特定技能人材が訪問介護分野において解禁されれば、労働力が不足している介護業界にとって大きな朗報となるでしょう。今回は、2025年春に予定されている訪問介護分野での特定技能解禁について詳しく解説します。
特定技能制度の概要から、訪問介護分野の現状、そして解禁後の展望まで幅広く網羅しています。この記事をお読みいただければ、訪問介護における特定技能外国人材活用の全体像が把握でき、具体的な準備や対策を立てられるようになるでしょう。
特定技能制度とは
特定技能制度とは、日本の労働力不足が著しい分野で、一定の専門性や技能を持つ外国人材の就労を認める制度です。2019年4月にスタートし、現在では14の産業分野で外国人労働者の受け入れが可能になりました。この制度の概要は次のとおりです。
特定技能制度の概要
項目 | 内容 |
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目的 | 人手不足が顕著な産業分野における人材確保 |
対象分野 | 介護、建設、自動車運送業、農業など14分野 |
在留資格 | 特定技能1号と2号の2種類がある |
在留期間 | 特定1号は通算で最長5年、特定2号は更新回数に制限なし |
技能水準 | 各分野で定められた試験等による確認が必要 |
日本語能力 | 生活や業務に必要な日本語能力の証明が必要 |
参照元:外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組(出入国在留管理庁)
在留資格は「特定技能1号」と「特定技能2号」に分かれています。特定技能1号の場合は日本での滞在期間は最長で5年間と定められているため、期間が終わるまでに必要な技能と日本語能力を身につけることが求められます。
また、特定技能1号では、原則として家族を呼び寄せることはできません。外国人を受け入れる企業や団体には、彼らの生活をサポートする義務が課せられています。なお、介護分野でも特定技能外国人の受け入れが進んでおり、2023年10月時点で約2万2千人の外国人材が活躍しています。
参照元:「外国人雇用状況」の届出状況表一覧 別表9(厚生労働省)
訪問介護分野における特定技能制度の現状
2024年現在、訪問介護分野では、技能実習生を含む特定技能外国人の就労が認められていません。というのも、訪問介護は利用者の自宅で1対1のケアが必要になるため、次の能力が不可欠とされているからです。
- 高齢者との高度なコミュニケーション能力:訪問介護では、利用者や家族とコミュニケーションを取る機会が多く、施設内での介護と比べ、より高度なコミュニケーション能力が求められる
- 日本の生活様式や文化への深い理解:利用者のご自宅へ訪問して介護を行うため、日本の生活習慣や文化への深い理解が必要とされている
- 単独作業による適切な判断力:介護者が一人で対応するケースも多いため、より高度な知識と経験が要求され、サービスの品質管理も問われる
日本での滞在期間が比較的短い技能実習生や特定技能外国人にとって、コミュニケーション能力や日本文化を深く理解することは容易ではありません。
しかし、訪問介護分野の人手不足は深刻化の一途をたどっています。2022年度の有効求人倍率は15.53倍と、介護業界全体の3.79倍を大きく上回っているのが現状です。
引用元:第220回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)「資料訪問介護員の人手不足の現状 36p」(厚生労働省)
この危機的状況を受け、業界からは特定技能外国人や技能実習生の活用を求める声が高まっています。なお、在留資格「介護」で就労している介護福祉士については、日本人の訪問介護員等と同様、以前から訪問介護に従事することが認められています。
訪問介護分野での特定技能解禁
2024年6月19日の審議会で、厚生労働省はこれまで訪問介護への従事が認められていなかった特定技能生を含む特定技能外国人材に対し、一定の条件を満たせば訪問介護サービスへの従事を認める方針が示されました。
審議会で示された方針
項目 | 内容 |
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対象となる在留資格 | ・特定技能1号 ・技能実習生 ・EPA(経済連携協定)に基づく介護福祉士候補者 |
解禁される時期 | ・早ければ2025年春にも実施される予定 |
主な条件 | ・介護職員初任者研修の修了 ・利用者と日本語で十分に意思疎通ができること ・事業者による適切な研修の実施 |
※参照元:外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会 中間まとめ(厚生労働省)
解禁されれば、外国人材が新たに訪問介護分野で活躍できる環境が整うため、人手不足解消への期待が高まっています。
訪問介護事業に特定技能人材を受け入れる際に直面する課題
訪問介護事業における特定技能人材の受け入れは、人手不足解消の期待がある一方で、直面する課題も考えられます。言語や文化の違い、業務の特性に関する問題、そして受け入れ側の体制整備など、多岐にわたる課題への対応は欠かせません。
ここでは、訪問介護事業に特定技能人材を受け入れる際に直面する課題について解説します。
- 利用者とのコミュニケーションや対応スキル
- 自動車の運転業務
- 受け入れ態勢の整備
課題を適切に解決することが、外国人材の活用と質の高い介護サービスの両立につながるでしょう。
利用者とのコミュニケーションや対応スキル
訪問介護において、利用者とのコミュニケーションは極めて重要です。特に特定技能人材にとって、大きな課題となるでしょう。具体的には、次の点が課題とされています。
訪問介護における特定技能人材を活用する際の課題
課題 | 内容 |
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日本語能力 | ・高齢者特有の話し方への対応 |
日本文化への理解 | ・日本の生活様式への理解 ・高齢者特有の習慣への適応 |
非言語コミュニケーション | ・表情や身振り手振りの理解と活用 ・文化による違いの認識 |
緊急時対応 | ・体調急変や事故時の迅速な判断 |
継続的なスキル向上 | ・介護技術の向上 ・日本語能力の向上 |
利用者・家族の理解 | ・外国人材に対する不安や偏見 |
いずれの課題もコミュニケーションによる対応がベースになっているため、継続的なスキル向上は欠かせません。そのため、事業者には課題解決に向けた取り組みが求められます。
- 訪問介護や日本の生活様式を理解させるための総合的な研修の実施
- 一定期間同行してOJTを実施
- 個別のキャリアアップ計画を作成
- 定期的なフォローアップと評価システムの導入
以上の取り組みを通じて、特定技能人材が利用者の信頼を得て、安心してサービスを提供できる環境を整えることができます。同時に、利用者や家族に対しても、外国人材の受け入れについて丁寧に説明し、理解を得る努力が必要でしょう。
自動車の運転業務
訪問介護において、自動車の運転は利用者宅への移動手段として欠かせません。しかし、特定技能人材は来日時点で、日本の運転免許を所持していないことが想定されるため、次のような対策を講じる必要があります。
自動車運転業務の対策
対策 | 内容 |
---|---|
運転免許の取得 | ・多言語に対応した自動車教習所での受講 ・出身国で取得した免許の切り替え ※国際免許を所持している場合は日本でも運転可能 |
代替移動手段の活用 | ・バスや電車などを活用した移動 ・自転車での移動 |
日本人スタッフとの連携 | ・日本人の同僚と同行 ・送迎による移動 |
対策を組み合わせることで、特定技能人材の円滑な業務遂行を支援できるでしょう。ただし、注意しなければいけない点もあります。
- 運転免許取得に時間と費用がかかる
- 代替移動手段を使用した場合の移動時間が増加する
- 安全面での継続的な教育が必要になる
- 天候や緊急時の対応が必要になる
地域の特性や利用者のニーズに合わせて、最適な方法を選択することが重要です。同時に、特定技能人材の育成と定着を図るため、長期的な視点での支援体制が鍵となるでしょう。
受け入れ態勢の整備
訪問介護分野で特定技能人材を効果的に活用するためには、企業や介護事業者が適切なサポート体制を整える必要があります。受け入れ態勢の整備は、単なる法的要件を満たすだけにとどまらず、人材の定着と質の高いサービス提供につながるでしょう。
具体的な受け入れ体制の整備は、次のとおりです。
受け入れ体制の整備
項目 | 内容 |
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日本語学習支援 | ・オンラインツールを活用した自主学習環境の整備 ・定期的な日本語能力評価と個別フィードバックの実施 |
日本文化への理解促進 | ・地域の文化行事への参加 |
メンター制度の導入 | ・日本人スタッフによる一対一の指導体制の整備 ・メンター自身のスキルアップ研修の実施 |
キャリアアップ計画 | ・資格取得支援制度の整備(例:介護福祉士資格取得支援) ・管理職登用を視野に入れた長期的な育成プログラム |
生活支援体制の構築 | ・安定した住居の確保支援 ・行政手続きや医療機関受診時の通訳サポート |
ICTを活用した業務効率化 | ・AIを活用した翻訳ツールの提供 ・オンライン研修システムの整備 |
※参照元:外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会 中間まとめ(厚生労働省)
これらの取り組みは、厚生労働省が示す5つの要件(研修実施、OJT、キャリアアップ計画、ハラスメント対策、ICT活用)を満たすとともに、特定技能人材の定着率向上や業務効率の改善につながります。
日本語教育や介護福祉士の試験対策は明光グローバルへお任せください
特定技能人材の活用が進む中、介護福祉士の資格取得は重要な課題となっています。明光グローバルは、外国人従業員の日本語教育から介護福祉士の試験対策まで、総合的なサポートを提供するサービスです。最後に、明光グローバルについて、次の項目について紹介します。
- 明光グローバルの概要
- 外国人従業員への日本語教育
- 介護福祉士の試験対策サービス
- 明光グローバルの強み
明光グローバルの概要
明光グローバルとは、明光義塾を運営する明光ネットワークジャパンのグループ会社である株式会社明光キャリアパートナーズが、外国籍人材のご紹介~教育・定着までを支援するワンストップサービスです。主に、次のサービスを展開しています。
明光グローバルのサービス内容
サービス | 内容 |
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特定技能人材紹介 | ・特定技能外国人の紹介と登録支援を行い、企業のニーズに合った人材をマッチング |
ITエンジニア紹介 | ・ITエンジニアの採用・定着に向けたコンサルティング |
外国人社員向け 各種教育・研修サービス | ・オンライン日本語学習サービス「Japany(ジャパニー)」を中心に、日本語レッスン、各種研修を提供 |
明光グローバルの目標は、外国人材が日本の職場で十分に能力を発揮し、キャリアを構築できるよう支援することです。最新の教育システムと経験豊富な講師陣を組み合わせ、企業と外国人材双方のニーズに応える効果的な学習プログラムを提供しています。
外国人従業員への日本語教育
明光グローバルは、外国人材の日本語能力の向上を総合的にサポートする教育サービスです。日本語教育プログラムは、単なる試験対策にとどまらず、実際の職場で必要とされるコミュニケーション能力の育成に重点を置いています。教育プログラムには、次のようなものがあります。
日本語教育プログラム
サービス名 | 内容 |
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オンライン日本語学習サービス 「Japany(ジャパニー)」 | ・1,200以上のレッスン動画講義(e-ラーニング) ・JLPT対策や特定技能試験対策に対応 ・学習者の進捗状況を確認できる機能 |
日本語レッスン | ・明光基準を満たしたリアルタイムレッスン ・話す、書く能力を重視した実践的トレーニング ・各業界に特化した面接対策講座 |
日本語能力測定試験 | ・コミュニケーション能力や日本人らしい表現力を総合的に評価 ・採用時や人事評価の指標として活用可能 |
各種研修 | ・異文化理解研修 ・ビジネスマナー研修 ・接遇、セールス研修 |
外国人従業員への日本語教育を通じて、日本の職場で円滑にコミュニケーションを取り、その能力を最大限に発揮できるよう支援しています。また、企業の人材育成担当者向けに、学習者の進捗管理や効果測定のためのツールも提供しており、効率的な人材育成をバックアップしてくれるでしょう。
介護福祉士の試験対策講座
明光グローバルは、外国人向けに特化した介護福祉士の試験対策講座を提供しています。外国人受験者特有の課題に対応しており、効果的な学習方法を取り入れているのが特徴です。
介護福祉士の試験対策講座
特徴 | 内容 |
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段階的学習プラン | ・基礎日本語から専門知識まで、レベルに応じた学習 ・N5からN2以上まで、幅広い日本語能力に対応 |
実践的な訓練 | ・語彙力、読解力強化の集中トレーニング ・実践的なケーススタディによる知識の定着 ・実際の介護現場を想定した実技対策 |
柔軟な学習形態 | ・講座の実施方法(オンライン・対面いずれかを選択可) ・受講人数:企業様のご要望に応じて柔軟に対応可能 |
専門性の高いサポート | ・介護現場経験のある日本語教師による指導 ・介護の日本語教育専門家による監修 |
介護福祉士の試験対策講座は、日本語能力の向上と介護専門知識の習得を、同時に進められます。また、外国人材がつまずきやすいポイントも網羅されているので、不安なく試験に挑むことができるでしょう。
明光グローバルの強み
明光グローバルは、外国人向け介護福祉士試験対策において、次の強みを持っています。
明光グローバルの強み
強み | 内容 |
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確かな実績 | ・EPA事業でベトナム現地日本語教育事業を2年連続で受託 ・90%以上のEPA候補生がJLPT N3に1年で合格 |
教育ノウハウ | ・40年にわたる塾事業の経験を活かした試験対策カリキュラム ・過去問分析に基づく効率的な学習教材の開発 |
専門的な日本語教育 | ・2校の日本語学校を運営 ・年間2,000人以上の留学生受け入れ実績 |
現場に即した指導 | ・介護事業所での勤務経験を持つ日本語教師による研修 ・実践的な知識を活かした国家試験対策 |
専門家の監修 | ・東京都立大学名誉教授・西郡仁朗氏によるカリキュラム監修 |
N3レベルの合格率が90%を超えていることからも、明光グローバルが開発した試験対策は多くの受験者に対して効果が見込めます。
まとめ
訪問介護における特定技能外国人材の活用について、制度の概要から解禁に向けた動きまで詳しく解説しました。
- 2025年春から、特定技能外国人材の訪問介護への従事が認められる見込み
- 従事する要件として介護職員初任者研修の修了が必要
- コミュニケーション能力や日本文化への理解が重要
- 自動車運転業務や受け入れ態勢の整備も検討が必要
特定技能外国人材の訪問介護への参入は、深刻な人手不足に悩む訪問介護業界にとって重要な施策となります。事業者は制度の動向に注意しつつ、外国人材の育成と定着に向けた体制の整備に取り組むことが求められるでしょう。
なお、外国人材の日本語教育や介護福祉士試験対策には、明光グローバルのサービスの活用も検討してみてください。