特定技能ビザで採用する外国人は、どのような人材なのか

人手不足を解消する施策として創設され、2019年から運用が始まった特定技能。
特定技能ビザは外国人の方を労働者として受け入れる在留資格であり、ほかの就労系在留資格と比べて条件はゆるやかで、広い範囲の労働を行なうことができます。

では、特定技能ビザを持つ外国人はどのような人材なのでしょうか。

1.特定技能で求められる人材

まずは、特定技能の業種や要件などからどのような人材が求められるのかを見ていきましょう。

(1)どんな業種がある?

特定技能は、人手不足が深刻な12の分野で創設されています。(2023年5月現在)

(2)どんな能力が求められるのか(分野別技能、日本語力)

特定技能ビザ申請には、学歴要件はありません。18歳以上であれば、高卒でも取得できます。しかし、1号特定技能ビザで働くためには、技能試験と日本語試験に合格する必要があります。

1号ビザは、特定産業分野において相当程度の知識または経験を持つ外国人に向けた在留資格です。特別な教育やトレーニングを受けることなく、すぐに一定の業務をこなせるレベルであることが求められます。そのレベル判定を技能試験によって行います。

また、「生活や業務に必要な日本語能力」も求められます。これは日本語能力試験(JLPT)のN4合格、またはJFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)の判定によって確認します。

2号特定技能ビザは、特定産業分野における熟練した技能を持つ外国人に向けた在留資格です。技能水準を試験等で確認しますが、日本語能力に関する試験は必要ありません。現時点では、2号の取得は1号からの移行のみとなっています。

(3)特定技能ビザではどんな業務が可能なのか?

では、特定技能ビザの外国人人材は、どのような業務に従事することができるのでしょうか。

例として、「飲食料品製造業」「建設」「宿泊」「外食業」の業務内容を見てみましょう。

出典:「特定技能ガイドブック」(出入国在留管理庁)

これらを見ると、単純労働を含む幅広い業務が行えることがわかります。「技術・人文・国際業務」の在留資格では単純労働が認められていませんが、特定技能では、単純労働がメインでなければ、付随業務として行えることになっています。技能実習生や高度人材が行えない業務も、特定技能人材であれば行える可能性があります。

(4)特定技能ビザを持つ外国人はどんな人材?

これまでのポイントをまとめると、特定技能ビザを持つ外国人人材は、

  • 特定産業分野において相当程度の知識または経験」がある
  • 「生活や業務に必要な日本語能力」がある
  • 単純労働を含む幅広い業務に従事できる

ということになります。採用したら、「即戦力」として活躍してもらうことができそうですね!

2.実際のデータから見る人材

ここからは、現状どのような人材が特定技能ビザを取得しているのかを実際のデータから見ていきましょう。

(1)どの分野で取得する人が多いのか

特定技能ビザで在留する外国人の数を分野別にまとめると以下のようになります。(2023年3月末)

出典:「外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」(令和5年5月)」(出入国在留管理庁)

多い方から「飲食料品製造業」「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」「介護」「農業」「建設」「外食業」「造船・船用工業」「ビルクリーニング」「自動車整備」「漁業」「宿泊」「航空」となっています。

あらゆる産業の中でも特に人手不足が深刻とされている「飲食料品製造業」の特定技能人材が最も多くなっており、技能実習ビザから移行する人も増えています

(2)どの国籍の外国人が多いのか

特定技能ビザは、日本と2国間協定を結んだ国(※)の人が取得できます。

国籍・地域別の外国人数は以下の通りです。(2023年3月末)

出典:「外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」(令和5年5月)」(出入国在留管理庁)

上位3か国は「ベトナム」「インドネシア」「フィリピン」です。最も多いベトナム国籍の人材は全体の約60%を占めています。とても多いですね。理由として、技能実習生や留学生として来日した人が特定技能ビザを取得するケースが多いことが挙げられます。今後、現地での試験の実施増加や法律の整備などが進めば、2国間協定を結んでいる他の国・地域からもさらに多くの人材が特定技能ビザを取得できるでしょう。

※2国間協定を結んでいる国(15か国)

フィリピン、カンボジア、ネパール、ミャンマー、モンゴル、 スリランカ、インドネシア、ベトナム、バングラデシュ、ウズベキスタン、 パキスタン、タイ、インド、マレーシア、ラオス

(3)他ビザからの移行か、試験合格か

〈技能実習からの移行〉

現状では、技能実習からの移行が最も多くなっています。

  • 技能実習2号を良好に修了していること
  • 技能実習の職種・作業内容と、特定技能1号の業務に関連性が認められること

の二点を満たしていれば、技能試験や日本語試験が免除されます。

〈他ビザからの移行(国内)〉

留学ビザや家族滞在ビザなどで日本に住んでいる外国人が技能試験と日本語試験に合格し、特定技能ビザを取得するケースもあります。外食業や宿泊業など、分野によっては技能実習からの移行が難しいため、試験合格によって取得するケースが多い場合もあります。

〈帰国した元技能実習生〉

過去に技能実習生として日本で働き、すでに帰国した元技能実習生が特定技能ビザを取得するケースもあります。その場合、「技能実習2号を良好に修了している」ことが条件であり、その証明書類の提出が在留資格の申請時に求められます。また、技能検定3級または実技試験合格を証明する資料や評価調書等も必要です。

〈海外在住で特定技能試験を受験〉

海外に住んでいる外国人が試験に合格し、特定技能ビザを取得するというルートもあります。特定技能試験は海外でも実施されていますが、開催地域は限られているため、このケースはまだあまり多くないようです。

2020年からは短期滞在ビザを取得することで、日本国内の試験を受けられるようになりました。試験が実施されていない国や地域の人は、この方法で要件を満たすこともできます。

いずれのケースであっても、決められた要件を満たさなければなりませんが、特定技能人材はこのような様々なルートでビザを取得しています。

3.まとめ

いかがでしたか?

今回は、特定技能ビザで採用する外国人はどのような人材なのか、要件や実際のデータから考えてみました。特定技能2号ビザの分野拡大の予定も発表され、注目が集まる特定技能。1号の試験に合格した外国人人材は、その分野における一定の知識と技術を有することが認められているため、即戦力としての活躍が期待できます。

有望な外国人人材を採用するために、今後の情報にもぜひ注視していきたいですね!