特定技能外国人への義務的支援 日本語学習の機会提供とは

特定技能所属機関である企業が特定技能外国人を受け入れる際には、特定技能外国人が安心して仕事や生活ができるように支援する必要があります。
支援項目は、法務省の「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」に記載されていて、受け入れ側はそれを把握し、しっかりと遂行する義務があります。

今回はその支援項目の一つである、「日本語学習の機会の提供」について詳しく説明していきます。

日本語学習の義務的支援と任意的支援

特定技能外国人が日本で働き、暮らしていく上で、日本語の学習は必要不可欠です。そこで、受け入れ側である企業が日本語学習の機会を提供することが求められています。

受け入れる企業に対して定められている支援には、2つの種類があります。必ず行うべき「義務的支援」と、行うことが望ましいとされている「任意的支援」です。任意的支援についても、※特定技能外国人支援計画に記載をした場合は、それを必ず遂行する義務があります。

※特定技能外国人支援計画とは
特定技能外国人を受け入れる際、受け入れ側である特定技能所属機関が、公私共にサポートをする「支援計画」を作成します。支援計画には、入国から就業までのサポートや、私生活のサポートについても記載することが義務付けられています。
ここで作成した支援計画は、在留資格の交付申請や、変更許可の際に出入国管理局に提出する必要があります。
また、自社でこの支援計画を実施できないと判断した場合は、「登録支援機関」に計画の一部または全てを委託することもできます。

日本語学習の義務的支援

義務的支援では、受け入れ側である特定技能所属機関が下記のいずれかの方法で日本語学習の機会を提供する必要があると定められています。

  1. 就労・生活する地域の日本語教室や日本語教育機関に関する入学案内の情報を提供し、必要に応じて1号特定技能外国人に同行して入学の手続の補助を行うこと 
  2. 自主学習のための日本語学習教材やオンラインの日本語講座に関する情報を提供し、必要に応じて日本語学習教材の入手やオンラインの日本語講座の利用契約手続の補助を行うこと 
  3. 1号特定技能外国人との合意の下、特定技能所属機関等が日本語教師と契約して、当該外国人に日本語の講習の機会を提供すること

つまり、①外部の日本語教室 ②独学 ③社内での日本語レッスン
のいずれかの情報提供に加え、必要に応じて問い合わせや契約などの手続きをサポートすることが義務として含まれています。

注意点として、日本語教室の入学や手続きなどに発生する費用は特定技能所属機関が負担する必要があります。しかし、実際の受講料は特定技能所属機関が負担をしなければいけないという決まりはありません。

福利厚生として、特定技能所属機関が日本語レッスンの受講料を負担する場合もありますが、もし特定技能外国人個人が費用を負担する場合であっても、過度な学習費用が発生しないように気をつける必要があります。

また、日本語学習の機会を提供する際には、以下についてよく検討し、決定することを強くお勧めします。

  1. 学習者に合った学習形態の選定
  2. 学習者に合ったレベル・内容のレッスンの選定

1. については、以下のようないくつかの日本語レッスンの形態を比較し、対象の特定技能外国人に合った形態を選定する必要があります。

  • マンツーマンのレッスン or 集団レッスン
  • オンラインレッスン or 対面レッスン

集団レッスンはマンツーマンレッスンに比べて費用が抑えられるのが一般的ですが、レベルが合わない学習者と同時にレッスンを受けてしまうと、期待通りの効果が感じられない場合もあります。また、発話の機会も減ってしまい、なかなか日本語が伸びないといったケースもあります。

一方で、集団レッスンでは同じく日本語を学ぶ仲間がいるため、モチベーションを保ちやすいといった場合もあります。

また、オンラインレッスンと対面レッスンでは、通学の手間などの観点から考えることもいいでしょう。日本語学習には継続が不可欠なので、仕事終わりに気軽に受講できるオンラインレッスンを好まれる学習者も多くいます。

その一方で、実際に会って対話をするほうがよりコミュニケーションがスムーズに行えるため、語学学習では対面のほうが効果的だといった意見もあります

このように、様々な学習形態が存在し、それによって学習効果が大きく変わる場合もあります。実際に対象の学習者の特性や好みなどを踏まえて、よく検討することをおすすめします。

2. に関しては、まずはその学習者の日本語レベルを正しく判断し、そのレベルに見合ったレッスンを提供することが重要です。カウンセリングとしてレベルチェックなどを実施してくれる日本語教室やレッスンサービスも多く存在するので、それらをうまく利用するといいかもしれません。

また、一概に「日本語レッスン」と言っても内容は様々で、ビジネス日本語やJLPT、会話などがあります。ビジネス日本語にも様々な種類があり、営業など外回りで使う日本語をメインに取り上げる場合も多いです。

まず、実際に学習者はどんな場面で日本語が必要なのか、最も伸ばすべき日本語の技能はどれか、などを考えることが重要です。そして、そのニーズに見合った「使える日本語」のレッスンを提供してくれる学習機関を探す必要があります。

日本語学習の任意的支援

次に、行うことが望ましいとされている任意的支援は以下の通りになります。

  1. 支援責任者又は支援担当者その他職員による1号特定技能外国人への日本語指導・講習の積極的な企画・運営を行うこと
  2. 1号特定技能外国人の自主的な日本語の学習を促すため、日本語能力に係る試験の受験支援や資格取得者への優遇措置を講じること 
  3. 日本語学習を実施する場合において、特定技能所属機関等の判断により、日本語教室や日本語教育機関の入学金や月謝等の経費、日本語学習教材費、日本語教師との契約料等諸経費の全部又は一部を当該機関自ら負担する補助等の学習のための経済的支援を行うこと

つまり、

①特定技能所属機関の職員による日本語指導 
②JLPTなどの日本語試験の受験サポート 
③日本語学習に関わる費用のサポート

です。

もちろんこれらは任意になりますが、長期的に働いてもらうためには、このようなサポートを積極的に行うのが好ましいです。

例えば、JLPTの受験費用の負担、外部の日本語教室の月謝の一部負担などが挙げられます。特にJLPTは年に2回行われ、外国人にとって自身の日本語能力を測る大事な機会でもあります。日々の日本語学習のモチベーション維持のためにも、JLPTの受講を積極的にサポートすることをおすすめします。

他にも、最近では気軽に日本語を学べる動画教材などが多くあります。
弊社のオリジナル動画教材「Japany」では、プロの日本語講師による日本語レッスン動画を視聴することができます。まずはこのような、時間や場所を選ばない動画教材から始めることもおすすめです。

特定技能外国人にとって、外国である日本で働く上でまず壁となるのは、日本語です。日本に住んでいるからと言って、日本語が自然に上達することは非常に難しいです。
学習者に合った適切な学習環境を提供することで、仕事の効率や精度が上がる可能性もあります。何より、彼らが日本でストレスなく過ごすためにも、まずこの日本語を身につけることが職場への定着の近道であり、避けては通れないことであると言えます。

参考:法務省「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」