外国人材の採用は、多くの業界で課題解決の鍵となっています。特に、自動車運送業界では深刻な人手不足に対応するため、特定技能ビザの制度を活用した外国人ドライバーの受け入れが進められています。しかし、採用や入社後の支援における法規制やプロセスを正しく理解しないと、期待していた効果を得られないリスクがあります。
この記事では、2024年10月15日にオンライン開催したセミナー「外国人ドライバーのための採用~入社後サポートまでを徹底解説セミナー」の内容を基に、特定技能「自動車運送業」認定と概要から、外国人ドライバー採用の準備から入社後のサポートまでを、具体的な事例とともに詳しく解説します。また、登録支援機関を活用したスムーズな採用プロセスや、日本語教育を通じた定着支援の実践的なポイントも紹介します。
特定技能「自動車運送業」認定と概要
特定技能ビザは、国内人材を確保することが困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人材を受け入れることを目的とする制度です。
2024年の法改正により、自動車運送業が「特定技能1号」の対象に追加されたことで、外国人ドライバーの採用が現実味を帯びてきました。しかし、具体的な採用プロセスや支援計画の要件を理解しないままでは、期待する成果を得られない可能性があります。
ここでは、自動車運送業界の現状と、特定技能ビザ制度がどのようにこの問題解決に寄与するのか解説します。また、受け入れが予定される人数や、関連する法的要件についても紹介します。
自動車運送業の現状
自動車運送業界は、全職業平均を大きく上回る深刻な人手不足に直面しています。有効求人倍率は全業種の約2倍であり、現場では必要な人材を確保することが難しい状況です。
受け入れ見込み人数
この状況を受けて、特定技能ビザ制度が自動車運送業界に導入され、外国人ドライバーの受け入れが進められています。
自動車運送業における特定技能外国人材の受け入れ人数は、今後5年間で最大2万4,500人とされています。内訳は、トラック運転者が1万9,000人、タクシー運転者が4,000人、バス運転者が1,500人となっています。
在留資格の種類
外国人が日本で働くためには、活動内容に応じた在留資格が必要です。主な在留資格には、「技能実習」「特定技能1号」「特定技能2号」があり、それぞれの特徴や要件が異なります。
特定技能制度とは
特定技能制度は、国内人材の確保が困難な産業分野において、一定の技能や専門性を持つ外国人材を受け入れることを目的とした制度です。この制度は、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類に分類され、それぞれ在留期間や業務内容が異なります。
特定技能1号は、基本的な業務スキルを持つ外国人材を対象としており、最大5年間の在留が可能です。一方、特定技能2号は高度な専門性を求められる業務を対象としており、在留期間の在留期間の定めがなく、更新ができた場合は反永久的に日本に滞在することが可能です。いずれも、外国人材と日本人材の待遇均等や、支援計画の策定・実施が必須条件となっています。
特定技能制度は、人手不足解消の鍵として注目されており、自動車運送業界への適用により、より広範な人材活用が期待されています。
特定技能1号の業種
特定技能1号は、介護、外食、建設、農業、宿泊、自動車整備など、深刻な人手不足が課題となっている12分野で適用されています。
この制度は、業務に必要な基本的な技能を持つ外国人材を受け入れるためのものであり、これらの分野で即戦力となる人材を確保することを目的としています。
特定技能1号の追加業種
2024年には、新たに「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」の4分野が追加され、特定技能1号の対象は16分野に拡大しました。これにより、物流や交通インフラ分野でも外国人材の活用が可能となり、業界全体の労働力不足の改善が期待されています。
支援計画の概要
特定技能1号で外国人材を受け入れる企業には、支援計画の策定と実施が義務付けられています。この計画は、外国人材が安定的かつ円滑に働くために必要なサポートを提供することを目的としています。
支援内容には、事前ガイダンス、入国・帰国時の送迎、生活オリエンテーション、公的手続きへの同行、定期的な面談などがあります。これらの支援は、受入れ企業が直接実施することも、登録支援機関に委託することも可能です。
登録支援機関とは
登録支援機関は、特定技能で働く外国人材の受け入れに伴う支援業務を代行する機関です。出入国在留管理庁に認可された企業や団体であり、法定支援項目を適切に実施するための専門知識とノウハウを備えています。
受入れ企業は、自社で支援を実施するか、登録支援機関に委託するか選択することができます。委託する場合は、月々の費用が発生しますが、専門機関に任せることで負担軽減や支援の質の向上が期待できます。
特に初めて外国人材を受け入れる企業にとって、登録支援機関の活用は大きな助けとなります。適切な登録支援機関を選ぶことで、外国人材の定着率を高め、受け入れプロセスを円滑に進めることが可能です。
外国人ドライバー採用~入社までのプロセス
外国人ドライバーの採用は、自動車運送業界における人手不足を解消するための重要な施策です。しかし、採用から入社に至るまでのプロセスには、企業として押さえておくべき手続きや準備が数多くあります。
ここでは、外国人ドライバーを採用する際の準備段階から、採用開始までの一連のプロセスについて解説します。特定技能ビザに関する具体的な要件や、採用活動をスムーズに進めるためのポイントも紹介します。
採用前の準備
外国人ドライバーを採用する際は、事前準備が重要です。特に、採用を進める前に自社が特定技能ビザの受け入れ要件を満たしているか確認することは、プロセス全体の土台となるステップです。
受け入れ要件を満たしているか確認
外国人ドライバーを受け入れるには、受入れ企業が特定技能ビザの要件を満たしていることが前提です。この要件には、事業形態や労働関係法令の遵守、さらに業界特有の条件が含まれます。
これらの基準を確認することで、採用プロセスを円滑に進めることが可能です。特に初めて外国人材を受け入れる企業は要件を十分に理解し、必要な準備を整えることが重要です。
募集内容の擦り合わせ
外国人ドライバーを採用する際には、現場と経営側で募集内容を詳細に擦り合わせることが重要です。国籍や求める日本語能力、国内人材か国外人材かといった条件を明確にしないと、採用後のミスマッチやトラブルにつながる可能性があります。
たとえば、現場のニーズを無視して経営側だけで決定した場合、採用後に現場での不満が高まり、結果として早期退職につながるリスクがあります。一方で、現場主導で進めると、経営側が後から異議を唱え、内定の取り消しなど最悪の事態に発展することもあります。
事前に現場と経営側で徹底的なヒアリングと調整を行うことで、採用後のトラブルを未然に防ぎ、外国人材を長期的に定着させる環境を整えることが可能です。
採用方法の検討・確定
外国人ドライバーの採用方法は、主に「自社採用」と「紹介会社を経由した採用」の2種類があります。それぞれにメリットとデメリットがあり、自社の状況や経験に応じて最適な方法を選ぶことが重要です。
初めて外国人材を採用する場合、手続きやサポートの負担を軽減できる紹介会社の利用がおすすめです。
ビザ申請や入社後の支援も一括して任せられるため、スムーズな採用が期待できます。一方、自社採用はコストを抑えられるメリットがありますが、採用プロセスや支援体制を構築するための経験やリソースが必要です。
採用開始
採用方法が決定したら、具体的な採用活動を開始します。この段階では、募集要項の公開や応募者の選考、面接の実施などが挙げられます。特定技能の外国人材の場合、在留資格や必要な日本語能力、技能資格の確認が重要なポイントです。
特定技能の求人募集~入社までの流れ
特定技能外国人の採用では、求人募集から入社までのプロセスを適切に計画することが重要です。
採用活動は、求人募集から入社まで6~8ヶ月程度かかることが一般的です。特にビザ申請や在留カードの取得には時間がかかるため、スケジュールに余裕を持つことが大切です。
まず、募集開始後に応募者を選考し面接を行います。面接時には候補者のコミュニケーション能力や意欲、キャリアプランを確認し、入社後のミスマッチを防ぐことが重要です。
採用決定後には、在留資格の申請を行い、審査が完了するまで3~4ヶ月を見込む必要があります。その後、在留カードの取得や引っ越しなどの準備を経て入社に至ります。
明光の特定技能1号人材紹介実績
明光キャリアパートナーズは、特定技能1号人材の紹介において豊富な実績を誇ります。これまでに600名以上の特定技能外国人材を紹介し、登録支援を実施した人数は200名を超えています。
特に、登録支援人数が100名以上の企業は全体のわずか1.4%というデータからも、明光キャリアパートナーズの取り組みが他社と比較して優れていることがわかります。このような実績を基に、明光キャリアパートナーズは外国人材の採用から定着まで一貫して高いサービスを提供しています。
入社前準備と研修
外国人ドライバーの入社前準備と研修は、スムーズに乗務を開始し、外国人ドライバーの定着が定着するために重要なステップです。特定技能1号ビザの要件に基づき、適切な準備を行わなければ、採用後のトラブルや業務の遅延につながる可能性があります。
ここでは、特定技能1号の外国人ドライバーが入社してから乗務を開始するまでの具体的な流れを解説します。また、必要なビザ手続き、研修内容、外国免許の切り替えなど、企業が事前に行うべき準備も紹介します。
特定技能1号:自動車運送業の入社~乗務開始までの流れ
特定技能1号の外国人ドライバーが乗務を開始するまでには、いくつかの重要なステップがあります。このプロセスは、適切な手続きと研修を経ることで、円滑な業務スタートを支援することができます。
まず、入社後に必要な特定活動ビザの申請を行います。特定活動ビザは、外国免許の切り替えや法令研修など、乗務に必要な準備期間を確保するために与えられます。
続いて、外国免許の切り替え手続きと、法令、接遇、地理、安全に関する座学研修を実施します。さらに、路上走行訓練を通じて、日本の交通環境に慣れるための実務的なスキルを習得します。
適切な計画と研修の実施により、外国人ドライバーが業務にスムーズに移行できる体制を整えることができます。
入社後の定着支援
外国人ドライバーが入社後に定着するためには、労働環境の整備や教育・サポートが欠かせません。採用後のフォローが不十分だと、労働意欲の低下や早期離職につながるリスクがあります。
一方で、適切な支援を提供することで、現場での生産性向上や長期的な雇用の実現が期待できます。最後に、入社後の定着を促進するための具体的な支援策について解説します。
労働環境の整備
外国人ドライバーが長く働き続けるためには、安心して働ける労働環境を整えることが不可欠です。特に、自動車運送業界では労働時間が全業種の平均を上回り、平均残業時間も長い傾向があるため、改善の余地が大きいといえます。
労働環境を整えることは、外国人材の採用を成功に導くだけでなく、日本人材も含めた企業全体の働きやすさを向上させる好循環を生む鍵となります。
日本人の異文化理解研修
外国人ドライバーを受け入れる職場において相互理解を深めるためには、日本人材に対する異文化理解研修が必要です。
異文化への理解が不足していると、日常業務やコミュニケーションでの誤解が生じ、職場の調和が損なわれる可能性があります。一方で、文化的背景を理解し、適切に対応できるスキルを身につけることで、職場全体の円滑な協働を促進することができます。
異文化理解研修では、外国人材が直面しがちな困難や、文化的な違いが生む誤解について具体的に学びます。
また、簡潔でわかりやすい言葉遣いや、相手を尊重するコミュニケーションのコツなど、実務に直結するスキルを習得することができます。
日本語教育サポート
日本語レッスンは、不規則な勤務時間で働く外国人材は参加が難しかったり、費用が高かったりといったデメリットがあります。そのため、日本語教育サポートには、勤務スケジュールに対応した柔軟な学習プログラムが求められます。
そこでおすすめなのが、明光キャリアパートナーズが提供する日本語学習用のeラーニングシステム「Japany」です。これにより、基礎的な会話能力から業務で必要な専門用語まで幅広いスキルを習得することが可能です。
JapanyはAndroidやAppleのアプリで学習可能なシステムとなっており、1,200本以上の動画コンテンツがあります。また、たとえばベトナム、ミャンマー、インドネシア、ネパールなど10ヶ国語の多言語対応をしています。
学習管理システムも充実しています。管理画面には学習者の一覧が表示され、各学習者の視聴時間や受講コースなどを確認できます。また、各学習者がその日学習した項目、1週間前と比較した勉強量なども確認可能です。
なお、特定技能1号の自動車運送業に向けたコンテンツや動画の開発も進めています。専門性を持つ企業とタッグを組み、運転免許切り替えの学科試験対策講座や特定技能の自動車運送業の技能評価試験対策講座、安全教育を重点的に学べる内容を開発しています。 少しでもご興味をお持ちの方は、お気軽に明光キャリアパートナーズまでお問い合わせください。