近年、人手不足の影響で、外国人材を雇用する日本企業が多くなっています。一方、外国人材の採用に慣れていない企業では、「外国人材とうまくコミュニケーションができない」「日本語を使って外国人材とスムーズに話すにはどうすれば良い?」という日本人社員からのお悩みの声も増えています。
今回は、外国人材に職場の外国人材とスムーズに話すコツについて解説します。外国人材とのコミュニケーションに課題を抱えている企業の経営者や人事・教育担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
職場の外国人材とスムーズに話すコツとは?
職場の外国人材とスムーズに話すためには、どうすれば良いのでしょうか?
一括りに「外国人材」といっても、日本語の学習歴や学習の深さに応じて、日本語レベルには個人差があります。そんな中でも、日本人社員が外国人材とスムーズに話すコツは「相手の立場に立ち、相手にとってわかりやすい伝え方を心掛けること」です。
企業としては、職場の日本人社員に対して外国人材にとってわかりやすい話し方を教育することが重要になります。これにより、コミュニケーションの質が改善し、業務指示や教育指導が伝わりやすくなります。
この記事では、次の3ステップで、職場の外国人材とスムーズに話すコツを解説します。
- 外国人材にとってどんな話し方がわかりにくいのか?それはなぜなのか?を理解する
- 外国人材に伝わりやすい話し方を理解する
- 「話す」以外の方法で、スムーズに意思疎通をするためのポイントを理解する
外国人材にわかりにくい話し方とは?注意したいポイント
まずは、外国人材にわかりにくい話し方や注意したいポイントについて理解しましょう。ここでは、外国人材にわかりにくい話し方について解説します。
- 早口でまくし立てるように話す
- 文章が長く、冗長である
- あいまいな指示が多い
- 複雑な文法を使っている
- 日本人独特の表現を使っている
参照元:
- 在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン 話し言葉のポイント(出入国在留管理庁・文化庁)
- 「日本人社員も外国籍社員も職場でのミスコミュニケーションを考える」動画教材及び学びの手引きを策定しました(経済産業省)
早口でまくし立てるように話す
外国人材にとって伝わりづらい話し方の一つが、早口でまくし立てるように話すことです。
日本人社員の中には、無意識のうちに早口になってしまってしまう人もいます。話し言葉のスピードが速いと、外国人材にとっては本来わかる語彙が用いられていたとしても聞き取れないことがあります。
文章が長く、冗長である
一文が長く、冗長な話し方も外国人材にとってはわかりにくいコミュニケーションであるといえます。
日本人社員には「〇〇だからね、〇〇を使ってね、〇〇をしようね」というように、文章を区切らずにダラダラと話す人も多いです。こうした話し方は、日本語に慣れていない外国人材にとって主語や述語を認識しにくいため、どこがポイントなのかが伝わりづらくなってしまいます。
あいまいな指示が多い
日本語特有のあいまいな指示も、外国人材には伝わらないことがあります。日本語の特徴として、あいまいな文法や語彙が多いことが挙げられます。
たとえば、「荷物が届いたからよろしく」「例の件、なるべく早めにね」などと言われても、外国人材にとっては「誰に」「何を」頼まれたのかわからないことがあります。主語や述語が抜け落ちていて、指示された内容がわからないのです。
また、「いいよ」「結構です」のように、複数の意味を持つ語彙からも、コミュニケーションの齟齬が生まれることがあります。
複雑な文法を使っている
外国人材には、日本語の複雑な文法がわからないこともあります。
たとえば、外国人材にとって次のような文法は理解しにくいといわれています。
- 二重否定(例:不可能ではない)
- 受身形(例:住民税は市町村で課税される)
- 使役表現(例:上司が私に資料を準備させる)
- 使役受身形(例:上司から顧客の愚痴を聞かされる)
業務指示や教育研修の際に複雑な文法を使って説明すると、文法の理解で頭がいっぱいになってしまい、内容がスムーズに入ってこないことがあります。
日本人独特の表現を使っている
話し言葉の中に日本人独特の表現が含まれていると、伝わりづらいことがあります。たとえば、次のような表現は日本語特有のものです。
- オノマトペ(例:ぱぱっと・ばーっと)
- 和製英語・外来語(例:ヘルシー・ウィルス)
- 尊敬語・謙譲語(例:いらっしゃいます・参ります)
外国人材が日本での生活や日本語でのコミュニケーションに慣れないうちは、このような表現を理解できないことがあります。
外国人材にわかりやすい話し方とは?伝わるように話すコツ
外国人材にわかりやすく話すためには、どのように工夫する必要があるのでしょうか?ここでは、外国人材にわかりやすい話し方について解説します。
- ゆっくりとしたペースで、はきはきと話す
- 文章を短く区切り、指示の目的や背景も説明する
- 主語や述語、5W1Hを具体的に説明する
- シンプルな語彙・文法に言い換える
- 重要な内容は繰り返し伝える
参照元:
- 在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン 話し言葉のポイント(出入国在留管理庁・文化庁)
- 「日本人社員も外国籍社員も職場でのミスコミュニケーションを考える」動画教材及び学びの手引きを策定しました(経済産業省)
- 外国人材活躍解説BOOK(東京商工会議所)
ゆっくりとしたペースで、はきはきと話す
外国人材に伝わるように話すコツの一つ目は、ゆっくりとしたペースで、はきはきと話すことです。一つひとつの音をはっきりと発音するようにし、大きな声で話すようにしましょう。
相手に対して「私の声は聴きやすいですか?」「私の話すスピードは大丈夫ですか?」と確認することも大切です。
職場で雇用している外国人材が日本語能力試験(以降、「JLPT」)に合格している場合は、リスニング問題の音声で話されるスピードを参考にすることもおすすめです。JLPTの公式サイトからレベル別の試験の問題例を確認することができます。
ただし、JLPTのリスニング音声は試験用に調整されており、外国人材は試験の合格に向けて繰り返し試験対策を実施しています。そのため、必ずしもリスニング音声と同程度のスピードで話される日常会話を聞き取れるとは限りません。
実際に外国人材と会話する際には、相手の理解度に応じて話すスピードを調整することが重要です。
文章を短く区切り、指示の目的や背景も説明する
文章を短く区切り、指示の目的や背景を併せて説明することも重要です。
日本語でのコミュニケーションに不慣れな外国人材に対しては、「今日は〇〇をします。理由は〇〇だからです。〇〇にはこの道具を使います。」というように、短い文章を重ねたほうが伝わりやすいです。
また、日本人社員にとって当たり前であることも、外国人材にとってはわからないことがあります。業務指示の内容だけではなく、目的や背景も一緒に伝えることで、よりスムーズに理解してもらうことができます。
主語や述語、5W1Hを具体的に説明する
外国人材に対しては、主語や述語、5W1Hを具体的に説明するように意識しましょう。
日頃から、主語や述語、5W1Hをはっきりと伝えるように心掛けることで、自然とあいまいな表現が減り、外国人材に伝わりやすい話し方ができるようになります。「言わなくてもわかるかもしれない」と思うことも、なるべく言葉にして伝えるようにしましょう。
シンプルな語彙・文法に言い換える
シンプルな語彙・文法に言い換えることも、外国人材とのコミュニケーションを円滑にするうえで重要です。具体的には、次のような言い換えを心掛けましょう。
- やさしい語彙を用いる(例:「納税」→「税金を払う」・「記入」→「書く」)
- シンプルな文法にする(例:「不可能ではない」→「できる」)
- 敬語は丁寧語に統一する(例:「お越しいただく必要はありません」→「来なくてもいいです」)
重要な内容は繰り返し伝える
外国人材に重要な内容を伝えるときには、同じことを繰り返し伝えることがおすすめです。
日本語のリスニング能力が高くない外国人材が、一回の聞き取りで過不足なく必要な内容を聞き取るのは難易度が高いです。特に重要な内容については、3回程度繰り返して伝えるようにしましょう。
職場で意識してほしいことや働くうえで心掛けてほしいポイントについては、定期的に教育研修を実施することも有効です。eラーニングや動画教材を活用すれば、教育担当者や現場責任者の手間が省けるためおすすめです。
外国人材とのコミュニケーションを円滑にするためのコツ
外国人材とスムーズに意思疎通をするためには、「話す」以外のアプローチからの配慮が必要となる場面があります。ここでは、外国人材とのコミュニケーションを円滑にするために活用できるさまざまなコツやポイントについて解説します。
- 外国人材の母国の文化・コミュニケーションの特徴を理解する
- ノンバーバルコミュニケーションを取り入れる
- 外国人材が話しやすいよう「聴く」態度を整える
- どうしても伝わらないときは翻訳機・通訳スタッフを活用する
- 外国人材にも日本語で話すことに慣れてもらう
参照元:
- 在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン 話し言葉のポイント(出入国在留管理庁・文化庁)
- 在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン 2020年8月(出入国在留管理庁・文化庁)
- 外国人材活躍解説BOOK(東京商工会議所)
外国人材の母国の文化・コミュニケーションの特徴を理解する
職場の日本人社員には、外国人材の母国の文化・コミュニケーションの特徴を理解してもらうようにしましょう。
たとえば、外国人材の出身国によっては、謝罪に対する心理的ハードルが日本よりも高いことがあります。この背景には「一度非を認めてしまうと、どんな責任や不利益が生じるかわからない」という社会的な事情があります。このような国から来ている外国人材は、慣れないうちはなかなか日本企業で素直に謝ることができないかもしれません。
また、日本とは「できる」という言葉の定義が違うケースもあります。日本では、十分な経験や実績がなければ「できない」と答える人が多くなっています。一方、文化圏によっては、たとえ未経験だったとしてもポテンシャルがあるという意味で「できる」と答える国もあります。
生まれ育った文化や社会が異なれば、価値観や考え方にも違いが生じます。職場の日本人社員が母国の特徴を学び、意識しながら話すことで、より外国人材に伝わりやすい話し方ができるようになります。
明光グローバルでは、日本人社員への外国人受け入れ研修として、異文化理解研修や異文化コミュニケーション研修を提供しています。少しでもご興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
ノンバーバルコミュニケーションを取り入れる
「ノンバーバルコミュニケーション」を活用することで外国人材とのコミュニケーションをよりスムーズにすることができます。ノンバーバルコミュニケーションとは、図やイラスト、ジェスチャーなどを用いた、言葉によらないコミュニケーションのことです。
ノンバーバルコミュニケーションを活用した業務指示・教育指導の内容としては、次のようなものが挙げられます。
- マニュアルや研修資料などに図やイラストを多く用いることで、視覚的にわかりやすくする
- コミュニケーションボードを準備しておき、コミュニケーションに詰まった際などに活用する
- 口頭でのコミュニケーションの際に、身振り手振りを用いる(ただし、ジェスチャーの意味は万国共通ではないため、外国人材の出身国で無礼とされるものは使わないように注意する)
日本人でも、文面での指示や口頭での指導では、なかなか言われた内容が頭に入ってこないことがあるかと思います。日本語能力が高くない外国人材にとっては、なおのこと理解しにくい場面があります。
「なかなか口頭での指示が伝わらない」とお悩みの場合は、ぜひノンバーバルコミュニケーションを活用してみてください。
外国人材が話しやすいよう「聴く」態度を整える
外国人材が話しやすいよう、日本人社員の「聴く」態度を整えることも重要です。
なかなか日本語での意思疎通ができないことで、外国人材がパニックになることがあります。日本人社員の「聴く」態度を整えることで、外国人材が安心してスムーズに会話できるようになります。
たとえば、次のような態度を意識すると良いでしょう。
- 緊張しているなと感じたら、笑顔で緊張を和らげる
- アイコンタクトや相づちを打って聴いていることを示す
- 相手の発話を繰り返す(オウム返しをすることで、相手に安心感を与える効果がある。「バックトラッキング」とも呼ばれる)
- 相手の言っていることが分からない場合は、復唱するなどして相手の意図を確認する
どうしても伝わらないときは翻訳機・通訳スタッフを活用する
どうしても伝わらないときは、翻訳機・通訳スタッフを活用することも有効です。
伝えたい内容の難易度が高い場合や、外国人材の日本語能力が発展途上である場合には、どうしてもやり取りが成り立たないことがあります。「すべての会話を日本語にしなければならない」と構えすぎず、慣れないうちは翻訳機・通訳スタッフを活用しましょう。特定技能1号の外国人材を採用している場合には、登録支援機関の母国語支援スタッフに頼ることもおすすめです。
なお、明光グローバルは特定技能人材の登録支援機関としての認可を受けており、さまざまな言語に対応できるスタッフが常駐しています。そのため、特定技能人材に対して母国語での生活支援や業務支援を行うことが可能です。
外国人材にも日本語で話すことに慣れてもらう
外国人材にも日本語で話すことに慣れてもらうようにしましょう。日本人社員が配慮するばかりでは、外国人材の日本語能力は向上しません。
日本企業で働く以上、外国人材には徐々に日本語で話すことに慣れていってもらう必要があります。職場で使える語彙や文法を増やし、会話力を高めるには、継続的な日本語学習が不可欠です。
明光グローバルには、外国人向けオンライン日本語学習ツールやオンライン日本語レッスンなど、外国人向けの日本語学習プログラムを豊富に取り揃えています。導入実績も豊富なので、外国人材に対する日本語教育に不慣れな企業の方も安心してご活用いただけます。
外国人材の採用に伴う各種教育研修プログラムは明光グローバルにおまかせ
外国人材の採用を成功させるためには、職場の日本人社員に対して外国人材と話すコツやポイントを教育することが重要です。また、異文化理解研修・異文化コミュニケーション研修などの外国人受け入れ研修や、外国人材に対する日本語教育を実施することも求められます。
一方、はじめて外国人材を採用する企業では「どういった研修をすれば良いのかわからない」「準備している研修内容で十分か不安」などのお悩みの声も多くあがっています。
明光グローバルは、外国人材の採用・教育・定着をワンストップで支援しています。日本人社員向けの外国人受け入れ研修や、外国人材向けの日本語研修も提供しており、充実した教育支援を行うことが可能です。
最後に、外国人材の採用に伴う教育研修コンテンツにお悩みの企業の経営者や人事・教育担当者の方に向けて、明光グローバルの概要と、提供するサービスを紹介します。
明光グローバルとは
明光グローバルは、外国人材の就労機会の創出と育成を通して、日本企業の持続的な成長をサポートする教育系人材サービスです。
40年以上の個別指導の教育実績、そして10年以上の日本語教育の実績を持つ明光ネットワークジャパングループの知見を活かし、外国人材の育成と企業の人材課題解決に特化したサービスを提供しています。
JCLIや早稲田EDU日本語学校での豊富な教育ノウハウを活かし、特定技能試験対策から業界別の専門教育まで、幅広いニーズに対応しています。外務省からEPA事業を4期連続で受託するなど、高い信頼性と実績を誇ります。
明光グローバルの主要サービス
事業 | サービス |
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教育研修事業 | ・eラーニングによる日本語教育(スマホアプリに対応) ・対面/オンラインによる日本語レッスン ・外国籍人材と日本人に向けた各種研修プログラム ・外国籍人材に向けた各種試験対策講座 |
人材紹介事業 | ・特定技能人材の紹介 ・外国籍エンジニアの人材紹介 ・教育伴走型の登録支援サービス |
特定技能人材やエンジニアの紹介から、外国人社員向けの教育・研修サービスまで、幅広いノウハウを提供しています。単なる日本語教育にとどまらず、企業での実践力を重視した総合的な人材育成を行っています。
明光グローバルの各種教育・研修サービスとは
明光グローバルでは、外国人材の日本語能力向上と各業界に特化した学習支援を4つの柱で展開しています。時間や場所を問わない「Japany」でのeラーニングから、ビジネス経験豊富な講師による個別指導まで、幅広いニーズに対応できることが特徴です。
サービス | 概要 |
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オンライン日本語レッスン | ・ビジネス経験豊富な講師による個別指導 ・業界別カスタマイズカリキュラム ・定期的にレッスン報告書を企業に提供 |
各種研修プログラム | 【外国人材向け】新入社員研修、異文化理解研修等 【日本人社員向け】外国人材受入れ研修等 |
各種試験対策講座 | ・専門講師が直接指導 ・実施方法はオンライン/対面いずれも対応可能 ・受講人数や実施回数など企業毎にカスタマイズして対応可能 ※介護福祉士試験対策講座、特定技能2号試験対策講座(外食、飲食料品製造、製造業、建設の4分野に対応) |
明光グローバルの各種教育・研修サービスの特徴
明光グローバルの外国人社員向け各種教育・研修サービスの強みは「実用性の高さ」「カスタマイズ性」「豊富な実績」の3点です。
明光グループでは、これまで40年以上もの間、個別指導をはじめとした教育活動を実施してきました。そのため、明光グローバルには、企業様の状況に合わせた実用的な学習コンテンツが蓄積されています。学習した内容をすぐに現場で活かすことができるため、社員がモチベーション高く取り組むことができるでしょう。
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さらに、EPA事業を外務省から4期連続で受託しており、国内外ともに豊富な導入実績を持っています。企業の規模や外国人社員の採用経験の多寡を問わず、さまざまなサポートが可能です。
まとめ
外国人材とスムーズに話すコツは、「相手の目線に立って、伝わりやすいように配慮する」ことです。そのためには、「どんな表現が伝わりにくいのか」「相手にとってわかりやすいコミュニケーション方法とは」など、コミュニケーション上のポイントを職場の日本人社員がしっかり理解することが重要です。
明光グローバルには、外国人材の採用に伴う各種教育研修プログラムを提供してきた中で培った豊富な実績・ノウハウがあります。外国人材とのコミュニケーションにお悩みの方は、ぜひ明光グローバルまでお問い合わせください。