近年、少子高齢化の影響で、さまざまな業界・業種で人材難が発生しています。中でも、深刻な人手不足に陥っているのがビルクリーニング分野であり、安定的な人材確保に向けて特定技能人材が積極的に採用されています。
今回は、特定技能制度におけるビルクリーニング分野の概要や、在留資格の取得要件、特定技能人材が従事できる業務内容などについて解説します。ビルクリーニング分野で特定技能人材の採用を検討している企業の経営者や人事担当者の方はぜひ参考にしてみてください。
特定技能制度とは
特定技能制度は、人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野(以降「特定産業分野」)で、一定の専門性・技能を有する外国人材を受け入れていくために創設された在留資格制度です。
特定技能の在留資格を取得して、日本企業で働く外国人材のことを一般的に「特定技能人材」と呼びます。2019年度の創設以降、日本企業に勤める特定技能人材の総数は年々増加傾向にあります。2024年12月現在、日本に在留する特定技能人材の総数は284,466名です。
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特定技能1号・特定技能2号の概要
特定技能の在留資格には、「特定技能1号」「特定技能2号」の2種類があります。
- 特定技能1号:特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動を行う在留資格
- 特定技能2号:特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動を行う在留資格
特定技能1号の場合は最長5年まで、特定技能2号の場合は在留資格の更新を行うことで上限なく日本に在留することが可能です。技能実習生などと比較して在留期間が長いこともあり、安定的かつ長期的な人材確保を目的に特定技能人材を採用している企業も多いです。
特定技能2号は、特定技能1号よりも高度な技能試験に合格する必要があるほか、一定の実務経験が求められるため、在留資格を取得する難易度が高いです。制度運用から年数が経っていないため、現時点では特定技能2号の在留資格で在留する外国人材数は少なくなっています。そのため、特定技能1号の外国人材を採用したうえ、特定技能2号にステップアップしてもらうのが一般的です。
登録支援機関の概要
登録支援機関とは、受入れ機関のかわりに特定技能1号の外国人材への義務的支援の提供や在留資格関連の届出・手続きなどを支援する機関です。
特定技能1号の外国人材を受け入れる場合、企業は1号特定技能外国人支援計画を作成の上、義務的支援を提供する必要があります。義務的支援には、次のような項目が挙げられます。
- 事前ガイダンス
- 出入国の際の送迎
- 住宅の確保・生活に必要な契約関係のサポート
- 生活オリエンテーション
- 公的手続等への同行
- 日本語教育・学習機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- (受入れ側の都合で雇用契約を解除する場合)転職の支援
- 定期的な面談・行政機関への通報
これらの支援を自社だけで実施するのは、外国人支援に関する知見・ノウハウや人的リソースの面からハードルが高いです。そのため、はじめて外国人材を受け入れる企業を中心に、登録支援機関を活用することが一般的となっています。
参照元:1号特定技能外国人支援・登録支援機関について(出入国在留管理庁)
特定技能「ビルクリーニング」分野の概要
特定技能人材を採用できる特定産業分野の一つにビルクリーニング分野があります。ビルクリーニング分野とは、住宅を除く多数の利用者が利用する建築物の内部の清掃に携わる分野を指します。
ビルクリーニング分野では、特定技能1号・特定技能2号の在留資格を設置しています。2024年12月現在、ビルクリーニング分野で働く特定技能1号の外国人材は6,140名、特定技能2号の外国人材は3名です。制度の創設から年数が浅いため、特定技能2号の外国人材の総数が少ない状況です。
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ビルクリーニング分野で特定技能人材が積極的に受け入れられている背景
ビルクリーニング分野で特定技能人材が受け入れられている背景には、深刻な人材不足があります。
厚生労働省の調査によると、ビルクリーニング分野では、2028年時点で105万2,000人程度の人材が必要になると推計されています。これに対して、ビルクリーニングに携わる清掃員などの求人に対する求職者数は年々減少傾向にあり、全国的に人材確保が困難な状況となっています。国内人材確保の取り組みや生産性の向上などの施策を行ったとしても、2028年時点で9万8,000人程度の人材が不足することが見込まれています。
このような人材難の状況を解消するために、ビルクリーニング分野では積極的に特定技能人材の受入れが推進されています。2024年度から2028年度までの5年間で、最大3万7,000人の特定技能人材が受けられる予定となっています。
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特定技能「ビルクリーニング」で従事できる業務
ビルクリーニング分野の特定技能人材はどのような業務に従事することができるのでしょうか?ビルクリーニング分野の特定技能人材が従事可能な業務は下の表のとおりです。
主な業務に加えて、その業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務にも付随的に従事することが可能です。ただし、関連業務のみに従事することはできません。
項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
---|---|---|
概要 | 建築物内部の清掃 | 建築物内部の清掃に、複数の作業員を指導しながら従事し、現場を管理する業務および同業務の計画作成、進行管理その他のマネジメント業務 |
従事する主な業務 | ・多数の利用者が利用する建築物(住宅を除く)の内部を対象に、衛生的環境の保護、美観の維持、安全の確保及び保全の向上を目的として、場所、部位、建材、汚れ等の違いに対し、方法、洗剤及び用具を適切に選択して清掃作業を行い、建築物に存在する環境上の物質を排除し、清潔さを維持する業務(床、浴室、トイレ、洗面台等の清掃からアメニティ補充やベッドメイク作業など、衛生かつ美観が整えられた客室を商品として納品するために必要な一連の業務である客室清掃業務は主な業務に含まれる) | ・多数の利用者が利用する建築物(住宅を除く)の内部を対象に、衛生的環境の保護、美観の維持、安全の確保及び保全の向上を目的として、場所、部位、建材、汚れ等の違いに対し、方法、洗剤及び用具を適切に選択して清掃作業を行い、建築物に存在する環境上の汚染物質を排除し、清潔さを維持する業務に、複数の作業員を指導しながら従事し、現場を管理する業務のほか、同業務の計画作成、進行管理その他のマネジメント業務 |
想定される関連業務 | ・複数の作業員の指導、現場の管理、計画作成や進行管理等 ・清掃用機械器具の維持管理等に関する業務、技能実習責任者の業務、技能実習指導員の業務や、生活指導員の業務(それぞれ主たる業務に該当するものを除く) ・建築物と構造上一体と見なせる部分(犬走・アプローチ等の外周部など)の清掃作業 ・資機材倉庫の整備作業 ・建物外部洗浄作業(外壁、屋上等。ただし高所作業を伴う窓ガラス・外壁清掃作業は除く) ・ベッドメイク作業 ・建築物内外の植裁管理作業(灌水作業等) ・資機材の運搬作業(他の現場に移動する場合等) | ・建築物清掃業及び建築物環境衛生総合管理業の人的要件である清掃作業監督者の業務 ・特定技能1号の「想定される関連業務」に、複数の作業員を指導しながら従事し、現場を管理する業務及び同業務の計画作成、進行管理その他のマネジメント業務(ただし、主たる業務とともに実施している場合に限る) |
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特定技能「ビルクリーニング」を取得するための要件
外国人材がビルクリーニング分野の特定技能人材になるには、日本語試験・技能試験・一定の実務経験などの取得要件を満たす必要があります。
特定技能1号の在留資格を取得する場合、日本語試験と技能試験への合格が必要です。ただし、技能実習2号を良好に修了した場合は試験免除となります。特定技能2号の在留資格を取得する場合、特定技能1号よりも難易度の高い技能試験への合格に加えて、一定の実務経験が必要です。
日本語試験・技能試験ともに、合格するためには十分な試験対策が必要となります。現在雇用している外国人材に特定技能1号・特定技能2号の在留資格を取得してもらいたいと考えている場合には、計画的に試験対策を進めるようにしましょう。
ここでは、外国人材がビルクリーニング分野の特定技能人材になるための要件について詳しく解説します。
- 日本語試験
- 技能試験
- 一定の実務経験
参照元:特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領 -ビルクリーニング分野の基準について(法務省・厚生労働省)
日本語試験
ビルクリーニング分野で特定技能1号の在留資格を取得するためには、日本語能力試験(以降「JLPT」)でN4以上の試験に合格するか、国際交流基金日本語基礎テスト(以降「JFT-Basic」)で判定基準点以上を取得する必要があります。前述のとおり、技能実習2号を良好に修了した場合は試験免除となります。
特定技能2号の在留資格を取得する際には、日本語試験に関する要件は課されません。ただし、技能試験はJLPT N2相当の日本語で書かれているため、合格には継続的な日本語能力の向上が必要です。
技能試験
ビルクリーニング分野で特定技能1号の在留資格を取得するためには、ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験への合格が必要です。日本語試験と同様に、技能実習2号を良好に修了した場合は試験免除となります。
特定技能2号の在留資格を取得するためには、ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験もしくは技能検定1級(ビルクリーニング)に合格する必要があります。どちらの技能試験も同程度の難易度ではありますが、技能検定の受験には実務年数や各種資格の取得有無などが問われます。
具体的には、技能検定1級(ビルクリーニング)の場合、最長で5年の実務年数が必要です。そのため、基本的にはビルクリーニング分野特定技能2号評価試験を受験する外国人材が多数を占めます。
一定の実務経験
ビルクリーニング分野で特定技能2号の在留資格を取得するためには、複数の作業員を指導しながら従事し、現場を管理する者として特定の建築物内部の清掃に携わった実務経験を2年以上有することが必要です。
「特定の建築物」とは、住宅を除く建築物のうち、次のものと定義されています。
- 建築物衛生法第2条第1項に規定する特定建築物の建築物内部の清掃
(建築物衛生法第2条第1項に規定する特定建築物とは、延べ面積が原則、3,000平方メートル以上の建築物で、興行場、百貨店、店舗、事務所、学校など、不特定多数の人が利用する施設)
「現場を管理する者としての実務経験」とは、作業管理・労務管理・安全衛生管理などの業務に従事している経験であり、具体的にはビルクリーニング分野特定技能協議会(以降「協議会」)で定める経験を指します。詳しくは協議会が発行している規定の内容を参照してください。
参照元:現場を管理する者としての実務経験の内容及びその確認方法等に関する規程(ビルクリーニング分野特定技能協議会決定第2号)
特定技能「ビルクリーニング」の外国人材を雇用する企業の要件
ビルクリーニング分野の特定技能人材を雇用するには、企業はどのような要件を満たす必要があるのでしょうか?まず、企業が特定技能人材を雇用するためには、共通要件として次のものを満たす必要があります。
- 雇用契約が適切であること:定技能人材の報酬の額や労働時間が日本人と同等以上など、運用要領の定めに従い適切な雇用契約が締結されていることが必要です。
- 受入れ機関自体が適切であること:法令遵守の状況や欠格事項に該当していないことなど、企業が受入れ機関として適切である必要があります。
- 外国人材を支援する計画が適切であること:特定技能1号の外国人材を採用する場合、「1号特定技能外国人支援計画」を作成することが求められます。
- 外国人材を支援する体制があること:特定技能1号の外国人材を採用する場合、「1号特定技能外国人支援計画」に沿って、継続的に支援を実施する体制があることが求められます。
ビルクリーニング分野では共通要件に加えて、独自の要件を設けています。ここでは、ビルクリーニング分野における特定技能人材を雇用するための要件について詳しく解説します。
- 知事登録を受けた営業所における直接雇用であること
- 協議会に加入すること
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知事登録を受けた営業所における直接雇用であること
特定技能人材を受け入れるためには、知事登録を受けた営業所で直接雇用することが必要です。
建築物衛生法では、都道府県知事の登録を受けることができる事業登録制度があります。特定技能人材を受け入れるには、この事業登録制度のうち、建築物清掃業1号または建築物環境衛生総合管理業8号の登録を受けた営業所で雇用しなければなりません。登録を受けるためには、人的基準・物的基準・その他の基準を満たす必要があります。詳しい内容は厚生労働省のホームページを参照してください。
知事登録の有効期限は6年間となっています。継続して特定技能人材を受け入れる場合には、登録を更新する必要があるため注意が必要です。
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協議会に加入すること
企業がビルクリーニング分野の特定技能人材を受け入れるためには、在留資格の申請手続きの前に協議会に加入する必要があります。
協議会は、構成員となる企業同士が相互に連絡や情報共有を行い、必要事項に関して適宜協議を行うことで、特定技能人材のスムーズな受入れや人手不足の解消を実現するために設置されている組織です。ビルクリーニング分野で特定技能人材を受け入れるためには、必ず協議会に加入しなければなりません。また、加入後は、協議会に対し、必要な協力を行うなどしなければなりません。
加入の際には、厚生労働省のホームページから入会申請が可能です。入会にあたって費用は発生しませんが、登録支援機関による手続きの代行が認められていないため、忘れずに対応するようにしましょう。
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特定技能「ビルクリーニング」の外国人材の採用・教育は明光グローバルにお任せください
特定技能人材の雇用は、ビルクリーニング分野の人手不足を解消するための有効な選択肢の一つです。一方、ビルクリーニング分野で特定技能1号・特定技能2号の在留資格を取得するには、日本語試験・技能試験などの試験への合格や一定の実務経験が必要となります。
明光グローバルは、特定技能人材の採用・教育・定着をワンストップでサポートしています。最後に、ビルクリーニング分野で特定技能人材の採用を検討している企業や、自社で雇用している外国人材に特定技能1号・特定技能2号を取得させたいと考えている企業の経営者・人事担当者の方に向けて、明光グローバルの各種サービスを紹介します。
明光グローバルとは
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明光グローバルの主要サービス
事業 | サービス |
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サポート内容 | 概要 |
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まとめ
ビルクリーニング分野の特定技能人材には、建物内部の清掃に関するさまざまな業務を任せることができます。外国人材がビルクリーニング分野の特定技能人材になるためには各種試験の合格などが必要であり、計画的な試験対策が必要です。
明光グローバルは特定技能人材を専門とした人材紹介事業や教育事業を行っています。登録支援機関としての職業生活・日常生活の支援に加えて、試験対策に必要な日本語能力を向上するなどの教育機会の提供も可能です。はじめての特定技能人材の採用や教育に関するお悩み・ご質問は、明光グローバルまでお気軽にお問い合わせください。