近年、外国人従業員の雇用が進む中で、企業にとって日本語教育、とくに「ひらがな」の習得支援が重要な課題となっています。ひらがなは日本語の基礎であり、職場や日常生活のあらゆる場面で必要とされるためです。
しかし、「効率的な教え方がわからない」「教材の選び方に悩んでいる」といった声も多く聞かれます。今回は、外国人に対して企業がとるべきサポート方法と学習法を解説します。
外国人がひらがなを覚える重要性
ひらがなの習得は、日本語学習の第一歩であり、外国人が日本社会に適応するうえで欠かせないスキルです。文章や会話の多くに用いられるため、仕事や生活、さらには人間関係においても重要な役割を果たします。ここでは、ひらがなを覚えることの主な意義を4つ解説します。
- 日本語の基本となる文字であるため
- 日本語学習の土台を築くため
- 職場でのコミュニケーションを円滑にするため
- 日本人との交流を深めるため
日本語の基本となる文字であるため
ひらがなは、日本語の音を表す文字体系であり、あらゆる文章の構成に欠かせません。すべての単語には音声があり、それを文字で表す基本手段がひらがなです。
日本の子どもたちがまず最初にひらがなを学ぶように、外国人にとっても日本語の入り口として最も重要な要素となります。
日本語学習の土台を築くため
ひらがなが読めるようになることで、語彙や文法構造を理解しやすくなり、カタカナや漢字の習得へとスムーズにつながります。
日本語教材やアプリの多くは初級レベルでひらがなを使用しており、ひらがなを理解することで学習効率が格段に向上します。
カタカナが覚えやすくなる
カタカナは、ひらがなと同じ発音体系を持ちながら視覚的に異なる文字です。ひらがなを先に習得することで、形状の違いに慣れながら、カタカナへの理解がスムーズになります。
「パソコン」「ビジネス」など、外来語は主にカタカナで表記されるため、職場でも頻繁に登場します。ひらがなが理解できると、カタカナが未習であっても「パソコン(ぱそこん)」「ビジネス(びじねす)」のようにひらがなを補記してあげることで、理解の助けになります。
漢字の勉強に役立つ
ひらがなは、漢字の読みを補足する「ふりがな」や「送りがな」としても使われるため、漢字学習に不可欠です。
たとえば、「会社(かいしゃ)」や「東京(とうきょう)」などの読み方は、ひらがなでルビを振ることで、学習者の理解を助けます。また、文法を学ぶ際も、動詞や形容詞の活用において、ひらがなの知識が基盤となります。
職場でのコミュニケーションを円滑にするため
日本の職場では、業務連絡や書類、掲示などにひらがなが頻繁に使用されています。ひらがなが読めることで、業務上の理解が進み、円滑なコミュニケーションが可能になります。
メールやメモ
日々の業務において、メールや手書きのメモ、付箋などにひらがなが使われる場面は多くあります。
たとえば、「本日の会議は3時から会議室Aで行います」といった一文に含まれるひらがなを理解できなければ、情報の正確な把握が難しくなります。「コピーをしておいてください」や「この資料を確認してください」など、簡単なメッセージも正確に理解するにはひらがなの知識が必要です。
会議の資料や社内掲示
会議資料や掲示物では、難しい漢字にふりがなが添えられていることがあり、ひらがなが読めることで重要な内容を理解しやすくなります。
日本人との交流を深めるため
ひらがなが読めるようになると、日本人とのコミュニケーションが自然とスムーズになります。たとえば、次のようなメリットがあります。
- LINEやメールでの意思疎通がしやすくなる
- 日本人の名前を正確に読めるようになり、親しみが生まれる
「ありがとう」「おつかれさま」などのあいさつが理解できるようになり、関係構築につながる
ひらがなを覚えることは、言語スキルだけでなく、人間関係や文化理解を深めるための大切な一歩です。まずは簡単な語句から始め、徐々に習慣づけることが、日本語習得への近道となります。
外国人がひらがなを覚える上での主な課題
ひらがなは日本語の基礎となる文字であり、日本語学習の第一歩として非常に重要です。
しかし、外国人にとっては、ひらがなを覚えることにいくつかの難しさがあります。ここでは、主な課題を具体的に解説します。
- 文字の数が多い
- 見た目が似ている文字が多い
- 書き順や筆順に慣れていない
- 発音との結びつきに時間がかかる
文字の数が多い
ひらがなは全部で46文字(基本形)あり、ローマ字やアルファベットと比べると習得に時間がかかります。さらに、「が」「ぎ」などの濁音、「ぱ」「ぴ」などの半濁音、「きゃ」「しゅ」といった拗音(ようおん)なども存在するため、記憶の負担が大きくなります。
見た目が似ている文字が多い
「ぬ」と「め」、「れ」と「ね」など、形がよく似ている文字が多く、視覚的に混乱しやすいという特徴があります。そのため、正確に書いたり読んだりするには、繰り返しの練習が必要になります。
書き順や筆順に慣れていない
日本語の文字には正しい書き順が存在しますが、多くの外国人はこの概念に慣れていません。書き順を無視してひらがなを覚えた場合、見た目が崩れたり、文字が読みづらくなったりするため、特に日本人とのコミュニケーションの場ではマイナスに働く可能性があります。また、後に漢字学習へと進んだ際、より複雑な筆順に戸惑う原因にもなります。
発音との結びつきに時間がかかる
ひらがなは、一つの文字が一つの音を表す「音節文字(おんせつもじ)」です。たとえば、「あ」「い」「う」などは、それぞれ特定の音と結びついています。
しかし、日本語には外国人にとって聞き慣れない、発音しづらい音もあります。たとえば、「つ(tsu)」や「ふ(fu)」といった音は、英語にはない発音なので、英語を母語とする人にとってはうまく聞き取れなかったり、発音が難しい場合があります。
そのため、ひらがなの「見た目(文字の形)」と「音(発音)」がうまく結びつかず、覚えるのに時間がかかってしまうことがあります。発音が曖昧なままだと、書くときにも間違えやすくなります。
このように、ひらがな学習には単なる「暗記」以上の壁がいくつも存在します。これらの課題を理解したうえで、効果的な学習法を選ぶことが、継続的な日本語習得のカギとなります。
外国人のひらがな学習において企業が知るべきサポート方法
外国人が日本語を習得するには、企業による学習環境の整備と継続的な支援が不可欠です。特にひらがなの学習は基礎となるため、早期からの取り組みが効果的です。ここでは、企業が現場で実践できる4つの具体的な支援方法について解説します。
- オンライン講座の提供
- 書き取り練習の推奨
- 視聴覚教材の提供
- 学習進捗のモニタリングとフィードバック
オンライン講座の提供
ひらがなを効率よく習得するためには、体系的に学べるオンライン講座の活用が有効です。次のような支援が効果的です。
- 学習者が自分のペースで進められるオンライン日本語講座を導入する
- ひらがなの書き順や発音を解説する動画コンテンツを提供し、視聴を促す
上記に加えて専門講師による指導は、発音や文法の誤りに対する即時フィードバックにもつながります。
書き取り練習の推奨
書くことで手を使いながら学習する「運動記憶」は、ひらがな定着に効果的です。企業内では次のような取り組みが推奨されます。
- 毎日10分程度の書き取り練習時間を業務時間内に設ける
- 練習用のプリントやひらがな帳を配布し、課題提出を定期的に求める
実際に書く機会を日常的に設けることで、定着率が大きく向上します。
視聴覚教材の提供
ひらがなを自然に目にする環境をつくることは、日常的な学習の促進につながります。次のような方法が効果的です。
- 職場の共有スペースに、ひらがなの一覧表やフラッシュカードを掲示する
- ひらがなとその発音を対応させた表を作成し、デスクや休憩スペースに貼る
- イラスト付きのひらがな単語教材を配布し、視覚からの学習を促す
- 音声教材を聞きながら、ひらがなを音読したり書いたりして、表記と発音(読み方)を同時に覚える
「見る」「聞く」「読む」を繰り返すことで、ひらがなに対する抵抗感をなくすことができます。
学習進捗のモニタリングとフィードバック
継続的に学習を進めてもらうためには、進捗状況の確認と個別支援が重要です。次のような取り組みが有効です。
- 毎月ひらがなに関する簡易テストを実施し、習得度を確認する
- 結果に応じたフィードバックや補習を行い、苦手な項目を重点的に支援する
- 実務に直結する日報やメモをひらがなで記述するよう促し、実践の場を増やす
業務の中で「使う」場面をつくることが、ひらがな学習の実力定着に直結します。
外国人がひらがなを覚えるには学習ツールが効果的
ひらがなを効果的に習得するには、短期間で楽しく、かつ反復しやすい学習環境が重要です。特に、オンライン学習ツールを活用することで、「見る」「聞く」「書く」といった複数の感覚を同時に使った効率的な学習が可能になります。ここでは、オンラインひらがなの習得における学習ツールの主なメリットを3つ解説します。
- 視覚・聴覚・触覚を使った学習ができる
- 繰り返し学習しやすく、記憶に定着しやすい
- モチベーションを維持しやすい
視覚・聴覚・触覚を使った学習ができる
オンライン教材では、ひらがなの形・音・書き方を視覚・聴覚・触覚を通じて学ぶことができます。
- 見る(視覚):書き順や文字の形を動画や図解で学習
- 聞く(聴覚):ネイティブの発音を繰り返し聞くことで音を定着
- 書く(触覚):画面上で文字をなぞる、指で書くなどのアクションを通じて学習
このように複数の感覚を使うことで、記憶への定着率が高まり、より実践的な言語習得につながります。
繰り返し学習しやすく、記憶に定着しやすい
スマートフォンやパソコンを活用することで、いつでもどこでも学習が可能になります。通勤時間や休憩中といったすきま時間にも取り組めるため、学習の頻度が自然と高まり、定着学習がしやすくなります。自分のペースで進められるため、理解度に応じた柔軟な反復が可能です。
モチベーションを維持しやすい
日本語習得には長期的な取り組みが必要なため、モチベーションの維持が重要です。オンライン教材には、学習を継続させるための工夫が数多く盛り込まれています。
- 成果の可視化:進捗状況や習得項目が記録され、学習者自身が成長を実感できる
- 競争要素の導入:他の学習者との比較やランキング機能により、学習への意欲が刺激される
これらの仕組みにより、達成感と楽しさを感じながら学習を継続することができます。
日本語学習には日本語オンラインレッスンと外国人向けオンライン日本語学習ツール「Japany」がおすすめ
ビジネス日本語の習得においては、明光グローバルが提供する日本語オンラインレッスンと、外国人向けオンライン日本語学習ツール「Japany」がおすすめです。
日本語オンラインレッスンは、熟練した講師との直接的な対話を通して、実用的な日本語運用能力を育成することができるサービスです。また、「Japany」は外国人向けオンライン日本語学習ツールで、現場で用いる実践的な日本語や特定技能試験対策など、合計1,200本以上の豊富な動画教材で学べます。
最後に、日本語オンラインレッスンと、外国人向けオンライン日本語学習ツール「Japany」を紹介します。
明光グローバルとは
明光グローバルは、外国人材の就労機会の創出と育成を通して、日本企業の持続的な成長をサポートする教育系人材サービスです。
40年以上の個別指導の教育実績、そして10年以上の日本語教育の実績を持つ明光ネットワークジャパングループの知見を活かし、外国人材の育成と企業の人材課題解決に特化したサービスを提供しています。
JCLIや早稲田EDU日本語学校での豊富な教育ノウハウを活かし、特定技能試験対策から業界別の専門教育まで、幅広いニーズに対応しています。外務省からEPA事業を4期連続で受託するなど、高い信頼性と実績を誇ります。
明光グローバルの主要サービス
事業 | サービス |
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教育研修事業 | ・eラーニングによる日本語教育(スマホアプリに対応) ・対面/オンラインによる日本語レッスン ・外国籍人材と日本人に向けた各種研修プログラム ・外国籍人材に向けた各種試験対策講座 |
人材紹介事業 | ・特定技能人材の紹介 ・外国籍エンジニアの人材紹介 ・教育伴走型の登録支援サービス |
特定技能人材やエンジニアの紹介から、外国人社員向けの教育・研修サービスまで、幅広いノウハウを提供しています。単なる日本語教育にとどまらず、企業での実践力を重視した総合的な人材育成を行っています。
日本語オンラインレッスンがおすすめの理由
日本語オンラインレッスンを受講することで、実際のビジネス現場で活用できる日本語コミュニケーションスキルを効果的に習得することが可能です。また、定期的にレッスンを受講することで、講師からフィードバックやエンカレッジを得られ学習のモチベーション維持が期待できます。
特徴 | 内容 |
---|---|
ビジネスにおける実践力の向上 | ・各業種に対応したビジネス会話の習得 ・ビジネスメールや文書の作成指導 ・プレゼンテーションスキルの習得 |
業種別カスタマイズ | ・業界ごとに特化したレッスン 例:外食の店舗やホテルの現場で必要な接客コミュニケーション等 |
即時フィードバック | ・発音の細かな修正 ・自然な表現への言い換え ・ビジネスマナーの指導 |
オンライン日本語学習ツール「Japany」
「Japany」は、明光キャリアパートナーズが提供している外国人向けオンライン日本語学習ツールです。
Japanyを活用すれば、現場で用いる実践的な日本語や、特定技能試験対策など、合計1,200本以上の豊富な動画教材を活用して学ぶことができます。そのため、外国人社員のさまざまな学習ニーズに応えることができます。
また、パソコンやスマートフォンを使って、スキマ時間に自分のペースで学習できるのも特徴的です。
さらに、管理者機能として、学習進捗を確認できる「レポート機能」や、一定期間ログインがないと通知が届く「アラート機能」を活用することもできます。
受講形態 | e-ラーニング |
対象者 | 企業に在籍する外国人籍社員・帰国子女など |
プログラム・コース内容(一例) | ・日本語試験対策(JLPT・JFT Basic) ・せいかつの日本語 ・特定技能試験対策(1号+2号に対応) ・しごとの日本語(ITエンジニア、外食、介護など各業界のビジネス会話に対応) |
受講期間 | コースによって異なる |
料金プラン受講費用 | 初期費用:100,000円 月額費用:1名あたり1,500円~(受講人数に応じて変動) 年間契約費用:1名あたり14,000円~(受講人数に応じて変動) |
Japanyの強み
Japanyの強みは、「実用性の高いオリジナルコンテンツ」「学習の継続を促すシステム」「管理者を支えるサポート機能」の3点です。
実用性の高いオリジナルコンテンツ | 「Japany」には、N5〜N1までを網羅したJLPT対策を始めとする1,200本以上の豊富なレッスン動画コンテンツがあります。資格試験対策だけでなく、業界・業種別の言い回しや日常的な会話能力が身につく動画など、学習者のニーズに合わせてさまざまなコンテンツの動画を視聴できます。 |
学習の継続を促すシステム | 「Japany」には、実力・目標に応じて最適なプランを提案する「コンテンツレコメンド機能」や、力試しとして使える「実力診断テスト」など、外国人材の学習モチベーションを向上するさまざまな機能が搭載されています。 |
管理者を支えるサポート機能 | 学習者の進捗状況を確認できる「レポート機能」や、ログインがない場合に通知が届く「アラート機能」といった管理者機能も充実しています。そのため、人事・教育担当者の方も安心して利用することができます。 |
まとめ
外国人がひらがなを習得することは、日本語学習の基盤を築く上で不可欠であり、日本社会での生活や職場での円滑なコミュニケーションを実現する第一歩となります。
ひらがなを覚えることで、単語や文法の理解が深まり、カタカナや漢字といった他の文字体系の習得もスムーズに進めることができます。また、読み書きができるようになることで、職場でのメモやメールのやり取り、日本人との日常的な交流が格段にしやすくなります。
近年では、オンライン教材などの学習ツールを活用することで、視覚・聴覚・触覚を組み合わせた学習が可能となり、定着率の高い効率的な学習が実現されています。さらに、進捗管理機能や目標達成の過程を楽しめる仕組みを取り入れた教材も増えており、学習の継続とモチベーション維持に大きく寄与しています。
こうした環境づくりにおいては、企業の支援が極めて重要です。外国人一人ひとりの学習状況やレベルに合わせた柔軟なサポートを提供することで、学習効果を高めると同時に、職場全体のコミュニケーションや生産性の向上にもつながります。
明光グローバルでは、外国人材の日本語学習を総合的に支援するためのプログラムを提供しており、ビジネスシーンで実践的に活用できる力の育成をサポートしています。ひらがなの習得をきっかけに、より良い職場づくりを目指したいとお考えの企業様は、ぜひ一度ご相談ください。