近年、安定的な人材確保の実現に向けて、特定技能人材を雇用する企業が増えています。日本国内に在留している外国人材を新たに特定技能人材として採用する際に、特定産業分野や外国人材の状況によっては、スムーズに特定技能の在留資格への移行ができない場合があります。このような場合に、一時的に特定活動の在留資格を取得の上、日本に滞在できることがあります。
今回は、特定技能関係で特定活動の在留資格を取得するケースの例や、企業側が注意すべきポイントなどについて解説します。特定技能関係での特定活動の取得や、特定活動期間に関する疑問やお悩みをお持ちの経営者や人事・教育担当者の方は、ぜひ本記事を参照してください。
特定技能関係の特定活動とは
特定技能関係の特定活動とは、特定技能の在留資格の取得や特定技能人材としての活動の継続のために日本に滞在する必要性がある場合に、一時的に取得される特定活動の在留資格を指します。
特定技能関係で取得する特定活動の在留資格のうち、法務大臣によって具体的に告示されている特定活動としては、自動車運送業分野の特定技能1号になるための準備活動である「特定活動55号」が挙げられます。
上記以外にも、特定技能の在留資格の取得を目指す留学生の卒業後の就職活動期間や、受入れ機関(受入れ企業)側の都合で解雇された場合の転職期間など、特定活動の在留資格はさまざまな場面で活用されています。
在留資格「特定技能」とは
特定技能とは、人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野(以降、「特定産業分野」)において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく仕組みを構築するために創設された在留資格です。
特定技能人材は一定の日本語水準・技能水準が担保されていることもあり、採用後早いタイミングでの活躍を期待できます。また、特定技能1号から特定技能2号にステップアップすれば、在留資格を更新することで期間の上限なく日本に滞在できるようになるため、安定的な人材確保が実現しやすくなります。
このような理由から、2019年に特定技能制度が創設されて以降、特定技能人材の総数は年々増加しています。
在留資格「特定活動」とは
特定活動とは、日本におけるさまざまな在留資格のどれにもあてはまらない活動内容での入国・滞在を希望する場合に取得する在留資格です。
特定活動の中には、出入国在留管理及び難民認定法に規定されている「法定特定活動」、法務大臣の告示に基づいて指定される「告示特定活動」と、個々の要件に応じて検討される「告示外特定活動」の3種類があります。
告示特定活動の例としては、ワーキングホリデーやインターンシップ、起業準備活動などがあります。
また、告示外特定活動の例としては、留学生が卒業後に引き続き国内で行う就職活動や難民申請中の滞在などが挙げられます。申請の許可・不許可については、個々の外国人材の状況に応じて決定されます。
参照元:
特定技能人材として働くために特定活動の在留資格を取得する理由
特定技能人材として働くために特定活動の在留資格を取得する理由はさまざまですが、スムーズに特定技能の在留資格に移行することができない事情があるケースが多いといえます。
たとえば、特定技能の在留資格の取得要件を満たすために、一時的に特定活動の在留資格を取得して準備しなければならないケースが考えられます。海外に在住している外国人材が新たに特定技能の在留資格を取得する場合や、異なる在留資格から特定技能の在留資格に移行する場合に、このような準備期間が必要となることがあります。
また、特定技能の在留資格から異なる在留資格に移行する際にも、次の在留資格の取得要件を満たすまでの準備期間として一時的に特定技能の在留資格で滞在する必要があることがあります。
特定技能関係で特定活動の在留資格を取得する主なケース
特定技能関係で特定活動の在留資格を取得する主なケースとしては、どのようなものがあるのでしょうか?ここでは、特定技能関係で特定活動の在留資格を取得する主なケースについて解説します。
- 自動車運送業分野の特定技能人材になるために国内で運転免許の取得などが必要なケース
- 現在の在留資格の在留期間が満了するまでに特定技能に移行することができないケース
- 受入れ機関側の都合で継続的な雇用が困難となり、特定技能人材が転職しなければならないケース
参照元:
- 自動車運送業分野の「特定技能1号」になるための準備活動(日本の運転免許取得又は新任運転者研修の修了)を希望する場合(「特定活動」(特定自動車運送業準備))(出入国在留管理庁)
- 特定技能関係の特定活動(「特定技能1号」への移行を希望する場合)(出入国在留管理庁)
- やむを得ない事情により活動継続が困難な場合(「特定活動」(就労継続支援))(出入国在留管理庁)
自動車運送業分野の特定技能人材になるために国内で運転免許の取得などが必要なケース
1つ目は、自動車運送業分野の特定技能人材になるために国内で運転免許の取得などが必要なケースです。このケースで取得される特定活動の在留資格は、一般的に「特定活動55号」と呼ばれています。
自動車運送業分野で特定技能1号の在留資格を取得するには、日本の運転免許を取得する必要があります。加えて、タクシー運送業およびバス運送業においては、新任運転者研修の修了も必要となります。
2025年現在、日本の運転免許の取得と新任運転者の受講は、日本国内でしかできません。そのため、自動車運送業分野の特定技能人材になるためには、一時的に特定活動55号の在留資格を取得する必要があります。
特定活動55号を取得するには、運転免許の取得・新任運転者研修の修了以外の、自動車運送業分野の特定技能1号にかかる要件をすべて満たすことが必要です。具体的には、業務区分ごとに定められた日本語試験・技能試験への合格などが求められます。
また、特定活動55号で在留している外国人材と企業は雇用契約を締結する必要があります。運転免許の取得などに要する時間以外は、特定技能人材として業務を任せることが可能です。なお、免許取得中のため、ドライバーとしての運転業務には従事できない点に注意が必要です。
特定活動55号で認められる活動内容は次のとおりです。
- 外免切替等も含む、運転免許の取得に係る諸手続(自動車教習所への通所を含む。)
- 新任運転者研修の受講(タクシー運送業及びバス運送業の場合)
- 車両の清掃等の関連業務
現在の在留資格の在留期間が満了するまでに特定技能に移行することができないケース
2つ目は、特定技能の在留資格を取得したいと考えているが、現在の在留資格での在留期間が満了するまでに要件を満たすことができないケースです。
現在の在留資格で在留できる期間の上限を迎えた場合、基本的には一度帰国して、新しい在留資格を申請し直すことになります。しかし、状況によっては、特定活動の在留資格で日本に滞在できる場合があります。具体的には、次のようなケースが想定されます。
- 大学・専門学校などを卒業した外国人材が、在学中に就職先を見つけることができず、引き続き就職活動のために日本に滞在する
- 合理的な理由があり、「技能実習」「留学」などの在留資格の在留期間中に在留資格変更のための準備が間に合わない
- 受入れ機関側の都合や労使間の問題など、やむを得ない事情で外国人材が就労を継続できなくなり、これから特定技能への移行を目指す
受入れ機関側の都合で継続的な雇用が困難となり、特定技能人材が転職しなければならないケース
3つ目は、特定技能人材の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず、受入れ機関側の都合で、継続しての就労が困難となってしまったケースです。
該当する事例としては、受入れ機関側の事業縮小や廃業などを背景に、人員整理を行うケースなどが挙げられます。このような状況においては、特定技能人材が転職先を見つけるまでの間、特定活動の在留資格で滞在できる場合があります。
特定技能関係で特定活動の在留資格を取得する際のポイント・注意点
外国人材が特定技能関係で特定活動の在留資格を取得する際には、どのような点に注意する必要があるのでしょうか?ここでは、特定技能関係で特定活動の在留資格を取得する際のポイントや注意点を解説します。
- 特定活動の在留資格を申請しても必ず認められるとは限らない
- 特定活動によっては就労制限がある場合がある
- 特定活動期間を活用して教育研修を実施することも有効
特定活動の在留資格を申請しても必ず認められるとは限らない
特定技能関係で特定活動の在留資格を申請したとしても必ず在留許可がおりるとは限りません。特定活動の在留資格は、法務大臣が個々の外国人材の状況を確認したうえで特別に活動内容を指定するものです。過去に同じような理由で在留が許可された事例があったとしても、在留許可がおりない可能性もあるため注意が必要です。
在留資格の申請が不許可になった場合には、一時的に帰国し、再度在留資格を申請しなければならないこともあります。事前に在留資格の取得要件を確認の上、余裕を持って準備するようにしましょう。
特定活動によっては就労制限がある場合がある
特定活動によっては、就労ができない場合や就労できる業務内容などに制限がかかる場合があります。
たとえば、特定活動55号の場合、自動車運送業分野の特定技能人材が従事できる業務内容のうち、ドライバーとしての運転業務は認められていません。また、日本国内での就職活動のために特定活動の在留資格を取得する場合、「アルバイトは週28時間まで」など、就労時間を制限されることがあります。
特定活動の在留資格の場合、個々の外国人材の状況に応じて、出入国在留管理庁から指定書が発行されます。外国人材が従事できる活動内容や就労制限の内容については指定書を確認するようにしましょう。
特定活動期間を活用して教育研修を実施することも有効
自社で雇用している社員や、これから雇用する社員について、一時的に特定活動期間が発生する場合は、外国人社員向け研修や日本語教育プログラムを提供するのもおすすめです。
たとえば、特定活動55号で滞在している外国人材には、運転業務を任せることができないため、業務時間中に空き時間が発生することがあります。こうしたスキマ時間を活用して教育研修を受講してもらうことで、特定技能人材になってからスムーズに職場で活躍できるようになります。具体的には、日本の企業文化への理解度を深める研修や日本人特有のコミュニケーション手法に関する研修、日本語教育の提供などがおすすめです。
明光グローバルでは、特定技能人材に特化した日本語教育コンテンツや各種教育研修を取り揃えています。特定活動期間を活用した教育研修に関心のある方はぜひお気軽に明光グローバルまでお問い合わせください。
特定活動期間中の外国人材への教育研修は明光グローバルにお任せください
特定技能の在留資格の取得を目指している場合にも、一時的に特定活動の在留資格を取得しなければならないことがあります。就労制限の内容によっては通常通りの業務を任せることができない場合もあり、特定活動期間の活用方法に悩まれている方も少なくありません。
特定活動期間中にスキマ時間が発生してしまう場合には、特定技能人材になってから職場や業務にスムーズに適応できるよう、外国人社員向け研修や日本語教育を実施するのがおすすめです。
明光グローバルでは、外国人材に特化した教育事業を提供しており、企業や外国人材のニーズに即した外国人社員向け研修や日本語教育プログラムを提供可能です。最後に、特定活動期間中の教育研修にお悩みの経営者や人事・教育担当者の方に向けて、明光グローバルのサービスを紹介します。
明光グローバルとは
明光グローバルは、外国人材の就労機会の創出と育成を通して、日本企業の持続的な成長をサポートする教育系人材サービスです。
40年以上の個別指導の教育実績、そして10年以上の日本語教育の実績を持つ明光ネットワークジャパングループの知見を活かし、外国人材の育成と企業の人材課題解決に特化したサービスを提供しています。
JCLIや早稲田EDU日本語学校での豊富な教育ノウハウを活かし、特定技能試験対策から業界別の専門教育まで、幅広いニーズに対応しています。外務省からEPA事業を4期連続で受託するなど、高い信頼性と実績を誇ります。
明光グローバルの主要サービス
事業 | サービス |
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教育研修事業 | ・eラーニングによる日本語教育(スマホアプリに対応) ・対面/オンラインによる日本語レッスン ・外国籍人材と日本人に向けた各種研修プログラム ・外国籍人材に向けた各種試験対策講座 |
人材紹介事業 | ・特定技能人材の紹介 ・外国籍エンジニアの人材紹介 ・教育伴走型の登録支援サービス |
特定技能人材やエンジニアの紹介から、外国人社員向けの教育・研修サービスまで、幅広いノウハウを提供しています。単なる日本語教育にとどまらず、企業での実践力を重視した総合的な人材育成を行っています。
外国人社員向け各種研修サービス
明光グローバルは、実践的で効果の高い教育・研修プログラムを提供しています。
プログラム | 特長 |
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実践的な研修 | ・ビジネスマナー研修 ・異文化理解研修 ・日本人社員向け研修 |
カスタマイズ対応 | ・業界別に専門プログラムが用意されている ・企業規模に応じて研修をカスタマイズできる ・目的に合わせて内容を調整できる |
明光グローバルは、充実した研修プログラムと柔軟なカスタマイズ対応で、外国人社員の早期戦力化と定着率向上を実現してきました。
各種教育・研修サービスの強み
明光グローバルの外国人社員向け各種教育・研修サービスの強みは「実用性の高さ」「カスタマイズ性」「豊富な実績」の3点です。
明光グループでは、これまで40年以上もの間、個別指導をはじめとした教育活動を実施してきました。そのため、明光グローバルには、企業様の状況に合わせた実用的な学習コンテンツが蓄積されています。学習した内容をすぐに現場で活かすことができるため、社員がモチベーション高く取り組むことができるでしょう。
また、さまざまな研修コンテンツを、企業の状況に応じてカスタマイズできることも特長です。外国人社員向けの日本語能力向上の研修だけでなく、業界や職種に特化したビジネスマナーや接遇・セールス研修、外国人社員を受け入れる日本人社員向けの受け入れ研修や異文化理解研修、異文化コミュニケーション研修など、幅広い研修を行うことができます。
さらに、EPA事業を外務省から4期連続で受託しており、国内外ともに豊富な導入実績を持っています。企業の規模や外国人社員の採用経験の多寡を問わず、さまざまなサポートが可能です。
オンライン日本語学習ツール「Japany」
「Japany」は、明光キャリアパートナーズが提供している外国人向けオンライン日本語学習ツールです。
Japanyを活用すれば、現場で用いる実践的な日本語や、特定技能試験対策など、合計1,200本以上の豊富な動画教材を活用して学ぶことができます。そのため、外国人社員のさまざまな学習ニーズに応えることができます。
また、パソコンやスマートフォンを使って、スキマ時間に自分のペースで学習できるのも特徴的です。
さらに、管理者機能として、学習進捗を確認できる「レポート機能」や、一定期間ログインがないと通知が届く「アラート機能」を活用することもできます。
Japanyは「IT導入補助金2025」の対象ツールに採択されています。そのため、中小企業や小規模事業者がJapanyを導入する際、IT導入補助金の対象として採択・交付が決定された場合、導入費用の最大50%、150万円までの補助を受けることが可能です。教育コストをかけられない企業の方でも導入しやすいため、お気軽にお問い合わせください。
受講形態 | e-ラーニング |
対象者 | 企業に在籍する外国人籍社員・帰国子女など |
プログラム・コース内容(一例) | ・日本語試験対策(JLPT・JFT Basic) ・せいかつの日本語 ・特定技能試験対策(1号+2号に対応) ・しごとの日本語(ITエンジニア、外食、介護など各業界のビジネス会話に対応) |
受講期間 | コースによって異なる |
料金プラン受講費用 | 初期費用:100,000円 月額費用:1名あたり1,000円~(受講人数に応じて変動) 年間契約費用:1名あたり9,500円~(受講人数に応じて変動) |
Japanyの強み
Japanyの強みは、「実用性の高いオリジナルコンテンツ」「学習の継続を促すシステム」「管理者を支えるサポート機能」の3点です。
実用性の高いオリジナルコンテンツ | 「Japany」には、N5〜N1までを網羅したJLPT対策を始めとする1,200本以上の豊富なレッスン動画コンテンツがあります。資格試験対策だけでなく、業界・業種別の言い回しや日常的な会話能力が身につく動画など、学習者のニーズに合わせてさまざまなコンテンツの動画を視聴できます。 |
学習の継続を促すシステム | 「Japany」には、実力・目標に応じて最適なプランを提案する「コンテンツレコメンド機能」や、力試しとして使える「実力診断テスト」など、外国人材の学習モチベーションを向上するさまざまな機能が搭載されています。 |
管理者を支えるサポート機能 | 学習者の進捗状況を確認できる「レポート機能」や、ログインがない場合に通知が届く「アラート機能」といった管理者機能も充実しています。そのため、人事・教育担当者の方も安心して利用することができます。 |
日本語オンラインレッスン
日本語オンラインレッスンの特長として、熟練した講師との直接的な対話を通して、実用的な日本語運用能力を育成できることがあります。
特徴 | 内容 |
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ビジネスにおける実践力の向上 | ・各業種に対応したビジネス会話の習得 ・ビジネスメールや文書の作成指導 ・プレゼンテーションスキルの習得 |
業種別カスタマイズ | ・業界ごとに特化したレッスン 例:外食の店舗やホテルの現場で必要な接客コミュニケーション等 |
即時フィードバック | ・発音の細かな修正 ・自然な表現への言い換え ・ビジネスマナーの指導 |
日本語オンラインレッスンを受講することで、実際のビジネス現場で活用できる日本語コミュニケーションスキルを効果的に習得することが可能です。また、定期的にレッスンを受講することで、講師からフィードバックやエンカレッジを得られ学習のモチベーション維持が期待できます。
まとめ
特定技能人材になるために、一時的に特定活動の在留資格を取得するケースがあります。代表的なものとしては、自動車運送業分野で特定技能人材になるための準備期間として活用される特定活動55号が挙げられます。特定活動期間中に空き時間が発生してしまう場合は、将来的な早期戦力化に向けて、教育研修を提供するのもおすすめです。
明光グローバルには、これまでさまざまな特定産業分野の特定技能人材に対して教育研修を実施してきた豊富な実績があります。特定技能人材に対する外国人社員向け研修や日本語教育プログラムは明光グローバルにお任せください。少しでもご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。