【特定技能評価試験】合格に必要な日本語学習(外食業)

日本国内で人手不足が進む業界において、人材の確保を目的として創設された特定技能の在留資格。最近では特定技能2号の分野拡大が話題になっていますね。

その中でも、特定技能「外食業」は、レストランやラーメン屋などのホール業務や調理スタッフなどの飲食業関連業務が可能なことで注目されています。特に外食業では、現在雇用されている外国人の半分以上が留学生アルバイトであり、業務内容や時間数に制限があることで、人材不足の改善が難しい状況にあります。そのため、近年外食業における特定技能外国人材の活用が進んでいます。

では今回は、外国人が特定技能「外食業」の在留資格を取得するためには、どのような学習が必要なのかを解説していきたいと思います。

特定技能「外食業」の試験概要

出入国在留管理庁に在留資格「特定技能」を申請するためには、外食業の場合は以下の2つの水準に達する必要があります。

  1. 技能水準・・・外食特定技能1号試験に合格
  2. 日本語能力水準・・・日本語基礎テスト(JFT-Basic)または日本語能力試験(JLPT)に合格

合格基準

  1. 技能水準・・・65%以上
  2. 日本語能力水準・・・JFT-Basicの場合A2以上、JLPTの場合はN4以上

外食特定技能1号試験について

外食特定技能1号試験は、一般社団法人外国人職人産業技能評価機構(以下OTAFF)により実施されます。

試験概要

実施場所:国内外で試験が実施されています。
2023年7月6日時点での国外実施国は、ネパール、ミャンマー、インドネシア、フィリピン、スリランカ、タイ、カンボジアの7カ国です。なお、試験問題や試験時間、合格基準などは全て国内試験と同様です。
試験科目:学科試験と実技試験
試験時間:80分
実施方法:ペーパーテスト方式(マークシート)
試験言語:試験問題は全て日本語で行われ、漢字にはルビがついています。

学科試験について

学科試験では、衛生管理、飲食物調理、接客全般の3つの分野に分かれています。

一般社団法人外国人食品産業技能評価機構ウェブサイト「外食業特定技能1号技能測定試験国内試験案内」参照


実技試験について

実技試験は、図やイラストを見て正しい行動が取れるかを測る「判断試験」、計算式を使って作業の計画となる技能水準を作成できるかを測る「計画立案」の2つで構成されます。

一般社団法人外国人食品産業技能評価機構ウェブサイト「外食業特定技能1号技能測定試験国内試験案内」参照

試験問題例

試験に備えて過去問を入手したいところですが、外食業の試験の過去問は残念ながら公開されていません。その代わり、農林水産省が外食業の学科試験のサンプルを公開しているので、どんな問題が出題されるのか見ていきましょう。

【衛生管理】

  1. 次の中で、野菜を消毒するときに使うものはどれですか。正しいものを一つ選びなさい。
    1 農薬
    2 液体石鹸
    3 次亜塩素酸ナトリウム

    答え:3

  2. 次の中で、サルモネラ属菌に汚染されている可能性が高いものはどれですか。正しいものを一つ選びなさい。
    1 米
    2 鶏肉
    3 魚介類

    答え:2

いかがでしょうか。実際には漢字にふりがながついていますが、それでも難しい専門用語が出てきていますね。
例えば、日本語能力試験N4レベルであれば、「米」や「肉」「魚」などの語彙は網羅しているはずですが、「魚介類」は水産動物の総称になるので、勉強して語彙を覚えたり、もしくは「魚」という漢字から推測したりする能力が求められます。

【飲食物調理】

  1. 次の中で、野菜はどれですか。正しいものを一つ選びなさい。
    1 なし
    2 イワシ
    3 にんじん

    答え:3

    2. 包丁で怪我をしないための行動について、正しいものを一つ選びなさい。
    1 包丁を持って移動するときは、まわりの人に声をかけながら移動します。
    2 包丁を使用しているときには、手元ではなく、常にまわりの人の動きを注視します。
    3 使用した包丁は、いつでもすぐに使えるようにするため、作業台に置いたままにします。

    答え:1

「なし」や「イワシ」などは、基礎的な日本語学習のみでは知る機会がなかなかないのではないでしょうか。この場合、「にんじん」を知っていれば正解できる問題ではありますが、食品に関する幅広い語彙を知っておく必要があることがわかりますね。

また、2の問題では、文章が長くなっているので、制限時間内に問題を解くためにも、文を早く読む能力も重要になります。ここでも「手元」や「注視」、「作業台」など、日常生活ではなかなか出てこない言葉が見られます。調理場の中の名称を一通り覚えておく必要もありますね。

【接客全般】

  1. お客様が来店したときに使う接客用語はどれですか。正しいものを一つ選びなさい。
    1 おそれいります
    2 いらっしゃいませ
    3 かしこまりました

    答え:2
  2. お客様に提供した料理に虫が入っていました。まずは何をすべきですか。正しいものを一つ選びなさい。
    1 お客様にお詫びをします。
    2 お客様に自分で虫をとってもらうようにお願いします。
    3 料理に虫が入っても、料理は安心して食べられることをお客様に伝えます。

    答え:1

接客に関しては、アルバイトなどで実際に飲食店での接客経験があれば、難しい内容ではありません。特に1の接客用語に関しては、敬語の理解と共に、日本特有の接客用語を知っておけば正解ができる問題です。
また、2のようなとっさの対応を求められる問題に関しては、日本の文化的な背景も関連する場合があるので、その理由や背景も含めて理解するための学習が必要です。

合格に必要な日本語学習

以上の問題サンプルを改めて見てみると、意外と難しいと思いませんか。
特に、特定技能「外食業」申請のために求められる日本語能力がJLPTのN4以上であることから、N4レベルがあれば試験問題を理解できるのではと思われるはずです。
しかし、実際はJLPTでも出題されないような専門的な語彙や言い回しが多く含まれています。これは現場の経験だけで賄えるものでもないので、しっかりと試験対策をする必要があります。

一般社団法人日本フードサービス協会では、外食業技能測定試験の学習用テキストを公開しています。学科試験の衛生管理、飲食物調理、接客全般それぞれのテキストを、日本語以外の言語でも見ることができます。
まだまだこのような練習問題は他に出回っていないので、手に入るものの中でしっかりと対策する必要があります。
余裕があれば、学習用テキストで出てきた語彙から、関連用語を自ら調べて学ぶなどもいいですね。そこまで余裕がない場合は、まずはこの学習テキストを完璧に学ぶことを目標にすれば、試験対策に関しては心配する必要がないはずです。

まとめ

今回は特定技能「外食業」における試験問題について解説しました。JLPTのように過去問やテキストがないため、どのように学習すればいいか悩んでしまうかもしれません。しかし、今回紹介した学習用テキストなどを何度も繰り返し学習すれば問題ありません。語彙や知識を丸暗記するというより、実際に現場働く姿を想像し、行動の理由や背景知識を把握することで、よりスムーズに試験対策が行えるのではないでしょうか。