在留資格「技術・人文知識・国際業務」では、原則としてコンビニのレジ打ちや品出しといった一般的な業務(単純労働)だけに従事することはできません。しかし、特定の条件下や別の在留資格であれば可能になるケースもあります。
今回は、専門職向けの在留資格「技術・人文知識・国際業務」の概要から、コンビニ業務が原則不可とされる理由を詳しく解説します。さらに、コンビニ業務を含む形で外国人を雇用するための代替策(専門業務への付随、特定活動46号、永住者等)についても紹介します。外国人材の採用をご検討中の企業担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」とは
在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、専門スキルを持つ外国人が日本で働く際の就労資格です。ここでは、在留資格「技術・人文知識・国際業務」の概要と、3つの分野について詳しく解説します。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」の概要
「技術・人文知識・国際業務」は、専門的な技術や知識、国際的な感覚を持つ外国人材が、日本国内で働くための代表的な在留資格の一つです。この在留資格の対象業務と取得要件は次のとおりです。
■対象業務
- 自然科学分野:理学、工学などの自然科学分野の専門技術・知識を要する業務
例:エンジニア、研究開発職 など - 人文科学分野:法律学、経済学、社会学など、人文科学分野の専門知識を要する業務
例:マーケティング、経理、法務、企画 など
- 国際的業務:外国特有の文化に根差した考え方や感受性が必要な業務
例:通訳、翻訳、語学指導、デザイナー など
■取得要件
- 学歴要件:以下のいずれかを満たしていること
・関連分野を専攻して大学を卒業(または同等以上の学歴を有する)
・日本の専門学校を卒業(関連分野) - 実務経験要件:上記の学歴要件を満たさない場合
・技術・人文知識分野:関連する業務で10年以上の実務経験
・国際業務分野:関連する業務で3年以上の実務経験
在留期間は「5年、3年、1年、3ヶ月」のいずれかが許可され、更新もできるため、日本での中長期的なキャリア形成につながります。専門分野で活躍する外国人材を採用する上で、企業がまず知っておくべき基本の在留資格といえるでしょう。
参照元
「技術」に関わる仕事
「技術・人文知識・国際業務」のカテゴリーの一つである「技術」分野は、主に理学、工学、ITといった自然科学系の専門知識や技術を必要とする業務が該当します。大学や専門学校などで習得した専門的なスキルを活かして、日本の産業界に貢献することが期待される分野です。
「技術」に関わる仕事では、次のような知識や職種が対象となります。
項目 | 内容 |
---|---|
求められる主な知識(技術分野) | ・情報処理(IT関連技術) ・工学(機械、電気・電子、建築、土木など) ・農学、林学、水産学 ・物理学、化学、生物学 ・その他、自然科学に分類される専門知識・技術 |
主な職種例 | ・システムエンジニア(SE)、プログラマー、ネットワークエンジニア ・機械設計・開発エンジニア、電気・電子回路設計者 ・建築士、土木施工管理技士(設計・管理業務) ・品質管理、生産技術、生産管理(専門知識を要するもの) ・研究開発職、技術コンサルタント |
業務内容の特徴は、単に指示された作業を行うのではなく、専門知識に基づいた設計、開発、分析、システム構築、技術指導などが中心になります。また、高度な専門性が求められ、自らの知識や技術を活かして判断・実行する業務に従事することが前提です。
このように、「技術」分野は、日本の技術革新や産業発展に直接貢献するような、専門性の高い理系職種をカバーしていると理解しておきましょう。
「人文知識」に関わる仕事
「人文知識」分野は、法律学、経済学、経営学、社会学といった人文科学(文系)分野の専門知識を活かして行う業務を対象としています。大学等で学んだ専門知識や、関連する実務経験を通じて培われた知見を、日本企業の活動に役立てることが目的です。
「人文知識」に関わる仕事では、次のような知識や職種が対象となります。
項目 | 内容 |
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求められる主な知識(人文分野) | ・法律学 ・経済学、経営学、商学 ・会計学、簿記 ・社会学 ・教育学 ・その他、人文科学に分類される専門知識 |
主な職種例 | ・企画、営業(国内・海外) ・マーケティングリサーチャー、広報・宣伝 ・人事、総務(専門知識を要するもの) ・経理、財務、会計 ・法務担当、コンプライアンス ・経営コンサルタント、金融アナリスト ・貿易事務(専門知識を要するもの) |
「人文知識」分野の業務は、定型的な事務作業(例:データ入力、書類整理、電話応対のみ)ではなく、専門知識に基づいた調査、分析、企画立案、契約交渉、専門的な判断、管理業務などが中心です。
企業の経営戦略や組織運営に直接関わるような、高度な専門性が求められるため、企業経営を支えるキーパーソンとなる人材が対象となります。
「国際業務」に関わる仕事
「国際業務」分野は、外国人材が持つ母国の文化や言語に関する知識、あるいは外国特有の思考や感受性を必要とする業務が対象となります。学術的な専門知識だけでなく、外国人材ならではのバックグラウンドを活かせる点が特徴です。
「国際業務」に関わる仕事では、次のような知識や職種が対象となります。
項目 | 内容 |
---|---|
求められる主な知識(国際業務分野) | ・特定の外国語に関する高度な能力(ネイティブレベル) ・母国の文化、社会、生活様式、歴史などに関する深い理解 ・外国特有の思考様式や感受性、価値観 ・国際的なビジネス慣習やマナーに関する知識 |
主な職種例 | ・通訳、翻訳 ・語学学校などの語学指導員 ・海外向け広報・宣伝、マーケティング ・外国人顧客向けの接客、営業、コンサルティング ・海外市場リサーチ、バイヤー ・デザイナー(外国の文化や感性を活かすデザイン業務) ・貿易業務(海外との折衝・調整が主となるもの) |
なお、「国際業務」分野の取得要件は、大学卒業等の学歴要件、または関連業務について3年以上の実務経験のいずれかで満たすことが可能です。(※翻訳・通訳、語学指導については大学卒業が原則必要)。
企業のグローバル展開、インバウンド需要への対応、多様な視点を取り入れた商品開発など、国際化が進む現代において、重要性の高い分野といえるでしょう。
参照元:在留資格「技術・人文知識・国際業務」(出入国在留管理庁)
在留資格「技術・人文知識・国際業務」ではコンビニで働けない可能性が高い
在留資格「技術・人文知識・国際業務」では、コンビニの一般的な業務に従事することは原則として認められていません。なぜなら、この在留資格が想定する業務とコンビニの主な業務には隔たりがあるからです。ここでは、コンビニ業務が認められない3つの理由を解説します。
- 対象職種が専門的業務に限定されているため
- 単純労働が認められていないため
- 契約内容が在留資格の範囲外であるため
対象職種が専門的業務に限定されているため
コンビニで働けない可能性が高い理由の一つ目は、この資格が対象とする職種が「専門的業務」に限定されているからです。大学や専門学校で習得した専門知識や、実務経験を通じて培った高度なスキルを活かすことが前提となっています。
典型的な職種として、ITエンジニア、機械設計者、建築士、マーケター、経理担当者、通訳・翻訳者、語学教師などがあります。それぞれの分野における専門的な知識や技術、特定の言語・文化に関する深い理解が必要です。
一方、コンビニのレジ打ち、品出し、清掃等の一般業務は、専門知識やスキルがなくても、研修を受ければ誰でもできる業務が多いです。
このように、「技術・人文知識・国際業務」が求める業務の専門性と、コンビニの一般業務で求められるスキルレベルには大きな隔たりがあります。そのため、「技術・人文知識・国際業務」在留資格の枠組みでは、コンビニの一般業務は対象外となる可能性が高いです。
単純労働が認められていないため
コンビニで働けない可能性が高い理由の2つ目は、いわゆる「単純労働」に従事することが原則として認められていないからです。
単純労働とは、特別な専門知識や高度なスキルを必要とせず、定型的で反復する作業を中心とする労働を指します。単純労働の具体例には次のものが挙げられます。
- 工場のライン作業
- 建設現場での資材運搬、軽作業
- 倉庫でのピッキング、仕分け作業
- 飲食店での配膳、皿洗い
- 一般的な清掃作業 など
コンビニエンスストアの主要業務である「レジ打ち」「商品陳列・補充」「店内清掃」なども、多くの場合、単純労働に該当すると判断されます。
そのため、専門的な能力を発揮することを前提とする「技術・人文知識・国際業務」では、単純労働と判断されやすいコンビニの基本的な業務は原則として認められていません。
参照元:留学生の在留資格「技術・人文知識・国際業務」への変更許可のガイドライン
契約内容が在留資格の範囲外であるため
コンビニで働けない可能性が高い3つ目の理由は、雇用契約の内容が、在留資格の要件を満たさない可能性が高いからです。
在留資格を申請する際は、雇用予定者の業務内容、給与、雇用予定期間等の労働条件が明示された書類(労働条件明示書等)の提出が必要になります。
ただし、コンビニエンスストアで一般的に提示される雇用契約の職務内容は、専門性を具体的に示すことが難しく、「技術・人文知識・国際業務」が求める基準に適合しないケースが多いです。
そのため、雇用契約書に記載される職務内容自体が在留資格の要件と合わないため、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格でコンビニ業務に就くことは難しいとされています。
参照元:就労資格の在留諸申請に関連してお問い合わせの多い事項について Q21(Q&A)(出入国在留管理庁)
コンビニ業務で在留資格を取得する方法
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格でコンビニの一般的な業務を行うことは原則として認められていません。しかし、いくつかの要件を満たしたり、異なる種類の在留資格を活用したりすることで、コンビニ業務に従事できる場合があります。ここでは、コンビニ業務に就くための3つのケースを解説します。
- 専門業務の付随作業として単純労働を行う
- 在留資格「特定活動46号」を取得する
- 在留資格「永住者」「定住者」「永住者の配偶者等」を取得する
専門業務の付随作業として単純労働を行う
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の範囲内で、専門業務を主としながら、それに付随する形でコンビニ業務の一部(単純労働)を行うという方法が考えられます。ただし、許可を得るためには厳しいハードルがあります。
- 単純労働が主たる業務ではないこと
- あくまで専門業務に付随する補助的な作業に過ぎないこと
- 業務内容の専門性を認められるように、入国管理局に納得してもらう必要がある
業務内容の線引きや立証が難しく、入国管理局の審査も非常に厳しいため、この方法で在留資格を取得・維持するのは容易ではありません。
在留資格「特定活動46号」を取得する
より現実的な方法として、特定の条件を満たす外国人材が取得できる「特定活動46号」という在留資格を活用することが挙げられます。この資格は、日本の大学等を卒業し、高い日本語能力を持つ優秀な人材が、より幅広い分野で活躍できるように創設された在留資格です。
在留資格「特定活動46号」の主な特徴や取得要件は次のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
主な特徴 | ・専門的業務と、これまで認められにくかった業務(レジ打ち、品出し等の単純労働を含む)を組み合わせて行うことが可能になった ・コンビニ業務を含む幅広い職種での活躍が期待されている |
取得要件 | ■学歴:日本の4年制大学または大学院を卒業・修了していること ※短期大学や専門学校の卒業は対象外 ■日本語能力:以下のいずれかを満たすこと ・日本語能力試験(JLPT)N1 に合格している ・BJTビジネス日本語能力テストで480点以上を取得している ・大学または大学院で日本語を専攻して卒業・修了した場合は不要 ■業務内容 ・必須業務:日本語での円滑な意思疎通を要し、大学等で学んだ知識・能力を活用する業務 (例:店舗管理、商品企画、通訳・翻訳要素のある接客など)に従事すること ・単純労働:上記業務と関連する現業(例: 接客、レジ打ち、品出しなど)にも従事すること ・必須業務と単純労働との組み合わせが必須 |
たとえば、コンビニでアルバイト経験のある優秀な留学生を、卒業後に正社員として雇用し、店舗運営業務全般(管理業務+現場作業)を任せたい場合などに有効です。
在留資格「特定活動46号」は、専門性と現場業務の両方が求められる職場で外国人材を活用したい場合に、有力な選択肢となります。
ただし、あくまでも高度な専門性を必要とする業務を行う在留資格なので、採用する際には、企業側が「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で、どんな業務をまかせたいのか、その業務にどれだけ必要な人材なのかを詳しく書いた「雇用理由書」を作成して、入国管理局に提出する必要があります。
このように「技術・人文知識・国際業務」で以上のような外国人材を採用するのは難しい場合が多いため、専門家へ相談すると良いでしょう。
参照元:
在留資格「永住者」「定住者」「永住者の配偶者等」を取得する
外国人材の採用の幅を広げられる方法として、就労活動に制限のない在留資格を取得している外国人を採用することが考えられます。「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」といった在留資格が該当します。
これらの在留資格を持つ外国人材は、日本人と同様に、職種や業種、労働時間などの制限なく、どんな仕事にも就くことが可能です。各在留資格の特徴は次のとおりです。
- 永住者:原則として10年以上日本に在留し、素行が善良で、独立した生計を営むことができるなどの要件を満たした者に与えられる
- 定住者:日系人や難民認定を受けた者、日本人や永住者と離婚・死別した外国人など、法務大臣が特別な理由を認めた場合に許可される
- 日本人の配偶者等/永住者の配偶者等:日本人や永住者・特別永住者と法的な婚姻関係にある配偶者や、その実子などが該当する
これらの在留資格は、取得するための要件がそれぞれ厳格に定められており、誰もが簡単に取得できるものではありません。しかし、これらの資格を持つ人材であれば、企業側は在留資格に関する就労制限を気にすることなく雇用できます。
外国人材がコンビニ業務に就くための方法はいくつか考えられますが、それぞれに条件があり、手続きも複雑です。外国人材の採用や在留資格についてお悩みであれば、専門的な知識とサポート体制を持つ専門機関を利用することをおすすめします。
参照元:
外国人材についてお悩みの際は明光グローバルにご相談ください
自社だけで適切な人材を見つけ出し、正しい手続きを経て採用・育成を進めるのは大変な労力がかかります。外国人材の採用や活用に関して、「どの在留資格が適切かわからない」といったお悩みをお持ちの場合は、専門的なノウハウを持つ支援機関に相談するのがおすすめです。
最後に、教育分野での長年の実績を基盤に、外国人材サービスを展開する「明光グローバル」について紹介します。
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明光グローバルの主要サービス
事業 | サービス |
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これらのサービスを通じて、明光グローバルは外国人材の円滑な受け入れと活躍をサポートし、企業の事業成長に貢献しています。
まとめ
在留資格「技術・人文知識・国際業務」では、原則としてコンビニの一般業務に従事することはできません。なぜなら、同資格が対象とするのは高度な専門性を要する業務であり、レジ打ちや品出し、清掃といった単純労働とは明確な線引きがされているからです。
ただし、業務内容の構成や取得する在留資格の種類によっては、コンビニ業務に就くことが可能なケースも存在します。具体的には、専門業務の補助的な位置づけで単純労働を含める方法、あるいは「特定活動46号」のように一定の条件下で単純労働が認められる在留資格を取得する選択肢があります。また、「永住者」や「定住者」など、就労に制限のない在留資格を持つ外国人材であれば、職種に関わらず採用が可能です。
このように、コンビニ業務を外国人材に担ってもらうには、在留資格の特性や取得要件を正確に理解し、適切な対応をとる必要があります。判断を誤ると在留資格違反となるリスクもあるため、対応に不安がある企業担当者の方は、専門的な知見と実績を有する明光グローバルのサポートを活用することをおすすめします。少しでもご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。