介護業界は少子高齢化などを背景に、深刻な人手不足に直面しています。厚生労働省によると、2025年には約32万人の介護職員が不足すると予測され、有効求人倍率も高止まりが続くなど、厳しい状況です。
このような状況を打開するため、IT化による業務効率化、職場環境の改善、外国人材の受け入れなど、さまざまな対策が模索されています。今回は、介護業界の人材不足の現状と原因、具体的な対策を解説します。人材不足解消の糸口を見つけたい介護事業者様は、ぜひ参考にしてください。
介護業界における人材不足の深刻な実態
介護業界は、少子高齢化や働き手不足といった複数の要因が重なり、人材不足が非常に深刻な状況です。特に、2025年以降は団塊世代が後期高齢者となり、要介護者の急増が見込まれるため、介護職員の大幅な不足が予測されています。
このような状況を反映し、介護職員の有効求人倍率は他の業界と比較して高く推移しています。ここからは、介護業界の人材不足の実態について詳しく見ていきましょう。
2025年問題で不足する介護人材の規模
2025年以降、団塊の世代が後期高齢者となり、要介護者の数が急増します。その結果、必要な介護職員数が2019年と比較して大幅に増える見込みです。具体的な介護職員の不足数は次のとおりです。
2025年度の具体的な介護人材の不足状況
2025年の介護職員必要数 | 約243万人 |
2019年の介護職員数 | 約211万人 |
必要な増員数 | 約32万人 |

画像引用元:第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の将来推計について(厚生労働省)
このデータからもわかるように、2025年には約32万人もの介護職員が不足すると推計されています。また、人材不足により介護職員一人あたりの負担が増え、労働環境の悪化やサービスの質の低下につながることが懸念されます。
介護サービスの質を維持し、高齢者が安心して暮らせる社会を築くには、早急な人材確保と労働環境の改善が不可欠です。国や自治体、介護事業者などが連携し、一体となって対策に取り組む必要があります。
介護業界の有効求人倍率と離職率のデータ
介護業界の有効求人倍率は他業種と比べて非常に高く、慢性的な人材不足が続いています。介護業界の有効求人倍率と離職率のデータは、以下のとおりです。
介護業界の有効求人倍率と他業界の比較(令和5年時点のデータ)
介護分野 | 3.71倍 |
全業種平均 | 1.16倍 |

画像引用元:第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の将来推計について(厚生労働省)
全業種との比較からも明らかなように、介護分野の有効求人倍率は全業種平均を大きく上回り、極めて深刻な人手不足であるといえます。
次に、介護職員の離職率について解説します。
介護職員の離職率(令和3年度のデータ)
介護職員の離職率 | 14.3% |
全業種平均 | 13.9% |

画像引用元:第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の将来推計について(厚生労働省)
平成19年(2007年)には21.6%と離職率は非常に高かったのですが、近年は全業種平均と変わらないぐらいまで低下しています。
以上の状況から、離職率は低下しているものの、有効求人倍率は依然として高止まりしているため、今後も人材不足は続くでしょう。
介護人材不足が深刻化する5つの主な原因
介護業界の人材不足は、日本社会が抱える大きな課題の一つです。ここでは、介護人材不足が深刻化する5つの主な原因を解説します。
- 少子高齢化による労働人口の減少
- 介護業界特有の労働環境と処遇に課題がある
- 給与水準と社会的評価が低い
- 人間関係のトラブルや精神的負担がある
- デジタル化の遅れによる非効率な業務
少子高齢化による労働人口の減少
労働人口の減少は、介護業界の人材不足を引き起こしている最大の原因です。人手不足の傾向は年々顕著になっており、介護業界の人手不足が改善される見込みは立っていません。

画像引用元:少子高齢化で労働力人口は4割減(みずほ総合研究所)
主な影響
- 労働人口の減少で介護人材の採用自体が困難になる
- 要介護者数の増加で今後も介護への需要が拡大していく
- 働き手の高齢化による世代交代が遅れる
この問題は、介護業界に限らず多くの産業で共通する課題です。少子高齢化が進む日本では、働き手となる若年層が減り、高齢者が増え続けています。そのため、介護サービスを必要とする人は増える一方、働き手は減り続ける状況になっています。
介護業界特有の労働環境と処遇に課題がある
介護職は、身体的・精神的負担が大きいため、労働環境が厳しい職種とされています。具体的な課題には次のものが挙げられます。
具体的な課題
- 長時間労働と不規則な勤務体系が負担になっている
- 介助作業の身体的負担が大きい
- 職場内でのサポート体制が不足している
介護の仕事では、利用者の身の回りのお世話や介助など、体力を使う場面が多くあります。また、夜勤や早朝勤務など、不規則な勤務体系になりがちです。
このような労働環境の厳しさが、人材不足の一因となっています。処遇の改善が進まない限り、新たな人材の確保や現場定着は難しいでしょう。
給与水準と社会的評価が低い
介護職は責任が重い仕事でありながら、他業種と比較して給与が低い傾向にあります。全業種と介護職の給与水準は次のとおりです。
給与水準の課題(令和5年のデータ)
介護職の平均月収 | 約27.7万円(平成27年:約24.6万円) |
全業種の平均月収 | 約34.6万円(平成27年:約33.3万円) |
参照元:
10年前と比較すれば、全業種と比較して賃金の上昇幅は大きいものの、まだまだ給与水準は低いと言わざるを得ません。
また、介護職は仕事の大変さが十分に理解されておらず、社会的な評価が低い傾向にあります。たとえば、介護の仕事が「誰でもできる仕事」と誤解されたり、「3K(きつい、汚い、危険)」のイメージが先行したりすることがあります。
このように、低い給与水準と社会的な評価の低さが相まって、介護人材不足に拍車をかけています。
人間関係のトラブルで精神的負担がある
介護現場では、人間関係のトラブルによる精神的な負担が離職の大きな要因となっています。公益財団法人 介護労働安定センターの調査によると、介護関係の仕事を辞めた理由として、次の結果が出ています。
介護関係の仕事を辞めた理由
1位 | 「職場の人間関係に問題があったため」(34.3%) |
2位 | 「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」(26.3%) |
3位 | 「他に良い仕事・職場があったため」(19.9%) |

離職理由の約1/3が「職場の人間関係に問題があったため」となっています。具体的な理由は次のとおりです。
- 「上司の思いやりのない言動、きつい指導、パワハラなどがあった」(49.3%)
- 「上司の管理能力が低い、業務指示が不明確、リーダーシップがなく信頼できなかった」(43.2%)
- 「同僚の言動(きつい言い方・悪口・嫌み・嫌がらせなど)でストレスがあった」(38.8%)
これらの結果から、人間関係のトラブルによる精神的負担が離職につながり、介護人材不足が深刻化する要因になっています。そのため、精神的負担を軽減するためのケア体制の充実は欠かせません。
参照元:令和5年度「介護労働実態調査」(公益財団法人介護労働安定センター)
デジタル化の遅れによる非効率な業務
介護業界では、利用者のケア記録や勤怠管理などの書類業務が依然として手作業で行われることが多く、効率化が進んでいません。介護業界が抱えるデジタル化の遅れによる課題は次のとおりです。
■現状の課題
- 業務記録を手作業で記載しているため、効率が悪い
- 口頭や紙での申し送りが中心のため、情報伝達の遅れや伝達漏れが発生しやすい
- ケア以外の間接業務(記録、会議、書類作成など)が多く、職員の負担が大きい
これらの課題は、職員の負担を増加させるだけでなく、サービスの質の低下にもつながりかねません。
たとえば、記録作業に時間がかかりすぎると、利用者と向き合う時間が減ってしまいます。また、情報伝達がスムーズにいかないと、利用者の変化に気づくのが遅れたり、適切なケアを提供できなかったりする可能性もあります。
その結果、職員のモチベーション低下や離職につながることも考えられ、人材不足をさらに深刻化させる要因となるでしょう。
介護業界の人材不足を解消する具体的な対策
介護業界の人材不足を解決するには、業界全体で包括的な取り組みを進める必要があります。ここでは、4つの対策を解説します。
- IT・システム導入による業務効率化を推進する
- 職場環境と処遇を改善する
- 採用手法の見直しや人材確保を工夫する
- 外国人介護人材の受け入れ体制を整備する
IT・システム導入による業務効率化を推進する
介護現場の業務にITシステムを導入すれば、業務が自動化され、職員の負担軽減や生産性の向上が期待できます。有効な取り組みとして、次のものが挙げられます。
- ケア記録をデジタル化し、記入作業を短縮する
- 見守りセンサーを活用し、夜勤の負担を軽減する
- AIを活用し、業務スケジュールを最適化する
たとえば、ケア記録をタブレット端末などで行うようにすれば、手書きの記録作業を大幅に減らせます。また、見守りセンサーを導入すれば、夜間の巡回業務の負担を軽減できます。
ITやシステムを積極的に活用することで、職員の負担を減らし、働きやすい環境をつくることができるでしょう。
職場環境と処遇を改善する
働きやすい職場をつくることは、職員の定着率を高めるための最も基本的な取り組みです。特に、賃金や福利厚生の改善は必要不可欠といえます。職場環境と処遇の改善には、次のような対策が有効です。
- 基本給や手当を増額する
- 年間休日を増やし、有給取得を推進する
- メンタルヘルスケアを導入する
- キャリアパスを明確化し、研修制度を充実させる
- 働き方に柔軟性をもたせる(時短勤務、フレックスタイム制の導入など)
たとえば、資格取得支援制度を導入し、資格取得にかかる費用を補助したり、資格手当を支給したりすることで、職員のスキルアップと給与アップを同時に実現できます。また、子育て中の職員のために、事業所内保育所を設置したり、短時間勤務制度を導入したりすることも、働きやすい環境づくりにつながります。
これらの多角的な取り組みを通じて、職員が仕事にやりがいを感じ、長く安心して働き続けられる環境を整備することが、人材不足解消への近道となるでしょう。
採用手法の見直しや人材確保を工夫する
採用の方法を見直し、多様な人材が応募しやすい環境を整えることも重要です。また、介護業界の魅力を発信する取り組みも求められます。具体的な取り組みには次のものが挙げられます。
- オンライン採用の説明会を実施する
- 女性やシニア層向け求人を強化する
- 職場体験イベントを開催する
- SNSを活用した情報発信を積極的に行う
- リファラル採用(職員紹介制度)を導入する
採用プロセスを工夫し、多様な働き手を積極的に受け入れる体制を築くことが大切です。
たとえば、オンラインで説明会を開催すれば、遠方に住んでいる人でも参加しやすくなります。また、職場体験イベントを開催すれば、仕事のイメージをつかんでもらいやすくなり、応募へのハードルを下げられます。
このように従来の対面型の採用手法だけにこだわらず、オンラインツールやSNSなどを積極的に活用することで、より幅広い層にアプローチできるでしょう。
外国人介護人材の受け入れ体制を整備する
外国人介護人材の受け入れは、介護業界の人材不足を解消する有効な手段です。外国人介護人材が介護現場で活躍できる環境を用意することで、人材不足を補えます。
外国人介護人材を受け入れる際の主なポイントは次のとおりです。
多様な在留資格を理解する | 「技能実習」、「特定技能」、「介護」、「特定活動(EPA)」など、外国人が介護職として働くための在留資格は複数存在します。それぞれの制度の趣旨や条件を理解し、適切に活用することが重要です。 |
日本語学習を支援する | 介護現場では、利用者とのコミュニケーションが非常に重要です。そのため、外国人介護職員に対して、定期的な日本語教育プログラムを提供し、実務に必要な語彙や表現を学ぶ機会を設けることが大切です。 |
日本文化を理解させる | 異なる文化背景を持つ人々が共に働くことで生じる摩擦を減らし、職場の和を保つために、日本文化を理解するための研修などを定期的に開催することが効果的です。 |
メンタルヘルスケアを行う | 定期的なカウンセリングや相談窓口の設置、リラックスできる環境づくりなど、精神的なサポート体制を整えることが求められます。 |
これらの取り組みを通じて、外国人介護人材が安心して長く働き続けられる環境を整備することが、介護業界の人材不足解消に向けた重要な一歩となります。
ただし、外国人介護人材の受け入れを行ったことがない場合、何から手を付けたら良いのかわからないでしょう。そこでご活用いただきたいのが、明光グローバルの「特定技能人材紹介サービス」です。
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最後に、明光グローバルのサービス概要と特定技能人材紹介サービスを紹介します。
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明光グローバルの主要サービスは、次のとおりです。
明光グローバルの主要サービス
事業 | サービス |
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事業 | サービス |
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これらの特徴により、明光グローバルは、企業様の特定技能人材採用を成功に導くための強力なパートナーとなることができます。
まとめ
介護業界の人材不足の現状と介護人材が不足する原因、対策について詳しく解説しました。
少子高齢化が進む日本において、介護業界の人材不足は極めて深刻な状況です。2025年問題や高い有効求人倍率、離職率などのデータからも、その深刻さが浮き彫りになっています。
しかし、IT化の推進、職場環境の改善、外国人材の受け入れなど、さまざまな対策を講じることで、人材不足の解消に向けた確かな成果を上げている事例もあります。
特に外国人材の活用は、今後の介護業界を支える上で、大きな可能性を秘めています。制度を適切に理解し、受け入れ体制を整備することで、外国人材は介護現場の貴重な戦力となり得るでしょう。
外国人材の採用には、在留資格の手続きや生活支援など、専門的な知識やノウハウが必要です。明光グローバルは、明光グループの長年の教育実績を活かし、特定技能人材の採用から定着までをワンストップでサポートいたします。介護人材不足にお悩みの企業様は、ぜひ「明光グローバル」までお気軽にご相談ください。