「特定技能2号を取得する方法は?」「どのような準備が必要なのか?」このような疑問をお持ちの企業の方は多いことでしょう。
建設分野の特定技能2号は、班長として作業員を指導しながら工程管理ができる熟練技能者に与えられる在留資格です。継続して在留できる期間の制限がなく、家族の帯同も可能であるため、長期的なキャリア形成を目指す外国人材にとって魅力的な制度です。
一方で、高度な技能試験への合格や実務経験の要件など、取得へのハードルは高く設定されています。今回は、特定技能2号の概要から取得要件、メリット・デメリット、そして試験対策まで、実務的な観点から詳しく解説します。企業の人材育成計画や外国人材のキャリアアップにお役立てください。
建設分野における特定技能2号とは
建設分野における特定技能2号は、熟練した技能を持つ外国人材に認められる在留資格です。日本の建設現場で培った経験を活かし、複数の作業員を指導しながら工程管理ができるリーダー的存在となることが期待されています。
土木、建築、ライフライン・設備という3つの業務区分があり、それぞれの分野で専門的なスキルが問われます。ここでは、特定技能2号の基本情報と必要な要件について解説します。
特定技能2号「建設」の基本情報
建設分野の特定技能2号は、2019年4月に新設された制度で、現場のリーダーとして活躍できる外国人材に与えられる在留資格です。
国内の建設業界では深刻な人手不足が続いており、とりわけ経験豊富な技能者の確保が課題となっています。この制度では、建設現場で複数の作業員を指導しながら工程管理ができる班長レベルの実務経験が必要です。一般の作業員として働く特定技能1号とは異なり、現場の取り仕切りや部下の育成まで任される立場となります。
また、継続して在留できる期間に上限がなく、配偶者や子どもの帯同も認められるため、長期的なキャリア形成が可能です。なお、土木・建築、ライフライン・設備分野等の幅広い建設業に従事することができます。
ただし、2024年6月時点では全国に66人しか在籍しておらず、まだまだ人数は足りていない状況です。
参照元:【第1表】国籍・地域別 特定産業分野別 特定技能2号在留外国人数(出入国在留管理庁)
特定技能1号との主な違い
特定技能1号と特定技能2号では、技能水準と在留条件に大きな違いがあります。特定技能1号は指導者の下で作業に従事する技能者レベルですが、特定技能2号は複数の作業員を指導し工程管理まで担うリーダー的な存在です。
具体的な違いをまとめると以下の表のようになります。
項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
---|---|---|
在留期間 | 通算5年まで | 更新制限なし(更新手続きは必要) |
家族帯同 | 不可 | 配偶者・子の帯同可 |
技能水準 | 相当程度の知識・経験 | 熟練した技能 |
義務的支援 | 必須 | 不要 |
実務経験 | 不要 | 班長として0.5~3年必要 ※分野ごとに条件は異なる |
日本語試験 | 必要 | 試験等での確認は不要 |
参照元:建設分野の2号特定技能外国人に求める「建設現場において複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者(班長)としての実務経験」について(国土交通省)
特定技能2号では、在留期間の更新に制限がなく家族の帯同も認められています。そのため、長期的な視点で日本での就労とキャリアアップが可能です。また、特定技能1号で必須だった日本語試験や支援計画の策定も不要となります。
ただし、班長としての実務経験や、より高度な技能試験への合格が求められます。
※参照元
取得するために必要な要件
建設分野の特定技能2号を取得するには、技能試験の合格と実務経験の両方が求められます。取得するために必要な主な要件は次のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
技能試験 | 以下のいずれかに合格 ・建設分野特定技能2号評価試験 ・技能検定1級または単一等級 |
実務経験 | ・班長として0.5~3年の実務経験が必要 ※職種によって必要な経験年数は異なります ・建設キャリアアップシステムのレベル3で代替可 |
建設キャリアアップシステムとは、技能者の資格、経験、就業履歴を統一的に記録・管理するシステムのことです。レベル3を獲得できれば、実務経験が短くても代替可能になります。
※参照元:特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領(国土交通省)
特定技能2号(建設分野)のメリット
建設分野の特定技能2号には、外国人材と受入れ企業の双方にとって大きなメリットがあります。
受入れ企業側は熟練した技能と豊富な経験を持つ人材を継続的に活用でき、現場のリーダーとして期待できます。特定技能1号とは異なり、在留期間に上限がなく、家族の帯同も認められるため、外国人材は長期的なキャリアプランを描けます。
具体的にどのようなメリットがあるのか、受入れ企業側と外国人材側のそれぞれの視点で解説します。
受入れ企業側
受入れ企業側にとって、特定技能2号外国人の採用は人材確保の有効な手段となります。班長として現場をまとめられる熟練技能者を長期的に雇用できるため、技能の継承や後進の指導にも期待が持てます。主なメリットは、次の3つです。
メリット | 内容 |
---|---|
支援負担の軽減 | 特定技能1号で必須だった支援計画の策定や生活支援などの義務が不要 |
長期的な人材活用 | 在留期間の制限がないため、教育投資の効果を最大限に活かせる |
経営事項審査で加点 | 建設キャリアアップシステムのレベル3相当の技能者として評価され、公共工事の入札でも有利になる |
参照元:経営事項審査における建設キャリアアップシステムに係る加点(国土交通省)
特に深刻な人手不足に直面している建設業界では、即戦力となる熟練技能者を安定的に確保できる貴重な制度といえるでしょう。
※参照元:【CCUSポータル】 公共工事におけるインセンティブ(国土交通省)
外国人材側
特定技能2号は、外国人材にとって長期的なキャリア形成を実現できる、魅力的な在留資格です。特定技能1号とは異なり、日本での長期的な就労が可能となるため、安定した生活基盤を築くことができます。主なメリットは次の4つです。
メリット | 内容 |
---|---|
長期滞在が可能 | 通算在留期間に制限がないため、継続的な就労が可能 ※ただし、在留期間の更新手続きは必要です |
家族との生活 | 配偶者と子どもの帯同が認められ、日本で一緒に生活できる |
キャリアアップ | 班長としての経験を活かし、より高度な技能と責任ある立場を目指せる |
永住許可の可能性 | 一定期間の在留後、永住許可申請をすることができる |
特定技能2号を取得することで、日本での長期的な生活設計が可能になり、より充実したキャリアを築くことができます。また、家族と共に日本で暮らせることは、仕事へのモチベーション向上にもつながります。
特定技能2号(建設分野)のデメリット
建設分野の特定技能2号には多くのメリットがある一方で、受入れ企業側と外国人材側のそれぞれに課題もあります。
特に、高度な技能試験への合格や実務経験の要件など、取得のハードルは決して低くありません。また、制度が比較的新しいため、運用面での不安要素も残されています。
ここでは、受入れ企業側と外国人材側が直面する具体的なデメリットについて解説します。
受入れ企業側
受入れ企業側にとって、特定技能2号の活用には次のようなデメリットがあります。
デメリット | 内容 |
---|---|
人材育成の負担 | ・高度な技能を維持・向上させるための育成プログラムの整備 ・班長として必要なマネジメント能力の教育 ・日本語でのコミュニケーション能力の向上支援 |
試験対策の支援 | ・合格率が低い技能試験への対策支援 ・受験費用や教材費などの負担 ・試験勉強のための時間確保 |
受入れ体制の整備 | ・班長として活躍できる環境づくり ・家族を含めた受入れ態勢の整備 ・長期雇用を前提とした人事制度の見直し |
これらのデメリットに対応するには、企業側の十分な準備と投資が必要です。ただし、長期的な視点で見れば、熟練技能者の確保・育成につながる重要な投資といえるでしょう。
外国人材側
特定技能2号の取得を目指す外国人材には、次のような課題があります。
デメリット | 内容 |
---|---|
高いハードル | ・難関試験への合格が必要 ・班長としての実務経験(0.5~3年)の積み上げ ※職種によって必要な経験年数は異なります ・複数の作業員を指導できる技能レベルの習得 |
求められる能力 | ・日本語での的確な指示出しやコミュニケーション力 ・工程管理や安全管理などのマネジメント能力 ・後輩の指導・育成に必要なリーダーシップ |
生活面での負担 | ・家族を呼び寄せる場合の経済的負担 ・子どもの教育環境の整備 ・長期滞在に向けた生活基盤づくり |
これらのデメリットを乗り越えるには、相当な努力と時間が必要です。しかし、キャリアアップと安定した生活を実現するためには、避けては通れない道といえるでしょう。
建設分野の業務区分ごとの業務内容と求められる能力
建設分野の特定技能2号は、建設業全体を網羅する「土木」「建築」「ライフライン・設備」の3つの業務区分で構成されています。いずれの区分でも、複数の作業員を指導しながら工程を管理する立場として、高度な専門知識と技能が必要です。
たとえば、型枠施工や鉄筋施工といった基本的な作業はもちろん、工程管理や品質管理、安全管理なども求められます。ここでは、各業務区分でどういった業務内容が含まれ、どういった能力が必要とされるのか解説します。
※参照元:特定技能2号の各分野の仕事内容(出入国在留管理庁)
土木区分の業務範囲と必要なスキル
土木区分では、土木施設の建設や維持管理に関わる幅広い作業の指導と、工程管理を行います。現場のリーダーとして、複数の作業員を指導しながら工事全体の進行を管理することが求められます。
主な業務内容は次のとおりです。
業務項目 | 業務内容 |
---|---|
基本作業の指導・管理 | ・型枠の製作、加工、組立 ・コンクリートの圧送作業 ・土工事や鉄筋施工作業 ・とび作業や海洋土木工事 |
工程管理に必要な業務 | ・工事の進捗管理と調整 ・品質・安全管理の徹底 ・原材料や機材の手配 ・作業員の配置と指導 |
各作業の専門知識や技能はもちろん、工程表の作成や予算管理、安全管理など、現場監督者としての総合的なマネジメント能力が求められます。また、複数の作業員への的確な指示出しができる日本語コミュニケーション能力も必須です。
建築区分の業務範囲と必要なスキル
建築区分では、建物の建設から内装工事まで、建築物に関わる幅広い工事の指導と工程管理を担います。複数の職種の作業員と連携しながら、建築現場全体の円滑な進行を図ることが求められます。
主な業務内容は次のとおりです。
業務項目 | 業務内容 |
---|---|
基本的な建築作業の指導 | ・型枠の施工管理 ・左官工事の技術指導 ・内装仕上げの品質管理 ・鉄筋工事の工程管理 |
プロジェクト管理業務 | ・工程表の作成と進捗管理 ・各職種間の作業調整 ・資材の発注と管理 ・安全衛生管理の徹底 |
建築の専門知識と実務経験に加え、図面の読解力や施工計画の立案能力が重要です。また、さまざまな職種の作業員をまとめ上げるためのリーダーシップと、建築現場特有の専門用語を含む日本語でのコミュニケーション能力も欠かせません。
ライフライン・設備区分の業務範囲と必要なスキル
ライフライン・設備区分では、電気、ガス、水道など、私たちの生活に欠かせない設備の施工管理を担います。各種設備の専門性が高く、技術的な指導力と安全管理の両面が特に重視される分野です。
主な業務内容は次のとおりです。
業務項目 | 業務内容 |
---|---|
設備工事の指導と管理 | ・配管設備の施工指導 ・電気通信設備の設置管理 ・空調設備の保温保冷作業 ・建築板金の施工管理 |
現場監督者としての業務 | ・施工図面の作成と確認 ・設備機器の選定と発注 ・法令に基づく安全管理 ・施工品質の検査と確認 |
各設備の専門知識と施工技術はもちろん、関連法規の理解や品質基準の知識も重要です。また、設計図面の読解力や、他業種との調整に必要なコミュニケーション能力、緊急時の対応力も求められます。
建設分野における特定技能2号の試験内容・合格率
建設分野の特定技能2号評価試験は、高度な技能と実務能力を測る難関試験です。学科と実技の両方で75%以上の得点が必要で、リーダーとしての実践的な判断力が問われます。全国各地で定期的に実施されていますが、合格率は業務区分によって大きく異なるのが特徴です。
ここでは、具体的な試験内容と各区分の合格率について解説します。
試験内容(科目・試験時間など)
建設分野の特定技能2号評価試験は、学科と実技の2つの試験で構成されています。いずれもCBT(コンピュータ・ベースド・テスティング)方式で実施され、特定技能1号と比べてより高度な知識と判断力が問われます。
試験の構成と内容は次のとおりです。
試験種別 | 業務内容 |
---|---|
学科試験 | ・問題数:40問 ・試験時間:60分 ・出題形式:4択式 ・合格基準:75%以上(30問以上正解) ・出題内容:施工管理や安全管理、職長としての実務知識など |
実技試験 | ・問題数:25問 ・試験時間:40分 ・出題形式:4択式 ・合格基準:75%以上(19問以上正解) ・出題内容:現場での具体的な判断力や作業手順の理解度など |
試験は全国の主要都市で定期的に実施され、受験者は希望する会場と日程を選べます。
試験の合格率
業務区分や実施時期によって差があるものの、特定技能2号試験の合格率は低い傾向にあります。以下は、2024年9月時点での試験結果です(建設技能人材機構発表)。
各区分の合格率(2024年の日本で行われた試験結果より引用)
試験種別 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
土木区分 | 1,277 | 202 | 15.8% |
建築区分 | 1,646 | 260 | 15.8% |
ライフライン・設備区分 | 285 | 40 | 14.0% |
建築区分の受験者が最も多く、次いで土木区分となっています。一方、ライフライン・設備区分は受験者が少ないため、合格率の変動が大きくなります。なお、海外でも受験できますが、受験者数が極端に低く、ほとんどが日本国内での受験となっています。
参照元:試験結果(建設技能人材機構)
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まとめ
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