外国人材と一緒に働く際、文化や価値観の違いから「どうやってチームをまとめれば良いのか」「効果的にコミュニケーションを取るにはどうすれば良いのか」と悩むことはありませんか?
この記事では、2024年9月19日にオンライン開催したセミナー「たった1時間で学べる!外国人材とのコミュニケーション力を爆上がりさせる方法!~多文化マネジメント研修~」の内容を基に、外国人材との円滑なコミュニケーションやチームづくりの具体的な方法をわかりやすく解説します。
ワンチームとは?
「ワンチーム」とは、全員が「いい状態(well-being)」を共有しながら、互いに協力して目標を達成するチームのことです。個々が最大限に力を発揮できる環境を整えることで、チーム全体の成果が向上します。
そのためには、まず「関係の質」を高めることが重要です。チームの土台となる関係性を良好にすることで、思考や行動の質が向上し、結果として高い成果が得られる「成功循環」が生まれます。
一方で、関係構築が不十分なまま結果を重視すると、コミュニケーションの断絶やチーム内の混乱が起こりやすく、失敗につながることが多いです。
たとえば、新しい外国人メンバーを迎えたチームでは、文化の違いや言語の壁が原因で、チーム内に「混乱期」が生じることがあります。このような状況でも、まず相互理解や信頼関係の構築に注力することで、「標準期」へスムーズに移行しやすくなります。名前や挨拶を覚えたり、個々の意見を尊重したりする小さな行動が、関係の質を高める第一歩となります。
「ワンチーム」は単に仲良くすることを意味するのではありません。全員が「いい状態」で働き、目標を共有し、成果を出すためのチーム作りです。その出発点は、メンバー間の信頼関係を築く「関係の質」にあることを忘れないでください。
社会的背景:どうなる?5年後の日本の職場?
日本の職場環境は、2030年問題を背景に大きな変化を迎えています。労働力不足が深刻化する中で、外国人労働者の活用が進む一方、多文化共生の課題が浮き彫りになっています。
2030年には日本の高齢化がさらに進み、労働力人口が減少します。この労働力不足を補うため、外国人材の受け入れが加速していますが、職場における孤独感や上司のネガティブな行動が、外国人材のパフォーマンスや定着率に悪影響を与えています。
実際、外国人材の3割が「職場で孤独を感じている」というデータもあり、サポート体制の見直しが求められています。
たとえば、外国人労働者が求める上司像として、「公平に接する」「成果を認める」「指導やフィードバックを行う」といった点が挙げられます。これらの要望は、日本人の新人社員や若手社員の求める理想像とも一致しており、外国人材だけでなく、すべての従業員にとって重要な課題といえます。
日本の職場が抱える課題は、外国人材を含む多様な人材の共生を前提とした職場作りが鍵となります。孤独感の軽減や公平なマネジメントを実現することで、職場全体の活力を高めることができます。未来の職場を形作るために、今から行動を始めることが求められています。
ワンチーム創りのマインド
ワンチームを創るためには、異なる価値観や背景を持つメンバーを理解し、協力するための「マインドセット」が不可欠です。その基盤となるのが、DEIB(多様性・公平性・包括性・帰属性)の理解と、無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)への気づきです。
DEIBの概念は、多文化共生の職場環境において特に重要です。
- 多様性(Diversity):メンバーそれぞれの違いを認めること
- 公平性(Equity):それぞれのニーズに応じた支援を行うこと
- 包括性(Inclusion):全員が意見を共有できる環境を整えること
- 帰属性(Belonging):チームに所属している実感を得られること
これらを実現するには、個々の無意識の思い込みを認識し、それを修正する努力が必要です。
無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)は、自分が気づかないうちに形成される先入観や偏見を指します。これらのバイアスは、相手への接し方や判断に影響を与え、時には職場内の公平性や包括性を損なう原因となります。
そのため、アンコンシャスバイアスを認識し、意識的に行動を変えることが、多文化チームにおいて成功する鍵となります。
自分の中のバイアスを体感するには、たとえば名前や出身地などによってどのような先入観が生じるのか考えるワークを取り入れることで、日常的な判断に潜むバイアスを理解することができます。また、こうした活動を通じて、他者との違いを受け入れ、柔軟な対応ができるマインドセットが重要です。
さらに、「違い」を乗り越えるためには、「3つのト」で合わせることが重要です。
- リスペクト:尊重スタート。「違い」の中の「同じ」に注目する。
- ベスト:すべてを「日本のフツー」に合わせるのではなく「チームのベスト」に合わせる。
- リピート:説明責任。合わせる理由をくり返し伝え合う。
対話を通じて相手を理解し、異なる方法を試し、寛容な姿勢で協力することが、多文化チームでの信頼構築につながります。
ワンチーム創りは、異文化理解のための「マインドセット」から始まります。DEIBの概念を実践し、自分の無意識の思い込みに気づくことで、メンバー全員が協力し合える環境が整います。小さな一歩を積み重ねることで、多文化チームの成功が現実のものとなります。
ワンチーム創りのスキル
ワンチームを創るには、メンバー間の信頼を築くスキルと、効果的なコミュニケーション方法が欠かせません。特に、多文化環境では「言葉だけに頼らない伝え方」や「柔軟な対応力」が重要な役割を果たします。
コミュニケーションは、言葉だけでなく非言語的な要素も含めた総合的なスキルです。ミレビアンの法則によると、コミュニケーションの9割は言葉以外の要素によって伝えられるとされています。
さらに、外国人メンバーが抱える「第二言語不安」を考慮した工夫が必要です。この不安は、誤解を恐れることでコミュニケーションが消極的になる現象であり、それを軽減するためには「やさしい日本語」の活用が効果的です。
「やさしい日本語」では、以下の4つのチェックポイントを意識することが重要です。
- 情報の整理
- 情報を整理する
- 箇条書きを意識する
- 1箇条1情報
- 省略しない(情報・5W1H)
- 表現の工夫
- 「です」「ます」で伝える
- わかりにくい表現はさける
- 伝え方の工夫
- 手順があるものはマニュアル化
- 動画や写真等画像を入れる
- 専門用語は事前に母語で説明
- 時にはジェスチャーも使う
- 理解の確認
- 聞き取れた内容を復唱してもらい確認
- 必要に応じて書いてわたす
また、DEIB推進においては、「何でも尊重する」ことが正しいという誤解が生じがちです。実際には、「共通景色」を目指し、メンバー全員が共有できる目標や価値観を明確にすることが必要です。これにより、どの行動を尊重し、どの部分を変えるべきかの判断基準が明確になります。
ワンチームを実現するためには、言葉だけでなく態度や行動でのコミュニケーションを意識し、メンバーの不安を軽減する努力が必要です。
さらに、「共通景色」を目指すための基準を全員で共有し、柔軟かつ明確な対応を行うことが、多文化チームを成功に導く鍵となります。