近年、人手不足の解消に向けて、特定技能1号の外国人材を採用している企業が増えています。しかし、特定技能1号の在留資格は、在留期間が最長5年までとなっているため、長期的な企業への定着が見込めません。
こうした背景から、より日本で長期的かつ管理職としてもキャリアを築ける特定技能2号の在留資格の取得を支援する企業が増えています。
特定技能2号になるためには、どのような試験を受ける必要があるのでしょうか?また、各種試験の合格率はどのようになっているのでしょうか?
今回は、特定技能2号になるための要件や、各種試験の合格率について解説します。特定技能2号の在留資格の取得に関心を持たれている企業の経営者や人事・教育担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
特定技能2号とは
特定技能2号とは、特定産業分野において、熟練した技能を要する業務に従事する外国人材のための在留資格です。
特定技能2号の外国人材は、リーダーや現場責任者として、現場で高度な技能やマネジメント能力を発揮することが求められます。そのため、在留資格を取得するにあたって特定技能1号よりもレベルの高い技能試験に合格する必要があるほか、一定の実務経験を積むことが必要です。
特定技能2号の在留資格を取得すると、在留期間の更新を受けることで上限なく日本に滞在することが可能になります。また、配偶者や子を帯同することもできます。そのため、特定技能2号の外国人材が希望する限り、長期的に日本企業に貢献できるようになっています。
2024年12月現在、次の11分野において、特定技能の受け入れが可能になっています。
- ビルクリーニング分野
- 工業製品製造業分野
- 建設分野
- 造船・舶用工業分野
- 自動車整備分野
- 航空分野
- 宿泊分野
- 農業分野
- 漁業分野
- 飲食料品製造業分野
- 外食業分野
今後変更される可能性があるため、最新の情報については出入国在留管理庁の公式サイトをご確認ください。
特定技能2号の在留資格を取得するための要件
外国人材が特定技能2号の在留資格を取得するには、どのような要件を満たす必要があるのでしょうか?
すべての受け入れ分野・業務区分に共通する要件として、各種技能試験への合格と一定の実務経験が必要です。また、一部の受け入れ分野では、日本語試験などに合格する必要もあります。
具体的な試験内容は、受け入れ分野や業務区分によって異なります。より詳しい要件を知りたい方は、出入国在留管理庁が公開している特定技能運用要領をご確認ください。
技能試験への合格
特定技能2号の在留資格を取得するためには、受け入れ分野ごとに定める技能試験に合格する必要があります。
技能試験には、大きく分けて「特定技能2号評価試験」と「技能検定1級」があります。基本的には、この2種類のうちどちらかに合格すればよいことになっています。
ただし、技能検定については、受験資格に一定の実務経験の年数が求められます。1級の場合、受験対象者の学歴によっては、最大7年の実務経験年数が求められるため、在留期間に制限がある特定技能1号の外国人材にとっては取得するハードルが高いと考えられます。
このような背景から、特定技能2号の在留資格を取得するための試験としては、特定技能2号評価試験に挑むことが一般的です。
(一部受け入れ分野のみ)日本語試験への合格
受け入れ分野のうち、漁業分野・外食業分野においては、日本語能力試験(以降「JLPT」)でN3レベルに合格することが求められます。N3レベルは、日常生活に必要な日本語をある程度理解できるレベルとされています。
その他の受け入れ分野については、在留資格の取得にあたって日本語試験への合否は問われません。ただし、技能試験の問題はN2レベルの日本語で書かれているため、相当程度の日本語能力の習得が必要になります。
その他試験への合格
一部の受け入れ分野では、技能検定・日本語試験以外の試験に合格することが必要なものもあります。具体的には、工業製品製造業分野において、特定技能2号評価試験の合格に加え、ビジネス・キャリア検定3級への合格が求められています。
2024年12月現在は上記のみですが、法改正に伴い、専門的な試験への合格を求める受け入れ分野が増える可能性もあります。外国人材の雇用上のトラブルにつながらないよう、企業としては常に最新の試験情報を把握することが必要です。
一定の実務経験
特定技能2号の在留資格を取得するためには、一定の実務経験が必要です。
具体的な実務経験年数については、受け入れ分野によって異なります。たとえば、ビルメンテナンス分野なら2年、工業製品製造業分野なら3年の実務経験が必要となります。
特定技能2号の外国人材には、リーダーや現場責任者としての深い専門性や統率力が求められます。こうした業務を滞りなく行うためにも、一定の実務経験を通じて、十分な知見やノウハウを身につけることが求められています。
特定技能2号評価試験の合格率
特定技能2号の在留資格を得るための要件は、受け入れ分野や業務区分によって異なります。しかし、技能試験の合格が不可欠である点は共通です。また、前述のとおり、実務経験の年数などの条件から、特定技能2号評価試験を受けることが多いことも共通項として挙げられます。
では、特定技能2号評価試験の難易度はどのようになっているのでしょうか?ここでは、特定技能2号評価試験の受験者数・合格者数・合格率について、受け入れ分野別に解説します。
なお、記載の合格率データは2024年12月25日時点のものであり、その後の試験結果が反映されていない可能性があります。最新データは関係機関の公式サイトをご参照ください。
ビルクリーニング分野の合格率
ビルクリーニング分野の特定技能2号評価試験の受験者数・合格者数・合格率は次のとおりです。
試験開催日 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2024年8月26日 | 11 | 3 | 27.3% |
2024年5月30日 | 30 | 3 | 10.0% |
※2024年12月25日時点で公開されている全ての受験結果を掲載
工業製品製造業分野の合格率
工業製品製造業分野の特定技能2号評価試験では、「機械金属加工」「電気電子機器組立て」「金属表面処理」のそれぞれの区分のうち、いずれかに合格する必要があります。
工業製品製造業分野の特定技能2号評価試験の受験者数・合格者数・合格率は次のとおりです。
業務区分 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
機械金属加工区分 | 770 | 472 | 61.3% |
電気電子機器組立て区分 | 175 | 116 | 66.3% |
金属表面処理区分 | 13 | 4 | 30.8% |
※2024年12月25日時点で公開されている受験結果(2024年7~9月開催)を掲載
参照元:製造分野特定技能2号評価試験結果
建設分野の合格率
建設分野の特定技能2号評価試験では、「土木」「建築」「ライフライン・設備」のそれぞれの区分のうち、いずれかに合格する必要があります。
建設分野の特定技能2号評価試験の受験者数・合格者数・合格率は次のとおりです。
1.土木
試験開催年月 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2024年12月 | 185 | 38 | 20.5% |
2024年11月 | 169 | 31 | 18.3% |
2024年10月 | 144 | 20 | 13.9% |
2.建築
試験開催年月 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2024年12月 | 216 | 36 | 16.7% |
2024年11月 | 188 | 37 | 19.7% |
2024年10月 | 190 | 60 | 31.6% |
3.ライフライン・設備
試験開催年月 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2024年12月 | 44 | 7 | 15.9% |
2024年11月 | 37 | 7 | 18.9% |
2024年10月 | 35 | 7 | 20.0% |
※2024年12月25日時点で公開されている受験結果のうち、日本における直近3か月分のデータを月単位に再集計したものを掲載
参照元:建設分野特定技能評価試験結果(令和6年12月)・建設分野特定技能評価試験結果(令和6年11月)・建設分野特定技能評価試験結果(令和6年10月)
造船・舶用工業分野の合格率
造船・舶用工業分野の特定技能2号評価試験の受験者数・合格者数・合格率は次のとおりです。
試験開催日 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2023年10月5日 | 3 | 3 | 100.0% |
2023年9月14日 | 14 | 12 | 85.7% |
2023年9月6日 | 3 | 3 | 100.0% |
※2024年12月25日時点で公開されているすべての受験結果を掲載
参照元:
自動車整備分野の合格率
自動車整備分野の特定技能2号評価試験の受験者数・合格者数・合格率は次のとおりです。
試験開催年月 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2024年8月 | 7 | 0 | 0.0% |
※2024年12月25日時点で公開されているすべての受験結果を掲載
参照元:
- 自動車整備分野特定技能評価試験結果について(一般社団法人日本自動車整備振興会連合会)
- 自動車整備分野特定技能評価試験結果(2024/8/1~2024/8/15)(一般社団法人日本自動車整備振興会連合会)
航空分野の合格率
航空分野の特定技能2号評価試験では、「空港グランドハンドリング」「航空機整備」のそれぞれの区分のうち、いずれかに合格する必要があります。
2024年12月25日現在、航空分野の特定技能2号評価試験はまだ開催されていませんが、今後の開催予定があります。最新の情報は、日本航空技術協会の公式サイトからご確認ください。
参照元:
宿泊分野の合格率
宿泊分野の特定技能2号評価試験の受験者数・合格者数・合格率は次のとおりです。
試験開催年月 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2024年11月 | 3 | 3 | 100.0% |
2024年10月 | 7 | 1 | 14.3% |
2024年3日 | 23 | 1 | 4.4% |
※2024年12月25日時点で公開されている受験結果を記載
参照元:
- 【2024年11月実施分】宿泊分野特定技能評価試験 受験者・合格者・合格率発表(一般社団法人 宿泊業技能試験センター)
- 【2024年10月実施分】宿泊分野特定技能評価試験 受験者・合格者・合格率発表(一般社団法人 宿泊業技能試験センター)
- 2023年度第1回 宿泊分野特定技能2号評価試験(国内実施)の合格発表(一般社団法人 宿泊業技能試験センター)
農業分野の合格率
農業分野では、技能試験として2号農業技能測定試験を受ける必要があります。農業分野の2号農業技能測定試験の受験者数・合格者数・合格率は次のとおりです。
試験開催年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2024年度 | 361 | 133 | 36.8% |
2023年度 | 265 | 55 | 20.8% |
※2024年12月25日時点で公開されている全ての受験結果を掲載
漁業分野の合格率
漁業分野では、2号漁業技能測定試験「漁業」「養殖業」のそれぞれの区分のうち、いずれかに合格する必要があります。漁業分野の2号漁業技能測定試験の受験者数・合格者数・合格率は次のとおりです。
1.漁業
試験開催年月 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2024年11月 | 5 | 0 | 0.0% |
2024年10月 | 11 | 2 | 18.2% |
2024年9月 | 2 | 1 | 50.0% |
2.養殖業
試験開催年月 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2024年11月 | 5 | 0 | 0.0% |
2024年10月 | 11 | 2 | 18.2% |
2024年9月 | 2 | 1 | 50.0% |
※2024年12月25日時点で公開されている受験結果から直近3ヶ月分を掲載
参照元:
2024年11月漁業技能測定試験 実施結果(一般社団法人 大日本水産会)
2024年10月漁業技能測定試験 実施結果(一般社団法人 大日本水産会)
2024年9月漁業技能測定試験 実施結果(一般社団法人 大日本水産会)
飲食料品製造業分野の合格率
飲食料品製造業分野の特定技能2号評価試験の受験者数・合格者数・合格率は次のとおりです。
試験開催回・期間 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
第2回 (2024年10月11日~10月26日) | 1,463 | 817 | 55.8% |
第1回 (2024年5月27日~6月13日) | 181 | 94 | 51.9% |
※2024年12月25日時点で公開されている受験結果を記載
参照元:
- 2024年度 飲食料品製造業特定技能1・2号技能測定試験 第2回国内試験(一般社団法人外国人食品産業技能評価機構)
- 2024年度 飲食料品製造業特定技能1・2号技能測定試験 第1回国内試験(一般社団法人外国人食品産業技能評価機構)
外食業分野の合格率
外食業分野の特定技能2号評価試験の受験者数・合格者数・合格率は次のとおりです。
試験開催回・期間 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
第2回 (2024年10月11日~10月26日) | 612 | 369 | 60.3% |
第1回 (2024年5月27日~6月13日) | 112 | 53 | 47.3% |
※2024年12月25日時点で公開されている受験結果を記載
参照元:
- 2024年度 外食業特定技能1・2号技能測定試験 第2回国内試験 (一般社団法人外国人食品産業技能評価機構)
- 2024年度 外食業特定技能1・2号技能測定試験 第1回国内試験(一般社団法人外国人食品産業技能評価機構)
特定技能2号評価試験への合格を支援する際のポイント
外国人材が特定技能2号評価試験にチャレンジするにあたって、企業にはどのような支援ができるのでしょうか?ここでは、企業が外国人材の特定技能2号評価試験への合格を支援するためのポイントについて解説します。
- 定期的に学習状況を確認する
- 継続的な日本語の学習環境を提供する
- 外国人材が働き続けたいと思える会社づくりに取り組む
定期的に学習状況を確認する
特定技能2号評価試験を確実に合格するためには、企業の担当者が定期的に外国人材の学習状況を確認することが重要です。
特定技能2号評価試験の場合、あらかじめ各団体から試験対策のためのテキストや過去問題などが公開されています。そのため、合格に向けては、テキストを読んで理解したうえで、過去問題に挑戦していくことが基本的な対策です。
一方で、外国人材が忙しい仕事の合間にコツコツ自主学習を進めることは容易ではありません。本人の学習モチベーションを維持するためにも、職場の上司やメンター、人事・教育担当者が積極的に声かけやアドバイスを行いましょう。
学習状況に問題がある場合は、目標・スケジュール設定などを見直し、確実に達成できるよう伴走するようにしてください。
継続的な日本語の学習環境を提供する
特定技能2号評価試験の突破には、外国人材が継続的に日本語学習をすることも重要になります。
前述のとおり、一部の受け入れ分野を除き、特定技能2号の在留資格の取得に日本語試験の要件はありません。ただし、特定技能2号評価試験で用いられている日本語には、専門用語や難易度の高い用語も多く含まれています。そのため、語学的な観点から挫折してしまう人も少なくありません。
外国人材に対して、企業が継続的な日本語学習ができる環境を提供することで、特定技能2号評価試験の合格率を高めることができます。また、日本語学習を行うことで外国人材が自信を持って日本語でのコミュニケーションができるようになり、職場でのコミュニケーション活性化や業務の質の向上につながる可能性もあります。
明光グローバルの外国人向けオンライン日本語学習ツール「Japany」には、各種受け入れ分野に必要な特定技能試験対策用の教材が多数取り揃えられています。スキマ時間にスマートフォンを活用して学習ができるので、忙しい方でも学習しやすくなっています。少しでもご興味をお持ちの方は、お気軽に明光グローバルまでお問い合わせください。
外国人材が働き続けたいと思える会社づくりに取り組む
外国人材が意欲的に特定技能2号評価試験に取り掛かるには、「この会社で働き続けたい」と思われる企業・職場づくりが不可欠です。
そもそも、外国人材に「日本に長期的に在留したい」「この会社に長く貢献したい」という思いがなければ、特定技能2号を取得する意味がありません。外国人材に定着してもらうには、外国人材から選ばれる働きやすい企業・職場づくりを推進していく必要があります。
たとえば、外国人材の悩みに寄り添えるよう「メンター制度」を導入したり、日本人とのコミュニケーション機会を頻繁に設けたりといった施策が考えられます。
まとめ
特定技能2号の在留資格を取得するためには、一定の業務経験に加え、受け入れ分野ごとに設定された技能試験に合格する必要があります。しかし、外国人材の採用に慣れていない企業では「具体的にどのように外国人材をサポートすべきなのか」「どうやって試験対策を進めればよいのか」とお困りの方も少なくありません。
明光グローバルには、外国人材が個々の目標に合わせて日本語能力を伸ばせるオンライン日本語教育サービス「Japany」があります。合計1,200本以上の教材数を誇り、特定技能試験対策から、職場で必要な実践的な日本語会話まで、さまざまな課題解消につながるプログラムが用意されています。
明光グローバルでは、専門講師が直接指導を行う、各分野の「特定技能2号試験対策講座」もご用意しています。自主学習だけでは合格できるか不安な学習者や、漢字や専門用語など日本語の文章の読解力に不安がある学習者については、リアルタイムで行う「特定技能2号試験対策講座」がおすすめです。本講座は、企業のご希望にあわせて、受講人数や開催方法(オンライン・対面など)、実施回数などを調整することが可能です。
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