外国人材の日本語能力を向上する際には、日本語の検定試験を活用することがおすすめです。
日本語の検定試験に向けて勉強をする中で、継続的な日本語学習の習慣が身につきます。また、有利な条件の在留資格を取得できたり、企業の定着につながったりすることもあるため、企業にとってもメリットがあります。
今回は、日本語能力試験(以降「JLPT」)のN1レベルの概要やメリット、デメリット、試験対策について解説します。併せて、企業が外国人材のN1合格を支援するための方法についても紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
日本語能力を測る検定試験「JLPT」とは
JLPTは、国際交流基金と日本国際教育支援協会が共同で運営している、日本語を母語としない人々の日本語能力を評価するための検定試験です。世界最大規模の日本語試験の一つであり、2023年には92ヶ国から1,265,436名の方が受験しています。
JLPTには、難易度別にN5〜N1までの5段階のレベルがあります。N5レベルが最も易しく、N1レベルが最も難しい試験となっています。
日本においては、JLPTを一部の在留資格の認定要件として活用しています。たとえば、特定技能1号の在留資格を得るためには、原則としてN4試験に合格する必要があります。また、外国で医師免許を持っている外国人材が日本で医師国家試験を受けるには、JLPT N1への合格が必要です。
このように、日本企業への就職を目指す多くの外国人材がJLPTを受験しています。
参照元:目的と沿革(日本語能力試験)
JLPTの検定試験における「N1レベル」
JLPT N1とは、JLPTの中でも最も難易度が高い、上級者向けの検定試験です。JLPTでは、JLPT N1の認定の目安について、次のように定めています。なお、認定の目安は「読む」「聞く」などの言語行動で表されていますが、これらの言語行動を実現するためには文字・語彙・文法などの言語知識も必要です。
項目 | 認定の目安 | |
総合力 | ・幅広い場面で使われる日本語を理解することができる。 | |
読む | ・幅広い話題について書かれた新聞の論説、評論など、論理的にやや複雑な文章や抽象度の高い文章などを読んで、文章の構成や内容を理解することができる。 ・さまざまな話題の内容に深みのある読み物を読んで、話の流れや詳細な表現意図を理解することができる。 | |
聞く | ・幅広い話題において自然なスピードの、まとまりのある会話やニュース、講義を聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係や内容の論理構成などを詳細に理解したり、要旨を把握したりすることができる。 |
ここでは、JLPT N1の概要として、問題構成や合格基準、合格者の日本語レベルについてそれぞれ紹介します。
N1レベルの問題構成
まずは、JLPT N1の問題構成について解説します。
JLPT N1では、あらかじめ公式サイトで出題される試験科目や大問、出題される内容が公表されています。試験科目は、言語知識(文字・語彙・文法)・読解・聴解の3種類に分かれており、「話す」「書く」などの科目がないのが特徴です。
具体的な問題構成については、次のとおりです。
試験科目 | 大問 | 出題される内容 | |
言語知識 | 文字・語彙 | 漢字読み | 漢字で書かれた語の読み方は何か |
文脈規定 | 文脈によって意味的に規定される語は何か | ||
言い換え類義 | 出題される語や表現と意味的に近い語や表現は何か | ||
用法 | 出題語が文の中でどのように使われるか | ||
文法 | 文の文法1(文法形式の判断) | 文の内容に合った文法形式を選択できるか | |
文の文法2(文の組み立て) | 統語的に正しく、意味の通る文を組み立てることができるか | ||
文章の文法 | 文章の流れに合った文を選択できるか | ||
読解 | 内容理解(短文) | 生活・仕事など、さまざまな話題に関する200字程度のテキストを読んで内容を理解できるか | |
内容理解(中文) | 評論・解説・エッセイなど、500字程度のテキストを読んで因果関係や理由などを理解できるか | ||
内容理解(長文) | 解説・エッセイ・小説など、1,000字程度のテキストを読んで概要や筆者の考えなどを理解できるか | ||
統合理解 | 合計600程度の複数のテキストを読み比べて、比較・統合しながら理解できるか | ||
主張理解(長文) | 社説・評論など、抽象性・論理性のある1,000字程度のテキストを読んで、全体的な主張や意見がつかめるか | ||
情報検索 | 広告・パンフレット・情報誌・ビジネス文書など、700字程度の情報素材の中から必要な情報を探し出せるか | ||
聴解 | 課題理解 | 具体的な課題解決に必要な情報を聞き取り、次に何をする必要があるのかを理解できるか | |
ポイント理解 | 事前に示されている聞くべき要素を踏まえて、ポイントを絞って聞くことができるか | ||
概要理解 | テキスト全体から、話者の意図や主張が理解できるか | ||
即時応答 | 質問などの短い発話に対して、適切な応答を選択できるか | ||
統合理解 | 長めのテキストを聞いて、複数の情報を比較・統合しながら内容が理解できるか |
※:試験問題の構成(日本語能力試験JLPT)を基に作成
N1レベルの合格基準
JLPT N1の合格基準について確認しましょう。JLPT N1に合格するには、次の2つの要素を満たす必要があります。
- 総合得点が合格点以上
- 試験科目ごとの得点が、合格に必要な基準点以上
たとえば、総合得点が合格点を超えていても、試験科目ごとの得点が基準点を下回っていた場合は合格することができません。そのため、受験者は全ての試験科目で基準点を超える点数が取れるよう、網羅的に対策する必要があります。具体的な合格点・基準点については、次のとおりです。
①JLPT N1における合格点
項目 | 得点の範囲 | 合格点 | 合格に必要な得点率 |
---|---|---|---|
総合得点 | 0~180点 (180点満点) | 100点 | 55% |
②JLPT N1における基準点
試験科目 | 得点の範囲 | 基準点 | 合格に必要な得点率 |
言語知識(文字・語彙・文法) | 0~60点 (60点満点) | 19点 | 31% |
読解 | 0~60点 (60点満点) | 19点 | 31% |
聴解 | 0~60点 (60点満点) | 19点 | 31% |
参照元:得点区分・合否判定・結果通知
合格者の日本語レベルの目安
JLPT N1に合格した外国人材は、どのくらい日本語を活用することができるのでしょうか?
JLPTでは、「Can-do自己評価リスト」という資料を公開しています。これは、JLPT試験の合格者を対象に、日本語でどんなことができると考えているかについて、自己評価調査を行った結果をまとめたものです。
この資料では、日本語を使ったさまざまな言語行動について、「できる」と考える合格者の割合を公開しています。75%以上が「できる」と考える項目については、ほとんどの合格者が自信を持ってできるでしょう。一方、「できる」と考える方の割合が25%未満の項目については、あまり期待できないかもしれません。
以下は、N1合格者のCan-do自己評価リストを抜粋したものです。日本語レベルを推察する際の参考情報として活用してみてください。
項目 | 「できる」と考える合格者の割合 | |||
25%未満 (難易度高) | 25~50%未満 | 50~75%未満 | 75%以上 (難易度低) | |
読む | – | ・政治や経済に関する新聞や雑誌の記事を読んで、要点が理解できる。 ・論説記事を読んで、主張・意見や論理展開が理解できる。 ・人物の心理や話の展開を理解しながら、小説を読むことができる。 | ・エッセイを読んで、筆者の言いたいことがわかる。 ・関心のある話題に関する専門的な文章を読んで、だいたいの内容が理解できる。 ・敬語が使われている正式な手紙やメールの内容が理解できる。 ・仕事相手からの問い合わせや依頼の文書を読んで理解できる。 ・身近で日常的な話題についての新聞や雑誌の記事を読んで、内容が理解できる。 ・旅行のガイドブックや、進学・就職の情報誌を読んで、必要な文章がとれる。 | ・一般の日本人向けの国語辞典を使って言葉の意味が調べられる。 ・商品のパンフレットを見て、知りたいことが分かる。 ・短い物語を読んで、だいたいのストーリーが理解できる。 ・知人や友人から来たはがきやメールを読んで、理解できる。 ・学校、職場などの掲示板を見て、必要な情報がとれる。 ・新聞の広告やチラシを見て、安売り期間や値段などがわかる。 ・駅の時刻表や案内板を見て、自分が乗る電車の時間がわかる。 ・年賀状や誕生日のカードを読んで理解できる。 ・簡単なメモを読んで理解できる。 ・絵のついた簡単な指示がわかる。 ・学校などで面談の予定表を見て、自分の面談の曜日と時間がわかる。 |
聞く | ・政治や経済などについてテレビのニュースを見て、要点を理解する。 ・最近メディアで話題になっていることについての会話で、だいたいの内容が理解できる。 | ・フォーマルな場でのスピーチを聞いて、だいたいの内容が理解できる。 ・思いがけない出来事に関するアナウンスを聞いて、だいたい理解できる。 ・仕事や専門に関する問い合わせを聞いて、内容が理解できる。 ・関心あるテーマの講義や講演を聞いて、だいたいの内容が理解できる。 | ・学校や職場の会議で、話の流れが理解できる。 ・関心あるテーマの議論や討論で、だいたいの内容が理解できる。 ・身近で日常的な内容のテレビ番組を見て、だいたいの内容が理解できる。 ・身近で日常的な話題に関する話し合いで、話の流れが理解できる。 ・標準的な話し方のテレビドラマや映画を見て、だいたい理解できる。 ・店で商品の説明を聞いて、知りたいことがわかる。 ・駅やデパートでのアナウンスを聞いて、だいたい理解できる。 | ・周りの人との雑談や自由な会話で、だいたいの内容が理解できる。 ・簡単な道順や乗り換えについての説明を聞いて、理解できる。 ・身近で日常的な話題についての会話がだいたい理解できる。 ・簡単な指示を聞いて、何をすべきか理解できる。 ・先生からのお知らせを聞いて、集合場所、時間などがわかる。 ・店、郵便局、駅などで、よく使う言葉を聞いて、理解できる。 ・教室で、先生や友達の簡単な自己紹介を聞いて理解できる。 |
話す | – | ・関心ある話題の議論や討論に参加して、意見を論理的に述べることができる。 ・最近メディアで話題になっていることについて質問したり、意見を言ったりすることができる。 ・思いがけない出来事の経緯や原因について説明することができる。 ・相手や状況に応じて、丁寧な言い方とくだけた言い方を使い分けられる。 | ・最近見た映画や読んだ本のだいたいのストーリーを紹介することができる。 ・クラスのディスカッションで、相手の意見に賛成か反対かを理由とともに述べることができる。 ・準備をしていれば、自分の専門の話題やよく知っている話題についてプレゼンテーションができる。 ・友人や同僚と、旅行の計画やパーティーの準備などについて話し合うことができる。 ・アルバイトや仕事の面接で、希望や経験を言うことができる。 | ・よく知っている場所の道順や乗り換えについて説明することができる。 ・準備をしていれば、自分の送別会などのフォーマルな場で短いスピーチをすることができる。 ・店で買いたいものについて質問したり、希望や条件を説明したりすることができる。 ・電話で遅刻や欠席の連絡ができる。 ・身近で日常的な話題について会話ができる。 ・相手の都合を聞いて、会う日時を決めることができる。 ・驚き、嬉しさなどの自分の気持ちと、その理由を簡単な言葉で説明することができる。 ・自分の部屋について説明することができる。 ・趣味や興味のあることについて、話すことができる。 ・店、郵便局、駅などで、よく使われる言葉を使って、簡単なやり取りができる。 ・自己紹介をしたり、自分についての簡単な質問に答えたりすることができる。 |
書く | – | ・論理的に意見を主張する文章を書くことができる。 ・思いがけない出来事について説明する文章を書くことができる。 ・料理の作り方や機械の使い方などの方法を書いて伝えることができる。 | ・自分の関心のある分野のレポートを書くことができる。 ・目上の知人あてに、基本的な敬語を使って手紙やメールを書くことができる。 ・自分の送別会などでの挨拶スピーチの原稿を書くことができる。 ・学校や会社への志望理由などを書くことができる。 ・最近読んだ本や見た映画のだいたいのストーリーを書くことができる。 ・理由を述べながら、自分の意見を書くことができる。 | ・体験したことや、その感想について、簡単に書くことができる。 ・知人に、感謝や謝罪を伝える手紙やメールを書くことができる。 ・自分の日常生活を説明する文章を書くことができる。 ・将来の計画や希望について簡単に書くことができる。 ・短い日記を書くことができる。 ・友人や同僚に日常の用件を伝える簡単なメモを書くことができる。 ・自分の家族や町などの身近な話題について簡単に書くことができる。 ・予定表やカレンダーに、短い言葉で自分の予定を書くことができる。 ・誕生日のカードや短いお礼のカードを書くことができる。 ・簡単な自己紹介の文を書くことができる。 ・書類に、名前や国名などを書くことができる。 |
※:日本語能力試験Can-do自己評価リストを元に作成
外国人材がN1レベルになることで企業が得られるメリット
外国人材がN1レベルになると、企業はどんなメリットを得られるのでしょうか?ここでは、企業が得られるメリットについて解説します。
- 外国人材のリスニング力・リーディング力が向上し、社内での意思疎通が円滑になる
- 外国人材が日本に定着しやすくなる
外国人材のリスニング力・リーディン力が向上し、社内での意思疎通が円滑になる
日本企業が外国人材を採用する際に、重要視している項目の一つが日本語能力です。「どんなに業務スキルが高い人材でも、日本語での意思疎通ができないと不安になる」という方も多いでしょう。
JLPT N1の試験対策に取り組むことで、特に試験科目として出題されるリスニング・リーディングのスキルを中心とした日本語能力を向上することができるでしょう。
また、外国人材がN1レベルになることで、日本語に対する自信が増すこともメリットだといえます。特に、接客や顧客折衝などに従事している場合、外国人材が自信を持って日本語を使えるようになることで、業務の質の向上にもつながるでしょう。
外国人材が日本に定着しやすくなる
JLPT N1に合格すると、外国人材がより良い条件の在留資格を取得できる場合があります。
たとえば、「高度人材ポイント制度」では、評価項目で70ポイント以上を獲得すると、「高度外国人材」という在留資格を得ることができます。この資格にはさまざまな優遇措置があり、中には永住許可要件を緩和するものもあります。
JLPT N1に合格すると、高度人材ポイント制度で15ポイントのボーナスが加算されるため、この在留資格を取得しやすくなります。
外国人材が条件の良い在留資格を得ると、日本に滞在しやすくなります。その結果、自社に長期的に定着してもらうことにつながります。
さらに、企業が外国人材のN1レベルの取得を積極的に支援すれば、愛社精神が育まれ、より定着率が向上するでしょう。
外国人材がN1レベルになることに関する企業側の注意点
外国人材がN1レベルになることに対する直接的なデメリットはありません。しかし、JLPT N1に関連して、気をつけておきたいポイントもあります。ここでは、外国人材がN1レベルになることに関する企業の注意点について解説します。
- スピーキング・ライティングについては別途継続的な日本語教育が必要
- 外国人材の転職市場における市場価値が高まることで転職リスクが高くなる
スピーキング・ライティングについては継続的な日本語教育が必要
JLPTには、スピーキング・ライティングに関する試験科目がありません。そのため、JLPT N1に合格していたとしても、日本語で「話す」・「書く」ことに苦手意識がある方は多いです。
外国人材の採用に慣れていない企業では「N1レベルなのに、どうしてスムーズに日本語が話せないのか」「JLPT N1に合格しているのだから、こんな文章すぐ書けるだろう」と誤解されている方もいます。しかし、話す力や書く力を本格的に鍛えるためには、JLPTの試験対策とは別に、日本語でのスピーキング・ライティングに特化した教育が必要となることには注意しましょう。
なお、明光グローバルでは、「話す」「書く」に特化した日本語レッスンを提供しています。外国人材の会話力・文章作成能力の開発にお悩みの方は、ぜひ明光グローバルまでお問い合わせください。
外国人材の転職市場における市場価値が高まることで転職リスクが高くなる
日本企業では、外国人の求職者に対して、高い日本語能力を求めることが多いです。外国人材がJLPT N1に合格すると、転職市場における市場価値が高まり、他社から声がかかることが想定されます。
外国人材は、日本人よりも報酬などの労働条件にシビアであることが多いです。そのため、自社より良い条件を提示する企業があれば、転職してしまう可能性があります。
一方、外国人材の日本語能力や業務遂行能力の向上を支援してくれた企業に対しては、愛着が湧き、長期的に定着する方も多いです。また、外国人材の努力を評価・報酬の面から報いる仕組みが整っていれば、条件面でも安心して働き続けてくれるでしょう。
このように、優秀な人材の流出を防ぐためには、外国人材から選ばれ続ける企業・職場づくりに取り組む必要があります。
検定試験でN1レベルに合格するために必要な学習内容
外国人材がN1レベルに合格するためには、どのような勉強が必要なのでしょうか?ここでは、N1レベルに合格するために必要な学習内容について、試験科目ごとに解説します。
言語知識(文字・語彙・文法)
言語知識では、文字・語彙・文法の3項目について、それぞれ対策が必要となります。
「文字」では、試験範囲となる漢字の訓読み・音読み・特別な読み方を覚える必要があります。N1レベルでは、N2レベルまでの試験範囲に加えて、新たに677字の重要漢字に関する理解が求められます。教材を読むだけではなく、ノートに書き取る練習をすることで、漢字を正確に覚える助けになります。
「語彙」では、試験範囲の語彙を話題や性質ごとに整理立てて学ぶことが必要です。試験では、出題語と意味的に近い語を選ぶ「言い換え類義」の問題や、複数の文の中から正しく語句が使われている文を選ぶ「用法」の問題が出てきます。
そのため、同義語・類語・対義語をグループ化してまとめて覚えたり、語句が自然な形で使われている例文をまるごと覚えたりすると、試験のときに知識を引き出しやすくなるでしょう。
「文法」は、試験に出てくる文法形式の意味・機能・文法的な性質などを整理して理解することが重要です。JLPT N1では、「~や否や」「〜いかんにかかわらず」といった、古めかしい文法も試験範囲に入ってきます。苦手な文法は、フラッシュカードを使ったり、例文をまるごと暗記するなどして、徹底的に潰し込むようにしましょう。
一定の知識が頭に入ったら、問題集の実践問題を解き、試験形式に慣れることが重要です。間違えてしまった問題は、正解できるまで繰り返し解くようにしましょう。
また、日頃から日本語の文章に多く触れることで、自然と言語知識を獲得することができます。読解問題の対策にもなるため、新書レベルの評論やエッセイを読むのがおすすめです。
参照元:
読解
読解では、評論・解説・エッセイや、広告・お知らせ・説明書きなどを読む問題が出てきます。それぞれの文章の特徴を掴み、解き方のコツを理解するのが高得点を取るための近道です。
評論・解説・エッセイに対しては、文章の仕組みを理解し、問いを解く技術を身につけることが重要となります。JLPT N1では、長いものだと1,000字程度の文章を読む設問が出てきます。問いの解き方に慣れていないと、時間切れになってしまうかもしれません。
文章の仕組みをスピーディーに理解するには、「対比」「言い換え」「比喩」「疑問提示文」といった分類を用いて、文の役割を整理する技法を習得する必要があります。また、「5W1H」「下線部の意味」といった、代表的な問いの形を覚えることも効果的です。
広告・お知らせ・説明書きなどに対しては、全体にざっと目を通して目的や趣旨をつかみ、必要な情報を探し出すことが重要です。
JLPT N1では、「全体的な内容を尋ねる問い」「部分的な内容を尋ねる問い」の2種類の設問が登場します。全体的な内容を尋ねる問いでは、問われている内容を読み取り、設問文にざっと目を通して、読み取った内容を選択肢と見比べながら確認していきます。
また、部分的な内容を尋ねる問いでは、問いの内容と選択肢から、探すべき情報を読み取り、設問文に含まれる正解を探し出します。
設問ごとの解き方のコツを理解したら、問題集で繰り返し実践問題を解くことに加え、自然な日本語に慣れるために書籍を読むのも良いでしょう。
参照元:新完全マスター読解 日本語能力試験N1(スリーエーネットワーク)
聴解
聴解では、即時応答・課題理解・ポイント理解・概要理解・統合理解の5つのスキルが問われます。それぞれ、次のような点に注意しながら学習を進める必要があります。
項目 | 設問の内容 | 学習のポイント |
---|---|---|
即時応答 | 質問や依頼などの短いテキストを聞いて、選択肢の中から適切な答えを選ぶ。 | 5W1Hなどを活用して設問文を理解する練習や、返事の文を考える練習が必要。 |
課題理解 | 指示や依頼、助言などを聞いて、選択肢の中からこれから何をするべきかを選ぶ。 | 「するべきこと」を理解する練習や、優先順位・条件を整理しながら話を聞く練習が必要。 |
ポイント理解 | 事前に示されているポイントを意識して話を聞き、質問に対する答えを選ぶ。 | 話し手の意図を踏まえて、必要な情報を取捨選択する練習や、選択肢の類語を聞き取る練習が必要。 |
概要理解 | テキスト全体を聞いて、話者の意図や主張としてふさわしい選択肢を選ぶ。 | 話題や話の構造をつかむ練習や、意見・主張・意図などを把握する練習が必要。 |
統合理解 | 長いテキストを聞いて、複数の情報を比較したり、整理したりしながら、答えを導く。 | 2人以上の人の話を整理する練習や、複数の話題を整理しながら聞く練習が必要。 |
※:新完全マスター聴解 日本語能力試験N1・試験問題の構成を元に作成
解き方のコツを理解したら、問題集の実践問題を繰り返し解きましょう。
N1レベルの聴解では、自然なスピードの日本語を聞き取る力が求められるため、普段から日本語に触れて耳を慣らすことが重要です。そのため、日本人のラジオやテレビ番組を聞くことも良い練習になるでしょう。
また、職場で日本人と積極的に交流すると、聴解問題の対策になるだけでなく、組織のチームワークを高める効果も生まれるためおすすめです。
企業が外国人材の検定試験合格をサポートする方法
企業が外国人材のJLPT N1合格をサポートするためには、どうすれば良いのでしょうか?ここでは、企業が外国人材の検定試験合格をサポートする方法について解説します。
- 検定試験の結果を評価や報酬に反映する
- 日本語の学習環境を整備する
- 日本人との交流機会を確保する
検定試験の結果を評価や報酬に反映する
外国人材の学習モチベーションを高めるには、検定試験の結果を評価や報酬に反映する仕組み作りが重要です。
外国人材にとって、慣れない日本での生活の合間に、日本語学習を継続的に続けるのはハードルが高いものです。特に、発展途上国から来日している外国人材は、実家への仕送りや奨学金の返済などの理由から、労働条件にシビアであることが多いです。
検定試験の結果が評価や報酬に反映されることで、外国人材のモチベーションが高まり、意欲的に学習に取り組むようになるでしょう。また、「自分の頑張りに報いてくれる会社」として、エンゲージメントが上昇し、長期的な定着につながる可能性も高まります。
日本語の学習環境を整備する
JLPT N1の対策として、外国人材が日本語を学べる環境を提供することも、大きな支援につながります。
外国人材は、日本での生活や仕事で疲れてしまい、なかなか勉強時間を確保できないことがあります。また、資金面から、日本語教材や教室に通う余裕がない場合もあるでしょう。
企業が日本語の学習環境を提供することで、外国人材に経済的な負荷をかけずに、日本語を学んでもらうことができます。外国人材の愛社精神が醸成されることで、定着率の向上にもつながるでしょう。
日本語学習環境としては、忙しい方でも継続しやすいオンライン日本語学習サービスがおすすめです。明光グローバルでは、外国人材がスマートフォンを活用して、スキマ時間にサクサク検定試験対策ができる「Japany」というサービスを提供しています。他にも、外国人材のニーズに合わせた幅広い「外国人社員向け各種教育・研修サービス」を行っていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
日本人との交流機会を確保する
外国人材と日本人社員の交流機会を確保することも、重要なサポートになります。
N1レベルに合格するためには、自然なスピードの日本語を正確に聞き取るリスニング力を鍛える必要があります。そのためには、日頃からネイティブスピーカーが話す日本語に触れ続けることが重要です。
外国人材が日本人社員と交流することで、JLPT N1の聴解対策をすることができます。また、社員同士の仲が深まることで、職場の雰囲気やチームワークが良くなり、エンゲージメントの上昇や業務の質の向上につながります。
交流機会としては、異文化理解研修や異文化コミュニケーション研修、オリエンテーション、親睦会などが挙げられます。職場に合ったものを導入してみてください。
外国人材の日本語能力向上をサポートしたいなら「Japany」がおすすめ
N1の検定試験に合格するには、設問ごとの解法を理解し、継続的に学習することが必要です。一方で、「どんな教材を使えば良いのかわからない」「自社の外国人材に合ったサポートをするにはどうすれば良いのか」など、お困りの方もいるのではないでしょうか?
外国人向けオンライン日本語学習ツール「Japany」なら、外国人材がスキマ時間を活用して効率的に試験対策をすることができます。外国人材向けの日本語教育にお悩みの方は、ぜひ「Japany」をご検討ください。
最後に、明光キャリアパートナーズが提供する「Japany」について紹介します。
明光キャリアパートナーズとは
明光キャリアパートナーズは、「明光義塾」を運営する株式会社明光ネットワークジャパンのグループ会社の一つで、Japanyを運営する教育サービス企業です。長年の教育ノウハウを活かし、外国人材の日本語教育やキャリア開発の支援を得意としています。
主な事業内容は次のとおりです。
- Japany(外国人向けオンライン日本語学習サービス)
- キャリスター(20代向けのキャリア支援サービス)
- career rep.(20代ハイキャリア向け支援サービス)
- MEIKO GLOBAL(外国人向け人材紹介・研修サービス)
Japanyとは
Japanyは、外国人向けオンライン日本語学習ツールです。初心者から上級者まで幅広いレベルに対応しており、学習者のニーズに沿った豊富な教材を提供しています。
日本語学習のほかにも、日本文化やビジネスマナーに関する講座も用意しており、日本での生活に必要なさまざまなスキルを身につけることができます。また、スマートフォンからでも使えるので、通勤時間や昼休憩などのスキマ時間を活用して、効率的に学習を進めることが可能です。
Japanyの強み
Japanyの強みは、「実用性の高いオリジナルコンテンツ」「学習の継続を促すシステム」「管理者を支えるサポート機能」の3点です。
- 実用性の高いオリジナルコンテンツ:「Japany」には、N5〜N1までを網羅したJLPT対策を始めとする1,200本以上の豊富なレッスン動画コンテンツがあります。N1対策だけでなく、業界・業種別の言い回しや日常的な会話能力が身につく動画など、学習者のニーズに合わせてさまざまなコンテンツの動画を視聴できます。
- 学習の継続を促すシステム:「Japany」には、実力・目標に応じて最適なプランを提案する「コンテンツレコメンド機能」や、力試しとして使える「実力診断テスト」など、外国人材の学習モチベーションを向上するさまざまな機能が搭載されています。
- 管理者を支えるサポート機能:学習者の進捗状況を確認できる「レポート機能」や、ログインがない場合に通知が届く「アラート機能」といった管理者機能も充実しています。そのため、人事・教育担当者の方も安心して利用することができます。
まとめ
日本語の検定試験であるJLPT N1の概要やメリット・注意点、学習方法などについて解説しました。
企業が外国人材のN1合格を支援するためには、継続的に日本語学習をしやすい仕組み作りが重要です。
外国人向けオンライン日本語学習ツール「Japany」には、外国人材の学習モチベーションを高める機能が充実しています。また、企業の担当者が学習状況を管理できるため安心です。
外国人材のN1対策にお悩みの人事・教育担当者の方は、明光キャリアパートナーズまでお気軽にお問い合わせください。