宿泊業界の深刻な人手不足の解決策として注目されるのが、特定技能「宿泊」分野です。しかし、「制度が複雑でよく分わからない」「採用のメリットや注意点は?」などの不安をお持ちの企業様も多いのではないでしょうか?
今回は、特定技能「宿泊」分野の1号・2号の違いからメリット・デメリット、採用に必要な要件までを解説します。採用を成功させたいご担当者様は、ぜひ最後までご覧ください。
特定技能「宿泊」分野とは
特定技能「宿泊」分野は、深刻な人手不足に悩むホテルや旅館などが、即戦力となる外国人材を雇用するための在留資格制度です。ここでは、特定技能「宿泊」分野が求められる背景や、「特定技能1号」と「特定技能2号」の特徴について詳しく解説します。
特定技能「宿泊」分野が必要とされる背景
特定技能「宿泊」分野が必要とされている背景には、宿泊業界が抱える構造的な人手不足があります。下のグラフが示すように、宿泊業の欠員率は常に全産業平均を大きく上回って推移しています。

画像引用元:省力化投資促進プラン―宿泊業―(国土交通省観光庁・厚生労働省)
令和6年(2024年)の欠員率を表したデータによると、全産業の2.9%に対して宿泊業は4.4%に達しており、人手不足が一時的なものではないことがおわかりいただけるでしょう。
また、コロナ禍後の急速なインバウンド需要の回復によってさらに加速しており、多くのホテルや旅館でサービスの質を維持することさえ困難な状況です。このような状況を打開し、日本の観光産業の持続的な成長を支えるために、専門的なスキルを持つ外国人材の受け入れを促進する特定技能制度が必要とされています。
「宿泊」分野における特定技能1号の特徴
1号特定技能外国人は、宿泊業において一定の知識と経験を持ち、即戦力として活躍できる外国人材を対象とした在留資格です。この在留資格の主な特徴は次のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
対象者 | 宿泊分野において、相当程度の知識または経験を持つ外国人材 |
求められる能力 | 就労開始前の育成・訓練なしで、即戦力として一定水準の業務を遂行できる |
在留期間 | 通算上限5年 (1年、6ヶ月または4ヶ月ごとの更新) |
家族帯同 | 原則不可 |
仕事内容 | 宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供に従事する業務 ・フロント業務 ・企画・広報業務 ・接客業務 ・レストランサービス業務 |
1号特定技能外国人は、現時点で人手不足に陥っている企業に適した区分といえるでしょう。
参照元:
「宿泊」分野における特定技能2号の特徴
2号特定技能外国人は、1号の技能水準をさらに上回り、熟練した技能を持つリーダー候補の人材を対象とする在留資格です。この在留資格の主な特徴は次のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
対象者 | 宿泊分野において、熟練した技能を持つ外国人材 |
求められる能力 | 長年の実務経験等により身につけた熟達した技能を保有している |
在留期間 | 上限なし (3年、1年または6ヶ月ごとの更新) |
家族帯同 | 要件を満たせば可能(配偶者・子) |
仕事内容 | 複数の従業員を指導しながら、旅館やホテルにおけるフロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供業務 ・フロント業務 ・企画・広報業務 ・接客業務 ・レストランサービス業務 |
現場のリーダーとして将来の事業の中核を担う人材を確保し、企業の持続的な成長を目指す場合に有効なのが、2号特定技能外国人です。
参照元:
特定技能「宿泊」分野のメリット
特定技能外国人材の採用は、ただの人手不足の解消にとどまりません。インバウンドへの対応力の強化から組織の活性化まで、企業の成長を後押しする多くのメリットをもたらします。ここでは、宿泊分野に活かされる4つのメリットについて解説します。
- 外国人観光客へのサービス向上や事業拡大につながる
- 即戦力となる外国人材を確保し、採用後すぐに現場で活躍してもらえる
- 長期的に人材不足の改善が期待できる
- サービス品質の向上や職場の多様性が促進される
外国人観光客へのサービス向上や事業拡大につながる
外国人材の採用は、増え続ける海外からの外国人観光客への対応力を向上させます。彼らの語学力を活かせば、多言語での施設案内や急なトラブル対応もスムーズに行えます。その結果、各国の文化を理解した上での接客が可能になり、顧客満足度にも直結する、質の高いおもてなしを実現できるでしょう。
さらに、外国人ならではの視点は、新しい宿泊プランの企画や、母国語でのSNS発信にも活かせます。これまでアピールが難しかった海外の顧客に直接魅力を届け、新たなファンを獲得するチャンスにもつながります。
即戦力となる外国人材を確保し、採用後すぐに現場で活躍してもらえる
特定技能外国人材は、採用後すぐに現場での活躍が期待できる即戦力人材です。なぜなら、来日する前に宿泊業の専門的な技能試験と、業務に必要な日本語試験の両方に合格しているからです。そのため、採用した時点でフロント業務や接客の基礎知識とスキルは、すでに身についている状態にあります。
したがって、企業側はゼロから全てを教える必要がないので、新人研修にかかる時間やコストを大幅に削減でき、現場の教育担当者の負担も軽減できます。人手が足りない今、すぐに現場の戦力として活躍してくれる点は、何よりの魅力といえるでしょう。
長期的に人材不足の改善が期待できる
特定技能制度は、短期的な人員補充で終わらない点も大きなメリットです。特定技能1号では最長5年間、安定して働いてもらえます。さらに、現場で経験を積み、熟練したスキルを身につけた人材は「特定技能2号」へ移行することも可能です。
特定技能2号になれば在留期間の上限がなくなり、家族と一緒に日本で暮らすことができる場合もあります。優秀な人材に「この会社でずっと働きたい」と思ってもらえる環境を整えることで、腰を据えて長く活躍してもらえるでしょう。
制度を上手く活用できれば、慢性的な人手不足に悩む宿泊業界であっても、未来を見据えた計画的な人材確保が行えます。
サービス品質の向上や職場の多様性が促進される
海外から来た新しい仲間が加わることで、職場に新しい風を吹き込み、予想以上の相乗効果を生み出します。たとえば、次のようなポジティブな変化が期待できます。
- 職場全体が活性化する:一生懸命日本語や仕事を覚えようとするひたむきな姿は、周りの日本人スタッフにとって「自分たちも頑張らないと」という良い刺激になる。
- 新しいアイデアが生まれる:日本人だけでは思いつかなかった業務改善のアイデアや、「私の国ではこんなサービスが人気です」などの新しいサービスのヒントが生まれることもある。
- 組織力が向上する:多様な背景を持つ人材が一緒に働くことで生まれる活気やアイデアは、従業員一人ひとりの成長を促し、結果として会社全体の組織力が向上する。
このように、外国人材の受け入れは労働力を確保することだけがメリットではなく、組織全体を強くするきっかけにもなります。
特定技能「宿泊」分野のデメリット
特定技能「宿泊」で外国人材を雇用する場合、デメリットを事前に知っておくことも重要です。採用後に「こんなはずではなかった」と後悔しないためにも、これから解説するデメリットを把握し、対策を検討しましょう。
- 受け入れ体制の整備が企業側に求められる
- 文化や言語の違いによるミスコミュニケーションには注意が必要になる
- 受け入れ企業側に管理コストが発生する
- 特定技能1号の場合、在留期間が最大5年と制限がある
受け入れ体制の整備が企業側に求められる
特定技能材国人材を受け入れるには、日本人を雇用する場合とは異なる準備が必要になります。特に1号特定技能外国人に対しては、住居探しの手伝いや公的な手続きへの同行など、法律で定められた10項目の支援が義務付けられています。
さらに、次のような環境づくりも大切です。
- 簡単な日本語や母国語でのマニュアル作り
- 困ったときに気軽に相談できる窓口を設置する
外国人材が安心して日本での生活をスタートできるような取り組みが重要です。ただし、受け入れ準備は相応の時間と手間がかかることを事前に理解しておくことが重要でしょう。
文化や言語の違いによるミスコミュニケーションには注意が必要になる
文化や言葉の違いは、私たちが思っている以上に大きな壁になることがあります。たとえば、次のようなミスコミュニケーションが起こりやすいため注意が必要です。
- 言葉のニュアンスの違い:1号特定技能外国人は日常会話ができる程度なので、複雑な業務指示やお客様に対する丁寧な言葉遣いの細かいニュアンスまでは、なかなか伝わりにくい場合がある。
- ビジネス文化の違い:時間を守ることへの考え方や、日本ならではの「報・連・相」などのビジネス習慣の違いから、すれ違いが生まれることがある。
トラブルを未然に防ぐには、「言わなくてもわかるだろう」という思い込みをなくし、普段から丁寧なコミュニケーションを心がけることが重要です。
受け入れ企業側に管理コストが発生する
外国人材を採用する場合、日本人を雇用するときにはかからない特有の費用が発生します。発生する可能性のある主な費用は次のとおりです。
- 在留資格申請の代行費用
- 支援業務を依頼する「登録支援機関」への委託料
これらのコストは、採用してから「想定外の出費だった」とならないよう、あらかじめ採用計画の予算に組み込んでおくことが大切です。
特定技能1号の場合、在留期間が最大5年と制限がある
特定技能1号で働く外国人材には、合計で最大5年までしか日本にいられないというルールがあります。ようやく仕事を一人で任せられるようになったスタッフが、5年経過したら原則として母国に帰らなければならないというものです。
ただし、より熟練した技能を持つ「特定技能2号」に移行できれば、永続的に就労できる可能性もあります。そのためには、難しい試験に合格しなくてはならないため、誰もが容易に移行できるわけではありません。外国人材を長く雇用したい場合は、長期的な人材計画を立てることも必要です。
特定技能「宿泊」分野の取得要件
特定技能の在留資格は、誰でも簡単に取得できるわけではありません。外国人材が「宿泊」分野で働くには、国が定めた技能や日本語能力の要件を満たす必要があります。ここでは「特定技能1号」と「特定技能2号」それぞれの取得要件について解説します。
参照元:
特定技能1号の取得要件
特定技能1号の在留資格を取得するには、専門スキルと日本語能力の両方を証明しなければなりません。具体的には、次の2つの試験に合格する必要があります。
- 宿泊分野特定技能1号評価試験
- 国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験(N4以上)
宿泊分野特定技能1号評価試験
「宿泊」分野で特定技能1号を取得するには、専門知識とスキルがあることを証明する「宿泊分野特定技能1号評価試験」への合格が必須です。この試験では、次のような宿泊業務全般に関する知識と技能が問われます。
- フロント業務、接客、企画・広報、レストランサービスなどの実務知識
- 安全衛生に関する基礎知識
ただし、宿泊分野に関連する「技能実習2号」を良好な成績で修了している場合は、技能試験が免除される特例もあります。
国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験(N4以上)
お客様と従業員とのコミュニケーションに欠かせない、日本語能力も証明する必要があります。日本語能力を証明するには、次のいずれかの試験に合格しなければなりません。
- 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)
- 日本語能力試験(JLPT)で「N4」以上
どちらの試験も、基本的な日本語を理解していて、日常的な場面でゆっくり話される会話であれば、内容をほぼ理解できるレベルです。また、宿泊分野特定技能1号評価試験と同様に、「技能実習2号」を良好な成績で修了している場合は、日本語試験が免除されます。
特定技能2号の取得要件
特定技能2号の在留資格を取得するには、合格が必須となる「技能試験」と「実務経験」をクリアする必要があります。
- 宿泊分野特定技能2号評価試験
- 一定の実務経験
宿泊分野特定技能2号評価試験
「宿泊」分野で特定技能2号を取得するには、1号よりも難易度の高い「宿泊分野特定技能2号評価試験」に合格することが必須です。この試験では、基本的な業務知識に加え、次のような管理者としての能力が問われます。
- 複数の従業員を指導・監督する管理能力
- 複雑な状況に対応できる応用力
合格率は特定技能1号よりも低く、宿泊業のプロフェッショナルとしての実力が試される試験といえるでしょう。
一定の実務経験
試験合格に加えて、管理者としての実務経験も証明する必要があります。求められる実務経験は次のとおりです。
- 経験年数:2年以上
- 業務内容:宿泊施設において、複数の従業員を指導しながらフロント、企画・広報、接客、レストランサービスなどの業務に従事した経験
作業を行うのに加えて、チームを管理・指導してきた実績が求められるため、現場のリーダーとして活躍できることの証明となります。
特定技能「宿泊」の外国人材を受け入れる企業に求められる要件
特定技能外国人を採用するには、外国人材側だけでなく、受け入れる企業側にも満たすべき要件があります。また、法令遵守は当たり前に行っている上で、外国人材が安心して働ける環境を整えることが大前提です。ここでは、企業に求められる要件について解説します。
- 法令遵守と適切な労務管理が求められる
- 外国人材への支援体制の整備が求められる
参照元:
法令遵守と適切な労務管理が求められる
特定技能外国人材を受け入れる企業には、次の条件が課されています。
- 特定技能外国人が従事する業務内容を踏まえ、旅館・ホテル営業の形態とする
- 国土交通省が設置する「宿泊分野特定技能協議会」の構成員になる
- 「宿泊分野特定技能協議会」に対して必要な協力を行う
- 国土交通省又はその委託を受けた者が行う調査又は指導に対し、必要な協力を行う
- 登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託する場合、2~4の条件を全て満たす登録支援機関に委託する
- 特定技能外国人からの求めに応じ、実務経験を証明する書面を交付する
上記の制度上のルールに加え、労働条件に関する基本的な法令遵守も当然求められます。宿泊業特有の注意点として、風俗営業法に該当する施設での就労や、同法が定める「接待」行為をさせることはできません。
※風俗営業法第2条第6項第4号に規定する「施設」である、レンタルルーム、モーテル、ラブホテルではないこと
※風俗営業法第2条第3項に規定する「接待」である、客の隣に座って会話をしたり、一緒に飲食をしたりする行為や身体的接触を行わせないこと
法令順守や労務管理は、細かく設定されているため、運用要綱を正しく理解した上で外国人材を採用しましょう。
外国人材への支援体制の整備が求められる
外国人材が日本での生活や仕事にスムーズに適応できるよう、手厚い支援体制を整えることも企業の重要な義務です。具体的には、次のような支援を実施します。
- 特定技能1号の場合、生活支援や相談対応などの支援計画を策定・実施する
- 日本語学習や生活習慣への適応をサポートする
- 外国人材が安心して働ける職場環境を整備する
これらの支援を自社で行うのが難しい場合は、国から認可を受けた「登録支援機関」に支援業務を委託することも可能です。
外国人材の労務管理や複雑な支援体制作りでお悩みの際は、無理せず専門家の力を借りるのがおすすめです。次の章では、採用から定着まで一貫してサポートしてくれる専門機関「明光グローバル」について紹介します。
特定技能「宿泊」分野の採用にお困りなら明光グローバルがおすすめ
特定技能制度は、宿泊業の人手不足解消に有効ですが、法令遵守や支援体制の構築など、企業側の負担は決して小さくありません。明光グローバルでは、採用支援や入社後のサポート、能力開発などのサービスを提供しています。最後に、明光グローバルのサービスについて詳しく解説します。
明光グローバルとは
明光グローバルは、外国人材の就労機会の創出と育成を通して、日本企業の持続的な成長をサポートする教育系人材サービスです。
40年以上の個別指導の教育実績、そして10年以上の日本語教育の実績を持つ明光ネットワークジャパングループの知見を活かし、外国人材の育成と企業の人材課題解決に特化したサービスを提供しています。
JCLIや早稲田EDU日本語学校での豊富な教育ノウハウを活かし、特定技能試験対策から業界別の専門教育まで、幅広いニーズに対応しています。外務省からEPA事業を4期連続で受託するなど、高い信頼性と実績を誇ります。
明光グローバルの主要サービス
事業 | サービス |
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教育研修事業 | ・eラーニングによる日本語教育(スマホアプリに対応) ・対面/オンラインによる日本語レッスン ・外国籍人材と日本人に向けた各種研修プログラム ・外国籍人材に向けた各種試験対策講座 |
人材紹介事業 | ・特定技能人材の紹介 ・外国籍エンジニアの人材紹介 ・教育伴走型の登録支援サービス |
特定技能人材やエンジニアの紹介から、外国人社員向けの教育・研修サービスまで、幅広いノウハウを提供しています。単なる日本語教育にとどまらず、企業での実践力を重視した総合的な人材育成を行っています。
明光グローバルの特定技能人材紹介サービス
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明光グローバルの特定技能人材紹介事業の概要
サポート内容 | 概要 |
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効果的な定着支援と能力開発 | ・定期的な面談によるフォロー ・母国語による相談窓口の設置 ・独自開発の外国人向けオンライン日本語学習ツール「Japany」による日本語学習 |
明光グローバルは人材を見つけるだけで終わりではありません。採用・教育のプロとして、外国人材が成長していけるように、長期的な視点でサポートします。
手続きや支援体制の構築が負担になっている企業様は、ぜひ明光グローバルまでご相談ください。
まとめ
特定技能「宿泊」分野は、深刻な人手不足に直面する宿泊業界にとって、即戦力となる外国人材を確保するための有効な制度です。この制度には、現場の中核を担う「特定技能1号」と、熟練した技能を持つリーダー候補の「特定技能2号」があります。
外国人材の採用は、インバウンドへの対応力の強化や組織の活性化など、多くのメリットをもたらします。一方で企業側には、法令遵守や手厚い支援体制の構築など、大きな負担がかかります。
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