2025年1月26日(日)に実施された第37回介護福祉士国家試験の外国人材の合格率は、30%台と低い水準にとどまっています。この背景には、広い試験範囲、専門用語の多さや日本語能力の課題、試験対策不足などが考えられます。
今回は、2024年度の試験結果を詳しく分析し、外国人材が合格するために乗り越えるべき壁と、効果的な学習方法について解説します。外国人材の採用・育成をご検討中の企業担当者様は、ぜひ最後までご覧ください。
2024年度「第37回 介護福祉士国家試験」の合格発表結果の概要
2025年1月26日(日)に実施された「第37回 介護福祉士国家試験」の合格率は78.3%となり、高い水準を維持しました。しかし、在留資格別に外国人材の合格状況を見ると全体の合格率とは大きな差があり、依然として厳しい状況であることが伺えます。ここでは、第37回試験結果の概要と、外国人材の在留資格別の合格率について、データを基に詳しく解説します。
全体の合格率と今までの合格率の推移
第37回(2024年度)介護福祉士国家試験の合格率は78.3%でした。直近2回の試験結果(第36回:82.8%、第35回:84.3%)と比較すると合格率はやや低下しましたが、過去10年間の推移を見ると、高い水準で安定している状況です。
直近10回の合格率
項目 | 受験数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) |
---|---|---|---|
第37回 | 75,387 | 58,992 | 78.3 |
第36回 | 74,595 | 61,747 | 82.8 |
第35回 | 79,151 | 66,711 | 84.3 |
第34回 | 83,082 | 60,099 | 72.3 |
第33回 | 84,483 | 59,975 | 71.0 |
第32回 | 84,032 | 58,745 | 69.9 |
第31回 | 94,610 | 69,736 | 73.7 |
第30回 | 92,654 | 65,574 | 70.8 |
第29回 | 76,323 | 55,031 | 72.1 |
第28回 | 152,573 | 88,300 | 57.9 |
第28回(2016年度)は57.9%でしたが、その後は70%を超える回が多く、近年は70%台後半から80%台前半で推移していることがわかります。

また、受験者数は長期的に減少傾向にありますが、合格率は比較的高く推移しています。
参照元:介護福祉士国家試験の受験者・合格者・合格率の推移(厚生労働省)
外国籍の在留資格別の合格率(EPA、技能実習生、特定技能1号、留学生)
全体の合格率(78.3%)と比較すると、外国籍受験者の合格率は在留資格によって多少の差はあるものの、大幅に低い水準にとどまっています。
項目 | 受験数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) |
---|---|---|---|
EPA介護福祉候補者 | 1,314 | 498 | 37.9 |
(初受験者) | 1,027 | 443 | 43.1 |
(再受験者) | 287 | 55 | 19.2 |
技能実習生 | 155 | 50 | 32.3 |
特定技能1号 | 4,932 | 1,643 | 33.3 |
留学生 | 3,087 | 1,085 | 35.1 |
EPA候補者(経済連携協定に基づく受け入れ)、技能実習生、特定技能1号、留学生のいずれの区分においても、合格率は30%台という結果になりました。
外国人材が日本の介護福祉士国家試験に合格するには、言語や文化、学習環境など、様々な課題を克服する必要があります。外国人材の資格取得支援においては、個々の状況に応じたきめ細やかなサポート体制を築くことが大切です。
参照元:
- 第37回介護福祉士国家試験におけるEPA介護福祉士候補者の試験結果(厚生労働省)
- 介護福祉士国家試験の受験者・合格者・合格率の推移(厚生労働省)
- 第37回介護福祉士国家試験 養成施設等別合格率(厚生労働省)
外国籍の介護福祉士国家試験の合格率が低い主な理由
外国籍の介護福祉士国家試験の合格率が全体の合格率と比較して低い水準にある背景には、いくつかの要因が考えられます。ここでは、介護福祉士国家試験のハードルが高くなっている4つの主な理由について詳しく解説します。
- 出題範囲が広いから
- 日本語能力に課題があるから
- 試験対策が不足しているから
- 介護施設側の支援が不足しているから
出題範囲が広いから
外国人材にとって、介護福祉士国家試験の合格が難しい理由の一つに、試験範囲が非常に広いことが挙げられます。母国語ではない日本語で、多岐にわたる分野を学習する必要があるため、大きな負担となっています。
筆記試験では、以下の4つの領域と12の科目群から出題されます。
領域 | 科目群 |
---|---|
人間と社会 | ・人間の尊厳と自立 ・人間関係とコミュニケーション ・社会の理解 |
こころとからだのしくみ | ・こころとからだのしくみ ・発達と老化の理解 ・認知症の理解 ・障害の理解 |
医療的ケア | ・医療的ケア |
介護 | ・介護の基本 ・コミュニケーション技術 ・生活支援技術 ・介護過程 |
総合問題 | ・総合問題 |
これらの領域には、介護の専門知識だけでなく、社会制度や医学的な知識、コミュニケーション技術など、多岐にわたる内容が含まれています。限られた学習時間の中で全ての範囲を学習し、合格レベルに到達することは、外国人受験者にとって相当な努力が必要です。
日本語能力に課題があるから
介護福祉士国家試験は、日常会話レベルを超えた高度な日本語能力が求められるため、多くの外国人受験者にとって日本語の習得が高いハードルとなっています。介護福祉国家試験が難しいとされている点は、主に次のとおりです。
難しい点 | 概要 |
---|---|
専門用語が頻出する | 医学・福祉分野特有の、普段あまり使わない専門的な言葉が多い。 例:嚥下(えんげ)、誤嚥(ごえん)、褥(しとね)など |
長文や複雑な文章が多い | 問題文が長かったり、回りくどい言い方や複雑な文法が使われるため、内容を正確に理解するには高い読解力が必要になる。 |
介護現場特有の表現が多い | 介護現場では教科書的な知識だけでは対応しきれないケースがある。 |
単語を覚えるだけでは不十分な場合がある | 個々の単語の意味がわかっても、文脈の中でどのように使われているかを正確に把握する力が求められる。 |
このように、専門的な内容を日本語で理解し、解答しなければならないことが合格を難しくしています。
試験対策が不足しているから
そもそも試験対策が不足している点も、合格率を下げている要因の一つと考えられます。実際に試験対策を行う上で、主に次のような課題が指摘されています。
課題 | 概要 |
---|---|
勉強時間の確保が難しい | ・日々の介護業務と勉強を両立させる必要がある ・慣れない日本での仕事や生活に慣れるだけでも大変で、学習に時間を割けない |
効率的な学習方法を知らない | ・自身の日本語レベルに合った教材や参考書を見つけることが難しい ・過去問や試験の出題傾向を掴むための情報が不足している |
これらの理由から、十分な準備ができないまま試験本番を迎えてしまうケースが少なくありません。その結果、本来持っている知識やスキルを十分に発揮できず、不合格につながってしまう可能性があります。
介護施設側の支援が不足しているから
受け入れ施設側の支援体制が十分に行き届いていないことも、合格率が低い一因と考えられます。具体的には、主に次のような点が不足しています。
課題 | 概要 |
---|---|
在留資格による支援の差 | ・技能実習生や特定技能の外国人材は、学習が本人の自主性に委ねられがちで、施設からのサポートが手薄な場合がある ・一方、留学生やEPA介護福祉士候補者は、養成校や受入れ調整機関など、外部からのサポートを受けられる機会が比較的多い傾向にある |
外国人材が求める支援 | ・日本語学習支援:母国語での解説や質問対応など、個々のレベルに合わせたサポート ・学習環境の整備:仕事と勉強を両立しやすいシフト調整や、勉強スペースの提供 ・試験対策の実施:専門的な試験対策講座や模擬試験の実施 |
しかし、施設によっては人員不足や時間的な制約から、これらの要望に十分に応えられていない現状があるようです。
参照元:在留資格「介護」の実態把握等に関する調査研究事業報告書(公益社団法人 日本介護福祉士会)
介護福祉士国家試験に合格するために必要なこと
外国人材が言語や文化の壁を乗り越え、難関とされる介護福祉士国家試験に合格するには、効果的な学習方法や学習計画が欠かせません。ただし、闇雲に勉強するのではなく、試験日から逆算して計画を立てながら、ポイントを押さえた対策が必要です。ここでは、介護福祉士国家試験の合格を目指す上で基本となる、3つの重要な取り組みについて解説します。
- 勉強時間を確保し学習計画を立てる
- インプット・アウトプットを繰り返す
- 過去問や模擬試験を解く
勉強時間を確保し学習計画を立てる
介護福祉士国家試験の合格には、学習時間を確保し、学習計画を立てることが重要です。なぜなら、試験範囲が広く、相応の学習量が必要になるため、働きながら合格を目指す場合は意識的に時間を作る必要があるからです。
具体的には、次のような点を意識して時間を確保し、学習します。
- 隙間時間を活用する:通勤時間、休憩時間、就寝前など、日々の生活の中の隙間時間を見つけて学習する
- 習慣化する:決まった時間に学習するなど、勉強を生活の一部として組み込む
計画を立て実践することで得られる主なメリットは、次のとおりです。
- 進捗管理できる:やるべきことや進捗状況が明確になり、全体像が把握しやすくなる
- モチベーションを維持できる:目標達成に向けた道筋が見え、学習に対する意欲を保ちやすい
- 勉強の効率がアップする:無駄なく学習が進められるため、勉強効率が向上する
- 精神的に安心感が得られる:「計画通りに進んでいる」という安心感が得られる
行き当たりばったりの学習ではなく、計画を立てて着実に学習を積み重ねることが、合格へとつながるでしょう。
インプット・アウトプットを繰り返す
学習を効率的に進めるには、インプットとアウトプットをバランス良く繰り返すことが重要です。その理由は、インプットだけでは表面的な理解に留まりやすく、実際に問題を解くなどのアウトプットを通じて、知識が定着するからです。
効果的な学習方法は、主に次のとおりです。
- 知識をインプットする(参考書を読む、講義を聞くなど)
- 問題を解いてアウトプットする
- 間違えた問題は、解説を読んで(インプット)、再度解き直す(アウトプット)
- 1~3を繰り返す
インプットとアウトプットを地道に繰り返すことが、試験に合格するための近道です。
過去問や模擬試験を解く
介護福祉士国家試験の合格を目指す上で、過去問や模擬試験を繰り返し解くことは非常に有効な対策です。過去問や模擬試験に取り組むことには、主に次のようなメリットがあります。
- 出題傾向の把握を把握する:出題形式、出題分野、難易度などを事前に把握しておく
- 試験の時間配分が身につく:試験本番と同じ時間を想定し、各試験範囲のペース配分を身につける
- 実力と弱点を把握する:現時点での自分の理解度や苦手な分野を把握できるため、ピンポイントに復習できる
社会福祉振興・試験センターのウェブサイトでは、直近3回分の過去問が無料で公開されています。外国人受験者向けに、漢字にルビが振られたバージョンや音声読み上げ用試験問題も用意されています。
ここまで解説してきたように、合格するには学習時間の確保、効果的なインプット・アウトプット、過去問演習など、多岐にわたる対策が必要です。しかし、これらの対策を企業内のサポートだけで十分に実施するには限界があります。
より確実に合格を目指し、貴重な人材の育成・定着を図るには、外国人材の試験対策に特化した専門機関のノウハウを活用することがおすすめです。
外国人材の介護福祉国家試験の対策なら「明光グローバル」にお任せください
外国人材の介護福祉国家試験の合格に向けて、日本語能力や学習環境の整備など、企業にとって多くの課題が伴います。効果的な対策を講じ、貴重な人材を育成・定着させるには、専門的なサポートの活用が有効です。
明光グローバルは、長年の教育ノウハウを活かし、外国人材の試験合格を強力にバックアップします。最後に、明光グローバルのサービスと、介護福祉士試験対策講座の特徴を紹介します。
明光グローバルとは
明光グローバルは、長年培ってきた教育事業のノウハウを基盤とし、外国人材の就労支援と企業の成長を促進する「教育系人材サービス」を提供しています。グループ内の日本語学校(JCLIや早稲田EDU日本語学校)での指導実績をもとに、特定技能試験の対策講座から各業界に特化した専門的な研修まで、幅広い教育プログラムを提供できることが大きな強みです。
また、外務省からEPA(経済連携協定)に基づく日本語研修事業を4期連続で受託するなど、実績を高く評価されています。明光グローバルの主なサービスは、次のとおりです。
明光グローバルの主要サービス
事業 | サービス |
---|---|
教育研修事業 | ・eラーニングによる日本語教育(スマホアプリに対応) ・対面/オンラインによる日本語レッスン ・外国籍人材と日本人に向けた各種研修プログラム ・外国籍人材に向けた各種試験対策講座 |
人材紹介事業 | ・特定技能人材の紹介 ・外国籍エンジニアの人材紹介 ・教育伴走型の登録支援サービス |
明光グローバルは、人材を紹介するだけに留まらず、入社後の日本語能力向上支援や日本企業文化への適応サポートなど、外国人材が長期的に活躍できるよう総合的な育成サービスを提供しています。
介護福祉士の試験対策講座の概要
明光グローバルでは、外国人材が介護福祉士国家試験に合格するための、専門的な対策講座を提供しています。この講座は、受験者が直面しがちな特有の課題(日本語の壁や学習習慣など)を考慮し、合格に結びつく効果的な学習アプローチを採用している点が大きな特徴です。
介護福祉士の試験対策講座
特徴 | 内容 |
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段階的学習プラン | ・基礎日本語から専門知識まで、レベルに応じた学習 ・N5からN2以上まで、幅広い日本語能力に対応 |
実践的な訓練 | ・語彙力、読解力強化の集中トレーニング ・実践的なケーススタディによる知識の定着 |
柔軟な学習形態 | ・講座の実施方法(オンライン・対面いずれかを選択可) ・受講人数:企業様のご要望に応じて柔軟に対応可能 |
専門性の高いサポート | ・介護現場経験のある日本語教師による指導 ・介護の日本語教育専門家による監修 〇特徴:高い合格実績 〇内容:日本人の合格水準にならぶ高い合格実績(81%) |
さらに、苦手意識を持ちやすいポイントを重点的にカバーするカリキュラムとなっているため、試験本番に向けて自信を持って準備できるでしょう。
まとめ
第37回介護福祉士国家試験の結果と、外国人材の合格状況について解説しました。
第37回介護福祉士国家試験では、全体の合格率が約80%と高い水準を維持する一方で、外国籍受験者の合格率は30~40%台にとどまり、依然として厳しい状況が続いています。その背景には、出題範囲の広さや専門用語を含む日本語の難しさ、試験対策の不足、さらに在留資格ごとの支援体制の違いなど、さまざまな要因が絡み合っています。
こうした課題を乗り越えて合格を目指すには、十分な学習時間の確保と計画的な学習、そしてインプットとアウトプットを繰り返す学習法に加え、過去問演習などの実践的な対策が欠かせません。特に外国籍受験者にとっては、日本語能力の強化と試験対策を専門的に支援する環境が、合格への大きな鍵となります。
明光グローバルでは、教育ノウハウを活かした外国人材向けの介護福祉士試験対策講座を提供しています。高い合格実績を持つ当社の講座にご興味のある企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。