日本企業では、少子高齢化の影響により若手人材の確保が大きな課題となっています。採用市場は売り手市場が続き、優秀な日本人学生の確保が難しくなっている中で、注目されているのが外国人留学生の新卒採用です。
外国人留学生は、日本で学んだ知識や日本語力を活かし、すでにある程度日本社会に適応している点で、海外から直接採用する人材に比べてスムーズに職場に溶け込みやすいという特長があります。また、ダイバーシティ(多様性)の推進や海外展開の加速、そしてイノベーション創出といった経営課題においても、外国人材の活用は大きな意味を持ちます。
今回は、企業が外国人留学生を正社員として採用する際に必要となる制度や手続き、評価すべきポイントや注意点、さらに外部支援サービスの活用方法を網羅的に解説します。これから外国人留学生の採用を検討している企業の採用担当者や人事担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
外国人留学生の就職状況
日本で学ぶ外国人留学生の数は、コロナ禍で一時減少したものの、その後回復し、企業にとって大きな採用ターゲットになりつつあります。ただし、日本人学生の就職活動とは異なる点も多く、現状や課題を理解したうえで採用活動を進めることが重要です。まずは、日本における外国人留学生の就職状況と、彼らが日本で働きたいと考える理由について解説します。
参照元:「日本人学生の海外留学状況」及び「外国人留学生の在籍状況」を公表します(文部科学省)
外国人留学生の日本での就職状況
独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の調査によると、2024年度時点で日本に在籍する外国人留学生の数は約33万人に達しています。
その多くはアジア圏出身で、中国、ベトナム、ネパール、ミャンマーといった国々が上位を占めています。近年ではインドネシアやバングラデシュ、中東やヨーロッパからの留学生も増えており、出身地域は多様化しています。
専攻分野は人文科学系や社会学系、さらには理工系が中心となっており、語学力や専門知識を兼ね備えた人材も少なくありません。卒業後、日本での就職を希望する留学生は全体の約4割にのぼります。これは数にすると十数万人規模となり、企業にとって新卒採用市場の重要な候補であることがわかります。
しかし、実際の就職率は決して高くはありません。その理由として大きいものは次のとおりです。
- 就労可能な在留資格の取得に関するハードル
- 日本企業独特の採用スケジュールへの対応の難しさ
- 業務レベルの日本語力の不足
こうした要因が複合的に影響し、希望はあるものの日本で就職できずに帰国を余儀なくされる留学生も多いのが現状です。
参照元:2024(令和6)年度外国人留学生在籍状況調査結果(独立行政法人日本学生支援機構)
外国人留学生が日本で働きたいと考える主な理由
外国人留学生が卒業後も日本での就職を希望する主な理由には、次のものが挙げられます。
- 日本の生活に慣れている
- 語学力や専門スキルを活かせる
- 安定した待遇と制度がある
- 安全で安心できる生活環境がある
日本の生活に慣れている
まず、日本での生活にすでに慣れている点が挙げられます。留学生活を通じて日本語でのコミュニケーションや日常的な生活習慣に適応しており、文化的なギャップを最小限に抑えて就労を始められるのです。
語学力や専門スキルを活かせる
自分の語学力や専門知識を活かせる場として日本企業を選ぶケースも目立ちます。特にITや工学分野などグローバルに通用するスキルを持つ留学生にとって、日本企業での経験はキャリア形成において大きな価値を持ちます。
安定した待遇と制度がある
給与や待遇が母国よりも良好である点は、強い魅力となっています。安定した雇用制度や社会保障制度が整備されている日本は、長期的に働く環境として信頼を得ています。
安全で安心できる生活環境がある
日本の治安の良さや生活環境の安全性も重要な要素です。安心して生活しながらキャリアを積める環境は、留学生にとって大きな決め手となり、結果的に日本での就職を強く希望する理由につながっています。
企業が外国人留学生を採用するメリット
外国人留学生を採用することは、単なる人材不足の解消にとどまりません。むしろ企業にとっては、グローバル化が進む社会において競争力を高めるための大きなチャンスとなります。
留学生はすでに日本での生活に適応しているうえ、語学力や国際的な視点を備えているため、幅広い業務領域で貢献できる可能性を秘めています。ここでは、具体的にどのようなメリットがあるのか解説します。
- 留学経験により日本社会に適応している
- 母国語+日本語を活かした業務が可能
- 海外展開時の橋渡し人材になる
- 新しい視点やアイデアをもたらす
留学経験により日本社会に適応している
外国人留学生を採用する最大の強みの一つは、日本社会への適応度の高さです。留学中に日常生活を送る中で、日本語によるコミュニケーション能力を磨き、クラスメイトや地域社会との交流を通じて自然に会話力を伸ばしています。また、日常生活の中で公共交通機関の利用や行政手続き、買い物や契約などを経験し、問題なくこなせるようになっています。
さらに、日本独自の生活マナーや社会常識も学んでいるため、職場での指導や教育の負担が軽減できます。海外から直接採用する外国人材の場合、生活習慣やビジネスマナーを一から教える必要があり、企業側のサポートコストが大きくなるケースがあります。その点、すでに日本で生活経験を積んでいる留学生はスムーズに職場に溶け込むことができるのです。
母国語+日本語を活かした業務が可能
外国人留学生は、母国語と日本語を使い分けるバイリンガル人材としての価値を持っています。たとえば、通訳や翻訳、海外顧客対応、越境ECのサポート、さらには訪日外国人観光客へのインバウンド対応など、多言語を必要とする業務に即戦力として貢献できます。
特に、アジアや中東、アフリカといった地域では、日本人社員だけでは十分に対応できない商習慣や文化的背景が存在します。留学生は自国の言語と文化を理解しているため、日本企業が新たな市場を開拓する際に大きな強みとなります。国際ビジネスの現場において、彼らの多言語スキルと文化的理解力は欠かせない資産となるのです。
海外展開時の橋渡し人材になる
企業が海外展開を進める際、外国人留学生は現地との「橋渡し役」として大いに期待できます。
留学生は母国の文化やビジネス習慣を熟知しており、さらに日本での生活や学びを通じて日本的な価値観や働き方も理解しています。この二重の理解が、異文化間の摩擦を最小限に抑え、スムーズな事業展開を可能にします。
また、母国に持つネットワークを活用できる点も大きな利点です。現地の大学や企業、政府機関とのコネクションを通じて、新しい取引先の開拓や事業立ち上げを円滑に進められる可能性があります。
将来的には駐在員や支店長候補として成長する人材も多く、グローバル人材育成の観点からも大きな投資効果が期待できます。
新しい視点やアイデアをもたらす
外国人留学生は、異なる文化や価値観を背景に育ってきたため、日本人社員とは異なる視点を持ち込んでくれます。その結果、従来のやり方にとらわれない発想や、ユーザー目線に立った新しいアイデアが生まれる可能性があります。
たとえば、日本人にとっては当たり前すぎて気づかない不便さや課題を、留学生は客観的に指摘できることがあります。これは新商品の開発やサービス改善に直結する貴重な視点です。
また、チームに多様性があることで創造性が高まるという研究結果も多く報告されています。バックグラウンドの異なる人材が協力することで、議論の幅が広がり、イノベーションの種が生まれやすくなるのです。
外国人留学生を採用することは、組織の柔軟性と競争力を高めるための戦略的な選択といえるでしょう。
外国人留学生の正社員採用に必要な制度と手続き・必要条件
外国人留学生を新卒正社員として採用する際には、日本人学生の採用と共通する部分もありますが、就労ビザ(在留資格)の変更など外国人特有の手続きもあります。特に「留学ビザ」から「就労ビザ」への切り替えがスムーズに行えなければ、採用が確定しても入社できないといったトラブルにつながる可能性があります。
企業にとっては、採用フローを理解すると同時に、必要書類や条件を事前に確認し、余裕を持った準備を進めることが重要です。
新卒・正社員として採用する際の基本的な流れ
外国人留学生を新卒・正社員として採用する際の流れは、日本人学生の採用プロセスと大きくは変わりません。ただし、内定後に「在留資格変更手続き」が必要になる点が最大の特徴です。
まず、企業は説明会やインターンシップ、求人情報の発信を行います。この際、日本語だけでなく英語や母国語でも情報を発信することで、留学生に対するアクセスを広げることが可能です。
次に、書類選考や面接を経て内定を通知します。選考基準は基本的に日本人と同じですが、留学生の場合は日本語能力や大学で学んだ内容と応募職種の関連性を重視する企業も多くあります。
内定を出した後は、在留資格の変更手続きが必要です。必要書類を整えて法務省入国管理局に申請し、許可が下りるまでの期間を見込んでスケジュールを組むことが大切です。
入社後は、日本人社員と同様に研修を行い、現場への配属を行います。採用プロセス自体は一般的な新卒採用の流れに沿いますが、ビザ変更手続きがスケジュールに影響するため、企業側は余裕を持った計画を立てることが求められます。
就労に必要な在留資格変更手続き
外国人留学生は「留学ビザ」で在留しているため、就労を希望する場合は「就労ビザ」への変更が必要です。主に次の2つのルートがあります。
- 留学ビザ → 技術・人文知識・国際業務
- 留学ビザ → 特定技能
留学ビザ → 技術・人文知識・国際業務
留学ビザから最も一般的に変更される就労ビザは「技術・人文知識・国際業務」です。
「技術・人文知識・国際業務」とは、大学や専門学校で習得した専門知識やスキルを活かして、企業の専門的・技術的・国際的な業務に従事するための在留資格です。いわゆるホワイトカラー職種に対応しており、多くの企業が活用しています。
このビザで対応できる職種には、企画、営業、通訳、翻訳、マーケティング、システムエンジニア(SE)、デザインなどが含まれます。
審査の際に重視されるのは、採用予定の職種と大学や専門学校で学んだ内容との関連性です。職務内容と専門分野が一致していない場合には不許可となることもあるため、職務設計と学歴の紐づけが重要となります。
学歴要件としては、原則として大学卒業または専門学校卒(2年以上)が求められます。ただし「国際業務」のカテゴリーにおいては学歴要件がなく、代わりに一定の実務経験が必要となります。職種との関連性や学歴・実務経験のバランスをしっかり考慮して採用計画を立てることが求められます。
留学ビザ → 特定技能
もう一つの選択肢として「特定技能」があります。「特定技能」とは、人手不足が深刻な特定産業分野において、一定の専門性や技能を有する外国人材が現場で即戦力として働くことを目的とした在留資格です。
特定技能はホワイトカラー職ではなく、技能職に該当する業種での就労を目的としています。対象となる職種には外食、宿泊、製造、介護、建設などがあり、現場での実務を中心に活躍してもらうことが前提です。
特定技能ビザを取得するためには、技能試験と日本語試験(日本語能力試験(JLPT)N4程度)に合格する必要があります。ただし、技能実習生としての経験がある場合には、一部の試験が免除されるケースもあります。
特定技能は、現場労働力の確保を目的としており、専門知識や学歴を要する「技術・人文知識・国際業務」とは明確に区分されています。採用する企業は、業務内容に応じてどちらの在留資格が適しているかを検討し、手続きに備えることが重要です。
在留資格変更時の注意点
在留資格の変更は、採用決定から入社までのプロセスの中で最も注意が必要なポイントです。手続きにはおおむね1ヶ月かかるため、余裕を持って準備を進めることが求められます。
変更手続きには、雇用契約書や職務内容書、卒業証明書などの必要書類を揃えることが必要です。書類に不備があると不許可となるリスクがあり、企業と学生の双方に大きな影響を及ぼす可能性があります。
そのため、ビザ申請については専門知識を持つ行政書士や専門の支援機関を活用するのも有効な手段です。専門家を通すことで手続きがスムーズに進み、不許可のリスクを大幅に軽減することができます。
外国人留学生を採用する際の注意点
外国人留学生を新卒正社員として採用する場合、通常の採用活動に加えて、法的な義務や社内体制の整備が求められます。制度を正しく理解せずに採用を進めると、企業側に法的リスクやトラブルが発生する可能性もあるため注意が必要です。ここでは、特に企業が押さえておくべき重要なポイントを解説します。
- 在留資格を必ず確認する
- 外国人雇用状況届を提出する(法的義務)
- 労働条件は日本人と同等にする
- 受け入れ体制を準備する
在留資格を必ず確認する
外国人材を雇用する際には、在留カードの提示を求め、就労可能な資格を持っているかどうかを必ず確認する必要があります。面接時や内定通知のタイミングで確認することが望ましく、採用予定の業務に適した在留資格であるかを入念にチェックすることが重要です。
不適切な在留資格のまま就労させると、本人だけでなく企業も不法就労助長罪に問われる可能性があります。在留資格の確認は、採用企業が必ず果たすべき法的責任の一つです。
外国人雇用状況届を提出する(法的義務)
外国人を雇用する企業には、「外国人雇用状況届出」を提出する法的義務があります。これは厚生労働省が定める制度で、すべての事業主が対象となります。
雇用開始や終了の際には、ハローワークへの届出、あるいは、外国人雇用状況届出システムへオンラインで申請を行う必要があり、期限を過ぎると法的リスクが生じます。外国人雇用状況の届出の提出期限は翌月末日までで、雇用保険被保険者資格取得届を届け出る場合は、雇入れ日の翌月10日までです。
また、企業は雇用管理簿を作成し、従業員の在留資格や在留期間などを記録・保管しておく義務も負います。この管理簿は、万が一の行政調査や監査に備えるためにも重要です。外国人雇用状況届の提出や管理を怠った場合には、企業に対して30万円以下の罰金が科される可能性があるため、注意が必要です。
制度自体を知らない企業も少なくありませんが、法令遵守の観点から、外国人社員を雇用する際には必ず実施すべき基本的な手続きの一つといえます。適切な管理と届出は、企業の信頼性を高める上でも欠かせない取り組みです。
参照元:
労働条件は日本人と同等にする
外国人留学生を採用する場合でも、労働基準法は日本人社員と同様に適用されます。そのため、給与、労働時間、休日、福利厚生などにおいて不当な差別を行うことは許されません。外国人であることを理由に昇給や昇格の機会を制限することも禁止されており、平等な待遇の確保が求められます。
さらに、厚生年金、健康保険、雇用保険などの社会保険への加入も原則として必要です。こうした法的義務を怠った場合、法律違反となるだけでなく、企業ブランドの信頼性や評判にも悪影響を及ぼす可能性があります。
そのため、外国人社員の採用にあたっては、日本人社員と同等の労働条件を確実に整備することが重要です。平等で適切な待遇を提供することは、社員の定着やモチベーション向上にもつながり、長期的な企業成長を支える基盤となります。
受け入れ体制を準備する
外国人材が安心して働き、長期的に定着できるよう、企業は社内の受け入れ体制をしっかり整えることが求められます。単に採用するだけではなく、入社後にスムーズに職場に馴染めるような環境づくりが重要です。
まず、日本人社員向けに異文化理解研修を実施することで、偏見や誤解を防ぎ、多国籍チームでも円滑にコミュニケーションが取れる職場風土を醸成します。また、メンター制度を導入して相談しやすい先輩社員を配置することで、新入社員が抱える不安や疑問に即座に対応できる体制を整えます。
さらに、生活面でのサポートも重要です。住居探しや役所手続き、銀行口座開設の案内などを提供することで、安心感を高めることができます。そして、社内に外国人社員向けの相談窓口を設けることは、早期離職の防止や職場での問題解決につながります。
こうした総合的な受け入れ体制を整えることで、外国人留学生のパフォーマンスを最大限に引き出し、企業全体の生産性向上やチームの活性化にも寄与します。安心して働ける環境を提供することは、長期的な人材育成戦略の要となると言えるでしょう。
企業が注目すべき留学生採用時のポイント
外国人留学生を採用する際には、学歴やスキルだけでなく、 語学力・適応力・文化理解・定着意欲 といった観点をバランスよく評価することが重要です。ここでは、採用面接や選考の中で特に注目すべきポイントを解説します。
- 語学力・適応力を評価する
- 異文化理解力・協調性を確認する
- 長期的な定着とキャリアパスを設計する
語学力・適応力を評価する
外国人留学生を採用する際には、業務に必要な日本語力を備えているかどうかを確認することが、最も重要な評価ポイントの一つとなります。
日本語能力試験(JLPT)のN2〜N1レベルが、実務に対応できる目安としてよく用いられますが、単に試験のスコアだけで判断するのでは不十分です。書類選考だけでなく、面接やディスカッション、実技試験などを通じて、実際のビジネスシーンでの日本語運用能力をしっかり確認することが求められます。
特に社内コミュニケーションにおける能力は重要で、報告・連絡・相談のやり取りや、メールや議事録の作成が円滑に行えるかどうかを見極める必要があります。また、日本語だけでなく英語や母国語のスキルを、海外顧客対応や多国籍チームでの業務でどのように活かせるかも、評価ポイントの一つです。
単なる語学力の数値ではなく、実際の業務に応用できる能力を総合的に判断することが、外国人留学生採用の成功につながります。
異文化理解力・協調性を確認する
外国人留学生を採用する際には、異文化理解力や協調性の評価も欠かせません。これらが不足していると、せっかく採用しても職場になじめず早期離職につながる恐れがあるため、採用段階でしっかり見極めることが重要です。
面接の場では、多国籍のチームでの経験や、学生時代のグループ活動など、実際に他者と協働したエピソードを確認することが有効です。加えて、日本企業特有のビジネスマナーに対する理解度も把握しておく必要があります。敬語の使い方、上下関係の認識、報告・連絡・相談のルールなど、職場での円滑なコミュニケーションに直結する能力を見極めます。
受け入れ部署で日本人社員と円滑に協働できるかどうかを評価することも重要で、必要に応じて採用後にビジネスマナー研修やチームビルディング研修を組み合わせることで、スムーズな定着を促せます。
異文化背景を持つ人材は、多様性の推進役として組織に新たな視点や価値をもたらす一方で、社内との摩擦を避けるための協調性も同時に求められます。この両面をバランスよく評価することが、採用成功の鍵となります。
長期的な定着とキャリアパスを設計する
外国人留学生を採用しても、短期間で退職してしまうと企業側にとっても留学生本人にとっても大きな損失となります。そのため、面接段階から将来のキャリア展望や日本での生活設計について丁寧にヒアリングし、本人の意欲や目標を把握することが重要です。
入社後は、キャリア支援制度や昇給・昇進の仕組みを明示することで安心感を与え、長期的に定着してもらうことができます。さらに、企業側から「数年後には海外拠点の責任者候補」といった具体的なキャリア像を示すことで、モチベーション向上や組織へのコミットメントを高める効果も期待できます。
定着率をさらに高めるためには、外国人社員専用のキャリア相談窓口を設けたり、成功事例やロールモデルを紹介したりすることも有効です。採用だけでなく、育成と定着までを見据えた包括的なキャリア設計が、留学生採用の成功に直結するといえます。
留学生採用を成功させるために企業ができること
外国人留学生を採用するにあたって、単に内定を出すだけではなく、入社までの流れや受け入れ体制を工夫することが成功の鍵となります。ここでは、企業が留学生採用を円滑に進め、長期的な定着につなげるために意識すべき取り組みについて解説します。
- 柔軟な採用フロー設計
- 学内機関・大学との連携
- 入社後のフォロー体制構築
柔軟な採用フロー設計
留学生の多くは、日本人学生とは異なる教育制度のもとで学んでいるため、卒業時期や学業の進行スケジュールが日本の学生と一致しないことがあります。
たとえば、卒業時期が母国の制度に合わせて9月にずれるケースや、就職活動のタイミングが日本の一般的なスケジュールと合わない場合もあります。そのため、企業側は画一的な採用フローにこだわらず、柔軟に個別対応する姿勢が求められます。
また、選考段階では学歴や資格だけを重視するのではなく、適性や意欲、さらには異文化環境で培った経験や課題解決能力も評価軸に加えることが重要です。こうした柔軟なフロー設計を行うことで、多様な背景を持つ留学生の能力や潜在力を適切に見極め、企業にフィットする人材を採用しやすくなります。
また、採用活動全体においても、候補者にとって配慮のある選考プロセスを提供することで、企業の魅力向上や内定承諾率の向上にもつながります。
学内機関・大学との連携
留学生採用を効率的に進めるには、大学や学内機関との連携が非常に重要です。キャリアセンターや留学生支援室と定期的に情報交換を行うことで、優秀な人材へのアプローチ機会を増やすことができます。
たとえば、大学主催のジョブフェアや推薦制度を活用することで、企業の認知度を高めながら、信頼性のあるマッチングが可能となります。こうした学内機関との協力は、採用の幅を広げるだけでなく、採用候補者との接点を増やし、適性や意欲をより正確に把握する手段にもなります。
また、留学生側にとっても、企業の採用意図や社風を理解しやすくなるため、入社後の定着率向上にもつながります。
入社後のフォロー体制構築
採用の成否を大きく左右するのは、入社後のフォロー体制の充実度です。業務上のOJTに加え、生活面でのサポートを整えることが、外国人留学生に安心感を与え、早期戦力化につながります。具体的には、住居探しや銀行口座の開設、市役所での各種手続きといった、日本特有の生活基盤の整備を支援することが重要です。
さらに、入社後も継続的に日本語研修を提供したり、メンター制度を導入して相談しやすい環境を整えたりすることで、職場でのコミュニケーション能力や適応力を高めることができます。
こうした包括的なサポート体制は、外国人社員の定着率向上に直結するだけでなく、社員一人ひとりが持つ能力を最大限に引き出す環境づくりとしても非常に効果的です。
外国人留学生の採用を支援する外部サービス
企業が自社だけで外国人留学生の採用を進めるのは容易ではありません。特に在留資格や労務管理、日本語教育といった分野は専門性が求められるため、外部サービスを積極的に活用することが効率的です。ここでは、企業が頼れる主な支援サービスを紹介します。
外国人材紹介会社・就職支援サービス
留学生に特化した人材紹介会社や求人プラットフォームを利用することで、採用を効率的に進めることができます。
これらのサービスには、応募者の選定だけでなく、通訳対応や履歴書翻訳といった実務サポートが含まれている場合も多く、採用担当者の負担を大幅に軽減します。特に初めて留学生採用を行う企業にとっては、こうした専門サービスの活用が大きな助けとなるでしょう。
ビザ・労務対応支援
留学生を正社員として採用するには、必ずビザの変更や労務管理が伴います。しかし、これらの手続きを自社内だけで進めるのはリスクが高く、不備があると不許可や法令違反につながる可能性もあります。
そのため、行政書士や社会保険労務士と契約し、専門的なサポートを受けると良いでしょう。外部の専門家を活用することで、法的リスクを最小限に抑え、安心して採用活動を進められます。
日本語・ビジネスマナー研修ツールの導入
採用後の早期定着を実現するには、日本語やビジネスマナー研修の活用も効果的です。
近年では、オンラインで受講できる日本語研修プログラムや、礼儀作法・名刺交換・会議参加など日本独自のビジネスマナーを学べる教材が数多く提供されています。入社前からこうした研修を受けさせることで、スムーズな職場適応を促し、実務に集中できる環境を整えることが可能です。
外国人材の日本語教育は明光グローバルにお任せください
外国人留学生を採用したいと考えても、入社後に「日本語力に不安がある」「現場での指示が伝わりにくい」といった課題に直面する企業は少なくありません。特に、即戦力として活躍してもらうためには、日常会話だけでなく、職場で使える実践的な日本語や業務に特化した表現の習得が必要です。
こうした課題に応えるのが、明光グローバルの日本語教育サービスです。最後に、明光グローバルの概要と、提供するサービスを紹介します。外国人留学生の採用から育成・定着までをスムーズに進めたい企業の皆さまは、ぜひ明光グローバルのサービスをご活用ください。
明光グローバルとは
明光グローバルは、外国人材の就労機会の創出と育成を通して、日本企業の持続的な成長をサポートする教育系人材サービスです。
40年以上の個別指導の教育実績、そして10年以上の日本語教育の実績を持つ明光ネットワークジャパングループの知見を活かし、外国人材の育成と企業の人材課題解決に特化したサービスを提供しています。
JCLIや早稲田EDU日本語学校での豊富な教育ノウハウを活かし、特定技能試験対策から業界別の専門教育まで、幅広いニーズに対応しています。外務省からEPA事業を4期連続で受託するなど、高い信頼性と実績を誇ります。
明光グローバルの主要サービス
事業 | サービス |
---|---|
教育研修事業 | ・eラーニングによる日本語教育(スマホアプリに対応) ・対面/オンラインによる日本語レッスン ・外国籍人材と日本人に向けた各種研修プログラム ・外国籍人材に向けた各種試験対策講座 |
人材紹介事業 | ・特定技能人材の紹介 ・外国籍エンジニアの人材紹介 ・教育伴走型の登録支援サービス |
特定技能人材やエンジニアの紹介から、外国人材向けの教育・研修サービスまで、幅広いノウハウを提供しています。単なる日本語教育にとどまらず、企業での実践力を重視した総合的な人材育成を行っています。
オンライン日本語学習ツール「Japany」
「Japany」は、明光キャリアパートナーズが提供している外国人向けオンライン日本語学習ツールです。
Japanyを活用すれば、現場で用いる実践的な日本語や、特定技能試験対策など、合計1,200本以上の豊富な動画教材を活用して学ぶことができます。そのため、外国人材のさまざまな学習ニーズに応えることができます。
また、パソコンやスマートフォンを使って、スキマ時間に自分のペースで学習できるのも特徴的です。
さらに、管理者機能として、学習進捗を確認できる「レポート機能」や、一定期間ログインがないと通知が届く「アラート機能」を活用することもできます。
受講形態 | e-ラーニング |
対象者 | 企業に在籍する外国人籍社員・帰国子女など |
プログラム・コース内容(一例) | ・日本語試験対策(JLPT・JFT Basic) ・せいかつの日本語 ・特定技能試験対策(1号+2号に対応) ・しごとの日本語(ITエンジニア、外食、介護など各業界のビジネス会話に対応) |
受講期間 | コースによって異なる |
料金プラン受講費用 | 初期費用:100,000円 月額費用:1名あたり1,000円~(受講人数に応じて変動) 年間契約費用:1名あたり9,500円~(受講人数に応じて変動) |
Japanyの強み
Japanyの強みは、「実用性の高いオリジナルコンテンツ」「学習の継続を促すシステム」「管理者を支えるサポート機能」の3点です。
実用性の高いオリジナルコンテンツ | 「Japany」には、N5〜N1までを網羅したJLPT対策を始めとする1,200本以上の豊富なレッスン動画コンテンツがあります。資格試験対策だけでなく、業界・業種別の言い回しや日常的な会話能力が身につく動画など、学習者のニーズに合わせてさまざまなコンテンツの動画を視聴できます。 |
学習の継続を促すシステム | 「Japany」には、実力・目標に応じて最適なプランを提案する「コンテンツレコメンド機能」や、力試しとして使える「実力診断テスト」など、外国人材の学習モチベーションを向上するさまざまな機能が搭載されています。 |
管理者を支えるサポート機能 | 学習者の進捗状況を確認できる「レポート機能」や、ログインがない場合に通知が届く「アラート機能」といった管理者機能も充実しています。そのため、人事・教育担当者の方も安心して利用することができます。 |
日本語オンラインレッスン
日本語オンラインレッスンの特長として、熟練した講師との直接的な対話を通して、実用的な日本語運用能力を育成できることがあります。
特徴 | 内容 |
---|---|
ビジネスにおける実践力の向上 | ・各業種に対応したビジネス会話の習得 ・ビジネスメールや文書の作成指導 ・プレゼンテーションスキルの習得 |
業種別カスタマイズ | ・業界ごとに特化したレッスン 例:外食の店舗やホテルの現場で必要な接客コミュニケーション等 |
即時フィードバック | ・発音の細かな修正 ・自然な表現への言い換え ・ビジネスマナーの指導 |
日本語オンラインレッスンを受講することで、実際のビジネス現場で活用できる日本語コミュニケーションスキルを効果的に習得することが可能です。また、定期的にレッスンを受講することで、講師からフィードバックやエンカレッジを得られ学習のモチベーション維持が期待できます。
外国人向け各種教育・研修サービス
明光グローバルでは、外国人材の日本語能力向上と各業界に特化した学習支援を4つの柱で展開しています。時間や場所を問わない「Japany」でのeラーニングから、ビジネス経験豊富な講師による個別指導まで、幅広いニーズに対応できることが特徴です。
サービス | 概要 |
---|---|
外国人向けオンライン日本語学習ツール「Japany」 | ・1,200本以上の豊富な動画教材 ・N5~N1レベルまでの総合的な学習コンテンツ ・多言語対応により初学習者も安心して学習が可能 ・特定技能2号試験対策コンテンツも搭載(外食業、飲食料品製造業、製造業、宿泊業) |
オンライン日本語レッスン | ・ビジネス経験豊富な講師による個別指導 ・業界別カスタマイズカリキュラム ・定期的にレッスン報告書を企業に提供 |
各種研修プログラム | 【外国人材向け】新入社員研修、異文化理解研修等 【日本人社員向け】外国人材受入れ研修等 |
各種試験対策講座 | ・専門講師が直接指導 ・実施方法はオンライン/対面いずれも対応可能 ・受講人数や実施回数など企業毎にカスタマイズして対応可能 ※介護福祉士試験対策講座、特定技能2号試験対策講座(外食、飲食料品製造、製造業、建設の4分野に対応) |
各種教育・研修サービスの強み
明光グローバルの外国人社員向け各種教育・研修サービスの強みは「実用性の高さ」「カスタマイズ性」「豊富な実績」の3点です。
明光グループでは、これまで40年以上もの間、個別指導をはじめとした教育活動を実施してきました。そのため、明光グローバルには、企業様の状況に合わせた実用的な学習コンテンツが蓄積されています。学習した内容をすぐに現場で活かすことができるため、社員がモチベーション高く取り組むことができるでしょう。
また、さまざまな研修コンテンツを、企業の状況に応じてカスタマイズできることも特長です。外国人社員向けの日本語能力向上の研修だけでなく、業界や職種に特化したビジネスマナーや接遇・セールス研修、外国人社員を受け入れる日本人社員向けの受け入れ研修や異文化理解研修、異文化コミュニケーション研修など、幅広い研修を行うことができます。
さらに、EPA事業を外務省から4期連続で受託しており、国内外ともに豊富な導入実績を持っています。企業の規模や外国人社員の採用経験の多寡を問わず、さまざまなサポートが可能です。
まとめ
少子高齢化や若手人材不足が進む中、外国人留学生を正社員として採用することは、企業にとってますます重要な選択肢となっています。留学生はすでに日本の生活や文化に慣れており、日本語力や専門知識、さらには母国でのネットワークを活かして即戦力として活躍できる可能性を秘めています。
ただし、採用の際には在留資格の変更や雇用状況届の提出など、法的手続きを正しく進めることが欠かせません。 また、採用後に長く定着してもらうためには、OJTやメンター制度に加えて、生活面の支援、日本語教育、ビジネスマナー研修といった環境づくりが大切です。こうしたサポートを整えることで、外国人社員が安心して力を発揮し、企業にとっても貴重な戦力へと成長していきます。
外国人材の日本語教育や研修の仕組みづくりにお困りの場合は、明光グローバルにご相談ください。実践的な日本語から特定技能試験対策まで幅広く対応しており、必要に応じて取り入れていただけます。少しでもご興味をお持ちの場合は、お気軽に明光グローバルまでお問い合わせください。