特定技能2号の拡大により、新たに11分野が対象となり、外食業も追加されました。
そこで今回は、外食業の特定技能人材が2号に移行することで、企業にどのようなメリットがあるのか解説します。また、特定技能2号になるための具体的な要件や、事前に準備しておくべきポイントについても詳しく解説します。
特定技能1号人材や留学生アルバイトを雇用中の飲食店運営者の方は、ぜひ参考にしてください。
特定技能制度とは
特定技能は、深刻な人手不足を補うために、即戦力となる外国人を受け入れる制度で、2019年4月から始まりました。2024年11月現在、12分野のみが対象ですが、今後4分野が追加されることが決まっています(令和6年3月の閣議決定)。
特定技能1号になるためには、即戦力となる基本的な技能が求められ、特定技能2号ではより高度な技能が求められます。
特定技能「外食業」の業務範囲と働ける事業所
特定技能「外食業」の外国人材は、調理・接客・店舗管理・原材料の仕入れなどの業務に従事できますが、従事できる業務範囲と受け入れ可能な事業所は次のように定められています。
特定技能「外食業」で可能な業務範囲
- 飲食物調理:客に提供する飲食料品の調理、調整、製造
- 接客:客に飲食料品を提供するための業務
- 店舗管理:店舗の運営に必要となる業務
上記の業務に伴う調理品等以外の物品の販売なども認められています。また、制度上は外食業全般に従事することと定められていますが、一部の期間のみ「調理担当」など、特定の業務にのみ従事することも可能です。
特定技能「外食業」人材が働ける事業所
外食業の特定技能人材を受け入れられる事業所は、以下のとおり具体的に定められています。
- 飲食店:食堂、レストラン、料理店等の飲食店、喫茶店等
- 持ち帰り飲食サービス業:持ち帰り専門店等
- 配達飲食サービス業:仕出し料理・弁当屋、宅配専門店、配食サービス事業所等
- 給食事業等の飲食サービス業:ケータリ ングサービス店、給食事業所等)
なお、「風俗営業」 や「性風俗関連特殊営業」を営む営業所においては、飲食物調理・接 客・店舗管理の業務であっても、特定技能外国人が働くことはできません。
参照元:外食業分野における特定技能外国人制度について(農林水産省)
外食業の特定技能1号と2号の違い
ここでは、特定技能「外食業」1号と2号の違いについて解説します。それぞれの違いをまとめると下の表のようになります。
項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
①技能水準 | 基礎的な実務経験や知識 | 熟練した技能 |
②業務範囲 | 飲食物調理、接客、店舗管理 | 外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理)及び店舗経営 |
③日本語要件 | N4 | N3 |
④在留期間 | 通算5年 | 更新上限なし |
⑤家族帯同 | 不可 | 条件を満たせば可能 |
⑥支援計画の策定 | 必要 | 不要 |
違い①:技能水準
大きな違いの一つが技能水準です。技能水準は、技能評価試験によって測定されます。
外食業の特定技能2号試験では、1号試験にはなかった「店舗運営」の項目が追加されており、原価計算や人件費管理計算なども出題されるため、数字にも強くなければなりません。
また、試験問題にルビがない点も1号試験と大きく異なる点です。外食業分野の深い知識のみならず、日本語能力も必要です。
違い②:業務範囲
業務範囲の違いは、1号の業務範囲である飲食物調理、接客、店舗管理に加え、店舗経営が含まれている点です。店舗経営とは、店舗の経営分析、経営管理、契約に関する事務等があり、エリアマネージャーや店長などが担う業務範囲までもが可能となっています。
参照元:
違い③:日本語要件
外食業における特定技能1号の日本語要件は他の産業分野と同様にN4ですが、2号では他分野と異なりN3が必須となっています。
外食業では、食物アレルギーや酒類提供の確認に加え、お客様の多様な要望を正確に聞き取り、対応する力が必要とされます。また、特定技能2号外国人には、複数のアルバイトや特定技能1号外国人の指導・監督、接客業務、親会社や発注先との調整が求められます。
このように、日本語話者との調整業務を担うことが想定されているため、日本語能力N3以上が必須となっています。
違い④:在留期間の更新制限
在留期間の更新については、他の産業分野の1号と2号の違いと同様です。
特定技能1号の在留期間は、1年、6ヶ月または4ヶ月ごとの更新で、通算で最長5年です。一方、特定技能2号は3年、1年、6ヶ月ごとの更新が可能です。そのため、1年や3年ごとの更新により事務作業にかかる時間や費用を削減できます。また、特定技能2号には更新の制限がない点も大きな違いです。
違い⑤:家族帯同
特定技能1号の場合、原則として家族を日本に帯同させることはできません。しかし、特定技能2号では、一定の要件を満たすことで母国から配偶者や子どもに限り、日本に呼び寄せることが可能です。
違い⑥:支援計画の策定の有無
特定技能1号では、受入れ機関が外国人労働者を支援するか、もしくは登録支援機関にその支援を委託する必要があります。一方、特定技能2号では、その必要がありません。
企業にとっての「外食業」特定技能2号のメリット
企業にとって、外国人人材が外食業で特定技能2号に移行するとどのようなメリットがあるでしょうか?主なメリットは次のとおりです。
- 外国人材の採用に有利になる
- 外国人材のマネジメントがスムーズになる
- 管理職候補になれる
- 海外進出の起点、海外店舗のマネージャー候補になれる
- 家族帯同が可能になる
- 在留期間の上限が撤廃される
- 受け入れ企業で支援計画の策定・実施が必要ない
外国人材の採用に有利になる
特定技能2号人材の存在により、他の外国人材の採用がより有利になります。
特定技能2号人材は、通常業務と指導を並行して行うことができるため、特定技能1号人材や留学生アルバイトにとっては、指導者が外国人材であることが安心材料となります。また、特定技能2号人材が役職についている店舗であれば、他の外国人スタッフにとってもキャリアアップの指針になるでしょう。
外国人材のマネジメントがスムーズになる
特定技能2号人材には、外国人スタッフのマネジメント面でも活躍を期待できます。
特に、日本語が未熟な外国人スタッフは、日本人からの指示に対して、わからないことも「わかりました」と返答してしまうことがあります。その点において、母国語で指示を出せる特定技能2号人材は、外国人スタッフが多く働く店舗において、日本人マネージャー以上に活躍する場面が増えるでしょう。
管理職候補になれる
特定技能2号人材は、将来的には店長やエリアマネージャーレベルの役職に就くことが想定されています。管理職の採用が難しい外食業界において、管理職候補が一人でも増えることは大きなメリットです。
さらに、管理職レベルの権限を持つことで、地域によっては外国人観光客向けのマーケティングや、SNSを活用した外国人のリファラル採用などにも貢献してくれる可能性があります。
海外進出の起点や海外店舗のマネージャー候補になれる
企業によっては、特定技能2号人材の存在が海外進出の起点や、海外店舗のマネージャー候補になる可能性もあります。
実際、大手牛丼チェーンにおいては、外食業で活躍する特定技能人材が、将来的に母国に帰国し、母国で受け入れ事業者の経営に貢献したいと目標を持つ人もいるという事例があります。
特定技能2号人材が海外店舗で活躍することになれば、現地スタッフの指導や管理において、日本人以上のパフォーマンスを発揮してくれるでしょう。また、そのようなケースでは、日本人スタッフの短期出張や単身赴任に伴う手間や経費を削減できることもメリットです。
家族帯同が可能になる
特定技能2号人材は、条件を満たすことで家族を日本に帯同させることができます。
家族と生活することで、精神的な安定につながり、仕事に集中しやすい環境が整います。また、家庭の事情によって急きょ帰国しなければならないといった事態も防ぐことができます。
在留期間の上限が撤廃される
在留期間の更新が無制限になることで、在留期間を理由とした離職を防ぐことができます。
長期的に働いてもらえる可能性が高まるため、企業は時間とお金をかけて管理職に育成するための投資もしやすくなります。また、日本での長期的なキャリア目標を立てたり、生活基盤を安定させたりしやすくなるなど、企業だけでなく特定技能人材にとっても大きなメリットがあります。
受け入れ企業で支援計画の策定・実施が必要ない
特定技能2号に移行すると、特定技能1号で必要だった公的手続きへの同行や日本語学習の機会提供などの支援が不要になるため、企業側には事務作業を軽減できるメリットがあります。登録支援機関に支援を委託していた場合、その必要がなくなるため、経費削減にもつながります。
外食業で特定技能2号に移行するための要件
企業にとって、外国人材が特定技能2号に移行すると多くのメリットがありますが、その反面、実務経験や試験などの要件も厳しくなっています。ここでは、外食業で特定技能2号に移行するための実務経験・試験・必要書類について解説します。
特定技能2号移行に必要な実務経験
外食業で特定技能2号に移行するためには、管理者相当の実務経験が必要です。具体的には、「外食業において、2年以上の指導実務経験があること」または「試験日から6ヶ月以内に2年以上の指導実務経験を満たす見込みであること」が条件とされています。
指導実務経験とは、複数のアルバイト従業員や特定技能外国人を指導・監督しながら接客を含む業務に従事し、店舗管理を補助する業務で、副店長やサブマネージャーが担うような業務のことです。
特定技能2号移行に必要な試験
特定技能2号に移行するには、次の2つの試験に合格する必要があります。
- 日本語能力試験(JLPT)N3
- 技能評価試験(外食業特定技能2号技能測定試験)
日本語能力試験(JLPT)N3の合格
外食業の特定技能2号へ移行する場合、他の分野と異なり、日本語能力試験(JLPT)N3の合格が必要です。特定技能2号への移行要件にN3が課されているのは、「外食業」と「漁業
」のみです。
技能評価試験の合格
他の分野の特定技能と同様に、特定技能2号へ移行するには、技能評価試験の合格が大前提です。
先ほど解説したように、試験科目は特定技能1号の試験と同じ接客・調理・衛生管理に加え、店舗運営の項目が追加されています。また、特定技能1号の技能評価試験とは異なり、問題文の漢字にルビがない点が大きな違いです。
特定技能2号移行に必要な書類
外食業に限った必要書類は次のとおりです。
- 外食業特定技能2号技能測定試験の合格証明書の写し
- 日本語能力試験(N3以上)の合格証明書の写し
- 保健所長の営業許可証又は届出書の写し
- 外食業分野における特定技能外国人の受入れに関する 誓約書
- 協議会の構成員であることの証明書
上記以外にも、他の分野と共通する書類を準備する必要があります。詳しく知りたい方は、「在留資格認定証明書交付申請(出入国在留管理庁)」をご確認ください。
外食業で特定技能2号を目指す上での課題
外食業で特定技能2号を目指す上では、主に次の3点が課題となります。
- 試験の対策が難しい
- 試験の難易度が高い
- 準備することが多い
試験の対策が難しい
特定技能2号に外食業が追加されたのは2023年と間もなく、2024年11月時点では、これまでに外食業2号の技能評価試験は2回しか実施されていません。そのため、対策を立てるための情報が少なく、重点的に勉強すべき箇所や、失点を覚悟して勉強の優先度を下げる箇所を定めるといった効率的な勉強が難しい状況です。
試験の難易度が高い
特定技能2号を目指す上での大きな課題は、試験問題の漢字にルビが振られていないことです。そのため、試験勉強の段階でルビなしでも対応できる日本語力を身につける必要があります。
また、特定技能2号試験から追加される店舗運営の項目には、計数管理や発注・検収管理といった専門的なトピックが多く含まれており、試験の難易度が特定技能1号試験に比べて大幅に高くなっています。
準備することが多い
外食業の特定技能2号に移行するには、2年間の指導実務経験、技能評価試験と日本語能力試験のN3合格と準備することが多いです。そのため、受験時期を見据えて計画的に実務経験を積ませる必要があり、企業としても長期的なスケジュールで準備を進める必要があります。
たとえば、国外から特定技能1号人材を採用したとして、特定技能2号に移行させるように育成していく場合、5年間の在留期間が満期になる前に2号技能評価試験の合格、日本語能力試験N3の合格、2年間の指導実務経験を積ませるといったことを同時に進めなければなりません。
そのため、日本語能力試験や技能評価試験のスケジュールにも注意して、2~3回ほど試験を受けられるように準備することが理想的です。
特定技能2号へ移行するなら効率的な日本語学習体制を整えよう
特定2号への移行を目指す場合、早期に指導実務経験を積むため、調理や接客に関連する日本語をできる限り早く習得し、指導側に回ることが必要です。日本語学習は、技能評価試験対策や日本語能力試験N3合格のためだけでなく、早期に指導実務経験を積むためにも重要なポイントです。
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まとめ
外食業で特定技能2号に移行することは、企業にとって外国人材の採用強化や外国人マネジメント体制の向上、新たな管理職候補の確保になるなど大きなメリットがあります。
また、企業によっては、海外進出や海外店舗のマネージャー候補としての活躍も期待できます。さらに、家族帯同が可能になり、在留期間の制限が撤廃されるため、外国人材にとっても安心して長期的に働ける環境が整い、モチベーション向上にもつながります。
特定技能2号では、支援計画の策定・実施が不要になるため、事務作業や経費削減も実現できます。ただし、2号に移行するには、2年以上の実務経験が必須で、技能評価試験の難易度も高く、他分野と違い日本語試験の合格が求められるといった課題もあります。働きながら試験勉強を進めることは容易ではなく、企業側にも負担が大きいのが現状です。
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