グローバル化が進み、多様な価値観や背景を持つ人材が企業に加わる機会が増えてきました。日本企業の海外進出や外国人材の受け入れが進む中、企業にとって「グローバル人材の育成」や「職場への定着支援」は避けて通れない課題となっています。
一方で、現場では「せっかく採用してもすぐに辞めてしまう」「コミュニケーションがうまく取れずトラブルになる」といった悩みの声も多く聞かれます。その背景には、外国人材だけでなく、日本人社員側の受け入れ体制や異文化理解の不足が大きく関係しているケースも少なくありません。
今回は、そもそもグローバル人材とは何かという基本から、育成・定着のために必要な要素、そして具体的な対策までをわかりやすく解説します。
グローバル人材育成の概要
グローバル化が進む現代のビジネス環境では、多様なバックグラウンドを持つ人々と協働し、価値を生み出す力がますます求められています。その中で注目されているのが、「グローバル人材育成」です。
単に語学力や海外経験を持つ人材を育てるのではなく、異文化に対する理解や柔軟な思考力、チームでの協働力といったスキルを持った人材を育むことが、企業の競争力を左右する重要な課題となっています。
ここでは、まず「グローバル人材とは何か」を整理したうえで、なぜその育成が今、企業にとって必要不可欠なのかを解説します。
グローバル人材とは
グローバル人材という言葉を聞いたとき、まず思い浮かぶのは「英語が話せる人」「海外勤務経験がある人」といったイメージかもしれません。しかし、近年ではそれだけでは不十分とされるようになっています。
文部科学省などが参画する「産学連携によるグローバル人材育成推進会議」では、グローバル人材を「異なる文化的背景を持つ他者と協働し、価値を創造できる人材」と定義しています。
つまり、求められるのは語学力だけではありません。異文化への理解、柔軟な思考、多様性を尊重する姿勢など、さまざまな資質が重視されています。
「帰国子女」や「英語が堪能」というのはあくまで一要素に過ぎず、真の意味でのグローバル人材を育てるには、広い視野での教育・研修が必要です。
グローバル人材育成が必要な理由
外国人材の採用が増える一方で、離職率の高さやチーム内でのコミュニケーションエラーが問題になることも多くなってきました。たとえば、日本文化特有の「空気を読む」「はっきり言わないで察する」といったコミュニケーション文化に慣れず、戸惑う外国人材も少なくありません。
また、上司が曖昧な指示を出し、部下が「意図を察して動く」ことを期待する日本的な職場文化は、他国の価値観とは大きく異なる場合があります。その結果、誤解や摩擦が生まれ、外国人材が孤立してしまうこともあります。
こうした事態を防ぐためには、外国人材に日本の文化を押し付けるのではなく、日本人社員も異文化理解や多様性への感度を高め、共に成長する姿勢が求められます。企業のグローバル化を実現するためにも、「語学力」だけに頼るのではなく、異文化協働をリードできるグローバル人材の育成が不可欠です。
グローバル人材育成におけるよくある誤解
グローバル人材を育てたいと考えて取り組みを始めたものの、思ったような成果が出なかったという声は少なくありません。その背景には、「グローバル人材とは何か」についての認識のズレや、育成方法に対する誤った思い込みがあることが多いです。
ここでは、企業が陥りがちなよくある誤解を取り上げながら、グローバル人材育成を成功に導くために押さえておきたいポイントについて解説します。
- 「英語ができればOK」と考えてしまう
- 「文化の違い=マナーの違い」程度にしか捉えていない
- 外国人材にのみ押し付けてしまう
- 研修が一度きりで終わってしまう
「英語ができればOK」と考えてしまう
グローバル人材というと、「英語が話せる人」と捉えられることが少なくありません。確かに語学力は大切な基礎スキルですが、それだけでは信頼関係の構築やチームビルディングは難しいのが現実です。
たとえば、いくら英語が流暢でも、「相手の文化的背景を尊重する姿勢」や「配慮あるコミュニケーション」がなければ、うまくいかないケースは多々あります。また、英語ができる社員を「とりあえずグローバル対応できる人材」として業務へアサインし続けてしまうと、本人に大きな負荷がかかり、モチベーション低下にもつながることもあります。
実際のグローバルな現場では、語彙や文法の正しさ以上に、「聞く姿勢」や「沈黙の意味」「遠回しな表現の意図」など、相手の真意を読み取る力が求められます。語学研修だけに偏ると、実際の現場で成果を出すことは難しいでしょう。
「文化の違い=マナーの違い」程度にしか捉えていない
「文化の違い」と聞いて、あいさつの仕方や礼儀作法のような表面的なマナーを思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、異文化の本質はもっと深い部分にあります。
たとえば、意思決定の進め方、上司と部下の関係性、会議での発言の仕方、時間の感覚など、業務全体の進め方に関わる違いが存在します。日本では当たり前の「5分前行動」も、他の国では「時間ぴったり」や「数分の遅れは想定内」といった感覚の違いが見られます。
こうした違いを理解せず、日本の基準だけで「正しい・間違っている」と判断してしまうと、摩擦が生まれ、外国人材の定着にも悪影響を与えます。グローバルな環境では、文化の違いを否定するのではなく、お互いの文化を理解し、認識を擦り合わせていくことが重要です。
外国人材にのみ押し付けてしまう
多くの企業では、外国人材に「日本のやり方に慣れてもらう」ことを目標にしてしまいがちです。しかし、それだけでは本当の意味でのグローバル化とはいえません。
文化や考え方の違いを尊重し、企業側も柔軟に対応していく「双方向の歩み寄り」がなければ、多様な人材が持つ力を十分に引き出すことはできません。受け入れる側である日本人社員の意識変革や、環境整備も同時に進めることが、組織全体の成長につながります。
一方的に適応を求めるのではなく、「一緒に働くためにはどうすれば良いか」を考える姿勢が、外国人材の定着や活躍を支える鍵となります。
研修が一度きりで終わってしまう
グローバル人材育成の取り組みが「単発の研修だけ」で終わってしまっているケースも多く見受けられます。研修を受けただけでは、学んだ内容が日常業務に定着せず、期待される行動変容が起きにくいのが実情です。
重要なのは、「実践→振り返り→フィードバック→再実践」といった育成のサイクルを繰り返すことです。現場で試し、失敗や成功を振り返り、次の行動につなげていくといった繰り返しが成長を加速させます。
また、管理者や人事部門が継続的に関わり、研修後のフォローアップや定期的な評価を行うことも大切です。育成は「一度きり」で終わるものではなく、継続的に支援する仕組みが必要不可欠です。
グローバル人材に求められるスキル・資質とは
グローバルなビジネス環境で活躍するには、語学力だけではなく、多様なスキルや資質が求められます。ここでは、国際的な舞台で成果を出すために必要な能力について解説します。
- 語学力+α
- 異文化理解とコミュニケーション力
- 自分と組織を理解し行動できる主体性
語学力+α
グローバルに活躍するには、業務に必要な日本語や英語のスキルは不可欠です。しかし、実際のビジネス現場では、それだけでは十分とはいえません。言葉の意味を理解するだけでなく、相手の意図や感情をくみ取る「理解力」も欠かせない要素です。
たとえば、言葉には出さなくても、相手のジェスチャーや表情、文脈から気持ちを読み取る力、つまり「非言語コミュニケーション」の重要性も高まっています。こうした対話力があることで、文化の異なる相手とも円滑な意思疎通が可能になります。
また、習得した語学力を、実際のビジネスシーンで柔軟に使いこなす「実践力」も求められます。たとえば、相手や場面に応じて言葉づかいや伝え方を調整したり、言葉のニュアンスを使い分けたりするスキルは、成果に直結します。
語学力はあくまで必要なスキルの一要素に過ぎません。そこにプラスアルファで理解力や応用力を掛け合わせることで、国籍や文化を越えたコミュニケーションが成立します。
異文化理解とコミュニケーション力
国や地域によって、価値観や習慣、ビジネスマナーは大きく異なります。グローバルな職場で信頼関係を築くには、こうした違いを理解し、尊重する姿勢が不可欠です。
相手の文化的背景を知ろうとする姿勢を持ち、その上で適切な言動を選べる柔軟性は、異文化コミュニケーションで最も重要な要素の一つです。たとえば、日本では「遠回しな表現」が一般的でも、他の文化圏では「率直な伝え方」が求められる場合があります。
そういった違いを踏まえ、相手との共通理解を得ることが、コミュニケーションエラーや業務上のミスを未然に防ぐポイントとなります。
自分と組織を理解し行動できる主体性
グローバルな環境では、自分の意見や価値観を明確に持ちながらも、他者との違いを受け入れ、調整していく姿勢が求められます。
また、変化の多いグローバルビジネスでは、上からの指示を待つのではなく、状況に応じて自ら考え、積極的に行動できる人材が高く評価されます。主体性を持って行動できることは、周囲からの信頼にもつながります。
さらに、個人としての視点だけでなく、所属する組織のミッションやビジョンを理解し、その中で自分の役割を自覚することも重要です。
個人の意思を持ちながらも、チームの一員として力を発揮できることが、グローバル人材に求められる資質だといえるでしょう。
グローバル人材育成のポイントと実践のコツ
グローバル化が進むビジネス環境において、企業が持続的に成長していくためには「グローバル人材」の育成が欠かせません。ここでは、効果的なグローバル人材育成を実現するためのポイントと実践のコツについて解説します。
- 求めるグローバル人材の人物像を明確にする
- 育成のゴールを設定し社内共有する
- 効果測定の仕組みを事前に設計しておく
- 一度の研修で完結させようとしない
- 語学だけでなく文化理解・職場受け入れも意識する
- 外部の専門機関を適切に活用する
求めるグローバル人材の人物像を明確にする
まず重要なのは、企業がどのような「グローバル人材」を必要としているかを明確にすることです。企業によって事業展開や戦略は異なるため、一律の定義ではなく、「自社にとっての理想像」を具体的に言語化しておくことが求められます。
たとえば、語学力に加えて、価値観の多様性を受け入れる姿勢や、異文化への感受性、国際的な環境でもリーダーシップを発揮できる力など、必要な要素を洗い出しておきましょう。また、部署や職種によって求められる資質も異なるため、組織全体で共通認識を持つことが大切です。
育成のゴールを設定し社内共有する
研修や育成施策を実施する際には、「何のために行うのか」「研修後にどう成長していてほしいのか」といった目的とゴールを明確にする必要があります。目的が曖昧なままだと、受講者のモチベーションも上がりません。
また、設定した目標は本人だけでなく、上司やチームメンバーと共有することで、一体感が生まれ、育成効果の最大化につながります。社内全体でグローバル人材育成の意義を共有することで、取り組みが形骸化せず、継続的な成果へとつながっていきます。
効果測定の仕組みを事前に設計しておく
研修の成果を正しく評価するためには、あらかじめ効果測定の仕組みを設計しておくことが重要です。TOEICや理解度テストといった定量的なデータに加えて、上司や同僚からのフィードバックなど定性的な評価も取り入れると、より多角的な効果測定が可能になります。
こうした評価結果は、一度きりで終わらせるのではなく、次回以降の研修内容や方法に反映することで、プログラムの質が継続的に向上していきます。ゴールと測定指標はセットで設計し、施策の効果を可視化する体制を整えることが重要です。
一度の研修で完結させようとしない
単発の研修やセミナーでは、知識は得られても実践力の定着までは至らないケースが多く見られます。グローバル人材の育成には、研修後の実践機会やフィードバックの場が不可欠です。
たとえば、研修→実践→振り返り→再学習というサイクルを回すことで、理解が深まり、行動に変化が現れます。一度きりの研修で完了させようとせず、継続的かつ長期的な視点で育成体制を構築することが求められます。
語学だけでなく文化理解・職場受け入れも意識する
これまでお伝えしてきたように、グローバル人材育成のためには「語学力の向上」だけでは十分ではありません。異文化を理解し、異なる価値観を尊重できる姿勢や、それを受け入れる職場環境の整備も同様に重要です。
外国人材が職場に適応できるよう支援する一方で、日本人社員にも異文化対応力を育むための研修を提供することで、双方が安心して働ける環境が生まれます。ロールプレイやワークショップといった体験型のプログラムを取り入れると、より実践的で効果的な学びが期待できます。
外部の専門機関を適切に活用する
外国人材の育成や受け入れ態勢の整備をすべて社内で完結させるのは、現実的に難しいケースも少なくありません。特に専門性の高い分野や、社内にノウハウが蓄積されていない領域については、外部の専門機関と連携することで、より質の高い対応が可能になります。
たとえば、明光グローバルでは、外国人材に向けた実践的な日本語教育プログラムに加え、日本人社員向けの異文化理解研修やコミュニケーション研修も提供しています。外国人と日本人、双方の理解と歩み寄りを促すことで、チーム全体の生産性や職場の一体感にも好影響をもたらします。
また、こういったプログラムは、企業ごとの課題や人材の特性に応じて内容を柔軟にカスタマイズできるため、自社に最適な育成方法を取り入れることができます。課題に合わせて適切な研修を選ぶことで、より実効性の高い人材育成を実現できるでしょう。
グローバル人材の育成は明光グローバルにお任せください
グローバル化が進む現代において、多様な価値観を受け入れ、異文化の中でも柔軟に活躍できる人材の育成は、多くの企業にとって重要な経営課題のひとつとなっています。しかし、「何から始めればよいかわからない」「社内に育成のノウハウがない」といった声も少なくありません。
明光グローバルはそんな企業の悩みに寄り添い、外国人材だけでなく、日本人社員も含めた組織全体のグローバル対応力の強化を支援しています。外国人材に対する語学教育・ビジネスマナー研修はもちろん、日本人社員に向けた異文化理解や受け入れ体制づくりに関する研修も提供しています。双方向のアプローチで、多種多様な文化の人材が協働できる組織づくりをサポートします。
グローバル人材や外国人材の育成には、ぜひ明光グローバルのサービスをご活用ください。最後に、明光グローバルの概要と、提供するサービスを紹介します。
明光グローバルとは
明光グローバルは、外国人材の就労機会の創出と育成を通して、日本企業の持続的な成長をサポートする教育系人材サービスです。
40年以上の個別指導の教育実績、そして10年以上の日本語教育の実績を持つ明光ネットワークジャパングループの知見を活かし、外国人材の育成と企業の人材課題解決に特化したサービスを提供しています。
JCLIや早稲田EDU日本語学校での豊富な教育ノウハウを活かし、特定技能試験対策から業界別の専門教育まで、幅広いニーズに対応しています。外務省からEPA事業を4期連続で受託するなど、高い信頼性と実績を誇ります。
明光グローバルの主要サービス
事業 | サービス |
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教育研修事業 | ・eラーニングによる日本語教育(スマホアプリに対応) ・対面/オンラインによる日本語レッスン ・外国籍人材と日本人に向けた各種研修プログラム ・外国籍人材に向けた各種試験対策講座 |
人材紹介事業 | ・特定技能人材の紹介 ・外国籍エンジニアの人材紹介 ・教育伴走型の登録支援サービス |
特定技能人材やエンジニアの紹介から、外国人材向けの教育・研修サービスまで、幅広いノウハウを提供しています。単なる日本語教育にとどまらず、企業での実践力を重視した総合的な人材育成を行っています。
各種研修プログラム
明光グローバルでは、外国人材向けの日本語教育だけでなく、日本人社員や管理職を対象とした異文化理解・コミュニケーション研修を提供しています。
サービス | 概要 |
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各種研修プログラム | 【外国人材向け】新入社員研修、異文化理解研修等 【日本人社員向け】外国人材受入れ研修等 |
外国人材を職場に迎え入れるにあたっては、「外国人だけ」に焦点を当てた研修では不十分です。むしろ、日本人社員側が異文化に対する理解を深め、受け入れ体制を整えることが、円滑なコミュニケーションや長期的な定着につながります。
特に、日本人社員が異文化への配慮や多様な価値観を尊重する姿勢を持つことで、外国人材にとっての心理的な安心感を育みやすくなります。こうした背景を踏まえ、明光グローバルでは日本人向けの研修プログラムも数多く用意しています。
研修名 | 内容 | 主な対象者 |
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異文化理解研修 | ・自文化の特徴と他文化との違いを把握し、説明できる力をつける ・世界各国のコミュニケーションスタイルや価値観を知る ・日本語の特異性や外国人が感じる難しさを理解する ・外国人材の日本語力をレベル別に把握する | 多国籍環境で働く日本人社員 |
外国人材受け入れの基本と心理的安全性研修 | ・外国人を受け入れる側として知っておくべき基礎知識を学ぶ ・心理的安全性の重要性と、職場への取り入れ方を理解する ・外国人が定着しやすい職場づくりのポイントを学ぶ ・離職の要因と、自社の職場環境のセルフチェック方法を知る | 外国人材の受け入れに関わる日本人社員全般 |
異文化マネジメント研修 | ・国籍別に異なる価値観や行動傾向(国民性)を学ぶ ・各国におけるマネジメント手法や評価方法の違いを理解する ・外国人材に伝わりやすい「やさしい日本語」の使い方を身につける | 多国籍チームをマネジメントする日本人管理職・上司 |
すべての研修は、企業ごとの業種・規模・課題に合わせてカスタマイズ可能です。対面とオンラインの両方に対応しており、スポットでの単発研修から長期的なプログラムまで、柔軟に対応しています。
「外国人材との関係づくりに悩んでいる」「異文化によるすれ違いをなんとかしたい」といったお悩みがあれば、ぜひ一度ご相談ください。現場目線での支援に強い明光グローバルが、貴社の課題解決を全力でサポートいたします。
まとめ
グローバル人材の育成は、語学力だけでなく、異文化理解や主体性、多様な価値観を受け入れる柔軟性など、複合的なスキルと姿勢が求められます。また、単発の研修ではなく、現場での実践やフィードバックを繰り返す「育成のサイクル」が不可欠であり、日本人社員を含めた全社的な取り組みが必要です。こうした複雑な課題に対しては、専門的な知見と豊富な実績を持つ外部機関と連携するのが効果的です。
明光グローバルでは、外国人材向けの日本語教育はもちろん、日本人社員向けの異文化理解研修や組織全体で取り組めるカスタマイズ型の研修プログラムを提供しています。自社に合ったグローバル人材育成を実現する第一歩として、ぜひ明光グローバルの研修サービスをご活用ください。