技術・人文知識・国際業務の在留資格は、外国人材が日本で専門的な仕事に従事するための代表的な就労ビザとして、現在約36万人が保有しています。
2014年の入管法改正で誕生したこの在留資格は、理系職種の「技術」と文系職種の「人文知識・国際業務」が統合されたことで、より柔軟な人材活用が可能になりました。在留資格の取得には、外国人材の学歴・職歴、企業側の受け入れ体制、業務内容の専門性など、多岐にわたる要件を満たす必要があります。
今回は、人事担当者が押さえておくべき基本的な知識から、申請手続きの具体的な流れ、さらには審査で重視されるポイントまで、実務的な観点から詳しく解説します。外国人材の採用をご検討の企業様は、ぜひ参考にしてください。
技術・人文知識・国際業務とは
「技術・人文知識・国際業務」とは、外国人材が日本で専門的な仕事に従事するための代表的な就労資格です。かつては理系職種の「技術」と文系職種の「人文知識・国際業務」が別々の在留資格でしたが、2014年の法改正により一本化され、企業での柔軟な人材活用が実現しました。
ここでは、ビザの種類や特徴、必要な要件など、人事担当者として押さえておくべき基礎知識を解説します。
在留資格の種類と技術・人文知識・国際業務の位置づけ
外国人が日本で暮らすには、29種類の在留資格のいずれかを持つことが必要です。29種類の在留資格は、以下の4つに分類できます。
29種類の在留資格
カテゴリー | 在留資格 |
---|---|
就労目的の在留資格 | ・外交 ・公用 ・教授 ・芸術 ・宗教 ・報道 ・高度専門職 ・経営・管理 ・法律・会計業務 ・医療 ・研究 ・教育 ・技術・人文知識・国際業務 ・企業内転勤 ・介護 ・興行 ・技能 ・特定技能 ・技能実習 |
身分・地位に基づく在留資格 | ・永住者 ・日本人の配偶者等 ・永住者の配偶者等 ・定住者 |
非就労の在留資格 | ・文化活動 ・短期滞在 ・留学 ・研修 ・家族滞在 |
特定活動 | ・特定活動 |
この中で、「技術・人文知識・国際業務」は、令和5年(2023年)末現在で約36万人が保有する代表的な就労ビザです。
「特定技能」や「技能実習」が現場作業を含む実務的な職種を対象とするのに対し、「技術・人文知識・国際業務」は、専門的な知識やスキルを活かした業務に従事する特徴があります。企業のホワイトカラー人材として活躍が期待される在留資格として、近年ますます注目を集めています。
参照元:令和5年末現在における在留外国人数について(出入国在留管理庁)
技術・人文知識・国際業務で認められる活動範囲の概要
技術・人文知識・国際業務では、専門的な知識やスキルを活かした3つの分野での活動が認められています。
技術・人文知識・国際業務の活動範囲一覧
分野 | 求められる知識 | 該当する業務例 |
---|---|---|
技術分野 | 自然科学・工学的知識 | ・SE、プログラマー等のIT関連業務 ・機械設計・研究開発等の工学系専門業務 ・製品の品質管理・生産管理業務 |
人文知識分野 | 社会科学の専門知識 | ・経営企画・マーケティング業務 ・財務・経理・人事等の管理業務 ・法務・コンサルティング業務 |
国際業務分野 | 外国文化の知見 | ・通訳・翻訳業務 ・海外取引・貿易関連業務 ・外国人向けの営業・接客業務 |
技術・人文知識・国際業務の在留資格には、自然科学分野や人文科学分野の専門的技術や知識を必要とする業務、または外国人特有の感性を求められる業務が該当します。ただし、いずれの分野でも単純作業は認められず、専門的な知識やスキルを必要とする業務内容であることが求められます。
在留期間と更新・変更の基本ルール
技術・人文知識・国際業務の在留期間は、「5年、3年、1年、3ヶ月」のいずれかが認められます。在留期間の選定基準は、一般的に以下の要素によって判断されます。
- 企業の事業実績や経営状態(安定性)
- 外国人材の学歴や職歴
- 過去の在留歴
- 給与水準や雇用形態(正社員、契約社員など)
ただし、具体的な選定基準は公表されていないため、あくまでも目安としてください。また、更新・変更に関する基本ルールについても把握しておきましょう。
更新・変更に関する基本ルール
種類 | 内容 |
---|---|
在留期間の更新 | ・期間満了の3ヶ月前から申請可能 ・更新回数に制限なし ・審査には2週間〜1ヶ月程度必要 |
転職時の手続き | ・退職後14日以内に入管へ「所属機関変更の届出」が必要 ・職種が大きく変わる場合は事前に入管へ相談(推奨) ※就労が在留資格に適合するか確認するため |
申請時期の遅れは不法就労となる可能性があるため、余裕を持った手続きが重要です。また、雇用条件に大きな変更がある場合は、事前に専門家へ相談することをおすすめします。
技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得するための3つの重要要件
技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得するためには、3つの重要な要件を満たす必要があります。
- 外国人材の学歴・職歴
- 企業側の受け入れ体制
- 業務内容の専門性
いずれも出入国在留管理庁による厳格な審査対象となっており、1つでも要件を満たさない場合は不許可となる可能性があります。ここでは、各要件について解説します。
学歴・職歴に関する要件と必要な実務経験
技術・人文知識・国際業務の在留資格取得には、学歴または実務経験のいずれかの要件を満たす必要があります。
学歴要件
学歴要件は、以下のいずれかが必要です。
- 日本または外国の大学卒業(または同等以上)
- 日本の専門学校卒業(専門士または高度専門士の称号を持つ者)
2024年2月より、文部科学大臣認定の専門学校修了者は、大学卒業者と同様に業務内容との関連性が柔軟に判断されるようになりました。
実務経験要件
また、実務経験要件は分野によって異なります。
分野 | 要件 |
---|---|
技術・人文知識分野 | ・業務に関連する10年以上の実務経験が必要 |
国際業務分野 | ・翻訳・通訳業務は3年以上の実務経験が必要 ・大学卒業者が翻訳・通訳業務に従事する場合、実務経験不要 |
なお、専門学校卒業者が翻訳・通訳として働く場合は、原則として実務経験が必要となります。学歴要件を満たしていても、業務との関連性があるかないかが重要な審査のポイントです。
雇用企業に求められる要件と条件
技術・人文知識・国際業務での外国人雇用には、企業側も厳格な要件を満たす必要があります。企業に求められる基本要件は次の3点です。
- 事業の安定性と継続性が認められること:企業の経営状態が審査の重要なポイントです。通常は決算書を入管申請時に提出し、事業の安定・継続性が判断されます。
- 日本人と同等以上の報酬を支払えること:外国人材の給与は、同じ業務に従事する日本人従業員と同等以上に設定する必要があります。国籍による給与の差別は法律で禁止されており、適切な処遇が求められます。
- 適切な雇用管理体制を整備していること:労働関係法令を遵守し、社会保険の加入、労働条件の明示、安全衛生管理、適切な労務管理など、外国人従業員が安心して働ける職場環境を整備すること。
基本要件は、外国人材を適切に扱い、安定的な雇用環境を提供できるかを判断する重要な基準となります。
業務内容に求められる専門性の基準
技術・人文知識・国際業務の在留資格では、業務内容の専門性が認められるかが重要な審査基準となります。専門的な業務として認められる例は次のとおりです。
- 機械工学等の技術者
- デザイナー
- 企業の語学教師
- マーケティング業務従事者
- 通訳
システム開発や設計、財務分析や経営戦略の立案、外国語を用いた商談や契約交渉など、高度な専門知識や能力が必要とされています。
具体例:
- システム開発:新しいアプリケーションの設計と実装を担当。企業の顧客管理システムの要件定義からプロジェクト管理までを行う。
- 財務分析:国内外の取引先データを用いて財務戦略を提案。例えば、資金調達計画や投資シミュレーションの作成。
- 国際業務:輸出入の通関業務や、海外顧客との商談で文化的背景を活用した交渉を担当。
一方で、次の業務は原則として認められていません。
- マニュアル通りの単純作業(例:工場ラインでの製品組立)。
- 現場での製造や組立作業。
- 一般的な接客や販売業務(例:小売店舗での商品の陳列作業)。
特別な知識や技能を必要としない定型業務は、技術・人文知識・国際業務の対象外となります。ただし、日本人社員と同様の研修制度の一環として、期間を限定した実務研修を行い、将来的に専門的な業務に従事することが明確な場合は、例外的に認められることがあります。
技術・人文知識・国際業務で働ける業種・職種
技術・人文知識・国際業務の在留資格では、幅広い業種・職種への就労が可能です。ただし、どの職種でも専門的な知識やスキルが求められ、単純作業は認められません。
ここでは、技術・人文知識・国際業務の在留資格で働くことができる具体的な職種を、3つの分野に分けて実際の業務内容とともに詳しく解説します。
技術分野で認められる具体的な職種
技術分野では、理工系の専門知識や技術を活用する職種が対象となります。代表的な職種と具体的な業務内容は次のとおりです。
技術分野で認められる具体的な職種
職種 | 業務内容 |
---|---|
IT・情報システム関連 | ・システムエンジニア:システム設計、要件定義、プロジェクト管理 ・プログラマー:ソフトウェア開発、コーディング、テスト設計 ・ネットワークエンジニア:サーバー構築、セキュリティ管理 |
製造・開発関連 | ・機械設計エンジニア:製品設計、CAD設計、性能評価電気 ・電子設計:回路設計、制御システム開発 ・研究開発エンジニア:新技術・新製品の研究開発 |
品質・生産管理 | ・品質管理エンジニア:品質基準の策定、検査方法の確立 ・生産技術者:製造工程の設計、生産性の改善 |
以上の職種では、大学や専門学校で学んだ専門知識を直接活かせるかが重要です。また、業務の専門性を明確に示せることが、在留資格の取得・更新において重要なポイントとなるでしょう。
人文知識分野における該当職種の範囲
人文知識分野では、社会科学系の専門知識を必要とする職種が対象となります。代表的な職種と具体的な業務内容は次のとおりです。
人文知識分野で認められる具体的な職種
職種 | 業務内容 |
---|---|
経営・企画関連 | ・経営企画:事業戦略の立案、市場分析、新規事業開発 ・マーケティング:市場調査、商品企画、ブランド戦略策 ・事業開発:新規事業の企画立案、収益計画の策定 |
管理部門関連 | ・財務:財務分析、資金計画の立案、投資判断 ・経理:決算業務、財務諸表作成、管理会計 ・法務:契約書作成、法務相談、コンプライアンス管理 |
審査では、単なる事務作業ではなく、専門知識を活かした判断や分析が必要な業務であることを明確に示す必要があります。そのため、具体的な業務内容や求められる専門性を詳細に説明することが重要です。
国際業務として認められる職務内容
国際業務分野では、外国人材の母国語や文化的背景を活かした職種が対象となります。主な職種と必要な要件は次のとおりです。
国際業務分野で認められる具体的な職種
職種 | 業務内容 |
---|---|
翻訳・通訳関連 | ・翻訳:文書・資料の翻訳、ローカライズ業務 ・通訳:商談・会議の通訳、来客対応 |
海外取引関連 | ・貿易事務:輸出入手続き、通関業務 ・海外営業:海外顧客との商談、市場開拓 ・バイヤー:海外製品の仕入れ、価格交渉 |
以上の職種では、語学力に加えて、両国の文化や商習慣への理解が重要です。また、専門性の高い業務であることを示すため、具体的な職務内容の説明が求められます。
技術・人文知識・国際業務の申請手続きと審査のポイント
技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得するには、適切な申請手続きと綿密な準備が必要です。申請者の在留状況(海外在住か国内在住か)や、企業のカテゴリーによって提出書類や手続きの流れが異なります。また、申請後の審査では、雇用条件や業務内容の専門性が重点的にチェックされます。
ここでは、申請手続きの具体的な流れと、申請を成功に導くためのポイントを解説します。
申請に必要な提出書類と準備の進め方
技術・人文知識・国際業務の申請には、企業のカテゴリーと申請する種類に応じた書類準備が必要です。主な提出書類は次のとおりです。
技術・人文知識・国際業務の申請種類別必要書類一覧
申請種類 | 必要書類 |
---|---|
共通して必要な基本書類 | ・在留資格認定証明書交付申請書 ・写真(縦4cm×横3cm) ・パスポートと在留カードの写し |
在留資格認定証明書交付申請 (海外から呼び寄せる場合) | ・雇用契約書 ・会社の登記事項証明書 ・決算報告書 ・貸借対照表・損益決算書など ・会社案内 ・業務内容、取引実績などが記載されたもの |
在留資格変更許可申請 (留学から就労への切り替えなど) | ・卒業証明書 ・成績証明書 ・在学中の出席率証明書 ・給与支払証明書 |
在留期間更新許可申請 | ・給与所得の源泉徴収票 ・住民税の納税証明書 |
なお、上場企業は書類が簡素化される一方、新設企業等は追加の事業実態証明が必要です。早めの準備と専門家への相談が申請を成功に導くポイントとなるでしょう。
審査で重視される3つのポイント
技術・人文知識・国際業務の在留資格取得には、審査で重視される重要なポイントがあります。外国人材を適切に受け入れるため、そして専門的・技術的分野で活躍できる人材を確保するためです。審査で重視されるポイントは、次のとおりです。
■在留資格審査における3つの重要ポイント
審査ポイント | 確認項目 |
---|---|
学歴・職歴と業務内容の関連性 | ・大学や専門学校での専攻と従事予定の業務が関連していること ・実務経験がある場合は、その経験と新しい業務が結びついていること ・留学生の場合は、学業成績や出席率も重要な判断材料 |
企業の経営状態と雇用条件 | ・安定した経営基盤があり、継続的な雇用が見込めること ・日本人と同等以上の給与水準が確保されていること ・社会保険への加入など、適切な雇用環境が整備されていること |
業務の専門性と必要性 | ・単純作業ではなく、専門知識やスキルを要する業務であること ・その外国人材を雇用する具体的な必要性があること ・人材の能力と業務内容が合致していること |
以上のポイントは相互に関連しており、いずれか一つでも要件を満たさない場合、不許可となる可能性が高くなります。申請時には、それぞれの要件を十分に立証できる資料の準備が重要です。
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まとめ
技術・人文知識・国際業務の在留資格は、専門的な知識やスキルを持つ外国人材の受け入れに適した就労ビザです。2014年の法改正により、理系職種の「技術」と文系職種の「人文知識・国際業務」が統合され、より柔軟な人材活用が可能となりました。
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