特定技能ビザで外国人材を採用する【外食業】

2019年から特定技能ビザの運用が始まり、人手不足が深刻な業種での外国人人材受け入れが可能になりました。その業種の一つに「外食業」があります。人手不足で従業員の負担が増え、離職率も増えるという深刻な状況を抱える外食業界。特定技能人材に対する期待値は高まっています。

では、そんな「外食業」の特定技能人材を採用する際のポイントを詳しく見ていきましょう。

1.どんな業務ができる?

「外食業」の特定技能人材は、外食業に関わるさまざまな業務を行うことができます。

例えば、想定されるのは以下のような業務です。

(1)飲食物調理

客に提供する飲食料品の調理、調製、製造を行うもの

(例:食材仕込み、加熱調理、非加熱調理、調味、盛付け、飲食料品の調製など)

(2)接客

客に飲食料品を提供するために必要な飲食物調理以外の業務を行うもの

(例:席への案内、注文伺い、配膳、下膳、代金受取り、商品の受け渡し、予約受付、客席のセッティング、苦情等への対応など) 

(3)店舗管理

店舗の運営に必要となる上記2業務以外のもの

(例:店舗内の衛生管理全般、従業員のシフト管理、求人・雇用に関する事務、従業員の指導・研修に関する事務、予約客情報・顧客情報の管理、レジ・券売機管理、 会計事務管理、各種機器・設備のメンテナンス、食材・消耗品・備品の補充、発注、検品又は数量管理、 メニューの企画・開発など)

かなり多いですね!これらは抜粋ですが、それでも幅広い業務が可能なことがわかります。

調理や接客のほか、従業員のシフト管理やメニューの開発などもできるんですね。

2.どんな場所で働ける?

では、「外食業」の特定技能人材はどのような場所で働けるのでしょうか。

(1)レストランや喫茶店

食堂、レストラン、喫茶店、料理店、ファーストフード店のような飲食サービス業

(2)持ち帰り専門店

テイクアウト専門店のように飲食スペースを持たない飲食サービス業

(3)配達飲食サービス

仕出し料理・弁当屋、宅配専門店、配食サービス事業所のように、客の注文に応じ、事業所内で調理した飲食料品を客の求める場所に届ける配達飲食サービス業

(4)ケータリングや給食

ケータリングサービス店、給食事業所のように客の求める場所において調理した飲食料品の提供を行う飲食サービス業

さらに、ホテル内のレストランや医療・福祉施設内の給食部門などの業務も可能です。

こちらも幅広いですね!外食業というと、レストランや喫茶店などのイメージですが、配達や給食サービスでも働けるんですね。

ここで注意すべきポイントです。配達サービスにおいては、業務内容の一つとして配達業務を行うことは可能ですが、それをメイン業務にすることはできない点をおさえておきましょう。

3.雇用できる企業の要件

今度は、どのような企業が「外食業」の特定技能人材を雇用できるのかを見ていきましょう。

(1)食品産業特定技能協議会への加入

「食品産業特定技能協議会」は、外食業・飲食料品製造業における制度が適切に運用されることを目的として、2019年3月に設置されました。

初めて外食業分野の特定技能外国人を受け入れる場合には、その人を受け入れてから4か月以内に協議会に加入する必要があります。

期限内に加入しなかった場合や、協議会に対し必要な協力を行わない場合は、特定技能外国人の受け入れができなくなります。

(2)定められた支援の実施

1号特定技能外国人を雇用する企業は、その外国人人材に対し、就労環境のほか、日常生活や社会生活におけるさまざまな支援を行う必要があります。支援内容は以下の10項目です。

  1. 事前ガイダンス実施
  2. 出入国する際の送迎
  3. 住居確保、生活に必要な契約支援
  4. 生活オリエンテーション実施
  5. 公的手続等への同行
  6. 日本語学習の機会の提供
  7. 相談または苦情への対応
  8. 日本人との交流促進
  9. 非自発的離職時の転職支援
  10. 定期的な面談実施、行政機関への通報

これらの支援業務は、登録支援機関に全部または一部を委託することもできます。

登録支援機関とは、受け入れ企業に代わり支援計画を作成・支援活動を行う機関です。出入国在留管理庁ホームページの登録支援機関登録簿では、委託したい機関を探すことができます。

4.雇用する際に留意すべきこと

違法になってしまわないように、「外食業」の特定技能人材を雇用するときには以下の点に注意しましょう。

(1)付随業務をメイン業務としてはいけない

「外食業」の特定技能人材は、相当程度の知識や経験を必要とされる外食業の業務内容を行うことが基本です。それらに付随する関連業務をメインにしてはいけません。

例えば、配達だけ、清掃や皿洗いだけなど、調理や接客を全く行わないことは認められていません。

(2)従事できない業務をさせない

特定技能人材は、風営法規定の「接待飲食等営業」を営む営業所における就労および、同法規定の「接待」を行うことはできません。

(3)報酬や労働時間は日本人と同等でなければならない

特定技能人材の報酬の額は、同じ作業を行う日本人と同等以上にするよう定められています。また、労働時間についても日本人と同等になるよう留意しなければなりません。

5.「外食業」で1号特定技能ビザを取得するために

外国人人材が「外食業」で1号特定技能ビザを取得するためには、以下の試験に合格する必要があります。

(1)業務に必要な相当程度の知識や経験

「外食業特定技能1号技能測定試験」(内容:接客全般、飲食物調理、衛生管理)

(2)生活と業務に必要な日本語能力

「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)

または「日本語教育の参照枠」のA2相当以上の水準と認められるもの

ここで必要とされるN4やA2は「基本的な日本語が理解できる」というレベルです。即戦力として働いてもらうために、ある程度の技能知識と日本語能力が求められます。

6.まとめ

いかがでしたか?

今回は「外食業」の特定技能人材を採用する際に大切なポイントをご紹介しました。深刻な人手不足の課題を抱える外食業界にとって、即戦力として幅広い業務に従事できる特定技能人材は貴重な存在となるでしょう。ぜひ積極的に採用したいですね。

詳しい要件については、出入国在留管理庁のホームページから「特定技能運用要領」を確認してください。業種別の要領もあります。要件をしっかりと確認し、外国人人材にとって望ましい環境を準備しましょう。

【参考】

・出入国在留管理庁「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領 -外食業分野の基準について」(法務省・農林水産省編)

・出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック」

・農林水産省HP「食品産業特定技能協議会(飲食料品製造業分野・外食業分野)について」