「外国人材を正社員として採用したい」「優秀な人材に長く働いてほしい」こんな課題をお持ちの飲食店経営者の方は多いのではないでしょうか?外食業界の人手不足は深刻な状況が続いており、2024年10月時点の有効求人倍率は、全産業平均の1.16倍に対して、飲食業では2.83倍と高い水準にあります。
そこで注目を集めているのが「特定技能」という在留資格制度です。特定技能「外食」では、レストランでの調理からホールでの接客まで、幅広い業務に従事できます。さらに、2023年からは在留期間に制限のない「特定技能2号」の対象分野にも加わり、より長期的な人材確保が可能になりました。
今回は、特定技能「外食」の概要から、採用の具体的な手順まで、実務に即した情報をわかりやすく解説します。外国人材の採用をお考えの企業様は、ぜひご参考にしてください。
特定技能「外食」とは
深刻な人手不足に直面する外食業界で注目を集めているのが、特定技能「外食」です。レストランでの調理からホールでの接客まで、即戦力として幅広い業務に従事できる在留資格として、飲食店経営者から高い関心が寄せられています。
「外食」は全16分野ある特定技能制度の一つです。ここでは、その性質や仕組みについて、具体的な内容を解説します。
特定技能「外食」は在留資格の一つ
特定技能「外食」は、2019年4月に新設された在留資格で、日本で働く外国人材に認められる特定技能ビザの一種です。制度開始当初は「特定技能1号」のみでしたが、2023年6月に「特定技能2号」の対象分野にも追加が閣議決定され、より長期的な人材確保が可能になりました。
「特定技能1号」と「特定技能2号」には大きな違いがあります。特定技能1号では、通算5年という在留期限が設けられています。一方、特定技能2号は在留期間の更新回数に制限がなく、永住権の取得も視野に入れることができます。
さらに、特定技能2号では配偶者や子どもの帯同も認められているため、より腰を据えて日本で働くことが可能です。
ただし、特定技能2号を取得するには、特定技能1号として働きながら複数のアルバイト従業員や特定技能外国人等を指導・監督し、店舗管理を補助する者(副店長、サブマネージャー等)として2年間の実務経験が必要です。そのため、外食業界のキャリアを着実に積み重ねたい外国人材にとって、大きな目標となっています。
外食業界における人手不足の現状
外食業界の人手不足は深刻な局面を迎えています。厚生労働省の発表によると、2024年10月時点での有効求人倍率は飲食物調理従事者が2.83倍、接客・給仕職業従事者は2.90倍と、全産業平均の1.16倍を大きく上回る状況が続いています。
この背景には、コロナ禍による大きな変化にあります。オンライン授業の増加により学生が自宅から外出することができず、アルバイトの確保が難しくなっていました。また、休業要請などを経験した従業員の多くが、より安定した他業界へと活躍の場を移したことも要因の一つです。
さらに、インバウンド需要の回復や外食需要の高まりによって客足は戻りつつあるものの、人材確保が追いついていないのが現状です。このままでは店舗の営業時間短縮や閉店を迫られるケースも増えかねず、業界全体の大きな課題となっています。
参照元:参考統計表表7-1(厚生労働省)
特定技能「外食」で外国人材を採用するメリット
特定技能「外食」での外国人材の採用には、飲食店にとって大きなメリットがあります。
メリット | 詳細 |
---|---|
安定して人材を確保できる | ・フルタイムでの勤務が可能※ ・特定技能2号へ移行することで、長期雇用も可能 ・技能と経験を持つ従業員が定着する |
インバウンド需要に向けて対応力を向上できる | ・多言語でのコミュニケーションが可能 ・海外からの観光客に対するサービスを向上可能 ・文化的な理解に基づく接客が可能 |
職場を活性化できる | ・多様な文化的背景による新しい視点を取り入れられる ・職場の国際化を促進できる ・新しいアイデアを創出できる |
※特定技能外国人受入れに関する運用要領(出入国在留管理庁)を参照
これらのメリットを活かすことで、飲食店の経営力強化と、サービスや品質の向上につなげられるでしょう。
特定技能「外食」の業務内容
特定技能「外食」の在留資格を持つ外国人材は、飲食店での幅広い業務に携わることができます。しかし、特定の業務のみに専従させるのではなく、雇用期間の中で飲食店での幅広い業務に従事させる必要があります。また接待行為も禁止されています。
ここでは、特定技能「外食」でどのような仕事が可能なのか、具体的な業務内容について解説します。
※参照元:外食業分野における特定技能外国人制度について(農林水産省)
従事できる業務
特定技能「外食」では、外食業に関わる幅広い業務を担当することができます。主な業務は次の3分野です。
分野 | 業務 |
---|---|
キッチン業務 | ・食材の仕込みや下処理 ・料理の調理、盛り付け ・在庫管理、発注業務 ・厨房の衛生管理 |
ホール業務 | ・お客様の案内、接客 ・オーダー取り ・料理の提供、配膳 ・レジ業務、会計対応 |
店舗運営業務 | ・店舗の清掃、準備 ・スタッフのシフト管理 ・売上管理、営業管理 ・原材料の仕入れ |
また、業態によって可能な業務もあります。
- ホテルレストランでの調理、配膳
- テイクアウト専門店での調理、接客
- デリバリー業務(調理や接客と組み合わせる場合)
ただし、デリバリーのみの業務は認められていません。必ず調理や接客などの基本業務と組み合わせる必要があります。また、以上の業務は日本人スタッフと同等の条件で行うことが求められます。
従事できない業務
特定技能「外食」では、従事できない業務が明確に定められています。特に注意しなければならないのが、風俗営業法で規定される接待を伴う飲食店での就労禁止です。
具体的には、次の業務に従事できません。
項目 | 業務 |
---|---|
接待を伴う業務 | ・キャバクラやホストクラブでの接客 ・スナックやバーでのお酒を注ぐ行為 ・歓楽的な雰囲気でのもてなし行為 |
調理や接客以外の単独業務 | ・皿洗いのみの作業 ・清掃だけの業務 ・デリバリーのみの配達 |
たとえば、一般的な飲食店であっても、お酒を注ぐなどの接待的な要素がある場合は、その行為自体が禁止されています。なぜなら、外食業の本来の目的である「調理」と「接客」を中心とした業務に従事することが求められるためです。
特定技能2号では指導的立場が期待される
特定技能1号では外食業務全般を基礎的な所から担当しますが、特定技能2号では指導的立場で働くことが期待されます。
区分 | 主な業務内容 |
---|---|
特定技能1号 | ・基本的な調理作業 ・一般的な接客対応 ・通常の店舗運営業務 ・デリバリーや配膳作業 |
特定技能2号 | ・複数のスタッフの指導・監督 ・店舗の収支管理 ・メニュー開発 ・店舗運営の補佐業務 |
先ほども触れたように、特定技能2号を取得するには、副店長やサブマネージャーとしての2年間の実務経験が必要です。
具体的には、アルバイトスタッフや1号の特定技能外国人の指導を行いながら、接客を含む作業に従事し、店舗管理を補佐する立場として働くことが求められます。そのため、特定技能2号では基本業務に加えて、シフト管理や売上管理など、マネジメント業務にも携わることも期待されます。
特定技能「外食」の受入企業側の要件
特定技能「外食」で外国人材を受け入れる企業は、次の4つの基準を満たすことが求められます。
項目 | 要件 |
---|---|
適切な雇用契約の締結 | ・給与水準が日本人と同等以上 ・週30時間以上のフルタイム勤務 ・社会保険への加入 ・有給休暇の付与 |
法令遵守の体制 | ・過去5年以内に出入国管理法違反がないこと ・過去5年以内に労働関連法令違反がないこと ・所定の税金を適切に納付していること ・経営の安定性が確保されていること |
外国人材への支援体制 | ・生活オリエンテーションの実施 ・日本語学習の機会提供 ・医療機関の受診支援 ・相談・苦情への対応体制 ・支援責任者と支援担当者の選任 |
食品産業特定技能協議会への加入 | ・協議会への事前加入が必要 ・加入後は、必要な協力を行わなければならない |
以上の要件は、外国人材が安心して働ける環境を整備し、適切な受け入れを実現するために設けられています。一つでも基準を満たせない場合は、特定技能での採用は認められません。企業は事前に十分な準備を行い、継続的に要件を満たしましょう。
※参照元
特定技能「外食」の採用手順6ステップ
特定技能「外食」での採用においては、国内在住の外国人材を雇用する場合と、海外から新たに受け入れる場合があります。特に海外からの採用では、人材募集から実際の入国・配属まで、複数のステップを着実に進めていく必要があります。
ここでは、海外在住の外国人材を新たに受け入れる場合を例に、採用の具体的な手順を6つのステップに分けて詳しく解説します。
- 人材募集・面接を行う
- 雇用契約を結ぶ
- 支援計画を作成する
- 在留資格認定証明書交付申請する
- ビザを申請する
- 入国・配属を行う
参照元
1.人材募集・面接を行う
特定技能外国人の採用では、主に2つの方法で人材募集を行います。
- 登録支援機関や外国人材紹介会社を通じた募集:国内の専門機関は、現地の送り出し機関と連携しており、条件に合った人材を効率的に見つけられます。
- SNSなどを活用した直接募集:特に海外では求職者がSNSを活用する傾向が強いため、現地語での求人情報の発信が効果的です。
面接はオンラインで実施されることが多いため、時差を考慮した日程調整が重要です。人材募集のポイントは、すでに技能試験に合格している人材だけでなく、これから試験を受ける意欲のある候補者も含めて選考することです。
採用の成功率を高めるために、面接では具体的な業務内容や勤務条件に加え、寮や住居のサポート体制についても丁寧に説明することが大切です。
2.雇用契約を結ぶ
採用面接を経て内定が決まったら、特定技能雇用契約の締結を行います。労働関係法令の遵守に加え、特定技能雇用契約に関する独自の基準も満たす必要があります。
主な確認事項は、次のとおりです。
給与・待遇面
- 日本人と同等以上の給与水準
- 各種手当や賞与の支給条件
- 社会保険の加入
就業条件
- 具体的な業務内容と就業場所
- 勤務時間と休日の取得
- 契約期間と更新条件
特に重要なのは、すべての契約内容を外国人材が理解できる言語で作成することです。国によって必要な手続きが異なる場合もあるため、出身国の規定も確認しましょう。
また、契約締結後は事前ガイダンスと健康診断を実施します。
以上は入国管理局への申請前に完了させる必要があるため、計画的に進めることが大切です。
3.支援計画を作成する
特定技能1号の外国人材を受け入れる際は、「1号特定技能外国人支援計画」の作成が必要です。この計画は外国人材が円滑に日本での生活と仕事に適応できるよう、具体的な支援内容を定めるものです。
支援計画には、次の10項目を必ず含める必要があります。
- 事前ガイダンスの実施
- 出入国時の送迎対応
- 住居確保・生活契約支援
- 生活オリエンテーション
- 各種行政手続きの同行
- 日本語学習機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援(必要な場合)
- 定期的な面談の実施
支援計画の実施方法として、自社で行うか登録支援機関に委託するかを選択できます。自社で行う場合は、支援責任者と担当者を設置し、適切な体制を整えましょう。委託する場合は、支援計画の全部または一部を登録支援機関に任せることができます。
なお、支援計画は入国管理局への申請時に提出が必要で、変更があった場合も届け出る必要があります。
参照元:1号特定技能外国人支援計画の作成(出入国在留管理庁)
4.在留資格認定証明書交付申請をする
支援計画が完成したら、在留資格認定証明書交付申請を行います。申請方法は、外国人材が海外在住の場合、企業が在留資格認定証明書の交付申請を代理で行います。
主に必要書類は、次のとおりです。(長岡注として、必要な書類を過不足なく挙げることはこのタイプの情報サイトでは不可能なので、入管等のウェブサイト参照を勧める方法が良いと思います。)
申請者に関する書類
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 技能試験の合格証明書
- 日本語能力試験(JLPT)の合格証明書(N4以上)
- 健康診断個人票
企業に関する書類
- 特定技能雇用契約書
- 特定技能外国人支援計画書
- 企業の登記事項証明書
- 決算書類(損益計算書・貸借対照表)
- 協議会の構成員証明書(2024年6月15日以降必須)
- 営業許可証または届出書の写し
他にも必要となる書類はありますが、最新の情報は入管のウェブサイトで確認するようにしましょう。
なお、一定の条件を満たす企業は、オンラインでの申請も可能です。オンライン申請の場合、書類のアップロードで手続きが完了するため、窓口での待ち時間を省くことができます。
5.ビザを申請する
在留資格認定証明書の交付を受けたら、企業は証明書を海外在住の外国人材に送付します。外国人材は受け取った証明書を持参し、母国の日本大使館へビザ申請に行きます。
申請に必要となる主な書類は、次のとおりです。(長岡注として、必要な書類はどの国にある日本領事館によって異なるので、現地の在外日本公館ウェブサイト参照を勧める方法が良いと思います。)
- 在留資格認定証明書(原本)
- パスポート
- 申請書(大使館所定の様式)
- 証明写真
在留資格認定証明書の有効期間は、発行から3ヶ月以内であることに注意が必要です。この期間内にビザ申請を完了し、さらに日本への入国も済ませる必要があります。そのため、各書類の郵送や申請のタイミングは、慎重に計画を立てることが大切です。
6.入国・配属を行う
ビザを取得した外国人材が入国したら、まずは円滑な就労と生活のための準備を整えます。最初に実施するのが次の事前ガイダンスです。
- 具体的な労働条件
- 実際の業務内容
- 職場でのルール
- 各種保険の説明
続いて、生活に関するオリエンテーションも実施します。
- 住居の使用方法
- 公共交通機関の利用方法
- 近隣施設の案内
- 災害時の避難経路
- 緊急連絡先の確認
以上の準備が整ってから、配属先での業務がスタートします。
ただし、これだけの手続きや準備を企業が独自で行うのは大きな負担となります。特に初めて特定技能外国人を受け入れる企業では、知識やノウハウが不足しがちです。
そこで、外国人材の採用から入国後のサポートまで、ワンストップで支援してくれる人材紹介会社を活用するのも一つの方法です。
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特定技能外国人の採用は、人材募集から入国後のサポートまで、数多くの手続きと準備が必要です。特に初めて受け入れる企業にとっては、これらの業務を自社だけで行うのは大きな負担となるでしょう。
明光グローバルは、外国人材の採用から入国後の支援まで、すべての工程をワンストップでサポートしています。最後に、明光グローバルの特徴とサービス内容を紹介します。
明光グローバルとは
明光グローバルは、40年以上の日本語教育実績を持つ明光ネットワークジャパングループの一員として、外国人材の採用と育成に特化したサービスを展開しています。主なサービス内容は次のとおりです。
事業 | サービス内容 |
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教育研修事業 | ・スマートフォン対応のeラーニング日本語教育 ・対面およびオンラインでの日本語レッスン ・外国人材向けの各種研修プログラム |
人材紹介事業 | ・特定技能人材の紹介 ・ITエンジニアの採用支援 ・定着支援とフォローアップ |
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明光グローバルの特定技能人材紹介
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支援 | 概要 |
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生活支援 | ・住居の手配、ライフラインの整備 ・銀行口座開設の補助 ・行政手続きの同行支援 ・定期的な面談によるフォローアップ |
教育支援 | ・外国人向けオンライン日本語学習ツール「Japany」の提供 ・業界別カスタマイズカリキュラム ・日本語能力測定と定期的な報告 ・ビジネスマナー、異文化理解研修の実施 |
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まとめ
特定技能「外食」は、深刻な人手不足に直面する飲食業界を支える重要な制度です。2019年の制度開始以来、レストランでの調理からホールでの接客まで、幅広い業務に外国人材が活躍しています。
2023年からは特定技能2号の対象分野にも加わり、さらなる可能性が広がりました。特定技能2号では在留期間の制限がなく、家族帯同も認められるため、長期的なキャリア形成が可能です。ただし、副店長やサブマネージャーとしての2年間の実務経験など、高度な要件をクリアする必要があります。
特定技能外国人の採用には、在留資格の申請から生活支援まで、多くの準備と手続きが必要です。明光グローバルは、明光グループの40年以上の教育実績を活かし、採用から定着までをワンストップでサポートいたします。外国人材の採用をお考えの企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。