特定技能2号「飲食料品製造業」は、熟練した外国人材の長期雇用を可能にし、深刻な人手不足を解消する在留資格です。しかし、メリットを最大限に活かすには、外国人材と受け入れ企業の双方が要件を満たし、多くの手続きを正しく理解しておく必要があります。
今回は、制度の概要やメリット・デメリット、採用に必要な要件などについて詳しく解説します。滞りなく受け入れを実現するためのポイントがわかるので、ぜひ最後までお読みください。
特定技能2号「飲食料品製造業」とは
特定技能2号「飲食料品製造業」は、熟練した外国人材を長期的に雇用することで、業界の人手不足解消に貢献します。ここでは、制度の概要や求められる背景、最新の合格者状況、特定技能1号との違いを解説します。特定技能2号の採用を検討する上で、必須となる基本情報を確認していきましょう。
参照元:
特定技能2号「飲食料品製造業」の概要
特定技能2号「飲食料品製造業」は、酒類を除く飲食料品の製造・加工、および安全衛生管理業務全般に従事する外国人材向けの在留資格です。飲食料品業界も人手不足が深刻化しており、日本の食料品の安定供給を目指すため、この制度が導入されています。
特定技能1号の業務範囲にプラスして、より高度な管理業務も担当できることが大きな特徴です。製造現場では、次のような業務に従事します。
- 飲食料品の製造・加工:酒類を除く全ての飲食料品の製造・加工業務を行う
- 安全衛生管理:HACCPなどの高度な衛生管理基準に基づいた管理を行う
※HACCPとは、食品の製造工程で発生するおそれのある危害を分析し、管理する衛生管理の手法 - 管理業務:複数の従業員への作業指導、製造ラインの工程管理を担う
特定技能1号で培った経験を活かし、現場のリーダーとして活躍することが期待される、専門性の高い在留資格です。企業にとっては、即戦力となる管理者候補を確保できる重要な制度といえるでしょう。
特定技能2号「飲食料品製造業」が求められる背景
飲食料品製造業で特定技能2号が求められる背景には、他の産業と比べて突出した深刻な人手不足があります。そのため、国内人材だけでは労働力の確保が極めて困難な状況にあり、その厳しさは客観的なデータにも表れています。
以下の表は、飲食料品製造業と他の産業の「有効求人倍率」と「欠員率」を比較したものです。

画像引用元:飲食料品製造業分野における外国人材受入れ拡大について(農林水産省)
有効求人倍率は、全産業平均1.54、飲食料品製造業は2.78と深刻な数字になっています。また、欠員率も製造業全体では1.3%なのに対し、飲食料品を含む製造業では3.0%と高い水準を示しています。
この結果からも、飲食料品製造業では慢性的な人手不足が続いているため、熟練した技能と管理能力を持つ特定技能2号人材の確保が急務となっています。
特定技能2号「飲食料品製造業」の合格者数の現状
特定技能2号「飲食料品製造業」の試験は、回を重ねるごとに受験者数と合格者数が急増しており、制度への関心が高まっていることがわかります。第1回試験の合格者が94人であったのに対し、第3回では927人と大幅に増加しました。
■2024年度 特定技能2号 飲食料品製造業の特定技能測定試験 国内試験実施状況
試験回 | 受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) |
---|---|---|---|
第1回 | 181 | 94 | 51.9 |
第2回 | 1,463 | 817 | 55.8 |
第3回 | 1,619 | 927 | 57.3 |
第1~3回 | 3,263 | 1,838 | 56.3 |
国籍別の合格者データを見ると、全体の約8割をベトナム国籍者が占めており、突出して多いことが特徴です。
■2024年度 特定技能2号 飲食料品製造業の特定技能測定試験 国内試験国籍別合格者数
国籍 | 合格者数(人) |
---|---|
ベトナム | 1,506 |
中国 | 144 |
ミャンマー | 90 |
インドネシア | 49 |
ネパール | 10 |
以上の傾向から、特定技能1号として経験を積んだベトナムの外国人材が、キャリアアップを目指して特定技能2号の資格取得に意欲的であることが伺えます。
参照元:2024年度外⾷業及び飲⾷料品製造業の特定技能測定試験 国内試験実施状況(一般社団法人 外国人食品産業技能評価機構)
「飲食料品製造業」の特定技能1号・2号の違い
特定技能1号と特定技能2号では、在留期間の上限、家族帯同の可否、任せられる業務範囲などに大きな違いがあります。特定技能2号は、熟練した技能を持つ人材と位置づけられており、企業はより長期的な視点で人材を育成・活用できます。
特定技能1号・特定技能2号の主な違いは、次のとおりです。
項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
---|---|---|
在留期間 | 通算上限5年(1年、6ヶ月または4ヶ月ごとの更新) | 上限なし(3年、1年または6ヶ月ごとの更新) |
永住権の取得 | 原則不可 | 条件を満たせば可能 |
家族の帯同 | 原則不可 | 可能(配偶者・子) |
支援の有無 | 義務的支援の実施が必要 | 必要なし |
従事する業務 | 飲食料品製造業全般(飲食料品(酒類を除く)の製造・加工及び安全衛生の確保) | 飲食料品製造業全般(飲食料品(酒類を除く。)の製造・加工及び安全衛生の確保)及び当該業務に関する管理業務 |
特定技能2号への移行は、外国人材の定着と企業の生産性向上につながるため、双方にとってメリットが大きい制度設計となっています。
参照元:
特定技能2号「飲食料品製造業」のメリット
特定技能2号「飲食料品製造業」の活用は、受け入れ企業と外国人材のどちらにも大きなメリットをもたらします。企業にとっては、現場の生産性を高め、将来に渡って安定した運営を実現するための一手となります。一方、外国人材にとっては、日本で長期的に働けるため、生活が安定しやすいことがメリットです。
企業側・外国人材側それぞれの主なメリットは次のとおりです。
項目 | メリット |
---|---|
企業側 | ①即戦力となる熟練人材を確保できる 一定水準以上の知識や技能、現場管理能力を持つ外国人材を採用できるため、人材不足の解消につながる。 ②幅広い業務に対応できる 衛生管理、品質管理、納期・コスト管理、従業員指導など、現場の中核を担う業務を任せられる。 ③長期雇用が可能になる 在留期間の更新制限がなく、長期的な雇用が可能なため、シフトの安定や教育コストの削減につながる。 |
外国人材側 | ①家族の帯同が許可される 配偶者や子どもを日本に呼び寄せて生活できるため、安心して長く働ける。 ②在留期間に上限がない 在留資格の更新を繰り返せば、長く日本に在留できる。 ③転職の自由度が高い 特定技能2号は転職も認められており、同一分野内であれば、より良い雇用環境を求めて転職できる。 |
特定技能2号は、企業が抱える人手不足の問題を根本から解決し、生産性の向上を図る上で人材獲得の有効な手段です。
特定技能2号「飲食料品製造業」のデメリット
特定技能2号「飲食料品製造業」を利用する場合は、企業と外国人材の双方にとって、デメリットがあることも知っておきましょう。潜在的なリスクを事前に把握していれば、対策も講じやすくなります。
企業側・外国人材側それぞれの主なデメリットは次のとおりです。
項目 | デメリット |
---|---|
企業側 | ①人件費が増加する 高度な技能や管理能力を持つ外国人材を確保するため、給与水準が高くなりやすく、社会保険や福利厚生の負担も増加する。 ②言語・文化の壁によるリスクがある 日本語能力や日本特有の文化への適応に時間がかかり、コミュニケーションや現場運営に支障が出る。 ③手続きや受入体制の準備が必要になる 在留資格取得や更新、受入体制の整備など、手続きが複雑でコストや労力がさらにかかる。 |
外国人材側 | ①特定技能2号 技能測定試験が難しい 特定技能2号 技能測定試験は、過去問やサンプル問題が公開されておらず、効率的な学習が難しいため、受験に向けた学習の負担が大きい。 ②管理業務への負担が大きい 製造現場の管理や指導など、新たな業務範囲への適応が求められ、プレッシャーやストレスが増える。 ③言語・文化の壁によるリスクがある 管理職としての日本語能力が求められるため、職場でのコミュニケーションやリーダーシップがさらに必要になる。 |
このように、特定技能2号は高い専門性を持つため、企業は相応の待遇と受け入れ環境を整える必要があります。また、外国人材本人も、作業員から管理者へと役割が変わるため、大きな責任とプレッシャーに適応しなければなりません。
特定技能2号「飲食料品製造業」の外国人材の要件
外国人材が特定技能2号の在留資格を取得するためには、2つの要件をクリアしなければなりません。現場を管理できる高度な専門知識と、実際に部下を指導した経験の両方が求められます。外国人材として採用する候補者が、次の要件を満たしているか確認しましょう。
- 「飲食料品製造業特定技能2号測定試験」に合格すること
- 工程を管理する者として実務経験が2年以上あること
参照元:
- 飲食料品製造業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針(出入国在留管理庁)
- 飲食料品製造業特定技能2号技能測定試験学習テキスト(株式会社 日本能率協会コンサルティング)
- 特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領(法務省・農林水産省)
「飲食料品製造業特定技能2号測定試験」に合格すること
特定技能2号の資格を取得するには、「飲食料品製造業特定技能2号測定試験」に合格しなくてはなりません。この試験は、作業者レベルの知識に加え、現場のリーダーとして活躍するための「熟練した技能」があることを客観的に証明する目的があります。
そのため、製造技術に関する問題の他に、より専門的なマネジメント能力が問われます。試験の出題範囲は次のとおりです。
- 飲食料品製造業の管理
- 安全・安心な食品製造
- 安全・安心の管理
- 品質管理
- 納期管理
- コスト管理
- より良い管理のために
試験に合格するには、日々の業務経験を活かしつつ、管理職としての視点を持って体系的に学習することが重要です。
工程を管理する者として実務経験が2年以上あること
技能試験を受験する際は、「管理者としての現場経験」が必須です。具体的には、飲食料品製造業の分野において、2年以上の実務経験が求められます。
ただし、2年間働いていれば良いというわけではありません。「複数の従業員を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者」としての経験が必要です。なぜなら、知識だけでなく、実践的なリーダーシップがあることを証明する必要があるためです。
なお、実務経験については、技能試験の際に書面等で提出しなければならないため、外国人材が要件を満たしているか事前に確認しておきましょう。
特定技能2号「飲食料品製造業」の受け入れ企業の要件
特定技能外国人材を受け入れる企業には、法令を遵守し、適正な雇用環境を整備する義務があります。また、飲食料品製造業分野では、業界団体である協議会への加入や国への協力が必須です。ここでは、受け入れ企業が満たさなければならない5つの要件について解説します。
- 「食品産業特定技能協議会」の構成員になる
- 「食品産業特定技能協議会」に協力する
- 農林水産省や委託を受けた者が行う調査に協力する
- キャリアアッププランを雇用契約前に書面で交付する
- 求めに応じて実務経験を証明する書面を交付する
参照元:
「食品産業特定技能協議会」の構成員になる
特定技能外国人材を受け入れる前提として、受け入れ企業は農林水産省が設置する「食品産業特定技能協議会」へ加入し、構成員となる必要があります。この協議会は、制度の適正な運用や外国人材の保護、業界全体の労働環境改善などを目的として活動しています。
協議会への加入は、特定技能の在留資格申請の前に行わなければなりません。手続きを怠ると在留許可が取得できないため、最優先で対応すべき事項です。
「食品産業特定技能協議会」に協力する
「食品産業特定技能協議会」の構成員として、協議会の活動へ積極的に協力することも受け入れ企業の義務です。協議会は、外国人材の受け入れ状況や労働環境の実態を把握するため、定期的に情報提供を求めたり、アンケート調査を実施したりします。
受け入れ企業は協議会の求めに応じ、誠実に対応しなければなりません。たとえば、雇用している特定技能外国人材の人数、業務内容、待遇などを報告する義務があります。活動を通じて、業界全体で課題を共有し、より良い受け入れ環境を整えることが目的です。協議会に籍を置くだけではなく、主体的な参加が求められます。
農林水産省や委託を受けた者が行う調査に協力する
協議会への協力とは別に、管轄省庁である農林水産省や、委託先機関が直接実施する調査などにも協力する義務があります。なぜなら、国が特定技能制度全体の効果や課題を検証し、政策に反映させるための重要な情報になるからです。
具体的には、事業所への立ち入り調査や、雇用契約書・賃金台帳などの関係書類の提出、担当者へのヒアリングなどが想定されます。企業は正当な理由なく調査を拒否したり、虚偽の報告をしたりすることはできません。
国の監督下で制度が運用されていることを理解し、透明性の高い情報提供を心がける必要があります。
キャリアアッププランを雇用契約前に書面で交付する
受け入れ企業は特定技能外国人材に対し、将来のキャリアパスを具体的に示した「キャリアアッププラン」を提示する義務があります。雇用契約を結ぶ前に、必ず書面で交付し、内容を十分に説明しなければなりません。
たとえば、管理者としてどのようなスキル・経験を積めるのか、昇給や昇進のモデルケースなどを明記する必要があります。その結果、外国人材は日本で長期間働いた場合の将来像を描きやすくなり、仕事へのモチベーションアップや長期的な定着につながります。
求めに応じて実務経験を証明する書面を交付する
受け入れ企業は、雇用している特定技能外国人材が将来、転職や別の在留資格を申請する際に、実務経験を証明する書類を発行する義務を負います。この義務は、外国人材が公正な評価のもとでキャリアを継続できるよう保護するための重要なルールです。
そのため、本人や次の受け入れ先企業、出入国在留管理庁などの関係機関から要請があった場合、速やかに証明書を交付しなければなりません。
このように、外国人材を受け入れる企業には、協議会への加入や各種調査への協力、書類作成・交付など多くの対応が求められます。自社の人事・総務部門で対応が難しい場合は、専門的な知見を持つ支援機関の活用が有効です。
採用から受け入れ後のサポートまで一貫して支援する「明光グローバル」のような専門機関に相談することで、企業の負担を大幅に軽減できるでしょう。次の章では、明光グローバルのサービスや「飲食料品製造向け特定技能2号試験対策講座」について詳しく紹介します。
飲食料品製造業分野の特定技能2号試験対策なら明光グローバルにお任せください
特定技能2号の外国人材を受け入れるには、難関である技能測定試験の合格が必須になります。しかし、過去問が公開されていないなど、企業が独自に対策を講じるのは大きな負担となるでしょう。
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明光グローバルの主要サービス
事業 | サービス |
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人材紹介事業 | ・特定技能人材の紹介 ・外国籍エンジニアの人材紹介 ・教育伴走型の登録支援サービス |
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飲食料品製造向け特定技能2号試験対策講座
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■飲食料品製造向け特定技能2号試験対策講座
コース名 | 内容 |
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講座の特徴 | ・専門知識を持つ日本語教師がカリキュラムを作成 ・時間配分や苦手を可視化できる模擬試験の提供 ・日本語eラーニングシステムJapanyで講座時間外もサポート |
講座詳細 | ・講座回数:120分×全8回 ・講座形式:オンライン ・講座単価:240,000円(1人あたり2.4万円) ※1クラスの人数により、コース・費用は変動する |
講座スケジュール | 第1回:飲食料品製造での管理 第2回:安全・安心な食品製造 第3回:安全・安心の管理 第4回:品質管理 第5回:納期管理 第6回:コスト管理 第7回:より良い管理のために 第8回:模試の実施・解答解説 |
講座時間外でも独自のeラーニングシステム「Japany」を活用して繰り返し学習できるため、知識の定着が促進されます。無料相談も受け付けていますので、「飲食料品製造向け特定技能2号試験対策講座」をご用命の際は、明光グローバルまでお気軽にお問い合わせください。
まとめ
特定技能2号「飲食料品製造業」は、人手不足の解消に有効ですが、受け入れ企業と外国人材の双方に一定の要件が求められます。
企業側には協議会への加入やキャリアプランの提示など多くの義務があり、外国人材側も技能試験の合格と2年以上の管理実務経験が必要です。そのため、外国人材を受け入れる際は、周到な準備が必要になります。複雑な手続きや試験対策でお悩みの場合は、専門機関を積極的に活用することをおすすめします。
明光グローバルでは、長年の教育ノウハウを活かし、採用から定着支援、独自の試験対策講座までワンストップで提供しています。熟練人材の確保と育成でお悩みの企業様は、お気軽にお問い合わせください。