2023年8月31日から、飲食料品製造業でも特定技能2号が解禁されました。これにより、これまで特定技能1号として働いていた外国人が、さらに長く日本で働ける可能性が高まります。
飲食料品製造業の特定技能1号人材の受け入れ人数は、69,287人(2024年5月時点)と特定技能12分野の中で最も多くなっています。そのため、特定技能2号の導入は、人手不足のために人材を補うだけでなく、管理者候補となる人材も増えていくことが期待されています。
今回は、飲食料品製造業における特定技能2号試験の概要や最新情報について詳しく解説し、試験対策や今後の展望についても触れていきます。
参照元:
飲食料品製造業特定技能1号と2号の仕事内容と役割
特定技能2号は、特定技能1号人材が従事する製造・加工や安全衛生の確保に加え、管理業務も担当します。具体的には、衛生管理、安全衛生管理、品質管理、納期管理、コスト管理、従業員管理、原材料管理などの幅広い管理業務に関わります。
仕事内容
特定技能 1号 | 特定技能 2号 | |
---|---|---|
分野、区分の概要 | 飲食料品(酒類を除く)の製造・加工、安全衛生の確保 | 飲食料品(酒類を除く)の製造・加工及び安全衛生の確保、並びにそれらの管理業務(※) |
従事する主な業務 | ・生産に関わる一連の作業 ・業務上の安全衛生と食品衛生を守るための業務 | 以下を含む飲食料品製造業全般に関する管理業務(※)。 ・生産に関わる一連の作業 ・業務上の安全衛生と食品衛生を守るための業務 |
想定される関連業務 | ・原料の調達・受入れ ・製品の納品 ・清掃 ・事業所の管理の作業 | ・原料の調達・受入れ ・製品の納品 ・清掃 ・事業所の管理の作業 |
その他特記事項 | 複数の作業員を指導しながら、自身も作業を行えるトータルで管理できる能力が必要 |
上記の管理業務(※)とは、具体的には衛生管理、安全衛生管理、品質管理、納期管理、コスト管理、従業員管理、原材料管理などを指します。
役割
特定技能2号の外国人は、工場長など事業所の責任者が行う管理業務を補佐する役割を担うことが期待されており、担当部門長やライン長、班長といったリーダー的なポジションが想定されています。
参照元:
特定技能2号試験「飲食料品製造業」の概要
飲料品製造業の特定技能2号試験は、OTAFF(一般社団法人 外国人食品産業技能評価機構)によって実施されています。ここでは、特定技能2号試験「飲食料品製造業」の概要について解説します。
参照元:飲食料品製造業分野特定技能2号技能測定試験について(農林水産省)
受験資格
受験資格は、次のとおりです。
- 試験日に満17歳以上であること
- 日本の法律を守り、在留資格と有効なパスポートを持っていること
- 管理等の実務経験が2年以上あること(※2年に満たない場合は、試験日から6ヶ月以内に2年以上の経験を満たす見込みであること)
※管理等の実務経験:飲食料品製造業分野において複数の作業員を指導しながら作業に従事し、工程管理する者としての実務経験
参照元:飲食料品製造業特定技能2号技能測定試験(OTAFF)
試験科目
試験科目は、学科試験と実技試験の2科目です。
- 試験時間:70分
- 合格基準:200点満点の65%以上
- 実施方法:ペーパーテスト(マークシート)
学科試験
学科試験では、HACCP等による一般的な衛生管理、労働安全衛生に係る知識に加え、衛生管理、品質管理、納期管理、コスト管理、従業員管理、原材料管理等の管理職に必要な知識を測定します。
項目 | 主な内容 | 問題数 | 配点 | 満点 |
---|---|---|---|---|
飲食料品製造業での管理 | 安全安心な食品を作る全体像 安全な職場環境 作業者と管理者の違い 管理の結果としての記録 | 15 | 3 | 45 |
安全・安心な食品製造 | 一般衛生管理・HACCPについて 生物的危害・化学的危害・物理的の管理 その他の管理 | |||
安全安心の管理 | 労働安全衛生法 正しい服装と手順 労働災害 労働災害の防止策 安全意識 | |||
品質管理 | ・作業前・作業中・作業後の管理点 | 20 | 4 | 80 |
納期管理 | ・作業前・作業中・作業後の管理点 | |||
コスト管理 | ・作業前・作業中・作業後の管理点 | |||
より良い管理のために | 製造の位置づけ 食品ロスへの対応 マネジメントシステム リスクアセスメント 3Mの管理 改善活動 コミュニケーション | |||
合計 | 35 | – | 125 |
参照元:飲食料品製造業特定技能2号技能測定試験(OTAFF)
実技試験
実技試験は、判断試験と計画立案試験に分かれています。
判断試験では、図やイラストを使った状況設定の中で、正しい行動を判断する力を測定します。計画立案試験では、指定された計算式を用いて、作業計画を立てる能力を測定します。これらを通じて、業務に求められる技能水準を測定します。
項目 | 主な内容 | 問題数 | 配点 | 満点 |
---|---|---|---|---|
安全・安心な食品製造 | ・一般衛生管理・HACCPについて ・生物的危害・化学的危害・物理的の管理 ・その他の管理 | 7 | 5 | 35 |
安全安心の管理 | ・労働安全衛生法 ・正しい服装と手順 ・労働災害 ・労働災害の防止策 ・安全意識 | |||
品質管理 | ・作業前・作業中・作業後の管理点 | 8 | 5 | 40 |
納期管理 | ・作業前・作業中・作業後の管理点 | |||
コスト管理 | ・作業前・作業中・作業後の管理点 | |||
合計 | 35 | – | 125 |
参照元:飲食料品製造業特定技能2号技能測定試験(OTAFF)
受験料
受験料は、税込15,000円です。OTAFFの都合で試験ができない時や自然災害などにより、OTAFFが試験を実施できないと決めた場合を除き、受験料は返されることはありません。
また、支払い方法は受験生ごとに企業払いと受験生払いが選択できます。
試験会場
試験会場は、特定技能外国人が都市部に集中しすぎないようにという意図から、受験者数が少なくても地方でも試験は開催されます。
会場 | 2023年度第1回 | 2024年度第1回 |
受験者数(人) | 受験者数(人) | |
北海道 | – | 13 |
宮城 | 15 | – |
茨城 | – | 13 |
埼玉 | – | 19 |
東京 | 192 | 48 |
石川 | – | 5 |
愛知 | 77 | 21 |
大阪 | 70 | 22 |
広島 | – | 13 |
香川 | – | 10 |
福岡 | 54 | 16 |
宮崎 | – | 1 |
2023年度第1回試験は全国で5会場のみでしたが、2024年度第1回試験では11会場に増加しました。ただし、宮城県のように2023年度には開催されたものの、2024年度には試験が行われない地域もあるため、希望する試験地で受験できない場合があります。
また、試験は主に主要都市で開催されているため、地方から受験する場合、試験会場までの移動時間や労力がかかることも考慮が必要です。受験を計画する際は、試験会場の場所や日程を事前にしっかり確認することが大切です。
学習テキスト
試験用の学習テキストは、JMAC(株式会社日本能率協会コンサルティング )が作成している「飲食料品製造業 特定技能2号 技能測定試験 学習用テキスト」を使用します。
J-MACは、農林水産省「令和4年度外国人材受け入れ総合支援事業」によって、飲食料品製造業分野の技能測定試験の受験に必要な学習用テキストを作成しています。本試験もこのテキストから出題されます。 テキストは、こちらよりダウンロードできます。
特定技能2号試験「飲食料品製造業」の合格率や難易度
続いては、特定技能2号「外食業」の合格率や難易度について解説します。
合格率
2023年度第1回試験の合格率は36.3%、 2024年度第1回では51.9%でした。
会場 | 2023年度第1回 | 2024年度第1回 | ||||
受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) | |
北海道 | – | – | – | 13 | 5 | 38.5% |
宮城 | 15 | 5 | 33.3% | – | – | – |
茨城 | – | – | – | 13 | 5 | 38.5% |
埼玉 | – | – | – | 19 | 5 | 36.3% |
東京 | 192 | 69 | 35.9% | 48 | 27 | 56.3% |
石川 | – | – | – | 5 | 4 | 80.0% |
愛知 | 77 | 30 | 39.0% | 21 | 11 | 52.4% |
大阪 | 70 | 23 | 32.9% | 22 | 16 | 72.7% |
広島 | – | – | – | 13 | 9 | 69.2% |
香川 | – | – | – | 10 | 2 | 20.0% |
福岡 | 54 | 21 | 38.9% | 16 | 9 | 56.3% |
宮崎 | – | – | – | 1 | 1 | 100.0% |
合計 | 408 | 148 | 36.3% | 181 | 94 | 51.9% |
参照元:
合格率が15.6%と大きく上昇している一方で、試験会場が増えているのにもかかわらず、受験者数は227人(55.6%)減と半分以下まで減少しています。
難易度
農林水産省の飲食料品製造業特定技能測定試験実施要領によると、試験の難易度は「自らの判断で高度な専門業務や技術的業務を行い、監督者として業務を管理できる者で、2年以上の工程管理経験がある人が、本試験に特化した学習テキストを使わずに受験した場合、約3割が合格する水準とする。」とあります。そのため、2023年度第1回試験の難易度が維持されることが予想されました。しかし、2024年度第1回試験は、結果的に合格率が大きく上昇しました。
ただ、受験者数が半分以下になっていることを加味すると、しっかり準備した人だけが受験したために合格率が大きく上昇した可能性も考えられます。
参照元:飲食料品製造業特定技能技能測定試験実施要領(農林水産省)
特定技能2号試験「飲食料品製造業」を受験する上での課題
特定技能2号試験「飲食料品製造業」を受験する上での主な課題は次の3点です。
- 過去問やサンプル問題集がない
- 管理業務の勉強が必要になる
- 勉強時間の確保が必要になる
過去問やサンプル問題集がない
試験対策は、専用テキストしかありません。過去問は公開されていないため、試験で問われるポイントを集中的に暗記したり、出題予想に絞った勉強をしたりするなどの効率的な対策が困難です。
そのため、専用テキストの範囲を満遍なく勉強する必要があり、総勉強時間はおのずと長くなります。
管理業務の勉強
特定技能1号の試験内容に加え、2号では納期管理、コスト管理、安全管理などの分野が試験範囲に含まれます。そのため、受験資格にもあるように、実際にこれらの管理業務を実務で経験していないと得点することは難しいでしょう。
勉強時間の確保が必要になる
働きながら試験勉強をすることは、決して簡単なことではありません。
特に特定技能2号の試験では、1号試験と比べて試験範囲が広がっているうえ、試験問題の漢字にはルビが付されていません。そのため、業務では耳で聞いて理解できる内容であっても、漢字を正確に読んで理解できなければ、得点することが難しいといえます。
特定技能2号試験「飲食料品製造業」に合格するために
特定技能2号試験「飲食料品製造業」に合格するための主なポイントは次の3つです。
- 業務の中に試験対策を組み込む
- 計画的に試験の準備をする
- 学習環境をサポートする
業務の中に試験対策を組み込む
外国人教育担当者が試験教材のテキストを読み込み、できるだけ日常業務と試験内容をできるだけ関連付けて指導を行うことが大切です。試験範囲が広いため、業務内容と結びつけると効率的に勉強できます。
また、一方的に説明するのではなく、その都度質問をして知識が定着しているか確認しましょう。テキストによるインプットも重要ですが、知識がしっかり定着するのは、アウトプットのときです。
特定技能試験対策では、アウトプットの機会がないため、問いかけることでアウトプットの場を作ることができます。
計画的に試験の準備をする
2回目で確実に合格できるための計画を立てるようにしましょう。
1回目の試験では、どれくらいの勉強時間で、どの程度問題に対応できたかを確認します。弱点や不足している部分を補う勉強を行い、2回目に備えてください。
受験スケジュールを立て、受験資格に必要な2年以上の実務経験も考慮しながら準備を進めましょう。
学習環境をサポートする
学習の進捗管理や学習方法、日本で生活する上での時間の作り方をアドバイスするなど、雇用企業側のサポートも必要です。
そのため、外国人従業員が日本語能力試験や特定技能試験の勉強を効率的に進められるだけでなく、雇用企業側も学習状況を管理できるオンライン学習ツールを活用すると良いでしょう。
特定技能の日本語学習には外国人向けオンライン日本語学習サービスがおすすめ
「外国人従業員の日本語能力を向上させたい」「特定技能試験の勉強をできるだけ自分で進めてほしい」とお悩みの方におすすめなのが、日本で働く外国人向けに特化したオンライン日本語学習ツールの「Japany(ジャパニー)」です。
Japanyは、日本語学習用のツールでありながら、雇用企業側の学習管理にも重きを置いた機能が備わっています。ここでは、「Japany(ジャパニー)」の概要を解説します。
Japany(ジャパニー)の特徴
外国人向けに特化したオンライン日本語学習ツールの「Japany(ジャパニー)」の特徴は次の3つです。
- 現場で使えるオリジナルコンテンツ
- 学習を継続させる仕組み
- 充実した管理者サポート機能
現場で使えるオリジナルコンテンツ
即戦力の人材を育成するため、業種ごとの言い回しや日常会話力を強化する動画、試験対策動画が1,200本以上揃っています。
学習を継続させる仕組み
学習者の実力・目標に応じ最適な学習プランを提案する「コンテンツレコメンド機能」や、学習への取り組みを総合的に評価する「学習ポイントシステム」、そしてモチベーションを高めるための「ランキング機能」が搭載されています。
充実した管理者サポート機能
管理者が学習者の進捗状況を確認しやすいよう、必要な情報だけを抽出できる「レポート機能」や、一定期間受講者のログインがない場合に管理者の方に通知が届く「アラート機能」を搭載しています。通常業務と学習者の指導を兼務している忙しい管理者の方の負担を減らす面でもおすすめです。
特定技能2号試験「飲食料品製造業」を受ける際は企業からしか申し込めない
特定技能2号試験の受験申込みは、企業からの申込みのみとなっています。
また、企業申込みを行うには、その前に企業マイページの登録を済ませておく必要があります。特定技能2号試験受験する従業員がいる場合は早めに登録しましょう。申し込み手順は次のとおりです。
- 企業用マイページ仮登録を行いログインする
- 企業情報の新規登録を行う
- 登録料(税込44,000円)と年間利用料(税込22,000円)を支払う ※既にOTAFF賛助会員の場合は不要
- 受験者の新規登録を行う
- 受験申し込みを行う
- 受験料を支払う
- 受験票が交付される
- 試験を受ける
- 合否結果通知・合格証が交付される
詳細については、OTAFFの企業用マイページ操作マニュアルを参照して下さい。
2024年7月に飲食料品製造業分野にてスーパーマーケットでの受入れが可能に
2024年7月23日付の「農林水産省告示」により、飲食料品製造業分野において、総合スーパーマーケットや食料品スーパーマーケットが特定技能外国人を受け入れ可能な事業所として追加されました。青果物加工、鮮魚加工、食肉加工、ベーカリー製造、そう菜製造等の食料品製造が行われている事業所が対象となります。
これに伴い、特定技能試験の範囲も広がる可能性がありますので、JMAC食品産業コンサルティングのテキストに更新がないかどうか、外国人教育担当者の方はチェックしておきましょう。
まとめ
飲食料品製造業でも特定技能2号が解禁され、特定技能1号の外国人受け入れが最も多い飲食料品製造業では、人手不足を補うとともに、管理者候補としての人材育成も期待されています。
特定技能2号試験では、製造・加工に加えて「管理」の問題の配点が半分以上を占めるため、受験資格にもある通り実務でも管理業務を経験していないと高得点は難しいでしょう。しかし、過去問がなく専用テキストでの学習が中心となることや、働きながら勉強するため、計画的な学習と、業務に関連付けた効率的な勉強に加え、計画的な準備と企業側のサポートが必要です。
そこで、オンライン日本語学習ツールの「Japany(ジャパニー)」が役立ちます。Japanyでは、学習者は業務に関連する日本語の勉強や特定技能試験対策ができ、企業側は学習の進捗を管理できる機能も搭載しており、学習者と企業の双方を支援します。
管理業務を担うリーダー的な役割を目指す特定技能1号人材にとって、特定技能2号試験に合格することはキャリアアップへの必要なステップです。計画的な準備と効率的な勉強を進め、Japanyを活用して、試験合格を目指しましょう。