外食産業において深刻化する人手不足の中、特定技能人材の活用が注目を集めています。今回は、全国で飲食店を展開する株式会社オーイズミフーズ様(以下、オーイズミフーズ)に、特定技能人材の採用と活用について詳しくお話を伺いました。
オーイズミフーズでは、数年前から積極的に外国人材を受け入れ、調理現場や店舗運営において重要な役割を担ってもらっています。さらに、特定技能1号から特定技能2号への移行を支援する取り組みを通じて、従業員のキャリア形成と定着にも力を注いでいます。
受験した5名全員が特定技能2号試験に合格するという成果を上げた背景には、会社と本人が一体となった挑戦がありました。インタビューを通じて、特定技能人材に対する期待や、今後の外国人材活用の展望についても伺いました。
なお、株式会社オーイズミフーズ 管理本部 総務部 武村様にインタビューをご担当頂きました。
特定技能人材の雇用状況
まずは、オーイズミフーズの特定技能人材の雇用状況についてお伺いしました。
2025年6月現在、何名の特定技能人材を雇用していらっしゃいますか?
2025年6月現在、オーイズミフーズでは特定技能人材を合計72名雇用しています。その内訳は、特定技能1号が68名、特定技能2号が4名です。
雇用している特定技能人材の国籍はどのような感じですか?

ベトナム出身者が最も多く49名を占め、そのうち2名が特定技能2号に移行しています。続いて、ミャンマーが9名、ネパールが8名、バングラデシュが2名(うち1名が特定技能2号)、スリランカと台湾がそれぞれ1名ずつ、中国が2名(うち1名が特定技能2号)となっており、多国籍な人材が活躍しています
特定技能人材の雇用の背景と依頼業務
続いて、オーイズミフーズにおける特定技能人材の活用状況について伺いました。
特定技能人材の雇用はいつから行っているのですか?
特定技能人材の受け入れは、2020年1月から開始しました。特定技能制度自体は2019年に始まりましたが、その時点から社内では調査や準備を進めており、最初の受け入れに至ったのが2020年初頭です。
当時、技能実習や留学生アルバイトなど外国人材の受け入れは飲食業界全体でも広がりつつありましたが、オーイズミフーズでは制度開始から間もない時期に特定技能の仕組みに着目し、早い段階で導入に踏み切った形です。
特定技能人材の受け入れを始めた経緯は何でしょうか?
特定技能人材の受け入れを始めた大きなきっかけは、社長の「今後、日本人の採用はますます難しくなる。人材がいなければ店舗運営も事業展開もできない。だからこそ、外国人採用を先取りして進めていこう」という強い方針でした。
2019年に特定技能制度が始まると同時に情報を収集し、早い段階から受け入れ体制を整えたのです。当時、飲食業界全体では特定技能の活用がまだ一般的ではなく、試行錯誤が多い時期でしたが、オーイズミフーズでは先駆けて導入を進めることで、将来的な人材確保につなげる狙いがありました。
「特定技能」人材を選択した理由があれば教えて頂けますか?
特定技能人材を選択した理由は、飲食店で主力となるスタッフとして働ける在留資格が新たに整備されたことにあります。
元々、アルバイトとして外国人留学生が多く在籍し、特にコロナ禍の前はキッチン業務を担うケースが多く見られました。その流れから「長期的に戦力として働ける外国人材を採用したい」というニーズがあり、制度が始まったタイミングで自然に特定技能1号の採用へとつながったのです。
さらに、在籍していたベトナム人社員やアルバイトとの親和性も高く、同じ国籍の仲間がいることで新しく入社する人材も馴染みやすい環境が整っていたことも、特定技能を選択した理由の一つでした
特定技能人材にはどういった業務をお願いしていますか?

特定技能人材の約9割は、キッチン業務を中心に従事しています。具体的には、料理の調理や盛り付け、洗い物といった基本業務に加え、能力のある人材には食材の発注や棚卸しといった管理業務も任せています。
中には、レシピの考案や新メニューの提案にまで関わるケースもあり、高いスキルを発揮している人材も少なくありません。
一方で、日本語力が高く接客に慣れている人材については、ホール業務にもアサインしています。注文対応や料理提供だけでなく、店長不在時の営業報告まで担うスタッフもおり、店舗運営に欠かせない存在となっています。基本はキッチンが中心ですが、適性や経験に応じて幅広い業務を任せる体制を整えていることが特徴です。
特定技能2号人材では、調理責任者、店長代理として活躍しているメンバーもいます。
特定技能2号試験への合格までの軌跡
オーイズミフーズでは、2024年10月に実施された特定技能2号外食試験において、受験した5名全員が合格するという素晴らしい結果をおさめられています。そのような結果を得られたのには、どのような背景があったのかについて迫ります。
特定技能2号への移行は会社側・外国人材側どちらの希望だったのですか?
特定技能2号への移行については、会社としての希望が大きな原動力となりました。特に、私(総務部)からの強い希望がありました。もちろん、外国人材本人から「特定技能2号を取りたい」という声もありましたが、オーイズミフーズとしては長期的に働いてもらうために積極的に特定技能2号への移行を推進してきました。
その背景には、特定技能1号では在留期間に上限があり、また家族の呼び寄せができないため、優秀な人材でも途中で転職や帰国を選ぶケースが少なくなかったという事情があります。特定技能2号に移行することで在留資格の安定が図られ、家族と日本で生活できる環境が整うため、結果として長期的な定着につながると考えています。
実際、他社では特定技能2号への移行支援をあまり進めていないこともあり、「特定技能2号を取りたいから御社で働きたい」という人材が転職してくるケースもありました。そうした状況も含め、会社側が率先して特定技能2号移行を後押ししてきたことが特徴です。
特定技能2号試験に合格してもらうにあたって、どういった支援を行ったのですか?
特定技能2号試験の合格に向けた支援としては、社内にテキストの配布・社内研修を実施できる人員がいなかったため、明光グローバルの講座(特定技能2号対応講座)を中心に活用しました。会社側が独自に学習指導を行うというよりも、信頼できる外部講座を紹介し、必要な教材を提供する形を取りました。
また、受験にあたっては推薦制度を設け、全員に一律で受けさせるのではなく、店舗での勤務態度やエリアマネージャーからの評価などを総合的に判断し、一定の基準を満たした人材に推薦を出す仕組みを導入しました。
学習時間の確保については、会社側で特別に設けることは難しかったものの、教育熱心な店長が主体的に指導にあたったケースもありました。たとえば、店舗内でテキストを用いた勉強をサポートしたり、模擬試験に取り組ませたりといった取り組みが、合格につながる大きな助けになりました。
結果的に、外部講座の体系的なカリキュラムと、店舗現場での店長の協力、そして本人たちの主体的な努力が合わさることで、合格という成果を実現できたと考えています
会社として、どういった点に一番苦労されましたか?
会社として最も苦労した点は、学習支援に十分に関われなかったことです。試験対策用の教材や外部講座を紹介することはできましたが、日々の業務に追われる中で、実際に一緒に学習を見てあげたり、勉強方法を細かくフォローしたりすることが難しかったのが実情です。
本来であれば「この教材を一緒にやろう」と寄り添う支援も必要だったと感じていますが、現場任せになってしまった部分が多くありました。
また、運営体制が限られており、担当者が少人数で多くの人材を見ているため、サポートが十分に行き届かないことも課題でした。そうした中で、最終的に合格した人材は、自ら強い意志を持って学習に取り組み、在留期限が迫っていたり、家族を日本に呼びたいといった具体的な目標を持っていたことが大きな原動力となりました。結果として、本人たちの高いモチベーションが苦労を乗り越え、合格につながったといえます
5名中5名合格という素晴らしい結果を得られたポイントは何だったとお考えでしょうか?
今回の合格の背景には、いくつかの要因が重なっています。
まず大きかったのは、受験までのスケジュール管理が適切だったことです。試験の約2ヶ月前に模擬試験を実施したことで、受験者自身が「このままでは合格点に届かない」という課題を明確に把握できました。受講時点では、絶対受からないレベルの子もいましたが、「Japany」などの学習ツールや練習問題を活用し、本試験までの期間で重点的な復習や弱点克服に取り組むことができたため、合格につながりました。
また、教育熱心な店長の存在もポイントでした。店舗ごとに異なる状況ではありましたが、中には店長自らが時間を割いて学習を支援し、現場で実践的に指導してくれるケースもありました。
こうした現場の後押しに加え、受験者本人の強い意志も大きな原動力でした。在留期限が迫っていたり、結婚や将来の永住を見据えて「必ず合格したい」という強い動機を持って臨んだことが、最後まで努力を継続できた理由です。
結果として、スケジュール管理・現場での支援・本人の強いモチベーションという3つの要素がかみ合ったことが、全員合格という成果につながったと考えています。
明光グローバルとの関わり
特定技能2号試験に合格するにあたって、オーイズミフーズでは明光グローバルの「特定技能2号対応講座」の導入がポイントでした。では、どのようにして明光グローバルの講座を選ぶに至ったのでしょうか?
明光グローバルを知ったきっかけを教えていただけますか?
明光グローバルを知ったきっかけは、「特定技能人材紹介」でお世話になっていた西張様よりご紹介を頂いたことです。
当社は2022年8月より自社支援に切り替えていますが、元々社内でも「特定技能2号への移行に力を入れている」という方針を社内外に発信していました。その取り組みについて西張様に伝えていたところ、「それなら一度話を聞いてみませんか?」と紹介を受けたのが最初の接点でした。その流れから明光グローバルの「特定技能2号対応講座」を知り、導入を検討するきっかけとなりました。
「特定技能2号対応講座」を利用してみてどこが良かったでしょうか?
「特定技能2号対応講座」を利用して特に良かった点は、教育のノウハウが豊富に蓄積されていたことです。多くの登録支援機関でも講座は用意されていますが、明光グローバルは外国人への日本語教育や指導実績がしっかりとあり、その専門性に大きな安心感がありました。
また、スケジュール面でも柔軟に対応していただけたことが魅力でした。決められた日程に一方的に合わせるのではなく、受講者や会社の状況に応じてオンラインでの受講も選択でき、開始時期や進め方を柔軟に調整できたため、現場の業務と両立しながら学習を進めることができました。
加えて、教材も一律の内容ではなく、必要に応じてカスタマイズされていたため、自社の人材に合った形で学習を進められた点も大きなメリットでした。
結果的に、教育力・スケジュール調整・教材の柔軟性という3つの強みがそろっていたことで、安心して受講を任せられる講座だったと感じています。
今後も「特定技能2号対応講座」を活用していきたいとお考えですか?
今後についても、特定技能2号への移行を希望する人材に対しては積極的に「特定技能2号対応講座」を活用していきたいと考えています。実際に独学で挑戦した人材もいましたが、残念ながら不合格となっており、講座を受けた人材との成果の差は明確でした。
次回2026年1月開催の試験の際に、また利用させて頂きたいと考えています。今年(2025年)も6名参加、2025年7月受験にご依頼させていただきました。
特定技能2号対応講座では、模擬試験や多様な教材を通じて体系的に学習できるため、本人の努力だけに任せるよりも合格率が高まると実感しています。ただし、会社としては全てを手厚く準備するのではなく、まずは本人が主体的に学ぶ姿勢を持ち、その上で講座を受講するという流れを大切にしています。
費用についても、合格すれば会社が一部を負担する形を取り、本人の意欲を引き出す仕組みとしています。こうした取り組みを通じて、今後も特定技能2号を目指す人材を継続的にサポートし、長期的に定着してもらえる体制を整えていきたいと考えています
オーイズミフーズの今後の展望
最後に、特定技能人材の雇用に関して、オーイズミフーズの今後の展望についてお伺いしました。
特定技能2号人材に期待することはありますか?
特定技能2号人材に対しては、まずは会社の中でロールモデルとなってほしいと考えています。すでに調理責任者や料理長といったポジションに就いている人材もおり、後輩に「努力すればこういう役職に就ける」という姿を見せることで、他の外国人スタッフの目標になってほしいという期待があります。
また、特定技能2号になったことで家族を日本に呼べるようになった人材もおり、仕事だけでなくプライベートも充実させてほしいと考えています。これまで「家族と会えない」という理由で退職や転職を選ぶケースもありましたが、特定技能2号の資格を得ることで長期的に安心して働ける環境が整うため、会社としても定着につながると見込んでいます。

お金を稼ぐことはもちろん大切ですが、それ以上に「この会社で働いて良かった」と感じてもらえるよう、仕事と生活の両面で充実した時間を過ごしながら活躍してほしいと思っています
特定技能人材に関わらず、今後外国人材をどのように活用していきたいとお考えですか?
現在、オーイズミフーズでは正社員約900名のうち、特定技能を中心に約100名の外国人材が活躍しています。特定技能1号だけでなく、中華業態では専門的な技能ビザを持つスタッフも在籍しており、すでに店舗運営に欠かせない存在となっています。
今後は、関東や都内だけでなく、地方での活用も広げていきたいと考えています。都市部では大型店が多く、複数の社員を配置できるため外国人材も活躍しやすい環境が整っていますが、地方の店舗は規模が小さく、店長と数名のスタッフで運営されるケースが多いため、一定以上の日本語力や総合的なスキルが求められます。そのため、地方店舗で活躍できる外国人材を増やすことが今後の課題であり、同時に期待でもあります。
一方で、外国人材自身も「東京や神奈川で働きたい」という希望を持つ人が多く、賃金水準の差も影響しています。会社としては、地方でも安心して働けるように支援体制を整えながら、地域ごとのニーズに合わせて外国人材の活躍の場を広げていきたいと考えています。