心者の外国人材でも基礎から日本語をスムーズに習得しやすくなります。学習者のレベルや目的に合わせて、適切なステップから始めることが成功のカギです。視覚教材や発話練習を効果的に取り入れながら、学びの楽しさを伝えましょう。
ステップ1:ひらがな、カタカナの読み方、書き方を教える
最初に取り組むのは、日本語の基礎となる文字体系の習得です。清音・濁音・半濁音・撥音・促音・拗音・拗長音について紹介しながら、ひらがな・カタカナを50音順に教えます。発音と書き方を丁寧に指導しましょう。
例:「あ い う え お」「ア イ ウ エ オ」など
書き順を意識させるためには、なぞり書きや練習用プリントを活用するのがおすすめです。清音・濁音・半濁音から始め、文字習得が進んだら、外国人材学習者にとって難しい撥音・促音・拗音・拗長音などを段階的に導入します。
【清音・濁音】
- 清音:「か・き・く・け・こ」
- 濁音:「が・ぎ・ぐ・げ・ご」
【促音・拗音・拗長音】
- 促音の例:きって(切手) vs きて(着て)
- 拗音の例:きゃく(客) vs かく(書く)
- 拗長音の例:じゅよう(需要) vs じゅうよう(重要)
発音のリズムや音の違いを丁寧に教えることで、学習者が正確な発音を身につけやすくなります。
ステップ2:簡単な挨拶、自己紹介、日常表現から始める
文字の基本を習得したら、次は日常生活ですぐに使える表現を教えます。
- 「こんにちは」
- 「ありがとうございます」
【自己紹介の例】
- 「私の名前は~です」
- 「私は~と申します」
【簡単な質問表現の例】
- 「これは何ですか?」
- 「今、何時ですか?」
これらのフレーズを反復練習し、日常生活で使えるレベルまで定着させましょう。
ステップ3:視覚教材や具体的な例を活用する
学習をさらに深めるには、視覚的な補助を活用することが効果的です。
- 実際の物や場面を見せながら説明(工場勤務の日本語学習者を対象に業務で使う道具や、作業場や事務所の写真を見せながら説明するなど)
- DVDやアニメなど視聴覚教材を併用して、日本文化への理解を促進
視覚や聴覚を使った学習は、記憶の定着を助け、学習者が興味を持ちながら進められる効果があります。
ステップ4:間違いを恐れずに発話を促す
学んだ日本語を実際の場面で使えるようにするために、コミュニケーションを重視した練習を取り入れます。
- ビデオ教材や音声教材を使い、発音に注意しながらその中の会話文を繰り返し練習
- 会話の役割を決めて、ビデオ教材/音声教材の通りに再現する練習
- ビデオ教材/音声教材の場面を実際の職場や日常生活に置き換え、学んだフレーズを活用してロールプレイで実践
実際に声を出す機会を増やすことで、発話力が向上し、学習者が自信を持って日本語を使えるようになります。
外国人材に日本語を教える際のコツ
外国人に効果的に日本語を教えるには、押さえるべきポイントがあります。ここでは、これから初めて外国人に日本語を教える方にもわかりやすい指導法のポイントを解説します。
- ゆっくり話す・大切なところは繰り返す・簡単な日本語を使う
- 非言語的なサポートを活用する
- 母国語によるサポートを行う
これらのコツを取り入れることで、外国人の日本語習得をより効果的にサポートできます。
ゆっくり話す・大切なところは繰り返す・簡単な日本語を使う
【ゆっくり話す】
最初は、学習者は日本語の音に慣れていないため、ゆっくりと大きな声で、短いフレーズを使って話すことが大切です。
学習者が慣れない日本語を一度で聞き取るのは難しいものです。大切なところについては、3回程度繰り返して伝えるようにしましょう。
学習者に対しては、簡単な日本語で指導を行うようにしましょう。特に職場での利用を想定した学習者には、「です・ます」形で話すことが効果的です。これにより、職場で必要な丁寧語の表現をすぐに習得できるようになります。
非言語的なサポートを活用する
手や体を使った表現を取り入れることで、学習者が意味を理解しやすくなります。
笑顔や強調した発音など、視覚と聴覚の両方で学習者をサポートすると、効果的な指導が可能です。
母国語によるサポートを行う
学習初期は学習者の母国語を使って説明する「間接法」が有効です。特に、文法や複雑な概念を理解させる際に役立ちます。
基礎ができた段階で、母国語を使わずに日本語だけで教える「直接法」に切り替えることで、学習者が日本語に徐々に慣れ、自然に使えるようになります。
慣れないうちは間接法を使って指導をするのが効果的ですが、企業の教育担当者が外国人材の母語を習得していることはほとんどありません。現在、ベトナム語、英語、インドネシア語、中国語など、母語訳がある日本語の教科書が市販されています。このような母語対応の教科書を利用すると、学習者が文法や単語をよりスムーズに理解できるためおすすめです。
日本語を学ぶモチベーションを高める工夫
日本語を学ぶうえで、多くの学習者が直面する課題の一つが「モチベーションの維持」です。ここでは、学習意欲を高め、継続的な学習をサポートするための具体的な方法について解説します。
- 学んだ日本語を使う場面を設ける
- 日本文化に触れる体験を取り入れる
学んだ日本語を使う場面を設ける
日本語を学ぶ意欲を維持するためには、学んだ内容を実際に使う機会を設けることが大切です。
職場での挨拶や上司への報告の仕方、買い物や病院での会話など、日常生活で即座に活用できる内容を練習します。
【具体的なシチュエーションの設定】
授業で「レストランでの注文」や「電車での経路案内」といった日常的な場面を再現し、日本語でのやり取りを実演します。
【ロールプレイでの実践練習】
実際の場面に限りなく近い場面を設定し、学習者同士でロールプレイを行います。こうした練習を通じて、実践的なコミュニケーション能力を養うことができます。
日本文化に触れる体験を取り入れる
日本語学習へのモチベーションを高めるために、日本文化を知ることができる活動を取り入れることも効果的です。
お正月やお花見といった季節の行事について学び、関連する語彙や表現を習得します。
【視聴覚教材の活用】
日本の映画やドラマ、アニメなどを教材として使い、生きた日本語に触れる機会を提供します。これにより、日本語だけでなく文化や習慣への理解も深まります。
【文化体験を取り入れる】
茶道や書道などの体験を授業に取り入れることで、学習者の興味をさらに引き出します。実際の体験を通じて、日本語学習に対する熱意が一層高まります。
外国人材に日本語を教える際によくある課題とその対策
続いて、外国人材に日本語を教える際によくある課題と、その対策を紹介します。
- 学習意欲が続かない
- 文化や価値観の違いにより、指導側/学習者側双方で誤解が生じる
このような課題は適切な対策を講じることで、学習者のモチベーションを維持し、効果的な指導が可能になります。学習者一人ひとりの状況や目標に合わせた柔軟なアプローチを心がけ、楽しく学べる環境を提供しましょう。
学習意欲が続かない
日本語で自己紹介をしてもらい、挨拶や感謝の言葉を正しく使えるようになるなど、明確で負担の大きくない達成目標を設定します。
例えば、ロールプレイや簡単なクイズ等を用いて反復すると、少しずつではありますが「成功体験」を積むことができ、学習意欲の維持に一役買ってくれることが多いです。
【「楽しい」を実感してもらう】
日本の歌やアニメのセリフを理解できるようになったり、業務での専門用語を正確に発音できるようになったりするなど、学習者の興味に合わせた楽しみを取り入れることも大切です。
具体的には、文化的な要素を取り入れたゲーム(たとえば、かるたやジェスチャーゲーム)の実施や学習者が興味を持つトピック(アニメ、食べ物、観光地など)を題材に会話練習を行うなど、それぞれの「興味」にフォーカスした学習をすることができれば、学習意欲も大いに維持させることができます。
文化や価値観の違いによる誤解が生まれる
言語には、その地域の生活様式や文化、思想が反映されていて、言語学習と文化理解は切り離せない関係にあります。文化や価値観の違いによって誤解が生じる場面では、以下の方法で対応しましょう。
学習者の文化についても積極的に質問し、相互理解を深めます。日本文化と学習者の文化を比較し、類似点や相違点についてディスカッションする機会を設けると効果的です。
【文化的背景を母国語で説明する】
複雑で抽象的な文化的概念については、学習者の母国語を用いて説明することで理解を助けます。たとえば、お辞儀や贈り物の習慣など、文化的な誤解が生じやすい場面については、具体例を挙げて詳細に解説しましょう。
明光グローバルが提供する日本語教育に特化した研修サービス
外国人材への日本語教育を支援するため、明光グローバルは多彩な研修サービスを提供しています。それぞれのサービスは学習者の背景や目的に応じて柔軟に対応可能で、効率的な日本語学習をサポートします。
最後に、明光グローバルの概要と、提供する日本語教育に特化した研修サービスについて紹介します。
明光グローバルとは
明光グローバルは、外国人材が日本で安心して生活・仕事ができるように、就労支援を実施しています。展開しているサービスは主に次の3つです。
サービス | 詳細 |
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特定技能人材紹介 | ・企業ニーズの把握するための事前面談 ・企業の求める人材を紹介 ・人材の導入から定着までの一貫したコンサルティング |
ITエンジニア紹介 | ・多国籍バイリンガルエンジニアの紹介 ・専門な知見を持つコンサルタントによる選考 ・IT、電気電子、機械設計分野に特化した人材の確保 |
各種教育・研修 | ・eラーニングによる日本語教育(スマホアプリに対応) ・対面/オンラインによる日本語レッスン ・外国籍人材に向けた各種研修プログラム |
明光グローバルの外国人社員向け各種教育・研修サービスの強みは、「実用性の高さ」「カスタマイズ性」「豊富な実績」の3点です。
明光グローバルのグループ会社では、これまで40年以上もの間、学習塾の「明光義塾」をはじめとする教育事業を行っています。そのため、明光グローバルには企業様の状況に応じた実用的な学習コンテンツが蓄積され、最小限の手間やコストで日本語学習のゴールを設計することができます。
e-ラーニング(Japany)
明光グローバルの外国人向けオンライン日本語学習ツール「Japany」は、1,200本以上のレッスン動画を提供するオンライン学習プラットフォームです。主に次のような特徴があります。
- JLPT N5~N1対応:初心者から上級者まで対応可能。
- 特定技能試験対策:特定分野で必要な日本語能力を習得可能。
- 日常会話の日本語:日常的に使えるフレーズや会話を学習可能。
- 多言語対応:母国語でサポート可能なため、初心者も安心して学習可能。
- 学習定着度を測るテスト機能:習熟度を客観的に確認可能。
- 進捗管理機能:管理者が学習者の進捗を確認できる機能を搭載。
日本語レッスン
明光グローバルの日本語レッスンは、明光の基準を満たしたビジネス経験のあるプロ講師が、「話せる」「書ける」を軸にリアルリアルタイムで行われるレッスンです。経験豊富なプロ講師が指導を担当します。主に次のような特徴があります。
- ビジネス経験を持つプロ講師による指導:実践的でわかりやすい授業を提供。
- 業界別特化型レッスン:介護、建設など、特定業界のニーズに対応したレッスンを実施。
- エンジニア向け面接対策講座:就職活動で役立つスキルを習得可能。
- 上級ライティングレッスン:高い日本語能力が求められる業務にも対応。
- カスタマイズ可能なレッスンプラン:企業の課題に合わせた柔軟な対応が可能。
- 成果の可視化:レッスン内容や進捗状況のレポートを共有。
日本語能力測定試験
明光グローバルの日本語能力測定試験は、学習者の総合的な日本語能力を評価するための試験です。主に次のような特徴があります。
- 日本語能力試験(JLPT) では測定しきれない能力の評価:コミュニケーション能力や発音、印象などを総合的に評価。
- オンライン面談形式:プロ講師がマンツーマンで実施。
- 個人成績表の発行:評価文付きの詳細な成績表を提供。
- 効果測定や人事評価に活用:研修の成果や採用時の評価基準として活用可能。
各種研修
明光グローバルでは、外国人材向けに次のカスタマイズ可能な研修プログラムを提供しています。
- 異文化理解研修:日本で働くために必要な異文化対応スキルを学習。
- ビジネスマナー研修:日本特有の職場文化やマナーを習得。
- 接遇・セールス研修:接客や営業のスキルを強化。
まとめ
外国人材への日本語教育では、学習者の背景や目的に応じた段階的なアプローチが必要不可欠です。そして、教科書のみならず、視覚教材や効果的なサポート体制を取り入れることで、より効率的な学習が可能になります。
日本語教育に課題を感じている場合は、明光グローバルのような専門機関を活用することで、質の高い学習環境を構築できます。ご要望に合わせた研修サービスを通じて、効果的な日本語教育を実現しましょう。 外国人材の日本語教育にお悩みの際は、ぜひ明光グローバルにお気軽にご相談ください。