「特定技能」などの在留資格を持つ外国人材と一緒に働いていると、日本語でのコミュニケーションがうまく取れない場面に遭遇することがあります。
外国人材とのコミュニケーションに慣れていない日本人の方は、日本語が通じなくて困ったり、文化的背景が異なる外国人材の言動に戸惑ったりした経験もあるのではないでしょうか?一方、学んだ日本語を一生懸命勉強しても、ビジネスの場にふさわしくない表現を使用してしまい、外国人材が相手に誤解を与えてしまうということもあります。
このような、職場で外国人材が抱えるコミュニケーションの問題を解決するためには、どのようにすればよいのでしょうか?今回は、特定技能人材が抱える職場でのコミュニケーション問題について解説します。
特定技能人材の日本語のレベルはどれくらい?
特定技能の在留資格を取得するには、日本語能力試験(JLPT)でN4以上のレベルに合格していることが求められます。
N4レベルは「基本的な日本語を理解できる」水準とされており、文化庁や出入国在留管理庁でも、日本語教育の基礎段階と位置づけられています。具体的には以下のような理解力が基準となります。
- 読む:基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を読んで理解することができる。
- 聞く:日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる。
たとえば、N4レベルの日本語とは次のようなものです。
(例)ちちは バスで 会社に かよって います。
このように、N4の日本語力を持つ外国人材は、簡単な日本語であれば理解できますが、抽象的な語彙や複雑な文法には対応できないことも多くあります。そのため、日本人側が話す際には、語彙や文法を平易にし、話す速度も調整するなど、相互理解のための工夫が必要です。
来日前に受ける日本語教育の内容
外国人材は来日前に日本語を学習していますが、多くの場合、教科書中心の学習に限られます。そのため、実際の職場で使われる専門用語やビジネスマナー、日本語特有のニュアンスについて深く理解する機会は限られています。また、ネイティブの日本語に触れることも少ないため、会話になると聞き取りが難しいという課題もあります。
来日後の日本語学習の現状
法務省が示す「1号特定技能外国人材支援に関する運用要領」では、企業が外国人材に対して日本語学習の機会を提供することが義務付けられています。これは、業務遂行だけでなく、日常生活における円滑なコミュニケーションを目的としたものです。
しかし、実際には特定技能人材はフルタイムで働いており、勤務後に学習時間を確保することが困難です。また、多くの日本語教室は平日日中に開講しており、通学が難しいという実情があります。
たとえ土日に開講していたとしても、休日に教室に通うには体力的・精神的な負担も大きく、継続的な学習が難しいという声も少なくありません。
現場で発生しているコミュニケーションの問題
特定技能人材が職場で直面する最大の課題の一つが、日本人社員との意思疎通です。お互いに悪意がなくても、語彙や文法、話すスピードの違いにより、伝達ミスや誤解が生じるケースがあります。
特にJLPT N4レベルの外国人材にとって、複雑な指示や専門用語を伴う会話は理解が難しく、日本人社員の話を正確に聞き取れない場合があります。結果として、業務指示が十分に伝わらず、仕事の進行に支障をきたしたり、報連相の欠如によってトラブルが発生したりすることもあります。
また、日本人社員の中には、これまで外国人材と働いた経験がない人も多く、どう接すればよいか悩むケースも見られます。
たとえば、「これ、私、わからない。あなた、やって」といった発言は、実際に職場で聞かれたものです。発言した外国人材に悪意はなく、「わからないのでお願いします」と伝えたかったのですが、丁寧な言葉を知らなかったことで、聞いた日本人社員は「偉そうで少し怖い」と感じてしまいました。
このように、単語や表現の選び方一つで、意図せぬ誤解が生じてしまうケースは少なくありません。文化や語学の違いを理解し、相互に歩み寄る姿勢が求められます。
職場での日本語の会話力向上のための主なポイント
外国人材が日本の職場で円滑に働くには、日本語能力の中でも特に「会話力」の強化が欠かせません。中でも、職場の業務で頻出する専門的な表現、円滑な意思疎通のための発話量、そして日本特有のマナーへの理解が重要なポイントになります。ここでは、職場における日本語コミュニケーションを向上させるための基本的な対策について解説します。
- 専門用語を学習する
- 発話の機会を増やす
- ビジネスマナーを身につける
専門用語を学習する
職場で使われる日本語は、日常生活で使う表現とは異なり、業務内容に即した専門用語や業界固有の語彙が中心となります。そのため、指示書やマニュアルを正確に理解し、実務に対応できるようになるためには、専門用語を系統的に学ぶことが不可欠です。特定技能で求められる分野別の言語対応力を高めるには、業務と連動した語彙習得が効果的です。
発話の機会を増やす
学んだ日本語を実際に使う機会が少なければ、会話力の定着は難しくなります。たとえ日本で暮らしていても、日本人と日常的に会話を交わす環境が整っていない場合も多く、発話の量が不足しがちです。
実際の会話の中で語彙や表現を使うことで、発音やイントネーションへの理解も深まり、実践的な日本語力が身につきます。
ビジネスマナーを身につける
職場でのコミュニケーションには、言語だけでなく文化的背景の理解も求められます。
たとえば、日本独特の敬語表現や報連相(報告・連絡・相談)といったマナーや働き方は、母国とは大きく異なることもあります。文化庁や出入国在留管理庁も、日本社会での適応には言語教育と並行してマナーの理解が必要であるとしています。外国人材が職場で適切に振る舞うためには、日本語と同様にビジネスマナーを学ぶことが大切です。
日本語の会話力を上達させる効果的な練習方法
日本語能力試験(JLPT)では、リーディングやリスニング力は評価されますが、実際の会話力は測定できません。そのため、職場で実践的に使える会話力を養うためには、自主的なトレーニングが不可欠です。ここでは、特定技能人材が自分のペースで実践できる、会話力向上のための具体的な練習方法について解説します。
- シャドーイング
- アウトプット
- 目標の設定
シャドーイング
会話環境に恵まれない外国人材にとって、自宅で手軽にできるトレーニングが「シャドーイング」です。シャドーイングとは、日本語の音声を聞いた直後に、そのまま真似して声に出す練習方法で、発音やイントネーション、語彙の定着、リスニング力向上に効果があります。
効果的な練習方法としては、まず教科書を見ずに音声を聞き、すぐに同じように発音します。発声時には、イントネーションやリズムを意識することが大切です。はじめは短い文で練習し、慣れてきたら少し長い文に挑戦すると良いでしょう。
わからない言葉が出てきた場合は、その都度、教科書の解説や辞書で確認しながら進めていきます。文字と音を結びつけることで、日本語の理解が深まります。
同じフレーズを何度も繰り返し練習することで、より自然な発音とイントネーションが身につきます。教材としては、日本語の教科書に加えて、日本のドラマやニュースなどの音声コンテンツも活用できます。
アウトプット
日本語は「使ってこそ身につく」言語です。どれだけインプットをしても、アウトプットの機会がなければ、実際の会話にはつながりません。学んだ語彙や文法を積極的に口に出すことで、知識の定着と運用力の向上が期待できます。
ただし、来日直後は職場以外で日本人と話す機会が少なく、発話の場が限られているケースも多いです。そうした場合は、日本語教室やオンラインレッスンなど、対面・非対面を問わず「話す場」を意識的に作ることが重要です。
もし会話の練習が難しい場合は、日本語でよく使う質問とその答えをリスト化し、独り言で会話を再現するのも有効なトレーニングとなります。
目標の設定
JLPTでN1を取得していても、実際の会話では思うように話せないという声は少なくありません。ペーパー試験では測れない「話す力」を伸ばすには、自身の課題を具体化し、それに対する明確な目標を設定することが大切です。
たとえば「報連相が苦手」「丁寧な断り方がわからない」といった日常的な課題をもとに、何をどの場面でできるようになりたいのかを明確にすることで、学習の方向性が定まります。目標を設定することで学習意欲が高まり、実践的な日本語会話力の向上につながります。
日本語の会話を上達させる教材の選び方
効果的な会話力の向上には、自分に合った教材選びが欠かせません。
JLPTのような試験対策だけでなく、職場で実際に使える日本語やマナーを含めた教材を選ぶことが重要です。ここでは、特定技能人材が日本語教材を選ぶ際に押さえておくべきポイントを紹介します。
- 専門用語が学べるもの選ぶ
- 自分の都合に合わせやすいものを選ぶ
- マナーを含めたビジネス会話が学べるものを選ぶ
専門用語が学べるもの選ぶ
会話力の向上には、業務で使われる専門用語の習得が不可欠です。
特定技能1号は16分野に分かれており、分野ごとに使用される語彙や表現も異なります。JLPTでは一般的な日本語が中心となるため、現場に対応できる言葉を学ぶには、専門領域に特化した教材が必要です。市販のテキストだけでなく、アプリやeラーニングなども活用し、自分の業種に合った内容を重点的に学べる環境を整えましょう。
自分の都合に合わせやすいものを選ぶ
働きながら日本語を学ぶ外国人材にとって、時間的な制約は大きな課題です。
平日の仕事後や休日に学習時間を確保する必要があるため、決まった時間に通う日本語教室に継続して通うのは難しいケースも少なくありません。そのため、オンライン講座やアプリ学習など、自宅で無理なく取り組める教材を選ぶことが、学習の継続と定着につながります。
マナーを含めたビジネス会話が学べるものを選ぶ
JLPT対策の教材では、敬語や職場特有のマナー、コミュニケーションの取り方までを網羅することは難しいといえます。
職場で円滑な人間関係を築くには、言語スキルだけでなく、日本特有のビジネスマナーを理解することも重要です。ビジネス会話や文化的背景を含む教材を選ぶことで、より実践的な日本語力が身につきます。
個人での学習が苦手な場合は、講師との対話ができるオンラインレッスンなども積極的に取り入れると良いでしょう。
日本語の会話を学ぶおすすめの方法
日本語学習教材講座を活用することで、外国人材の日本語能力を効率的に向上させることが可能です。一方、外国人材の採用に慣れていない企業においては、「具体的にどのような日本語学習教材がおすすめなのかわからない」とお悩みの方も多いでしょう。
明光グローバルには、外国人材の日本語能力を向上させるための豊富な知見やノウハウ、教育ツールがあります。雇用している外国人材の日本語教育にお悩みの方はぜひ明光グローバルまでお問い合わせください。最後に、明光グローバルの概要と、提供するサービスを紹介します。
明光グローバルとは
明光グローバルは、外国人材材の就労機会の創出と育成を通して、日本企業の持続的な成長をサポートする教育系人材サービス会社です。
40年以上の個別指導の教育実績、そして10年以上の日本語教育の実績を持つ明光ネットワークジャパングループの知見を活かし、外国人材材の育成と企業の人材課題解決に特化したサービスを提供しています。
進学からビジネスまで、幅広い日本語教育に取り組んでいるJCLI日本語学校や早稲田EDU日本語学校での豊富な教育ノウハウを活かし、特定技能試験対策から業界別の専門教育まで、幅広いニーズに対応しています。外務省からEPA事業(ベトナム人看護師・介護福祉士候補者に対する訪日前日本語研修事業)を4期連続で受託するなど、高い信頼性と実績を誇ります。
明光グローバルの主要サービス
事業 | サービス |
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教育研修事業 | ・eラーニングによる日本語教育(スマホアプリに対応) ・対面/オンラインによる日本語レッスン ・外国籍人材と日本人に向けた各種研修プログラム ・外国籍人材に向けた各種試験対策講座 |
人材紹介事業 | ・特定技能人材の紹介 ・外国籍エンジニアの人材紹介 ・教育伴走型の登録支援サービス |
明光グローバルは、特定技能人材やエンジニアの紹介から、外国人材社員向けの教育・研修サービスまで、幅広いノウハウを提供しています。単なる日本語教育にとどまらず、企業での実践力を重視した総合的な人材育成を行っています。
オンライン日本語学習ツール「Japany」
明光グローバルでは、外国人向けオンライン日本語学習ツール「Japany」を提供しています。
Japanyを活用すれば、現場で用いる実践的な日本語や、特定技能試験対策など、合計1,200本以上の豊富な動画教材を活用して学ぶことができます。そのため、外国人社員のさまざまな学習ニーズに応えることができます。
また、パソコンやスマートフォンを使って、スキマ時間に自分のペースで学習できるのも特徴的です。
さらに、管理者機能として、学習進捗を確認できる「レポート機能」や、一定期間ログインがないと通知が届く「アラート機能」を活用することもできます。
受講形態 | e-ラーニング |
対象者 | 企業に在籍する外国人籍社員・帰国子女など |
プログラム・コース内容(一例) | ・日本語試験対策(JLPT・JFT Basic) ・せいかつの日本語 ・特定技能試験対策(1号+2号に対応) ・しごとの日本語(ITエンジニア、外食、介護など各業界のビジネス会話に対応) |
受講期間 | コースによって異なる |
料金プラン受講費用 | 初期費用:100,000円 月額費用:1名あたり1,500円~(受講人数に応じて変動) 年間契約費用:1名あたり14,000円~(受講人数に応じて変動) |
Japanyの強み
Japanyの強みは、「実用性の高いオリジナルコンテンツ」「学習の継続を促すシステム」「管理者を支えるサポート機能」の3点です。
実用性の高いオリジナルコンテンツ | 「Japany」には、N5〜N1までを網羅したJLPT対策を始めとする1,200本以上の豊富なレッスン動画コンテンツがあります。資格試験対策だけでなく、業界・業種別の言い回しや日常的な会話能力が身につく動画など、学習者のニーズに合わせてさまざまなコンテンツの動画を視聴できます。 |
学習の継続を促すシステム | 「Japany」には、実力・目標に応じて最適なプランを提案する「コンテンツレコメンド機能」や、力試しとして使える「実力診断テスト」など、外国人材材の学習モチベーションを向上するさまざまな機能が搭載されています。 |
管理者を支えるサポート機能 | 学習者の進捗状況を確認できる「レポート機能」や、ログインがない場合に通知が届く「アラート機能」といった管理者機能も充実しています。そのため、人事・教育担当者の方も安心して利用することができます。 |
日本語オンラインレッスン
明光グローバルは、日本語オンラインレッスンを提供しています。日本語オンラインレッスンの特長は、熟練した講師との直接的な対話を通して、実用的な日本語運用能力を育成できることです。自宅からオンラインでレッスンを受けることができるため、働きながら継続的に日本語会話のレッスンを受けることができます。
特徴 | 内容 |
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ビジネスにおける実践力の向上 | ・各業種に対応したビジネス会話の習得 ・ビジネスメールや文書の作成指導 ・プレゼンテーションスキルの習得 |
業種別カスタマイズ | ・業界ごとに特化したレッスン 例:外食の店舗やホテルの現場で必要な接客コミュニケーション等 |
即時フィードバック | ・発音の細かな修正 ・自然な表現への言い換え ・ビジネスマナーの指導 |
日本語オンラインレッスンを受講することで、実際のビジネス現場で活用できる日本語コミュニケーションスキルを効果的に習得することが可能です。また、定期的にレッスンを受講することで、講師からフィードバックやエンカレッジを得られ学習のモチベーション維持が期待できます。
外国人社員向け各種研修サービス
明光グローバルは、実践的で効果の高い教育・研修プログラムを提供しています。充実した研修プログラムと柔軟なカスタマイズ対応で、外国人材の早期戦力化と定着率向上を実現しています。
プログラム | 特長 |
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実践的な研修 | ・ビジネスマナー研修 ・異文化理解研修 ・日本人社員向け研修 |
カスタマイズ対応 | ・業界別に専門プログラムが用意されている ・企業規模に応じて研修をカスタマイズできる ・目的に合わせて内容を調整できる |
まとめ
外国人材が日本の職場で活躍するには、日本語による円滑なコミュニケーションが不可欠です。
特に「特定技能」で就労する外国人材の場合、JLPT N4相当の日本語力を有していても、業務上の専門用語や適切な敬語表現、さらには日本独自のマナーを習得していないことで、職場内での意思疎通に支障をきたす場面が少なくありません。こうした課題は、語彙や文法といった日本語知識の習得に加え、日本社会や職場文化への理解を深めることで解消に近づきます。
そのためには、シャドーイングやアウトプットなどの実践的な練習法を通じて会話力を強化し、自分に合った教材を活用しながら、継続的に学べる仕組みを整えることが重要です。そして、企業や雇用者が外国人材の学習機会を支援し、必要な知識とスキルを身につけられる環境を提供する姿勢が、双方にとってより良い職場づくりにつながります。
明光グローバルには、特定技能人材の日本語能力を向上するためのさまざまな研修コンテンツがあります。特定技能人材の日本語能力をもっと高めたいとお悩みの方は、ぜひ明光グローバルにお気軽にご相談ください。