近年、特定技能1号の在留資格を持つ外国人材を採用している企業が増えてきています。2024年6月末時点で、特定技能1号の外国人材の数は251,594名に到達しており、多くの方が日本企業で活躍していることがわかります。
一方で、特定技能1号の在留資格では、在留期間が5年までに制限されています。このような背景から、雇用している外国人材を特定技能2号に成長させ、自社に長く定着してもらいたいと考えている人事・教育担当者の方も多くいます。
では、特定技能2号になるにはどの程度の日本語能力が必要なのでしょうか?また、特定技能2号の外国人材に必要な日本語教育とはどのようなものなのでしょうか?
今回は、特定技能2号の在留資格を取得するために必要な日本語能力や、日本語能力を伸ばす方法について解説します。特定技能2号の外国人材の日本語能力について関心やお悩みを持たれている方は、ぜひ最後までご覧ください。
参照元:特定技能1号在留外国人数(令和6年6月末)(出入国在留管理庁)
特定技能2号とは
特定技能2号とは、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人材向けの在留資格です。特定技能2号は、特定技能1号よりも条件面で優遇されている点が多いです。
たとえば、在留期間の更新を受ければ上限なく日本に滞在することができるようになります。また、配偶者や子の帯同も可能となります。
そのため、外国人材が特定技能2号の在留資格を取得し、企業に定着してもらうことで、企業は長期的に現場で活躍できる人材を確保することができるようになります。
元々、特定技能2号の受け入れ分野は、建設分野と造船・舶用工業分野の溶接区分に限定されていました。しかし、2023年6月の閣議決定にともない、2024年12月現在では介護分野を除くすべての特定産業分野で受け入れが可能となっています。
こうした受け入れ分野の拡大をきっかけに、自社で雇用している特定技能1号の外国人材に対して、特定技能2号の在留資格の取得を支援する企業が増えてきています。
参照元:
特定技能2号を取得するための要件
特定技能2号の外国人材には、リーダーや現場責任者としての職務を担うことが求められます。特定技能2号の在留資格を取得するために、外国人材は次のような要件を満たす必要があります。
- 実務経験:一定の実務経験が必要です。求められる実務経験年数は、受け入れ分野や業務区分によって異なります。
- 技能試験:特定技能1号よりも難易度の高い技能試験に合格する必要があります。技能試験の種類は受け入れ分野や業務区分によって定められています。
- 日本語試験(一部受け入れ分野のみ):受け入れ分野のうち、漁業分野・外食業分野においては、日本語試験への合格が求められます。具体的には、日本語能力試験(以降、「JLPT」)でN3を取得する必要があります。
- その他の試験:受け入れ分野によっては、技能試験・日本語試験以外の試験への合格を求めるものもあります。
特定技能2号の外国人材の日本語能力
特定技能2号の外国人材の日本語能力とは、どの程度なのでしょうか?
結論としては、少なくともJLPTでN3レベル以上の日本語能力を持ち、日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できるレベルが必要だと考えられます。特定技能2号の受け入れ分野のうち、漁業分野と外食業分野では、JLPT N3以上の取得を要件として定めています。
他の分野では、在留資格の取得にあたって、JLPTの合格は求められていません。ただし、技能試験はJLPT N2レベルの日本語で書かれていることが多く、相当程度の日本語能力が必要です。
このような点から、特定技能2号の外国人材の日本語能力は、少なくともN3レベル以上だと推察されます。ただし、実際の日本語能力は、個々の外国人材によって異なるため注意が必要です。
ここでは、特定技能2号の外国人材が持っていると考えられる、N3レベルの日本語能力について解説します。JLPTの公式サイトにおける「認定の目安」と、JLPTを取得している外国人材が「日本語でできる」と考えている項目を整理した「Can-do自己評価リスト」を参照しながら紹介します。
参照元:N1~N5:認定の目安(JLPT)・日本語能力試験Can-do自己評価リスト(JLPT)
N3レベルの日本語で「読む」能力
N3レベルの日本語で「読む」能力の目安は、次のように定められています。
- 日常的な話題について書かれた具体的な内容を表す文章を読んで理解することができる
- 新聞の見出しなどから情報の概要をつかむことができる
- 日常的な場面で目にする難易度がやや高い文章について、言い換え表現が与えられれば論旨を理解できる
また、「Can-do自己評価リスト」では、半数以上の人が自信を持って以下の行動ができると回答しています。
- 駅の時刻表や案内板を見て、自分が乗る電車の時間がわかる
- 簡単なメモや、絵や図のついた指示を理解することができる
このような点から、日常生活で目にする具体的な指示や文章の内容が読み取れる程度のリーディング能力を備えているといえます。
N3レベルの日本語で「聞く」能力
N3レベルの日本語で「聞く」能力の目安は、次のように定められています。
- 日常的な場面で、やや自然に近いスピードのまとまりのある会話を聞いて、話の具体的な内容を登場人物の関係などとあわせてほぼ理解できる
また、「Can-do自己評価リスト」では、半数以上の人が自信を持って以下の行動ができると回答しています。
- 簡単な指示や、集合場所や時間の案内を聞いて、理解できる
- 公共交通機関やお店などでよく使われる言葉を理解できる
このような点から、日常生活で耳にする基本的な案内や会話の内容が聴き取れる程度のリスニング能力を備えているものといえます。
N3レベルの日本語で「話す」能力
JLPTの試験においては「話す」能力を問う問題がないため、N3レベルの「話す」能力の目安は定義されていません。ただし、「Can-do自己評価リスト」では、半数以上の人が自信を持って以下の行動ができると回答しています。
- 趣味や興味のあることや、驚き・うれしさなどの自分の気持ちとその理由を説明できる
- 公共交通機関やお店などでよく使われる言葉を使って、簡単なやり取りができる
このような点から、日常生活において自身の表現したい内容を話せる程度のスピーキング能力を備えているといえます。
N3レベルの日本語で「書く」能力
JLPTの試験においては「書く」能力を問う問題がないため、N3レベルの「書く」能力の目安は定義されていません。ただし、「Can-do自己評価リスト」では、半数以上の人が自信を持って以下の行動ができると回答しています。
- 書類に自分の情報を書いたり、スケジュール表に自分の予定を書いたりすることができる
- 簡単な自己紹介やお礼のメッセージなどを書くことができる
このような点から、日常生活で必要な事柄やあいさつなどの文章を書き取れる程度のライティング能力を備えているものと考えられます。
特定技能2号の外国人材の日本語能力に関する懸念点
特定技能2号の外国人材は日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できますが、日本語能力に課題や懸念点がまったくないわけではありません。特定技能2号の外国人材には、「リーダーや現場責任者として働くうえで必要な日本語能力」に悩んでいる方が多いです。
たとえば、特定技能2号の在留資格を取得した外国人材には、日本における業務経験がある程度あります。そのため、「どのように厨房を掃除すべきか」「どのように宿泊予約の電話を受けるべきか」というような、業務遂行に必要なスキルを一定程度習得しています。
一方で、リーダーや現場責任者として働く際は、部下やアルバイトにわかりやすく教育することが求められます。この際、「掃除の仕方をわかりやすく日本語で伝えるためには」「電話の受け答えのやり方をどのように教えれば良いのか」といった、教育に必要な日本語能力が備わっていないことがあります。
そのため、企業としては、特定技能2号に合格した後も外国人材が継続的に日本語能力を伸ばせるような支援が必要となります。
明光グローバルのオンライン日本語教材「Japany」には、業種や職種ごとに求められる日本語能力をピンポイントで学べる1,200本以上の動画教材があります。外国人材の課題に合わせた日本語能力支援に興味がある方は、ぜひ明光グローバルまでお問い合わせください。
特定技能2号の外国人材と日本語でコミュニケーションをする際のポイント
特定技能2号の外国人材に対して、職場でコミュニケーションをするときに気をつけるべきポイントはあるのでしょうか?ここでは、特定技能2号の外国人材と日本語でやり取りを行う際の注意点について解説します。
- あいまいな言葉を避け、具体的な指示や説明をする
- 出身国の特徴を理解したうえでコミュニケーションを取る
あいまいな言葉を避け、具体的な指示や説明をする
日本語でコミュニケーションをする際には、あいまいな言葉を避け、具体的な指示や説明をすることが重要です。出身国の文化や背景によって、コミュニケーション方法にはハイコンテクスト・ローコンテクストの違いがあるためです。
- ハイコンテクスト:お互いが共通認識を持っていることを前提に会話を進めるコミュニケーション方法のことです。たとえば、あいまいな言葉遣いや、婉曲的な言い回しなどが挙げられます。日本など、民族的な多様性が少ない国においては、人々の文化や価値観が深いレベルで共有されるため、こうしたコミュニケーションが多くなります。
- ローコンテクスト:お互いが共通認識を持っていないことを前提に会話を進めるコミュニケーション方法のことです。たとえば、主語や述語がはっきりとしており、ストレートに物事を表現することなどが挙げられます。民族的な多様性がある国など、人々の文化や価値観が共有されない文化圏においては、こうしたコミュニケーションが多くなります。
一般的に、日本語を用いたコミュニケーションはハイコンテクストだといわれます。そのため、以下のように、あいまいな表現や相手に気づきを期待する言葉が多くなっています。
- この作業はなるべく早めに仕上げてください(優先して取り掛かってほしい)
- この荷物を入口まで持っていけますか?(相手に荷物を持っていってほしい)
- この部屋は寒すぎませんか?(相手にエアコンの温度を上げてほしい)
これに対し、外国人材によっては、母国語でのコミュニケーション方法がローコンテクストであることが考えられます。そのため、日本語能力が高い特定技能2号の外国人材に対しても、明瞭ではっきりとした伝え方をすることが望ましいでしょう。
出身国の特徴を理解したうえでコミュニケーションを取る
円滑にコミュニケーションを取るためには、外国人材の出身国におけるコミュニケーション上の特徴を一定程度理解することが必要です。
たとえば、多民族国家では謝罪の言葉を口にすることへの心理的ハードルが高いことがあります。背景としては、言語や文化の異なる相手に対して非を認めた場合、どのような責任や不利益が発生するかわからないという不安意識があるためです。こうした背景を知らないと、素直に「すみません」と言えない外国人材を頭ごなしに叱責するといった、誤った対応を取ってしまうことが考えられます。
また、フィリピンやタイ、インドネシアといったアジアの国々では、人前で注意や叱責することを非常識だと考える文化があります。人前で失敗を指摘されると、自尊心が大きく傷つくだけでなく、怒りや逆恨みにつながることも多いです。
近年、ホーチミンでベトナム人が日本人を刺殺する事件がありましたが、犯行のきっかけは「日本人上司からの度重なる叱責」でした。大きなトラブルに発展しないよう、指摘の仕方には十分注意が必要です。
参照元:ホーチミン邦人刺殺事件、犯行動機は日本人上司への恨みか(VIETJO)
日本と海外では、文化や価値観にさまざまな違いがあります。お互いが気持ちの良いコミュニケーションを取るためにも、相手国のコミュニケーション上の特徴を理解する姿勢が重要です。
特定技能2号の外国人材の日本語能力を伸ばす方法
特定技能2号の外国人材の日本語能力を伸ばすには、どうすれば良いのでしょうか?ここでは、特定技能2号の外国人材の日本語能力を伸ばす方法について解説します。
- 無理のない範囲で日本語を使う業務を増やす
- 日本語教育の機会を提供する
- 日本人社員との交流を促進する
無理のない範囲で日本語を使う業務を増やす
特定技能2号の外国人材の無理のない範囲で、リーダーや現場責任者としての担当領域を増やし、どんどん日本語でのアウトプットの機会を増やすことが重要です。
「習うより慣れよ」という言葉があるように、業務で使えば使うほど、日本語能力は上達します。一方で、あまりにハードルの高い目標を設定すると、外国人材が気落ちしてしまう可能性もあります。
余裕のあるタイミングを利用したり、業務の一部を切り出して部下に指導させたりと、本人が無理なくチャレンジできる目標設定を心掛けましょう。
日本語教育の機会を提供する
特定技能2号の外国人材に対して、企業が日本語教育の機会を提供することも有効です。
日本語教育の方法には、日本語教室や日本語学校、学習教材を用いた自主学習など、さまざまな種類があります。中でも、特定技能2号の外国人材におすすめなのは、スキマ時間で学べるe-ラーニングサービスです。
特定技能2号の外国人材は、既に一定レベルの日本語能力を有しており、リーダーや現場責任者としての多忙な業務を抱えています。そのため、スキマ時間を活用して、ピンポイントで知りたい内容を学べるe-ラーニングサービスが適しています。
明光グローバルのオンライン日本語教材「Japany」なら、スマートフォンを活用して気軽に学習を続けることができます。少しでも気になる方は、明光グローバルまでお気軽にお問い合わせください。
日本人社員との交流を促進する
特定技能2号の外国人材の日本語能力を伸ばすには、日本人社員との交流を促進することも効果的です。
特定技能2号の外国人材に求められるのは、部下の指導やビジネスにおける交渉などに使える「話す」力です。こうしたスピーキング能力は、机上での学習ではなかなか身につきません。
日本人社員と交流する機会を積極的に設けることで、ネイティブスピーカーの話す自然な日本語を耳で学習することができます。また、自身の日本語が日本人社員にどの程度伝わるのかがわかり、外国人材にとって貴重なフィードバックを得ることができます。
懇親会や交流会、研修などの機会を活用し、外国人材が日本人社員と交流できる機会を多く持つようにしましょう。
特定技能2号の外国人材の日本語能力を向上するなら明光グローバルにおまかせ
特定技能2号の外国人材は、日常生活で求められる基本的な日本語能力を備えています。一方で、リーダーや現場責任者の業務に必要な日本語でのコミュニケーション能力を鍛えるためには、継続的な日本語教育が必要です。
明光グローバルの「外国人社員向け各種教育・研修サービス」なら、最小限の手間やコストで、特定技能人材に対する研修を提供することが可能です。最後に、特定技能試験対策や特定技能2号の外国人材に対する日本語教育などの研修コンテンツでお悩みの方に向けて、明光グローバルのサービスを紹介します。
明光グローバルとは
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教育・研修事業としては、外国人材が企業でより一層活躍できるためのオンライン日本語学習ツール「Japany」や、日本語レッスン、日本語能力測定試験、外国人採用に伴う各種研修事業などの「外国人社員向け各種教育・研修サービス」を提供しています。
また、外国人材紹介事業では、優秀な外国人材の紹介から定着までをワンストップで支援する「特定技能外国人紹介サービス」や「ITエンジニア紹介サービス」などのサービスを提供しています。
外国人社員向け各種教育・研修サービスとは
明光グローバルでは、外国人材の採用・教育・定着に伴う、さまざまな教育・研修サービスを提供しています。具体的には、次のサービスが提供可能です。
- e-ラーニング(Japany):外国人材がスキマ時間を活用して学べるオンライン日本語学習サービスです。教材数は、合計1,200本以上となっており、実践的な日本語が学べる教材や、特定技能試験対策など、特定技能人材に必要な学びが得られる教材を多数取り揃えています。
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外国人社員向け各種教育・研修サービスの強み
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このように、明光グローバルは、特定技能人材に対する高い集客力と教育力、専門性を備えています。特定技能人材に関する労務手続きにお悩みの方も、ぜひお気軽にお問い合わせください。
まとめ
特定技能2号の外国人材は、日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できます。一方で、ネイティブスピーカーには及ばない点もあるため、継続的なスキルアップが求められます。
明光グローバルには、特定技能人材の日本語能力を向上するためのさまざまな研修コンテンツがあります。「特定技能1号の外国人材に対する特定技能試験対策に困っている」「特定技能2号の外国人材の日本語能力をもっと高めたい」とお悩みの方は、ぜひ明光グローバルにお気軽にご相談ください。