技能実習制度の廃止に伴い、育成就労制度が新設されることが決定しました。外国人材を受け入れている企業においては、「いつから育成就労制度が始まるのか」「いつから準備を進める必要があるのか」と不安に思われている方も多いのではないでしょうか?
今回は、育成就労制度の概要や、制度がいつから始まるのか、制度施行後の技能実習生の取り扱いなどについて解説します。育成就労制度について詳しく知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
育成就労制度とは
そもそも、育成就労制度とはどのような制度なのでしょうか?育成就労制度は、日本の人手不足を補うため、外国人材を労働力として育成・確保するために新設される制度です。
ここでは、育成就労制度の概要や目的、関連する技能実習制度や特定技能制度との関係について解説します。
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制度の概要
育成就労制度とは、日本で人手不足が深刻化している産業分野を対象に、外国人材を労働力として育成・確保するために創設される予定の制度です。これに伴い、開発途上国への技術移転による国際貢献を目的として運用されてきた技能実習制度が廃止されます。
制度の目的
育成就労制度の目的は、人手不足が深刻化している産業分野において、長期的に企業に貢献する人材を育成・確保することです。
育成就労人材は、3年間の就労を経て特定技能1号水準の技能を身につけ、特定技能人材へ移行することを目指します。このとき、スムーズに移行ができるよう、両制度の受け入れ対象分野や従事可能な業務の範囲は共通化される見込みです。
育成就労制度と特定技能制度が一続きの制度としてつながることで、外国人材は段階的に日本語能力や技能の水準を高めることができます。また、在留資格のレベルが上がるのに伴い在留期間が延びるため、外国人材が日本で長期的なキャリアを築くことが可能です。
近年、日本以外でも少子高齢化が進んできており、国際的な人材獲得競争が過熱しています。育成就労制度には、外国人にとって魅力的な制度を構築することで、日本が外国人から「選ばれる国」となり、適切に労働力を確保できるようにする狙いもあります。
在留資格 | 在留期間 | 日本語能力水準 | 技能水準 | |
育成就労 | 原則3年 | 原則JLPT※ N5レベルなど | 不要 (3年間の就労によって特定技能1号水準の技能を修得) | |
特定技能 | 特定技能1号 | 通算5年 | 原則JLPT N4レベル以上 | 各分野における特定技能1号評価試験合格以上 |
特定技能2号 | 上限なし | 原則JLPT N3レベル以上 | 各分野における特定技能2号評価試験合格以上 |
※:日本語能力試験(以降「JLPT」)とは、在留資格の取得要件に活用されている日本語能力を測定する公認試験です
※:育成就労制度の概要(出入国在留管理庁)・在留資格「特定技能」(出入国在留管理庁)をもとに作成
技能実習制度との関係性
育成就労制度の創設に伴い、技能実習制度は廃止されます。そのため、育成就労制度は技能実習制度の代わりに施行される制度といえます。
技能実習制度には、制度の目的と実態の乖離や、権利保護に関する問題があります。
- 技能実習制度の目的と実態が乖離している:技能実習制度は、開発途上国に技能を移転することで国際貢献をすることを目的に作られた制度です。一方で、運用実態としては、技能実習生を人手不足を補う労働力として扱っています。このように、制度の目的と運用の実態が乖離していることが問題視されています。
- 技能実習生の権利が十分に保護されていない:技能実習制度では、「やむを得ない事情」を除き、技能実習生の転籍が認められていません。これにより、受け入れ企業でのパワハラや超過労働などが多く発生し、実習生が失踪するなどの社会問題につながっています。
育成就労制度においては、運用実態に合わせて、制度の目的が人手不足の解消に置かれています。また、育成就労人材の転籍を認めるとともに、外国人材に対する支援・保護や、受け入れ企業などに対する監督・監視の機能が強化される見込みです。
このように、育成就労制度は、技能実習制度の問題点を解消し、外国人材にとってより魅力的な制度となるように改善される予定です。
特定技能制度との関係
育成就労制度と特定技能制度は、ともに人手不足の業界における人員の獲得を目的とすることで、外国人材がスムーズに日本でキャリアを築くことができるように調整されます。
育成就労制度のもとで来日する外国人材は、3年間の就労を経て、特定技能制度に移行することが期待されます。外国人材がスムーズに特定技能人材に移行できるよう、両制度の受け入れ分野や従事可能な業務の範囲などを原則一致させる予定となっています。
なお、これまでは技能実習生が技能実習2号を良好に修了した場合には、特定技能試験が免除されていました。一方で、育成就労制度の施行後、育成就労人材が特定技能人材に移行するには、他の外国人材と同様に日本語試験と技能試験に合格する必要があります。
これは、特定技能人材の持つ日本語能力やスキルを一定程度担保するためだと考えられます。従来の運用方法とは異なるため、頭に入れておくようにしましょう。
育成就労制度はいつから始まる?
育成就労制度はいつから始まるのでしょうか?育成就労制度はまだ施行前となっており、正確な施行日は未定です。一方で、施行予定日やマイルストーンについてはある程度示されています。ここでは、施行予定日と施行に向けたマイルストーンについて解説します。
施行予定日
育成就労制度の具体的な施行日は未定です。ただし、改正法の公布日である2024年6月21日から起算して3年以内に施行される予定となっています。そのため、育成就労制度は2027年内には施行される見込みです。
施行に向けたマイルストーン
育成就労制度が施行するまでのマイルストーンについてもある程度示されています。具体的には次のとおりです。
- 基本方針や法令などの作成:2024年から2025年上旬までを目途に作成完了予定
- 分野別運用方針の作成:2025年から2026年上旬までを目途に作成完了予定。ただし、育成就労産業分野や特定産業分野の設定については、必要に応じて改正法施行までの間にも行われる見込み
- 事前申請:2026年から2027年の制度施行日までを目途に、監理支援機関の許可などの事前申請が行われる見込み
- 送り出し国との交渉など:2027年の制度施行日までに協力覚書(MOC)の交渉・作成・署名などが適宜行われる見込み
※:色を塗った期間内に各項目を達成する予定
※:育成就労制度の概要(出入国在留管理庁)をもとに筆者作成
育成就労制度新設に伴う技能実習制度の取り扱い
育成就労制度の施行に伴い、技能実習制度は廃止されます。一方で、制度の移行に伴い、一定の経過措置が行われる予定です。ここでは、育成就労制度新設に伴う技能実習生の取り扱いを中心に解説します。
いつまで技能実習生を受け入れられる?
育成就労制度施行後の技能実習生の受け入れ可否については、ケースによって異なります。
基本的には、制度が施行されてからは技能実習生を受け入れることはできません。ただし、制度施行日までにすでに技能実習を行っている場合や、制度施行日までに技能実習計画の認定申請がされていて、施行日から3ヶ月以内に技能実習が開始される場合には、技能実習を行うことが可能です。具体的には次のとおりです。
ケース | 技能実習の可否 |
---|---|
制度施行日時点で、すでに技能実習を行っている場合 | 引き続き技能実習を行うことが可能(ただし、技能実習2号から3号への移行については一定範囲の者に限る) |
制度施行日までに技能実習計画の認定申請がされていて、施行日から3か月以内に技能実習が開始される場合 | 技能実習を行うことが可能(ただし、技能実習2号から3号への移行については一定範囲の者に限る) |
制度施行日までに技能実習計画の認定申請がなされなかった場合、または施行日から3か月以内に技能実習が開始されない場合 | 技能実習生を受け入れることはできない |
※:育成就労制度の概要(出入国在留管理庁)をもとに作成
技能実習生が育成就労人材に移行することはできる?
技能実習生として受け入れている外国人材は、制度の移行に伴って育成就労人材になることができるのでしょうか?
残念ながら、原則として技能実習生がそのまま育成就労人材に移行することはできません。技能実習生には、技能実習制度のルールが適用されるためです。ただし、技能実習を行っていた期間や職種によっては、育成就労人材として再度入国できる場合があります。こちらについても、詳細なルールは未定です。
施行日前に技能実習を終えて出国した技能実習生の取り扱いはどうなる?
育成就労制度が施行される前に、技能実習生が技能実習を終えて出国している場合には、あらためて技能実習生として入国することはできません。そのため、再度入国したい場合には、別の在留資格を得る必要があります。
なお、技能実習を行っていた期間や職種によっては、育成就労人材として再度入国できる場合があります。ただし、詳細なルールは未定です。
育成就労制度施行に向けた準備はいつからすべき?
育成就労制度は、2027年内に施行される予定となっています。現在、技能実習生を採用している企業や、新たに育成就労人材の採用を検討している企業については、育成就労制度の施行に向けて、できることから準備しておく必要があるでしょう。
現在、制度の施行に向けて準備できることとしては、次のものが挙げられます。
- 育成就労人材や特定技能人材について情報収集をする
- 日本語試験や技能試験などの情報収集をする
- 省庁からの最新情報をキャッチアップする
育成就労人材や特定技能人材について情報収集をする
原則として、育成就労制度施行後は、技能実習生を受け入れることができません。
現在、技能実習生を採用している企業は、育成就労人材や特定技能人材など、他の在留資格を持つ外国人材に切り替える必要があります。そのため、今のうちから育成就労人材や特定技能人材の採用に関する情報収集を行っておくと安心です。
日本語試験や技能試験などの情報収集をする
育成就労人材になるには、日本語試験の合格が必要になります。具体的には、JLPT N5レベル相当の試験に合格することが必要です。また、特定技能人材になるためには、受け入れ分野ごとに定められた水準の日本語試験と技能試験に合格する必要があります。
育成就労制度施行に伴って、他の在留資格を持つ外国人材に切り替える企業については、これまで以上に外国人材の試験合格に向けたサポートが求められるようになると考えられます。そのため、今のうちから日本語試験や技能試験の概要や対策について情報を収集しておくことが重要です。
省庁からの最新情報をキャッチアップする
育成就労制度は、現在施行に向けて準備中の制度です。具体的な施行日や運用方針など、まだ決まっていないことも多いです。
そのため、必要に応じて準備ができるよう、定期的に関連省庁からの最新情報を随時確認することが重要です。
各種試験対策は明光グローバルにお任せください
2027年中に施行される育成就労制度を利用すれば、企業が長期的な雇用を視野に入れて外国人材を採用することが可能です。
一方で、採用した育成就労人材が特定技能人材になるためには、日本語試験や技能試験に合格する必要があり、これまで以上に試験合格に向けた積極的なサポートが必要になります。
明光グローバルなら、N5〜N1まで網羅したJLPT対策や、特定技能試験対策に使える外国人向けオンライン日本語学習ツール「Japany」など、魅力的なサービスを豊富に取り揃えています。
最後に、外国人材の各種試験対策でお悩みの経営者や人事・教育担当者の方に向けて、明光グローバルのサービスを紹介します。
明光グローバルとは
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外国人社員向け各種教育・研修サービスとは
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まとめ
育成就労制度は、2027年中に施行される予定となっています。育成就労制度の活用を検討している企業は、制度施行後にスムーズに対応できるよう、今のうちから情報収集や準備をしておくことが重要です。
明光グローバルは、外国人材に特化した各種事業を行っており、採用から教育、定着まで、幅広い知見やノウハウを持っています。育成就労制度の準備や、各種試験対策にお悩みの方は、ぜひ明光グローバルまでお気軽にお問い合わせください。