高度人材ポイント制は、外国人材の能力を客観的に評価し、優秀な人材に対して在留上の優遇措置を与える制度です。この制度は2012年に導入され、学歴や職歴、年収などの項目ごとにポイントを設定し、合計70点以上を獲得した人材を「高度人材」として認定します。認定された外国人材には、在留期間の延長や永住許可要件の緩和など、さまざまな優遇措置が与えられます。
今回は、人事担当者が押さえておくべき制度の基本から、ポイント計算の具体的な方法、申請手続きの流れまで、実務的な観点から詳しく解説します。高度外国人材の採用を検討している企業様は、ぜひご参考ください。
高度人材ポイント制度とは?制度の目的と概要
高度人材ポイント制度は、日本の経済成長に貢献できる優秀な外国人材を積極的に受け入れるための制度です。
学歴、職歴、年収などの項目ごとにポイントを設定し、合計70点以上を獲得した外国人材を「高度人材」として認定します。認定された外国人材には、在留期間の延長や永住許可要件の緩和など、さまざまな優遇措置が与えられます。
高度人材ポイント制度の定義と3つの活動類型
高度人材ポイント制度は、専門的な知識や技術を持つ外国人材を評価・認定する仕組みです。外国人材の能力や実績を客観的に評価することで、代替することができない良質な人材を見極めることができます。
活動内容は次の3つに分類され、それぞれの特性に応じてポイントが設定されています。
高度人材ポイント制度の3つの類型
活動類型 | 活動内容 |
---|---|
高度学術研究活動 (高度専門職1号イ) | ・大学教授や研究者として研究・教育活動を行う ・日本の機関と契約を結んで研究指導を行う |
高度専門・技術活動 (高度専門職1号ロ) | ・ITエンジニアなど専門的な技術職として働く ・自然科学・人文科学分野の専門知識を活かして業務に従事する |
高度経営・管理活動 (高度専門職1号ハ) | ・会社経営者として事業の経営を行う ・管理職として組織のマネジメントに従事する |
それぞれの活動類型に応じて評価基準が設けられており、合計70点以上で高度人材として認定されます。
高度専門職1号と2号の違いと特徴
高度専門職ビザには「1号」と「2号」の2種類があり、それぞれ異なる特徴と優遇措置が設けられています。高度専門職1号は、新規に高度人材として認定された方に付与される在留資格です。
高度専門職1号を取得した場合、次の優遇措置を受けることができます。
- 在留期間が5年付与される
- 複数の在留資格活動が認められる
- 配偶者の就労が可能になる
- 一定条件下(親との同居など)で親の帯同が可能になる
- 入国・在留手続きが優先処理される
ただし、高度専門職1号を取得するには、高度人材ポイント制度において70点以上を獲得しなければなりません。
一方、高度専門職2号は、高度専門職1号として3年以上活動した方が移行できる在留資格です。高度専門職1号の優遇措置に加えて、次の特別な措置が与えられます。
- 在留期間が無期限になる(在留カードの更新は必要)
- 就労に関するほぼすべての活動が認められる
高度専門職2号はより広範囲に渡る優遇措置を受けることができるため、日本での長期的な就労と生活の自由度が高くなることが特徴です。
高度人材の育成と就労に必要なポイント要件
高度人材として認定されるには、合計70点以上のポイントが必要です。さらに、基準点は2つの区分に分かれています。
70点以上80点未満
- 高度人材として認定
- 永住許可申請までの在留期間が3年に短縮 ※通常は10年以上の在留が必要
- 在留期間5年が付与
- 親や家事使用人の帯同が可能
80点以上
- より優遇された高度人材として認定
- 永住許可申請までの在留期間が1年に短縮
- その他の優遇措置は70点以上と同様
なお、ポイント合計が70点未満の場合は、高度人材としての認定を受けることはできません。ただし、70点以上取れるかは個々の状況によって大きく異なるため、現時点でのポイントがいくつなのか正確に確認する必要があります。
高度人材ポイントの具体的な計算方法と加算条件
高度人材ポイントの計算方法は、基本項目と特別加算項目の2種類に大きく分けられます。基本項目には「学歴」「職歴」「年収」「年齢」があり、特別加算項目には「日本語能力」「研究実績」「資格」などがあります。
以上の項目を組み合わせることで、外国人材の能力を総合的に評価します。まずは、基本項目の具体的な計算方法について解説します。詳細なポイント計算表は、出入国在留管理庁の公式ページをご確認ください。
基本項目の計算方法(学歴・職歴・年収・年齢)
高度人材ポイントの基本項目では、4つの評価軸に分かれています。
基本的な評価項目
評価項目 | ポイント |
---|---|
学歴(最大30点) | ・博士号:30点 ・修士号:20点 ・学士号:10点 ・大学を卒業し又は同等以上の教育を受けた者:5点 |
職歴(最大25点) | ・10年以上:20点 ・7年以上:15点 ・5年以上:10点 ・3年以上:5点 |
年収(最大40点) | ・1,000万円以上:40点 ・800万円以上:30点 ・600万円以上:20点 ※年齢によって必要な年収基準が異なります |
年齢(最大15点) | ・~29歳:15点 ・~34歳:10点 ・~39歳:5点 |
※参照元:ポイント計算表(出入国在留管理庁)
高度経営・管理分野ではより高いポイントが付与されるため、詳細については「ポイント計算表」にてご確認ください。
研究実績や資格による加算ポイント
基本項目に加えて、研究や資格による実績でもポイントを加算できます。
研究実績や資格による加算項目
評価項目 | ポイント |
---|---|
研究実績による加算 (最大20点) | 次のいずれかに該当する場合、15〜20点が加算されます。 ・発明者として特許を取得 ・外国政府から研究補助金を3回以上獲得 ・学術論文データベースに掲載された論文が3本以上 ・上記以外と同等の研究実績が法務大臣に認可される |
資格による加算 (最大10点) | ・日本の国家資格1つ:5点 ・日本の国家資格複数(2つ以上):10点 ※資格は職務に関連するものに限ります |
※参照元:ポイント計算表(出入国在留管理庁)
なお、国家資格は弁護士、公認会計士、税理士、社会保険労務士などの業務独占資格や、技術士、中小企業診断士などの名称独占資格が対象となります。
研究実績や資格による加算ポイントについては、証明書類が必要になります。
- 特許の場合:特許証のコピー
- 研究実績:論文掲載証明や補助金交付決定通知書のコピー
- 資格関連:資格証明書のコピー
特別加算の対象となる条件と加算点数
特別加算条件では、日本での経験や言語能力、所属企業の特性などに応じてポイントを獲得できます。
特別加算の対象となる条件の加算項目
評価項目 | ポイント |
---|---|
日本での学習・言語に関する加算 | ・日本の大学・大学院卒業:10点 ・日本語能力試験N1保持:15点 ・日本語能力試験N2保持:10点 ※日本の大学卒業者はN2による加算不可 |
企業に関する加算 | ・イノベーション促進支援企業での就労:10点 ・中小企業での就労(試験研究費3%超):5点 ・成長分野における先端プロジェクト従事:10点 |
グローバル人材に関する加算 | ・世界大学ランキング300位以内の大学卒業:10点 ・スーパーグローバル大学卒業:10点 ・複数分野の修士号または博士号取得:5点 |
※参照元:ポイント計算表(出入国在留管理庁)
以上の特別加算は複数の組み合わせが可能で、基本項目と合わせることでより高いポイントを目指すことができます。
高度人材に認定された場合の優遇措置
高度人材として認定されると、通常の在留資格では受けられない優遇措置を受けることができます。
優遇措置は、高度人材とその家族が日本で快適に生活し、十分に能力を発揮できるよう設計されました。具体的には、在留期間の延長や活動範囲の拡大、家族の帯同に関する特例など、さまざまな優遇が用意されています。
ここでは、高度人材に認定された場合の優遇措置について解説します。
- 在留期間と活動範囲に関する優遇措置
- 家族の帯同に関する優遇措置(親・配偶者・家事使用人)
- 永住許可要件の緩和措置
在留期間と活動範囲に関する優遇措置
高度人材に認定されると、在留期間と活動範囲において大きな優遇措置を受けることができます。
在留期間に関する優遇
評価項目 | ポイント |
---|---|
高度専門職1号の場合 | ・最長5年の在留期間が付与される ・期間の更新が可能になる ・入国や在留手続きが優先的に処理される |
高度専門職2号の場合 | ・在留期間が無期限になる ・更新手続きが不要になる(在留カードの更新は必要) ・永住に近い安定的な在留が可能になる |
活動範囲に関する優遇
評価項目 | ポイント |
---|---|
複合的な活動が可能 | ・大学での研究と企業での事業経営を両立できる ・本業とは異なる分野での副業も認められる ・活動範囲の事前申請は不要になる |
優遇措置を受けられることで、高度人材は長期的な視点で安定して日本での活動に専念できます。
家族の帯同に関する優遇措置(親・配偶者・家事使用人)
高度人材とその家族が快適に日本で生活できるよう、家族の帯同に関する優遇措置が設けられています。
家族の帯同に関する優遇措置
評価項目 | ポイント |
---|---|
親の帯同に関する措置 | 認められる条件 ・世帯年収が800万円以上 ・7歳未満の子の養育が必要な場合 ・妊娠中の配偶者がいる場合 ※高度人材と同居することが条件 |
配偶者の就労に関する措置 | 就労制限の緩和 ・資格要件を満たさなくても就労できる ・フルタイムでの勤務が認められる ・在留資格の変更手続きが簡素化される |
家事使用人の帯同 | 受入れ条件 ・世帯年収1000万円以上:1名まで ※入国帯同型と家事事情型の2種類 |
以上の優遇措置により、家族全員で安定した生活基盤を築くことができます。
永住許可要件の緩和措置
高度人材として認定されると、永住許可申請までの必要在留期間が大幅に短縮されます。
永住許可申請までの必要在留期間短縮
評価項目 | ポイント |
---|---|
70点以上80点未満の場合 | ・必要在留期間:3年 ・継続して70点以上を維持 ・短縮前の期間:10年 |
80点以上の場合 | ・必要在留期間:1年 ・継続して80点以上を維持 ・最短の永住許可ルート |
ただし、申請時点のポイントだけでなく、過去の時点(70点以上の場合は3年前、80点以上の場合は1年前)からポイントを継続して維持している必要があります。
高度人材ポイント制による永住許可申請の特例
高度人材ポイント制による永住許可申請は、通常の永住申請とは異なる特例措置が設けられています。特に注目すべきは在留期間の大幅な短縮で、獲得ポイント数に応じて最短1年での申請が可能であることです。ただし、申請時にはさまざまな要件を満たし、適切な証明書類を提出する必要があります。
ポイント数による永住申請までの期間短縮
高度人材ポイント制による永住許可申請では、計画的なポイント管理が重要です。通常の永住許可申請では10年という長期の在留期間が必要ですが、高度人材として認定されることで大幅な短縮が可能になります。この制度を最大限活用するためには、入国時から計画的な準備が欠かせません。
たとえば、給与明細や資格証明書などの重要書類は入国時から丁寧に保管し、ポイントの変動要因となる転職や資格取得は慎重に検討する必要があります。また、定期的なポイントの見直しや確認を行うことで、申請時に必要な基準を確実に満たすことができます。
永住許可申請を成功させるには、入国から申請までの期間を通じて継続的なポイント管理が重要です。
永住許可申請に必要な具体的な要件
次に、永住許可申請に必要な具体的な要件について解説します。高度人材の永住許可申請には、一般的な永住申請の要件に加えて、特有の条件を満たす必要があります。
基本要件(全申請者共通)
評価項目 | ポイント |
---|---|
素行善良要件 | ・法令を遵守していること ・犯罪歴がないこと ・社会的に非難される行為をしていないこと |
独立生計要件 | ・安定した収入があること ・生活保護を受けていないこと |
公的義務の履行 | ・納税義務を果たしていること 例:社会保険料を適切に支払っている ・出入国管理法上の届出を行っていること |
基本要件は、申請者が日本社会の一員として責任ある生活を送っていることを確認するために設けられています。
また、高度人材特有の条件は次のとおりです。
- 継続的なポイントの維持すること(70点または80点以上)
- 最長の在留期間(原則3年以上)を保持すること
- 申請時の職務内容が高度人材の活動に該当すること
以上の具体的な要件から、永住許可申請では複数の要件を同時に満たす必要があるため、事前の十分な準備と計画が重要です。
申請時に必要な書類と証明資料
高度人材の永住許可申請には、一般の永住申請より多くの書類が必要です。必要とされている書類は次のとおりです。
申請時に必要な書類と証明資料
書類 | 内容 |
---|---|
申請者の身分関係 | ・永住許可申請書 ・証明写真(縦4cm×横3cm) ・パスポート ・在留カード |
経済状況の証明 | ・課税証明書(直近3年分) ・納税証明書(直近3年分) ・預貯金通帳のコピー ・年金・保険料の納付証明 |
ポイント証明資料 | ・高度人材ポイント計算表 ・学歴証明(学位記など) ・職務経歴証明書 ・年収証明書 ・資格証明書や研究実績資料 |
証明資料は、申請日から遡って一定の期間内に発行されたものが必要です。また、外国語の書類には、日本語訳の添付が求められます。
高度人材をご用命なら明光グローバルがおすすめ
高度人材の採用と受け入れには、専門的な知識と経験が必要です。企業はポイント計算から在留資格の申請、入社後の定着支援まで、さまざまな課題に取り組まなくてはなりません。
ここまで解説したような複雑な申請手続きは、企業にとっても大きな負担です。手続きを確実に進めるためには、専門家のサポートを受けることをおすすめします。
そこでご活用いただきたいのが、高度人材の採用と受け入れに豊富な実績を持つ、明光グローバルのサービスです。明光グローバルは、高度外国人材の採用から定着までをトータルでサポートし、多くの企業様から高い評価をいただいています。
最後に、明光グローバルとサービスの概要を紹介します。
明光グローバルとは
明光グローバルは、外国人材と日本企業の成長をサポートする総合人材サービスです。特定技能人材やITエンジニアの紹介から教育・研修サービスまで、外国人材の活用に関する幅広いソリューションを提供しています。
特に高度人材の分野では、在籍している外国人材の特徴には次のようなことが挙げられます。
- PHP、Java、React.JSなどの技術を持つITエンジニア
- 日本語能力試験N2・N3レベル以上が7割超
- 高い専門性と語学力を兼ね備えた人材が多数
企業の成長ステージに合わせて、初めて外国人材を採用する企業へのコンサルティングから、すでに採用している企業の課題解決まで、きめ細かなサポートを提供します。
明光グローバルのITエンジニア紹介サービスがおすすめの理由
明光グローバルのITエンジニア紹介サービスは、採用から定着までをトータルでサポートする総合支援体制が大きな特徴です。サービスが選ばれる主な理由は、次の3つの強みにあります。
強み | 内容 |
---|---|
安定的な人材確保と確かな選考 | ・SNSや提携教育機関を通じた豊富な人材プール ・母国語スタッフによる丁寧なスクリーニング ・企業ニーズに合わせた最適なマッチング |
充実した入社前後のサポート | ・定期的な面談による就業状況の確認 ・生活面での相談対応や各種支援 ・在留資格申請のサポート |
効果的な定着支援と能力開発 | ・独自開発の外国人向けオンライン日本語学習ツール「Japany」による日本語学習 ・継続的な教育研修プログラムの提供 ・エンゲージメント向上による離職率低下 |
包括的なサポート体制により、企業と外国人材の双方が安心して採用活動を進めることができます。特に高度人材の採用では、専門的なスキルや経験の評価に加え、日本での長期的なキャリア形成のサポートが重要です。
まとめ
高度人材ポイント制度は、専門的な知識や技術を持つ外国人材を評価・認定する重要な制度です。70点以上のポイントを獲得することで、在留期間の延長や永住許可要件の緩和など、さまざまな優遇措置を受けられます。
しかし、ポイントの計算や申請手続き、入社後の定着支援まで、企業側には多くの専門知識やノウハウが求められます。特に高度人材の採用・定着を成功させるためには、適切なサポート体制が欠かせません。
明光グローバルでは、ハイレベルな多国籍バイリンガルエンジニア(IT/電気電子/機械設計)に特化した人材紹介を行っています。業界の専門知識を持つバイリンガルコンサルタントが、求職者のスキルや経験を丁寧にスクリーニングし、最適なマッチングを実現します。
高度人材の採用や在留資格に関するご相談は、ぜひ明光グローバルまでお気軽にお問い合わせください。