近年、人材不足などをきっかけに、外国人社員を採用する企業が増えています。一方で、採用後の教育に関するノウハウが蓄積されていないことで、「どのような研修を実施すればよいのかわからない」と悩んでいる担当者の方も多いのではないでしょうか?
今回は、外国人社員を採用した際に実施すべき教育研修について、外国人社員向け・日本人社員向けの双方から紹介していきます。ぜひ最後までご覧ください。
外国人社員を採用したらどんな研修が必要?
外国人社員を採用したら、どのような研修が必要となるのでしょうか?
外国人社員を受け入れる場合には、採用する外国人社員だけでなく、受け入れる日本人社員に対しても、研修を実施する必要があります。具体的には、次の3点を目標として研修を設計していきましょう。
- 外国人社員が、日本企業で日本人社員とともに働くことに慣れる:外国人社員が、日本の文化や価値観を深く理解し、日本語でスムーズにやり取りできるように教育しましょう。
- 日本人社員が、外国人社員とともに働くことに慣れる:外国人社員の持つ文化や価値観を受け入れる土壌を作り、コミュニケーションを円滑化できるように教育しましょう。
- 外国人社員と日本人社員が支え合い、協働できるようにする:外国人社員と日本人社員が意見を交わし、お互いを理解し合えるよう教育しましょう。
外国人社員向けに実施すべき教育研修
まずは、外国人社員が、日本企業で日本人社員とともに働くことに慣れるための教育研修について説明します。外国人社員向けの研修としては、具体的には次の3つの研修を取り入れるようにしましょう。
- 日本語能力を向上するための研修:外国人社員が職場でスムーズに働くために必要な日本語能力を身に着けられるよう、継続的な日本語教育を実施しましょう。
- 日本の企業文化や働き方を理解するための研修:日本特有の企業文化や働き方を知り、仕事に対する心構えや知識、工夫すべきポイントを学べるようにしましょう。
- 日本人との円滑なコミュニケーション方法を学ぶための研修:日本人の特徴を知り、実践的なコミュニケーションスキルを身に着けられるようにしましょう。
日本語能力を向上するための研修
外国人社員には、受け入れた後も、継続的に日本語能力を向上するための研修を実施することが望まれます。
外国人労働者の中には、特定技能外国人のように、日本語能力試験(JLPT)や国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)などの日本語試験で資格を取得している人がいます。そのため、受け入れ企業としては「ある程度日本語ができるのだから、企業での日本語研修は必要ないのではないか」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、実は上記の日本語資格の試験範囲は、「読む」「聴く」のみとなっています。そのため、たとえ日本語試験で好成績を修めている外国人社員といえども、「話す」「書く」ための日本語には慣れていない可能性があります。
また、どんなに熱心に母国で日本語を学んできたとしても、ネイティブスピーカーである日本人ほど流暢に日本語でやり取りできるわけではありません。そのため、働き始めてから、改めて実践的な日本語学習の重要性を感じられる外国人社員も多いです。
企業としても、外国人社員の日本語能力が高まることで、職場によりスムーズに適応してもらうことができます。外国人社員に対しては、実践的な日本語研修の機会を取り入れるようにしましょう。
具体的な研修の方法
では、外国人社員に対して、どのように日本語を教育していけばよいのでしょうか?外国人社員に対する具体的な日本語研修の方法としては、次のものが挙げられます。
研修方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
企業の教育担当者が日本語研修を企画・運営する | ・金銭的なコストが抑えられる ・自社で頻繁に用いるフレーズやワードに特化して教育することが可能 ・学習状況の管理がしやすい | ・教育担当者にかかる負荷が大きい ・日本語教育の知見やノウハウが少ない企業では、適切な支援が提供できない可能性がある ・外国人社員の母国語を用いた学習サポートが難しい ・研修を受ける時間や場所が制限される |
企業で日本語教師と契約し、日本語講習の機会を提供する | ・プロフェッショナルとして日本語を教えている人から学習を受けることができる ・自社の要望に応じて講義内容をカスタマイズできる ・参加者が自社で講習を受けることができるため、移動などの工数が発生しない | ・採用している外国人社員が少ない場合、一人あたりの金銭的なコストが高くなる ・研修を受ける時間や場所が制限される |
日本語教室や日本語教育機関などに通う機会を提供する | ・プロフェッショナルとして日本語を教えている人から学習を受けることができる ・外国人社員の母国語を用いた学習サポートが受けられることがある | ・金銭的なコストが高くなる ・研修を受ける時間や場所が制限される ・学習状況を管理するのが難しい ・自社の状況に特化した講義を受けることができない |
日本語学習教材やシステム、オンライン日本語講座などを受ける機会を提供する | ・プロフェッショナルとして日本語を教えている人から学習を受けることができる ・外国人社員の母国語を用いた学習サポートが受けられることがある ・オンライン講座の場合、時間や場所を気にせず、スキマ時間で学習を継続することができる | ・サービスによっては金銭的なコストが高いものがある ・サービスによっては学習状況の管理がしづらいものがある ・学習者のモチベーションを維持することが難しい |
なお、外国人社員のうち、特に特定技能1号人材に対しては、企業は受け入れ時の義務として日本語教育を支援することが必要です。具体的には、次のいずれかを実施することが求められています。
- 周辺地域の日本語教室や日本語教育機関に関する入学案内の情報提供、入学手続きの補助
- 日本語学習教材やオンラインの日本語講座に関する情報提供、利用契約手続きの補助
- 企業が日本語教師と契約し、本人に日本語講習の機会を提供
これらのサポートは、登録支援機関に委託することも可能です。あわせて確認しておきましょう。
日本語研修を実施するうえでの課題
特定技能外国人にとって、仕事をしながら継続的に日本語を勉強しつづけることは大きな課題です。
外国人社員が、日本での仕事や生活に慣れていないうちは、なかなか日本語を勉強する時間を捻出しにくいものです。特に、対面で開催されている日本語教室などは、時間や場所が制限されてしまうため、通いにくいことがあります。
また、母国への仕送りや奨学金の返済など、金銭的に困窮している方が多いのも課題の一つです。日本語を勉強するモチベーションがあっても、日本語講座に通うために必要な資金を自力で捻出できないということもあります。一方で、日本語教室によっては高額なものもあり、企業で全額を負担するのは難しいとお悩みの人事・教育担当者の方も多くなっています。
明光グローバルの「Japany」なら負担なく学習を継続できる
明光グローバルを通して特定技能外国人を採用いただいた企業様では、自社で独自に開発したe-ラーニング日本語学習システム「Japany」をご利用いただくことが可能です。
「Japany」とは、時間や場所を選ばずに、ちょっとしたスキマ時間を使ってオンラインで日本語が学べるシステムです。具体的には、1,200本のレッスン動画の中から、状況やシーンに応じたさまざまな日本語を学ぶことができます。多言語翻訳にも対応しているため、母語を使って学べるのも、日本語学習を継続しやすいポイントです。
また、レコメンド機能やランキング機能など、本人のモチベーションとなるUIシステムを導入しているため、無理なく続けることができます。ご興味のある方は、ぜひ明光グローバルまでお問い合わせください。
日本の企業文化や働き方を理解するための研修
外国人社員がスムーズに職場に適応するためには、日本の企業文化や働き方を理解してもらう研修を実施することが必要です。
たとえば、日本企業においては「5分前行動」が当たり前となっており、時間に対する意識が厳格であると考えられています。
一方、国によっては、たとえ開始時間が遅れても、議論を通して一定の成果が得られれば問題ないだろうと考える方も多いです。特に、日本ほど交通機関が正確ではない国においては、時間に遅れるのは日常茶飯事であり、罪悪感を覚えるようなことではないというのが常識です。
このように、日本と海外との間には、国民性や習慣、環境などの違いから、企業文化や働き方の面でさまざまな違いがあります。そのため、外国人社員には日本における常識を理解してもらい、日本企業でスムーズに働くために必要な知見やポイントを知ってもらう必要があるでしょう。
日本人との円滑なコミュニケーション方法を学ぶための研修
外国人社員が日本企業で活躍するにあたって、日本人との円滑なコミュニケーション方法を学ぶ研修を実施することも有効です。
たとえば、日本人は「すみません」という言葉をよく使います。この言葉は、謝罪の意味を表すだけでなく、感謝を伝える際や、何かお願いをする際の声かけやあいさつの意味もあります。一方で、謝罪の意味しか知らない外国人社員からすると、日本人が一体何を謝っているのかがわからず、困惑することもあるでしょう。
このように、日本人が知らず知らずのうちに使っている言葉や話し方が、外国人にとっては理解しにくいことがあります。そのため、外国人社員には日本人のコミュニケーション上の特徴を理解してもらい、実践的な日本語でのコミュニケーションスキルを身につけてもらう必要があるでしょう。
外国人社員向けに教育研修を実施する際のポイント
それでは、外国人社員に教育研修を実施する際には、どのような点に注意する必要があるのでしょうか?ここでは、外国人社員に教育研修を実施する際のポイントについて解説します。
- 意見をシェアする機会を作る
- 頭ごなしに相手の文化を否定しない
- 日本の文化や考え方をいきなり押し付けない
意見をシェアする機会を作る
外国人社員に教育研修を実施する際は、積極的に意見をシェアする機会を作りましょう。特に、外国人社員を複数名採用している場合は、外国人社員同士でディスカッションやワークショップを行うことで、学びが深まります。
たとえば、日本と出身国における企業文化や考え方を比較する際に、外国人社員がそれぞれの国の行動を紹介すれば、日本だけでなく国ごとにいろいろな常識や当たり前があることを身をもって体感できるでしょう。
また、同じことを学ぶうえでも、ディスカッションを取り入れた方が、新しい発見や学びを得やすくなります。
さらに、研修を通じて、外国人社員同士が仲良くなるきっかけが生まれれば、職場での孤独感の解消や仲間づくりにもよい影響を与えられるに違いありません。研修の際には、発表やロールプレイング、ディスカッション、ワークショップなど、意見をシェアする機会を作ってみてください。
頭ごなしに相手の文化や考え方を否定しない
日本の企業文化や働き方などを教育する際には、外国人社員の母国の文化や考え方を否定しないようにしましょう。
外国人社員をはじめて採用する企業などでは、海外の文化や考え方に慣れていないために、意図せず差別的な発言をしたり、相手の人格や、相手の出身国の文化、考え方などを否定したりしてしまうことがあります。
一方、どんな方だったとしても、自分自身や出身国のことを貶められたら、気分が悪くなるでしょう。このような否定的な態度が続くと、外国人社員が離職してしまうかもしれません。
外国人社員が、想定外の行動を取った場合は、冷静に判断の背景を聞くようにしましょう。そのうえで、日本における常識的な行動は何だったのか、それはなぜなのか、次からはどうすればよいのかを丁寧に説明してください。
外国人社員と接する中では、当たり前が通じずにイライラしてしまうこともあるかもしれません。しかし、相手にとっては、単に日本の常識を知らないだけである可能性が高いです。常に「自分の常識は他人の非常識」という心構えを持ちましょう。
日本の文化や考え方をいきなり押し付けない
外国人社員に対しては、日本の文化や考え方をいきなり押し付けるのではなく、「違い」を理解したうえで丁寧にコミュニケーションをすることが重要です。
たとえば、外国人社員の中には、本当はできないのに「できる」と答える人がいます。特に多民族社会で生まれ育った人は、さまざまな民族が互いに競争しあう環境の中で、自分の価値を相手よりも高く見せることが重要だという教育を受けていることがあります。
そのため、まったくの未経験だったとしても、自分のポテンシャルを信じて「できる」と言ってしまうことがあるのです。
日本は島国であり、同質性が高いため、嘘やごまかしが通用しにくい特徴があります。そのため、後から問題がこじれるよりも、最初から「できない」と伝えておく方が合理的だと考えるのです。
このように、国籍や文化によって「常識的な行動」はまったく異なります。そのため、外国人社員に日本の文化や考え方を正しく伝えるためには、まずは自分自身が相手の出身国との違いを理解することが必要です。そして、日本における意義や背景、メリットなどを丁寧に伝え、時間をかけて教えていくようにしましょう。
外国人社員を受け入れる企業の日本人向けに実施すべき教育研修
外国人社員を受け入れる際には、自社で働く日本人社員に対しても、外国人社員と働くことに慣れるための教育が必要になります。
昨今、外国人材を採用する日本企業が増えていることを背景に、外国人社員の活躍に向けた議論が活発化しています。実際に「日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針」や「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」などにおいては、職場等における効果的なコミュニケーションのため、受け入れ側の環境を整備することが重要であると明記されました。
外国人材を受け入れる日本人社員に対しては、具体的には次の4つの研修を取り入れるようにしましょう。
- 外国人向けの「やさしい日本語」と外国語能力を向上するための研修:外国人社員とスムーズにやり取りできるよう、「やさしい日本語」や外国語能力を向上する研修を導入しましょう。
- 海外の企業文化や働き方を理解するための研修:日本と海外の企業文化や働き方の違いを知り、外国人社員に指導する際の心構えや知識、工夫すべきポイントを学べるようにしましょう。
- 外国人との円滑なコミュニケーション方法を学ぶための研修:外国人の特徴を知り、実践的なコミュニケーションスキルを身に着けられるようにしましょう。
- 【上司・指導者向け】外国人への評価・フィードバックを行うための研修:外国人に評価やフィードバックを行う際の適切な伝え方を学べるようにしましょう。
参照元:
外国人社員向けの「やさしい日本語」と外国語能力を向上するための研修
日本人社員が外国人社員とスムーズにやり取りするために、「やさしい日本語」や外国語能力を向上するための研修を取り入れることが効果的です。
日本で働く外国人材の全員が、日本語を流暢に話せるわけではありません。また、外国人材の中には英語を使えない方もいます。そのため、外国人社員とやり取りをする際に、うまく言いたいことが伝わらず戸惑われることも多いのではないでしょうか?
このような外国人材とのコミュニケーション上の問題を解消するにあたって参考にしたいのが、出入国在留管理庁と文化庁が推奨している「やさしい日本語」です。
「やさしい日本語」とは、難しい言葉を言い換えるなど、相手に配慮したわかりやすい日本語のことです。外国人材だけでなく、高齢者や障害のある人など、さまざまな背景を持つ方にわかりやすく伝えるためのコミュニケーションとして、企業や官公庁などを中心に広まりつつあります。
外国人社員を受け入れる際は、配属先の部門やチーム、職場全体に対して「やさしい日本語」研修を実施してみてください。また、採用する外国人社員の母国が特定の国に偏っている場合には、コミュニケーションを活性化するために、日本人社員が外国人社員の出身国の言語を学ぶことも有効です。
なお、外国人社員の中には、英語を流暢に話せる方もいます。外国人社員とのコミュニケーションの促進だけでなく、今後のグローバル化を見据えた施策の一つとして、社員が共通語である英語を話せるよう教育していくことにも意義があるでしょう。
参照元:在留支援のためのやさしい日本語ガイドラインほか(出入国在留管理庁・文化庁)
具体的な研修の方法
それでは、日本人社員が「やさしい日本語」や外国語を習得するためには、どのような研修を実施すればよいのでしょうか?
「やさしい日本語」についての研修は、出入国在留管理庁・文化庁の発行している「やさしい日本語ガイドライン」などを参考にしましょう。具体的には、次のような方法が考えられます。
- 配属部署などに対する「やさしい日本語」での話し言葉研修:外国人社員とのかかわりが深い配属部署などにおいては、「やさしい日本語」で話すための研修を導入することが効果的です。「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」や「別冊 話し言葉のポイント」などをもとに、ワークショップやディスカッションを交えた複数回の研修を取り入れるとよいでしょう。
- 人事・労務や教育担当者などに対する「やさしい日本語」での書き言葉研修:外国人社員に契約書や通知、マニュアルなどの書面を多く発行する部署や担当者に対しては、「やさしい日本語」で書くための研修を導入することが効果的です。「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」や「別冊 やさしい日本語書き換え例」などをもとに、実践的な研修を必要に応じて取り入れるとよいでしょう。
- 全社員に対する「やさしい日本語」の意識啓発研修:外国人社員とともに働くうえで、全ての日本人社員が何らかのやり取りをする可能性があります。そのため、全社に対して、外国人社員と関わる際には「やさしい日本語」を意識するよう啓発することも有効です。「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」をもとに、全社会議などの場で触れたり、全社研修の一貫として取り入れるとよいでしょう。
- 外国人社員の出身国の外国語研修:外国人社員とのコミュニケーションを活性化するために、言語を習得することも考えられます。たとえば、外国人社員自身に企画を任せ外国語を教えてもらうことで、学び合う組織づくりにも活かせるでしょう。
- 日本人社員に対する英語研修:外国人社員とのやり取りの補助のみならず、将来的な企業のグローバル化を見据えて、日本人社員向けの英語研修を導入してもよいでしょう。たとえば、オンライン英語講座や英会話教室の費用を補助したり、英語の資格取得支援などをしたりすることも考えられます。
海外の文化や価値観を理解するための研修
日本人社員に対して海外の文化や価値観を理解してもらうことも重要になります。生まれた国や信じている宗教の違いによって、考え方や生きるうえでの指針、行動は大きく異なります。
たとえば、イスラム教の方は、一日に5回お祈りをする時間があります。もしイスラム教の方と働く場合には、このお祈りの時間に会議を重ねないことや、礼拝所の確保に配慮することが望まれるでしょう。
また、日本では何か不満があってもある程度我慢する方が多いですが、海外では発散的なことがあります。たとえ小さなことだったとしても、すぐに意見を主張し、問題点が解消するまで議論しようとすることもあるでしょう。
このように、外国人社員と働くうえでは、大前提として常識や当たり前が異なることを念頭に置くことが必要です。そのうえで、日本の文化や価値観を取り込んでほしい場合には、その背景や理由を説明し、相手に理解してもらえるようにしなければなりません。
一方で、外国人社員に対するアンコンシャス・バイアスには注意する必要があります。アンコンシャス・バイアスとは、無意識の思い込みや偏見のことです。
たとえば、「外国人社員は家庭を大事にするから、飲み会に誘っても来ないだろう」と考え、外国人社員には声をかけず、それ以外の職場の人たちで飲みに行ったとしたらどうでしょうか?当人としては仲間はずれにされたような気持ちになるかもしれません。
また、「外国人社員だから、日本語はそこまで得意ではないだろう」との決めつけから、外国人社員が日本語を必要とする業務から外されることもあります。本人が流暢に話せるにも関わらず、このような対応をするのは会社にとっても機会損失になるでしょう。
こうした、外国人社員と働くうえで必要な知見やポイントを予め理解しておくことで、スムーズな受け入れができるようになります。
具体的な研修の方法
それでは、日本人が海外の文化や価値観を学ぶには、どのような研修を実施すればよいのでしょうか?具体的には、次のような方法が考えられます。
- 配属部署などに外国人の母国の文化や価値観などに関するガイダンスを実施する:外国人社員が配属される部署には、重点的な教育研修を行うことが求められます。配属される外国人の母国や宗教に関連する文化や習慣、注意点などを紹介する研修を実施しましょう。
- 全社員に対して海外の文化や価値観への理解を啓蒙する研修を実施する:外国人社員を受け入れる場合、全ての社員が外国人社員とやり取りする可能性があります。全体会議や定期的な研修などを通して、異なる文化や価値観を否定せず、理解を示すことの重要性を伝えましょう。
外国人社員との円滑なコミュニケーション方法を学ぶための研修
日本人社員を対象に、外国人社員との効果的なコミュニケーション方法を学ぶ機会を設けるようにしましょう。
たとえば、日本人社員にとって当たり前な表現でも、外国人社員にとってはわかりにくいことがあります。具体的には、次のようなポイントで、外国人社員とのコミュニケーション上のすれ違いが発生することがあるでしょう。
- 異なる複数の意味を持つ表現:日本語には「いいよ」「大丈夫」「結構です」など、「Yes」か「No」かがわかりにくい言葉があります。外国人社員に対しては、はっきりと「Yes」か「No」かがわかるように伝える必要があるでしょう。
- わかりにくい表現:日本人は「なるべく早めに仕上げてね」「キリのよいところで終わらせてね」など、作業完了の目安がわかりにくい表現をするところがあります。外国人社員に対しては、5W1Hを意識して、より具体的に指示をしましょう。
また、仕事の仕方についても、日本と海外では考え方が違うことがあります。日本では、忙しい人を手伝ったり、チームで仕事をしたりするのが美徳とされています。一方で、個人間で分業するのが当たり前である国では、「依頼されていないにも関わらず他の人の仕事を取るのはよくないことだ」と考える方も多いです。
そのため、何かお願いしたいときや、チームで仕事を進めたいときは、はっきりと相手に伝える必要があるでしょう。
このように、日本人社員が、外国人社員に対する表現方法や仕事の進め方のコツを理解することで、スムーズに業務を進めることができるようになります。
具体的な研修の方法
では、外国人社員との円滑なコミュニケーション方法を学ぶには、どのような研修を実施すればよいのでしょうか?具体的には、次のような方法が考えられます。
- 配属先にガイダンスを実施する:外国人社員が配属される部署に対して、外国人社員に対するコミュニケーション上のポイントや伝え方などを紹介する研修を行います。「やさしい日本語」研修とあわせて、ワークショップなどを取り入れながら実施するとよいでしょう。
- 全社員に対して外国人社員とのコミュニケーション上のポイントを伝達する:「はっきりと主張する」「指示は具体的に伝える」など、基本的な内容については、全体会議や定期的な研修などを通して、あらかじめ全社員に伝えておきましょう。
【上司・指導者向け】外国人社員への評価・フィードバックを行うための研修
上司や指導者に対しては、外国人社員への評価・フィードバックなどを行うための研修を導入することも必要です。
前提として、日本人と外国人との間では、働くモチベーションが異なることを理解する必要があります。たとえば、技能実習生や特定技能外国人などの中には、母国に仕送りをするために来ている方もいます。
このような背景を持つ方は、日本人社員よりも昇給や昇格に対するモチベーションが高いです。こうした相手に対し、評価の理由やフィードバックを濁して伝えると、会社に対して不信感を抱きかねません。
多くの外国人社員は成長意欲が高く、日本企業で活躍したいと考えています。一方で、日本語でのコミュニケーションに慣れておらず、あいまいな表現では理解できないかもしれません。外国人社員に評価やフィードバックをする際は、制度の説明からよい評価、悪い評価、具体的に改善すべきことなどをはっきりと伝えるようにしましょう。
また、海外ではジョブ型雇用が一般的であるため、仕事を始める前にある程度入社後の業務が見通せるようになっています。そのため、外国人社員に対して、本来任せる範囲ではない業務や、専門外の配属、キャリアプランと関係がない仕事を任せると、モチベーションが大きく下がってしまいます。そもそも、在留資格ごとに任せられる業務がある程度決まっているため注意が必要です。
このように、外国人社員に対して評価やフィードバックを行う際には、しっかりと内容を言語化してコミュニケーションを取る必要があります。外国人社員を受け入れるタイミングや、定期的なマネジメント研修の際に取り入れてみてください。
外国人社員を受け入れる企業の日本人向けに教育研修を実施する際のポイント
それでは、日本人社員に教育研修を実施する際には、どのような点に注意する必要があるのでしょうか?ここでは、外国人社員に教育研修を実施する際のポイントについて解説します。
- 受け入れる側の不安に寄り添う
- 外国人社員と協働する意義を理解してもらう
- 外国人社員と働くことで日本人側が得られるメリットを伝える
受け入れる側の不安に寄り添う
まずは、外国人社員を受け入れる側の不安に寄り添うことが重要です。
特に、はじめて外国人社員を採用する企業においては「日本語が伝わるかわからない」「どのようにコミュニケーションを取ればよいかわからない」など、職場で不安感が募り、外国人社員の受け入れに消極的な雰囲気になってしまうことがあります。
研修担当者としては、このような不安の声に耳を傾け、何がネックになっているかを見極めることが大事です。たとえば、事前に研修などを通して、外国人社員と働く際の注意点やポイントをしっかりと伝えておくことで、懸念が解消されるかもしれません。
社員一丸となって、外国人社員を歓迎するためにも、現場の不安に寄り添い、ともに問題を解決していくようにしましょう。
外国人社員と協働する意義を理解してもらう
外国人社員を受け入れる際には、日本人社員に外国人社員と協働する意義を理解してもらうことも必要です。
日本では、経営層や人事は外国人社員の重要性を理解している一方で、現場社員はさまざまな不安から批判的になっていることが少なくありません。
外国人社員を受け入れる際には、なるべく経営層の口から、外国人社員と働く意義を社員全員に周知し、理解や協力を仰ぐようにしましょう。具体的には、次のような内容を説明するとよいでしょう。
- 外国人社員の受け入れを決断した経緯
- 企業にとって、いかに外国人社員の受け入れが重要か
- 今後、外国人社員とどのように協働していってほしいか
- 現場社員に対する、外国人社員への理解・協力の要請
外国人社員と働くことで日本人側が得られるメリットを伝える
外国人社員と働くことで、日本人社員にも多くのメリットがあることを伝えておきましょう。外国人社員を採用する利点は、単に人材不足が補えるだけではありません。
たとえば、異なる文化や価値観を持つ人材が入社すると、これまで会社で当たり前とされていた常識が疑われ、よりよい商品やサービスを生み出すきっかけになるかもしれません。また、企業のグローバル化が進み、海外からの需要が取り込めるようになれば、会社の業績アップにもつながるでしょう。
そして、外国人社員に対する教育支援実績や、外国人社員とともに協働する経験は、個人のキャリアにとってもよい影響を与えるはずです。外国人社員の採用に消極的な社員に対しては、ぜひポジティブな影響を想像してもらえるよう声かけをしましょう。
外国人社員・日本人社員の双方に実施すべき教育研修
外国人社員と日本人社員が支え合い、協働できるようにするためには、お互いが交流する機会を設けることが重要です。これまで紹介してきた研修を踏まえて、次の2つの研修を取り入れることがおすすめです。
- お互いの文化や価値観をシェアする異文化理解研修:外国人社員と日本人社員がお互いの文化や価値観の違いを理解したうえで、こうした違いを受け止める方法を身につけられるようにしましょう。
- お互いのコミュニケーションのクセや考え方を知る異文化コミュニケーション研修:外国人社員と日本人社員がお互いのコミュニケーションのクセや考え方を知り、今後意識したい点や課題解決策を話し合えるようにしましょう。
特に、外国人社員は、職場で孤立感を感じることが多くあります。周囲から十分に声をかけてもらえず、業務を円滑に進められない状況が続くと、離職につながることもあるでしょう。
また、外国人社員とともに働く日本人社員も、自ら交流するきっかけを作ることができず、やきもきしている方もいるかもしれません。企業が研修などの機会を通して、積極的に日本人社員と外国人社員をつなぐことにより相互に安心感が生まれ、働きやすい職場の形成につながります。
お互いの文化や価値観をシェアする異文化理解研修
外国人社員と日本人社員の交流を深めるうえでは、お互いに異なる文化や価値観を学び合う研修を取り入れることが重要です。
これまで紹介したように、日本と海外では、文化や価値観においてさまざまな違いがあります。外国人社員と日本人社員がお互いの意見をシェアすることで、より学びが深まるでしょう。
たとえば、「企業文化」「人間関係」「仕事の進め方」など、さまざまなテーマごとにお互いの常識的な考え方をぶつけると、違いや共通点が理解しやすいかもしれません。
また、異文化理解研修においては、異なる文化や価値観の受け止め方を学ぶことも重要です。外国人社員と日本人社員のそれぞれの立場から、これから意識したいことや、今後の対応方法などを発表してもらい、実践的な学びを得られるようにしましょう。
お互いのコミュニケーションのクセや考え方を知る異文化コミュニケーション研修
外国人社員と日本人社員が、お互いのコミュニケーションのクセや考え方を知ることも、組織の活性化に有効な手段となります。それぞれの立場から常識的な考え方をぶつけあうことで、違いや共通点を理解するきっかけになるでしょう。
また、実践的なディスカッションを取り入れることも効果的です。たとえば、外国人社員に職場のコミュニケーションで困っていることを共有してもらったり、日本人社員が戸惑ったことなどをシェアしたりすることで、お互いの立場から課題に気づくことができるでしょう。また、課題が生まれた背景を理解することで、他の場面にも応用が効きます。
職場のコミュニケーションを活性化するにあたって、外国人社員と日本人社員がともに問題を解決する経験を得ることは非常に重要です。スムーズに話し合いを進めるためにも、お互いに相手の文化や価値観を否定せず、目的を意識して発言するなど、議論のルールを設けるようにしましょう。
外国人社員の研修設計にお悩みの方は明光グローバルにご相談ください
外国人社員を採用した際には、外国人社員と日本人社員の両方に対し、適切な研修を実施する必要があります。一方で、外国人採用の知見やノウハウがない企業の中には「具体的にどのような内容を教えればよいのかわからない」「いま準備している内容で十分なのか不安だ」など、お困りの方も多いのではないでしょうか?
明光グローバルの「外国人社員向け各種教育・研修サービス」なら、最小限の手間やコストで、外国人社員や、外国人社員を受け入れる日本人社員に対する研修を提供することが可能です。最後に、外国人社員の採用に伴う教育研修コンテンツでお悩みの経営者や人事・教育担当者の方に向けて、明光グローバルのサービスを紹介します。
明光グローバルとは
明光グローバルは、さまざまな事業を通して、日本で働きたい外国人の就労機会を創出し、日本企業の持続的な成長に貢献しています。
教育研修事業では、外国人社員が企業でより一層活躍できるための独自のe-ラーニングシステム「Japany」や、日本語レッスン、日本語能力測定試験などの「外国人社員向け各種教育・研修サービス」を提供しています。
また、外国人材紹介事業では、優秀な外国人材の紹介から定着までをワンストップで支援する「特定技能外国人紹介サービス」や「ITエンジニア紹介サービス」があります。
外国人社員向け各種教育・研修サービスとは
明光グローバルでは、外国人社員の採用に伴うさまざまな教育・研修サービスを提供しています。具体的には、次のサービスが提供可能です。
- e-ラーニング(Japany):外国人社員がスキマ時間を活用して学べるオンライン日本語学習サービスです。合計1,200本以上の豊富な動画の中から、現場で用いる実践的な日本語や、特定技能2号試験対策まで、シチュエーションごとに適切な学びが得られます。
- 日本語レッスン:明光グループの厳しい基準を満たしたプロ講師による「話す」「聴く」力を鍛えるレッスンです。業界に特化したレッスンから、上級者向けのライティングレッスンまで、企業に合わせてレッスンプランをカスタマイズすることができます。
- 日本語能力測定試験:ほかの日本語試験では測定しきれない「コミュニケーション能力」「発音」「与える印象」などの日本人らしい表現力を総合的に測れる試験です。試験対策やレッスンを通じて実践的な日本語能力が身につきます。
- 各種研修:異文化理解研修やビジネスマナー研修、日本人社員に向けた外国人受け入れ研修、接遇・セールス研修など、企業の課題に応じた集合研修を企画・運営します。課題にあわせてカスタマイズできるため、いま必要な研修をピンポイントで提供可能です。
外国人社員向け各種教育・研修サービスの強み
明光グローバルの外国人社員向け各種教育・研修サービスの強みは「実用性の高さ」「カスタマイズ性」「豊富な実績」の3点です。
明光グローバルのグループ会社では、これまで40年以上もの間、外国人社員に関する教育活動を実施してきました。そのため、明光グローバルには、企業様の状況に合わせた実用的な学習コンテンツが蓄積されています。学習した内容をすぐに現場で活かすことができるため、社員がモチベーション高く取り組むことができるでしょう。
また、さまざまな研修コンテンツを、企業の状況に応じてカスタマイズできることも特徴です。外国人社員向けの日本語能力の向上研修だけでなく、業界や職種に特化したビジネスマナーや接遇・セールス研修、外国人社員を受け入れる日本人社員向けの受け入れ研修や異文化理解研修、異文化コミュニケーション研修など、幅広い研修を行うことができます。
さらに、明光グローバルはEPA事業を外務省から3期連続で受託しており、国内外ともに豊富な導入実績を持っています。企業の規模や外国人社員の採用経験の多寡を問わず、さまざまなサポートが可能です。どうか安心してお任せください。
まとめ
外国人社員を受け入れる際には、採用した外国人社員だけでなく、受け入れ企業で働く日本人社員にも研修を実施する必要があります。
一方、外国人社員の採用に慣れていない企業においては、日本語研修や異文化理解研修、異文化コミュニケーション研修などの詳しい知見やノウハウがなく、研修体系の構築にお困りの担当者の方も多いのではないでしょうか?
明光グローバルには、外国人社員の受け入れに関するさまざまな教育・研修サービスがあります。外国人社員に関する研修などでお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。