昨今、国内の人材不足に対処するために、特定技能人材を導入する企業が増えてきています。一方で「特定技能人材の日本語レベルがわからない」「どのくらい日本語を教える必要があるのか」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか?
今回は、特定技能人材の日本語レベルの目安や、義務として企業が支援しなければならない日本語教育の内容、コミュニケーション上のポイントなどを詳しく解説していきます。特定技能人材とのコミュニケーションにお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。
特定技能人材の日本語レベルとは
それでは、特定技能人材の日本語レベルはどの程度なのでしょうか?
出入国在留管理庁によると、特定技能人材の日本語能力としては「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有することを基本としつつ、特定産業分野ごとに業務上必要な日本語能力水準が求められること」と定義されています。
特定技能人材になる条件は受け入れ分野によって異なりますが、基本的には特定技能1号の方に対して日本語試験の合格が求められることが多いです。具体的には、次の2種類の日本語試験のどちらかを受験して、所定のレベル以上の日本語能力を証明する必要があります。
- JFT-Basic 国際交流基金日本語基礎テスト(以下「JFT-Basic」)
- JLPT 日本語能力試験(以下「JLPT」)
ただし、技能実習2号を良好に修了している場合は特定技能の日本語能力があると認められるため、JLPTやJFT-Basicの日本語試験は免除となります。また、介護分野においては、上記とは別に介護日本語評価試験にも合格することが求められるため注意しましょう。
JFT-Basic 国際交流基金日本語基礎テストとは
JFT-Basicとは、国際交流基金が運営する日本語試験です。
試験においては、日本での就業を予定している外国人人材が生活の場面で求められるさまざまな日本語能力を測定します。そして、特定技能人材の在留資格を得るために必要となる「ある程度の日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力」の有無を判定することを目的としています。
主な特徴は次のとおりです。
- 実施形式:CBT形式(コンピュータ・ベースド・テスティング)を導入しており、それぞれのテスト会場でコンピューターを用いてテストが実施されます。
- 実施回数:実施国において毎月複数回程度開催しており、実施回数が多くなっています。
- 実施国:日本、インド、インドネシア、ウズベキスタン、カンボジア、スリランカ、タイ、ネパール、フィリピン、ミャンマー、モンゴルなど
- 設問に使用される言語:英語(中国語、インドネシア語、クメール語、モンゴル語、ミャンマー語、ネパール語、タイ語、ベトナム語、ウズベク語、ベンガル語、ラオス語、マレー語などの現地語にも対応)
- 問題数:約50問
- 試験時間:60分間
- 合格基準:200点(250点満点中)
JFT-Basicにおける日本語レベルの目安
JFT-Basic 国際交流基金日本語基礎テストでは、受験者の日本語レベルが、ある程度の日常会話ができ、生活に支障がない程度である「A2レベル」に達しているかどうかを判定します。特定技能人材には、このA2レベル以上の日本語能力が必要となります。
JFT-Basicで用いる「A2レベル」および隣接するレベルの定義は次のとおりです。
レベルの目安 | |
B1 | ・仕事、学校、娯楽で普段出合うような身近な話題について、標準的な話し方であれば主要点を理解できる。 ・その言葉が話されている地域を旅行しているときに起こりそうな、たいていの事態に対処することができる。 ・身近で個人的にも関心のある話題について、単純な方法で結びつけられた、脈絡のあるテクストを作ることができる。経験、出来事、夢、希望、野心を説明し、意見や計画の理由、説明を短く述べることができる。 |
A2 | ・ごく基本的な個人的情報や家族情報、買い物、近所、仕事など、直接的関係がある領域に関する、よく使われる文や表現が理解できる。 ・簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄についての情報交換に応ずることができる。 ・自分の背景や身の回りの状況や、直接的な必要性のある領域の事柄を簡単な言葉で説明できる。 |
A1 | ・具体的な欲求を満足させるための、よく使われる日常表現と基本的な言い回しは理解し、用いることもできる。 ・自分や他人を紹介することができ、どこに住んでいるか、誰と知り合いか、持ち物などの個人的情報について、質問をしたり、答えたりできる。 ・もし相手がゆっくり、はっきりと話して、助け船を出してくれるなら簡単なやり取りをすることができる。 |
※:JFT-Basicとは(JFT-Basic 国際交流基金日本語基礎テスト)を基に作成
JFT-Basicにおける試験合格率の目安
それでは、JFT-Basicの試験合格率はどうなっているのでしょうか?
直近のJFT-Basicのテスト実施概要報告(7-8月)によると、国内外を含む11ヶ国でテストを受験した合計24,296名の受験者数に対し、合格者数は11,415名となっており、合格率は全体の47.0%となっています。地域別に見ても、合格率は各国で5割前後に落ち着いています。十分に日本語の勉強をしている方が合格できる試験だといえるでしょう。
受験者数 | 合格者数(基準点到達者数) | 合格率(基準点到達率) | ||
合計 | 24,296 | 11,415 | 47.0% | |
地域別 | 日本 | 1,469 | 750 | 51.1% |
インド | 439 | 136 | 31.0% | |
インドネシア | 11,536 | 6,125 | 53.1% | |
ウズベキスタン | 12 | 6 | 50.0% | |
カンボジア | 322 | 152 | 47.2% | |
スリランカ | 936 | 385 | 41.1% | |
タイ | 242 | 132 | 54.5% | |
ネパール | 3,076 | 970 | 31.5% | |
フィリピン | 1,830 | 682 | 37.3% | |
ミャンマー | 4,402 | 2,067 | 47.0% | |
モンゴル | 32 | 10 | 31.3% |
※:国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basid)2024年7月-8月テスト 実施概要報告(JFT-Basic 国際交流基金日本語基礎テスト)を基に作成
JLPT 日本語能力試験とは
JLPTとは、国際交流基金・日本国際教育支援協会が運営する日本語試験です。世界最大規模の日本語試験としても知られており、就職や昇給、昇格、資格認定など、さまざまな目的で活用されています。
N1からN5までの5つのレベルに大別されており、受験者の日本語能力を詳しく測定することが可能です。特定技能人材の資格認定のためには、基本的に「N4レベル」以上の日本語能力が求められます。
主な特徴は次のとおりです。
- 実施形式:ペーパーテスト形式となっており、それぞれのテスト会場でマークシートを用いてテストが実施されます。
- 実施回数:年2回の実施となっており、実施回数は比較的少なくなっています。
- 実施国:日本、中国、香港・マカオ、台湾、韓国、モンゴル、インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシアなど(台湾を含む世界54ヶ国で実施)
- 設問に使用される言語:日本語
- 問題数:約85問(「N4レベル」の場合)
- 試験時間:115分間(「N4レベル」の場合)
- 合格基準:90点(180点満点中)
JLPTにおける日本語レベルの目安
JLPTでは、受験者が「N5〜N1レベル」のいずれかのテストを選択したうえで、受験者の日本語能力が5つのレベルに達しているかどうかを判定します。特定技能人材には「N4レベル」以上の日本語能力が求められるため、最低でも「N4レベル」の試験に合格することが必要です。レベルの目安は次のとおりです。
レベルの目安 | |
N5 | ・基本的な日本語をある程度理解することができる ・読む:ひらがなやカタカナ、日常生活で用いられる基本的な漢字で書かれた定型的な語句や文、文章を読んで理解することができる。 ・聞く:教室や身のまわりなど、日常生活の中でもよく出会う場面で、ゆっくり話される短い会話であれば、必要な情報を聞き取ることができる。 |
N4 | ・基本的な日本語を理解することができる ・読む:基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を読んで理解することができる。 ・聞く:日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる。 |
N3 | ・日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる ・読む:日常的な話題について書かれた具体的な内容を表す文章を、読んで理解することができる。新聞の見出しなどから情報の概要をつかむことができる。日常的な場面で目にする難易度がやや高い文章は、言い換え表現が与えられれば、要旨を理解することができる。 ・聞く:日常的な場面で、やや自然に近いスピードのまとまりのある会話を聞いて、話の具体的な内容を登場人物の関係などとあわせてほぼ理解できる。 |
N2 | ・日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる ・読む:幅広い話題について書かれた新聞や雑誌の記事・解説、平易な評論など、論旨が明解な文章を読んで文章の内容を理解することができる。一般的な話題に関する読み物を読んで、話の流れや表現意図を理解することができる。 ・聞く:日常的な場面に加えて幅広い場面で、自然に近いスピードの、まとまりのある会話やニュースを聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係を理解したり、要旨を把握したりすることができる。 |
N1 | ・幅広い場面で使われる日本語を理解することができる ・読む:幅広い話題について書かれた新聞の論説、評論など、論理的にやや複雑な文章や抽象度の高い文章などを読んで、文章の構成や内容を理解することができる。さまざまな話題の内容に深みのある読み物を読んで、話の流れや詳細な表現意図を理解することができる。 ・聞く:幅広い場面において自然なスピードの、まとまりのある会話やニュース、講義を聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係や内容の論理構成などを詳細に理解したり、要旨を把握したりすることができる |
※:N1~N5:認定の目安(日本語能力試験JLPT)を基に作成
JLPTにおける試験合格率の目安
それでは、JLPTの試験合格率はどうなっているのでしょうか?
直近のJLPTにおける過去の試験のデータ(2023年12月)を確認すると、国内・海外を含む計663,295名の受験者がいたのに対し、基準点以上のレベルになったの人数は206,336名で、全体の31.1%でした。特定技能人材の資格取得に必要な「N4レベル」においても、合格率は31.6%となっています。JFT-Basicと同様に、JLPTについても十分に日本語の勉強をしている方が合格できる試験だといえるでしょう。
受験者数 | 合格者数(認定者数) | 合格率(認定率) | ||
合計 | 663,295 | 235,754 | 35.5% | |
レベル別 | N1 | 121,554 | 37,553 | 30.9% |
N2 | 164,670 | 63,807 | 38.7% | |
N3 | 164,700 | 57,733 | 35.1% | |
N4 | 149,334 | 47,243 | 31.6% | |
N5 | 63,037 | 29,418 | 46.7% |
※:過去の試験のデータ(2023年第2回(12月)データ)(日本語能力試験JLPT)を基に作成
※:国内・海外を含む全ての受験者数・合格者数
JFT-BasicとJLPTの共通点
それでは、JFT-BasicとJLPTにはどのような共通点があるのでしょうか?
まず、JFT-BasicとJLPTはいずれも特定技能人材の日本語能力を証明する際に利用可能な試験です。「A2レベル」「N4レベル」といった名称の差はありますが、どちらも特定技能人材の資格取得に向けては、基本的な日本語を用いた日常会話ができ、ゆっくりとしたペースの会話なら、ある程度会話の内容が理解できる程度を合格基準としています。
また、どちらの試験も、日本語の言語知識や、「読む」「聴く」能力を中心に設問が構成されており、「話す」「書く」に関する内容は含まれていません。そのため、試験の難易度に大きな差はないものと考えられます。
JFT-BasicとJLPTの違い
それでは、JFT-BasicとJLPTの違いは何なのでしょうか?大きな違いの一つが試験の運用目的です。
JLPTは、さまざまな目的で日本語を学んでいる外国人の学習習熟度を測るために、幅広い場面が想定された総合的なテストです。そのため、先進国・発展途上国を問わず、さまざまな国で試験が開催されているのも特徴的です。ただし、試験の実施回数は年2回程度と限定的です。
一方、JFT-Basicは、特定技能人材のように、主に就労を目的とした外国人を対象にしたテストです。よって、発展途上国を中心に、高い頻度で試験が開催されています。
上記の他にも、テスト方式や実施期間にも差異があります。試験内容などの難易度に違いはなく、試験間の優劣はありません。外国人人材にとって、開催時期や場所などの条件が合う方のテストを受ければよいでしょう。
特定技能人材の日本語レベルに関する懸念点
特定技能人材は、在留資格を得るためにJFT-BasicもしくはJLPTなどの日本語試験を受けています。そのため、一定レベルの日本語力を身に着けているものと考えられます。
ただし、JLPT・JFT-Basicのいずれにも「話す」・「書く」能力を確認する設問がないことについては注意が必要です。特定技能人材には勉強熱心な方が多いため、試験対策を通して「読む」「聴く」能力に関しては問題ないことが多いです。一方、試験に登場しない日本語で「話す」・「書く」能力については、まだ十分に備わっていない可能性があります。
これらの日本語能力を向上させるためにも、企業の中で積極的に日本語での会話や書類作成などの学びの機会を提供することが必要なのです。
特定技能人材の日本語レベルに応じた支援や教育が必要
特定技能人材は、JFT-BasicやJLPTなどの試験を通して、ある程度の日常会話や業務に支障がない程度の日本語能力が担保されています。一方、特に「話す」「書く」などの場面においては、まだまだネイティブスピーカーには敵わないでしょう。
このような特定技能人材を戦力化し、自社に定着してもらうには、企業ぐるみで本人の継続的な日本語学習を支援する必要があります。対象となる特定技能人材の日本語レベルを踏まえて、適切な日本語教育支援を行いましょう。
また、日頃の教育や指導の中でも、本人の日本語レベルに配慮した声かけをすることが重要です。ゆっくりと、簡単な日本語を用いながら話すことで、本人にも意図が伝わりやすくなります。
企業が特定技能人材に提供すべき日本語教育支援
特定技能人材を受け入れている企業は、義務として日本語教育支援をしなければならないことはご存知でしょうか?具体的には、企業は特定技能人材が日本語の能力をさらに向上できるよう、次のいずれかを実施することが求められています。
- 周辺地域の日本語教室や日本語教育機関に関する入学案内の情報提供、入学手続きの補助
- 日本語学習教材やオンラインの日本語講座に関する情報提供、利用契約手続きの補助
- 企業が日本語教師と契約し、本人に日本語講習の機会を提供
また、以下の支援をすることも、任意的な支援として望まれています。
- 企業担当者による日本語指導に向けた企画・研修などの運営
- 日本語能力試験の受験案内、資格取得者への優遇措置などの考案
- 日本語教室や教材などの費用の企業側での負担
特定技能人材の日本語学習における課題
特定技能人材にとって、仕事と継続的な日本語学習を両立することは大きな課題です。
日本で働く外国人人材は、慣れない仕事や日本での生活で忙しく、なかなか日本語学習を継続することができません。特に、対面で開催されている日本語教室などは、時間や場所を制限されるため、継続的に通うのが難しいことがあります。
また、母国への仕送りや奨学金の返済など、金銭的に切迫した状況に置かれている方が多いのも課題の一つです。日本語を勉強するモチベーションがあっても、日本語講座に通うために必要な資金を捻出できないということもあります。かといって、企業側で日本語教育の費用を全額負担するというのも難しく、サポートしきれないとお悩みの人事・教育担当者の方も多いのではないでしょうか?
明光グローバルの「Japany」なら負担なく学習を継続できる
明光グローバルを通して特定技能人材を採用いただいた企業様では、自社で独自に開発したe-ラーニング日本語学習システム「Japany」をご利用いただくことが可能です。
「Japany」とは、時間や場所を選ばずに、ちょっとしたスキマ時間を使ってオンラインで日本語が学べるシステムです。具体的には、1,200本のレッスン動画の中から、状況やシーンに応じたさまざまな日本語を学ぶことができます。多言語翻訳にも対応しているため、母語を使って学べるのも、日本語学習を継続しやすいポイントです。
また、レコメンド機能やランキング機能など、本人のモチベーションとなるUIシステムを導入しているため、無理なく続けることができます。ご興味のある方は、ぜひ明光グローバルまでお問い合わせください。
特定技能人材に伝わりやすい日本語とは
特定技能人材とコミュニケーションをするにあたって、「やさしい日本語」というコミュニケーション方法があるのをご存知でしょうか?
「やさしい日本語」とは、外国人人材の在留支援のために、出入国在留管理庁・文化庁が推進しているコミュニケーション方法のことです。具体的には、難しい言葉を言い換える
シンプルな文法を用いるなど、相手の日本語レベルに配慮したわかりやすい日本語のことです。
特定技能人材を受け入れる企業の人事・教育担当者の方の中には「日本語の指示を正しく理解してもらえるだろうか」「本人の母国語を話せないからフォローができない」と不安な方も多いと思います。ぜひこの機会に「やさしい日本語」を学び、明日からの業務に活かしてみてください。
参照元:
特定技能人材向けに「やさしい日本語」で書面などを作る際のポイント
特定技能人材の日本語レベルに合わせた書類を作成するには、どのような点に注意を払う必要があるのでしょうか?ここでは、特定技能人材を対象に「やさしい日本語」を用いて書面などを作る際のポイントについて解説します。具体的な注意点は次の3点です。
- 日本人が読んでわかりやすい文章を作る
- 外国人にとってわかりやすい文章を作る
- 文章のわかりやすさをチェックする
日本人が読んでわかりやすい文章を作る
外国人にとってわかりやすい文章は、誰が読んでもわかりやすいことが多いです。まずは日本人としての目線からわかりやすい文章を作るために、以下に注意してみてください。
- 伝えたいことや情報を整理する:伝えたいことが散漫だと、重要な情報が理解しにくくなります。話す前に伝えたいことを整理し、必要な情報を端的に話すようにしましょう。
- 文をシンプルにする:だらだらと冗長な文章だと、要点がわかりにくくなります。文章は短く区切って、シンプルに話しましょう。
- イラストや図を使って一目でわかりやすくする:日本人にとっても、文字だけの資料は読みにくいものです。なるべくイラストや図を用いて、視覚的にわかりやすい表現を心掛けましょう。
外国人にとってわかりやすい文章を作る
日本人にとっては意味が伝わる内容でも、外国人から見るとわかりにくいことがあります。以下の注意点を意識して、文章がよりわかりやすくなるように修正しましょう。
- 複雑な文法を使わない:外国人にとって、日本語の複雑な文法は理解が難しいことがあります。たとえば、二重否定(~ないことはない)や使役表現(~が~される)などのように、複雑な文法を用いる文章は避けましょう。
- 簡単な言葉を使う:文章の中で使っている言葉を、なるべく簡単に言い換えるようにしましょう。たとえば、「記入する」を「書く」と表現するなどがあげられます。
- ストレートに表現する:あいまいな表現や、婉曲的な言い回しは、外国人にとって理解が難しいことがあります。伝えたいことはストレートに伝えましょう。
- 外来語に気を付ける:ビジネスシーンにおいては、「スキーム」や「コンセンサス」などのように、日本独自の使われ方をする外来語があります。これらの外来語は、外国人にとっては混乱する要因になりうるので、なるべく簡単な日本語で表現するようにしましょう。
- なるべくふりがなを振る:特定技能人材には、漢字を読むのが難しい方も多いです。資料や案内には、なるべくふりがなを振るようにしましょう。
文章のわかりやすさをチェックする
最後に、文章のわかりやすさをチェックしましょう。確認方法としては、以下があげられます。
- 外国人の目線からチェックする:対象者に近い目線から、アドバイスをもらえる方にダブルチェックを依頼しましょう。たとえば、周囲の日本語教師や外国人の同僚に見てもらうことなどが考えられます。
- 文章の難易度を確認するソフトウェアを活用する:出入国在留管理庁・文化庁が推奨しているソフトウェアとしては、やんしす・やさにちチェッカー・リーディング チュウ太などがあります。
- 出入国在留管理庁・文化庁による書き換え例を参考にする:具体的には、別冊 やさしい日本語 書き換え例(出入国在留管理庁・文化庁)から確認することが可能です。
特に、資料の配布対象者が多い場合や、マニュアル・規則のように資料が与える影響力が大きい場合には、念を入れた確認が重要です。企業や職場の状況に応じて、適切な手段を取り入れましょう。
特定技能人材と「やさしい日本語」で会話する際のポイント
特定技能人材の日本語レベルに合わせた会話をするには、どのような点に注意を払う必要があるのでしょうか?ここでは、特定技能人材を対象に「やさしい日本語」を用いてコミュニケーションを取る際の、話し言葉のポイントについて紹介していきます。具体的な注意点は次の3点です。
- 内容を整理し、相手に配慮する
- 相手の話をしっかり聴く
- 相手の反応を見て、臨機応変に対応する
- 短く、はっきりと言い切る
- 相手が理解できる言葉に言い換える
- ノンバーバルコミュニケーションを活用する
参照元:
内容を整理し、相手に配慮する
特定技能人材と会話をする際には、前提として、話す内容を整理し、相手に配慮するよう心掛けることが重要です。
日頃、日本人を相手にコミュニケーションをとっていると、外国人人材に対しても「このくらい話せばわかるだろう」と思い込んでしまうことがあります。しかし、このような思い込みから説明が雑になってしまうと、外国人人材が困惑したり、指示が通らない要因になります。
日本での生活に不慣れな外国人人材に対しては、あらゆる内容を言語化することが望ましいです。「制度の存在自体や日本社会の一般常識を知らないかもしれない」と考え、伝えたい内容を整理し、丁寧に説明するよう心掛けましょう。
相手の話をしっかり聴く
特定技能人材と気持ち良くコミュニケーションを取るために、相手の話を聴く態度を示すことはとても重要です。
外国人として、見知らぬ土地で、慣れない日本語で話すのは不安なものです。日本人を相手に話す緊張感やパニックから、いつも以上にうまく話せないこともあるかもしれません。
本人が不安そうにしているときは、笑顔で緊張を和らげましょう。アイコンタクトをしたり、相槌を打ったり、相手の発言を繰り返すことも効果的です。また、会話中に相手の言っていることがわからなくなったら、復唱するなどして相手の意図を確認しましょう。
相手の反応を見て、臨機応変に対応する
特定技能人材との会話においては、相手の反応に合わせた臨機応変な対応が必要です。
外国人人材との会話においては、やり取りがうまくいかず、相手に意図がまったく伝わらないこともあるかもしれません。こうした状況の中でも、フリーズせずに話を続けることが重要です。
まずは簡単な言葉に言い換えたり、復唱したりしましょう。もし、どんなに話しても意思疎通が難しいと感じたら、相手の母国語で話せる通訳を間に挟んだり、スマートフォンの翻訳機能を取り入れたりしてもよいでしょう。
また、本人の日本語能力が非常に高いと感じたら、「やさしい日本語」を使わず、日本人と同じように話した方がよいです。
たとえ一定以上の語学力を持つ特定技能人材といっても、実際の会話における日本語レベルは人それぞれです。目の前にいる相手の日本語レベルや表情を見ながら、自分の話し方を調整するようにしましょう。
短く、はっきりと言い切る
特定技能人材に対しては、短く、はっきりと言い切る言い回しが効果的です。
話が長いと、要点がどこにあるのか分かりにくく、文法も複雑になりがちなので、外国人人材としては理解しづらくなります。外国人人材と話すときは、短く文章を切って、はっきり話すようにしましょう。
一方、文章を短くしようとして、最後まで言い切らず途中で止めると、かえってわかりにくくなることが多いです。たとえば、「ちょっと寒いからドアを」「このポイントは重要だから」といっても、何をすればよいのかがわかりません。「ちょっと寒いからドアを閉めてください」「このポイントは重要だから覚えておきましょう」というように、動詞などを省略せず言い切るようにしましょう。
また、日本人にありがちなクセである、早口や、抑揚のない会話も外国人には理解しづらいものです。なるべくゆっくりしたペースを意識し、強調したいポイントで声のトーンを変えるなどして、わかりやすく話すよう心掛けましょう。
相手が理解できる言葉に言い換える
特定技能人材とコミュニケーションを取るうえでは、相手が理解しやすい言葉に言い換えることが重要です。
外国人人材にとって、最も難解なのが漢字です。話し言葉においても、なるべく漢字を減らすよう意識した方が伝わりやすいことがあります。たとえば、「食料品を無料で支給しています」というよりも「食べ物をくばっています。お金はいりません」という方が理解しやすいでしょう。
そのほかにも、以下のような言葉は、相手にとってわかりにくいことがあります。
- ことわざや四字熟語
- カタカナの外来語
- オノマトペ(ぼちぼち、さっさと、てきぱきなど)
- 複雑な文法
- 尊敬語・謙譲語
また、質問をする際に「はい」か「いいえ」の二択になるような聞き方をすることも、スムーズなコミュニケーションを取るにあたって有効です。
ノンバーバルコミュニケーションを活用する
特定技能人材と会話するうえでは、ノンバーバルコミュニケーションを活用することも効果的です。ノンバーバルコミュニケーションとは、身振りや手振りなど、言語以外で行うコミュニケーション全般のことです。
具体的には次のものなどがあげられます。
- 身振りや手振りを交えて話す(ただし、ジェスチャーの意味は世界共通ではないため注意が必要)
- 資料や写真、図、現物などを活用して話す
- コミュニケーションボードを用意する
メラビアンの法則では、人間にとって最も伝わりやすい情報は「視覚情報」だと言われています。日本語に不慣れな外国人人材が、視覚からもヒントを得られるよう、ぜひノンバーバルコミュニケーションを活用してみてください。
特定技能人材と日本語でコミュニケーションを取る際の注意点
特定技能人材と話すとき、やらない方がよいことや、気をつけなければならないポイントはあるのでしょうか?最後に、特定技能人材とコミュニケーションを取るときに心掛けたい3つの注意点を解説します。具体的には次のとおりです。
- NGワードに注意する
- 見た目で判断しない
- 大人の相手に対して「子供扱い」をしない
NGワードに注意する
特定技能人材とのコミュニケーションを悪化させるNGワードに注意しましょう。具体的には、次のような言葉には注意が必要です。
- 「そんなこともわからないのか」「自分で考えろ」:外国人人材に対して曖昧な指示は混乱を招く要因になります。具体的に言語化して説明した方がスムーズでしょう。
- 「前にも言っただろ」「何回同じことを言わせるんだ」:外国人人材には、伝わっていないようであれば何度でも繰り返し説明をすべきです。また、このような言い方も、相手に過度なプレッシャーやストレスを与えかねないので不適切です。
- 「日本人なら……」「だから〇〇人はダメなんだ」:外国人に対する差別的な発言は絶対にやめましょう。人種や国籍で人の優劣を比較する発言は、相手との間に致命的な亀裂を生みます。
慣れない外国人人材との業務において、相手に日本の常識や当たり前が通用しないと、つい口が滑ってしまうこともあるかもしれません。しかし、このようなNGワードを相手にぶつけては、より一層状況を悪化させてしまいます。お互いの文化や価値観を尊重しながら、少しずつ働きかけていきましょう。
見た目で判断しない
特定技能人材を含む外国人人材を、見た目で判断してはなりません。たとえば、アジア系の顔立ちでも、日本語が上手ではない方もいるかもしれません。欧米の方で、日本語を流暢に話す方もたくさんいます。
特定技能人材の見た目から「日本語があまり上手に話せなさそう」「日本の常識をよく理解していそうだ」といった偏見を持つのは、コミュニケーションを悪化させる要因になります。あくまで、相手と対話する中で、相手の日本語レベルや理解度に応じてコミュニケーション方法を調整するようにしましょう。
大人の相手に対して「子供扱い」をしない
特定技能人材に対して「子供扱い」をしないようにしましょう。
特定技能人材が日本語がうまく話せなかったり、日本の常識を知らなかったりすると、無意識に相手に対して「子供扱い」をしてしまうことがあります。たとえば、相手のしている作業を過剰に心配したり、難易度の高くない業務でも積極的に手伝おうとしたり、身のまわりの世話を焼いたりなどです。
しかし、外国人人材もまた、大人としてプライドを持っているため、このような言動はかえってストレスにつながるかもしれません。特定技能人材もまた、異なる文化や言語圏で育った一人の大人です。子供扱いをせず、大人に対する丁寧な対応を心掛けましょう。
特定技能の人材紹介は明光グローバルへお任せください
特定技能人材は、在留資格を獲得するにあたって、一定の日本語力が担保されています。一方で、会話などの実践経験がなく、職場でうまく話せないこともあるかもしれません。
明光グローバルは、これまでさまざまな企業様に対し、特定技能人材の導入から定着までをお手伝いしてきました。特定技能人材とスムーズにコミュニケーションを取るための手法やノウハウを知りたい場合や、特定技能人材向けの日本語教育にお悩みの方は、ぜひ特定技能人材専門の人材紹介サービスを手掛ける明光グローバルにお問い合わせください。
最後に、明光グローバルの概要と、提供するサービスを紹介します。
明光グローバルとは
明光グローバルは、さまざまな事業を通して、日本で働きたい外国人の就労機会を創出し、日本企業の持続的な成長に貢献しています。外国人材紹介事業では、これまでご紹介してきた「特定技能人材紹介サービス」に加え、優秀な外国人のIT事業者を紹介する「ITエンジニア紹介サービス」があります。
また、教育研修事業では、外国人人材が企業でより一層活躍できるよう、独自のe-ラーニングシステムや日本語レッスン、日本語能力測定試験などの「外国人社員向け各種教育・研修サービス」を提供しています。
特定技能人材紹介サービスの概要
特定技能人材紹介サービスとは、特定技能人材の導入から定着まで、一気通貫したサポートが受けられるコンサルティングサービスです。
明光グローバルは、特定技能1号人材の登録支援機関として認定されています。登録支援機関とは、特定技能1号の人材への支援を適切に実施し、出入国在留管理庁への各種届出を滞りなく行うために設置されているサポート機関です。
企業が登録支援機関と委託契約を締結すると、必要に応じて特定技能人材への支援を登録支援機関に委託することができます。具体的には、ご契約いただいた企業においては、特定技能人材の紹介に加えて、次のサービスをご利用いただくことが可能です。
- 特定技能人材の採用に向けた各種申請書類作成のサポート
- 特定技能人材の生活サポート
- 特定技能人材の母国語での相談窓口
- 特定技能人材との定期面談
明光グローバルの強み
明光グローバルの強みは、「集客力」「教育力」「専門性」の3点です。
明光グローバルは、SNSや各種メディアなどを通じて外国人材を数多く集客しています。また、グループ会社のネットワークを通じて、各種教育機関からも優秀な人材を獲得しています。潤沢な候補者情報を獲得しているからこそ、企業にぴったりの人材を選抜し、推薦することが可能なのです。
また、明光グローバルのグループ会社では、これまで40年以上もの間、外国人に対する教育を実施してきました。こうした実績から、明光グローバルでは、企業様の状況に合わせた適切な教育支援プログラムのご提供が可能になっています。
近年では、外国人材の自主学習をサポートするe-ラーニングシステム「Japany」などの特徴的な学習サービスも独自開発していますので、ぜひご活用ください。
さらに、明光グローバルは、前述の通り特定技能1号人材の登録支援機関として認定されており、特定技能人材に対する専門的なサポートができます。そのため、特定技能人材を受け入れる際のさまざまな支援や、書類作成などをまるっとお任せいただくことが可能です。
このように、明光グローバルは、特定技能人材に対する高い集客力と教育力、専門性を備えています。特定技能人材に関する労務手続きにお悩みの方も、ぜひお気軽にお問い合わせください。
まとめ
特定技能人材は、一定程度の日本語レベルが担保されているものの、「話す」「書く」については十分なトレーニングを積み切れていない可能性があります。
特定技能人材の日本語力を向上させるために、企業は義務的支援として日本語教育支援を行う必要があります。また、外国人人材との日常的な会話や資料作成の際に「やさしい日本語」を取り入れることで、コミュニケーションを改善することが可能です。
明光グローバルでは、これまで特定技能人材の紹介事業を行うにあたって培ってきたさまざまな実績やノウハウがあります。特定技能人材への教育指導の方法や、詳しいポイントについて知りたい方は、ぜひお気軽に明光グローバルまでお問い合わせください。