特定技能ビザで外国人を受け入れ始めた企業人事が取り組むこと

特定技能とは

国内の人手不足の解消に繋げるため、4年前に導入されたのが、在留資格『特定技能』です。

特定技能は、一定水準以上の技能や日本語能力を持つ外国人が対象とされていて、定められた業種のみで就業することができる在留資格です。

特定技能の資格では、技能実習生とは異なり、「転職可能」という特徴があります。そのため、様々なプロセスを踏んで特定技能外国人を受け入れた以上、特定技能外国人の定着率を上げることも重視していきたいところです。

今回は、特定技能外国人材の定着率を上げるために、受け入れ企業側が取り組むべきことを紹介していきます。

特定技能に関わらず、外国人を採用する企業にとっても参考になる内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

特定技能外国人の離職理由

まず、実際に特定技能外国人の離職率はどのくらいなのか見ていきましょう。

2021年に行われた株式会社ウィルテック、株式会社エイムソウル、ヒューマングローバルタレント株式会社の調査「日本で働く外国籍人材の離職とモチベーションダウンに関する調査」によると、調査に応じた技能実習・特定技能外国人材の5%が、入社後1年以内に離職を経験しているとのことです。

技術・人文知識・国際業務の在留資格で就労する外国人は、入社後1年以内の離職が35%だったことから、技能実習・特定技能外国人の離職率は比較的低い割合に留まっていることがわかります。

技能実習・特定技能外国人材の早期離職の原因としては

  • 日本人と外国人がコミュニケーションする機会の不足
  • 社風(会社の文化)が合わない
  • 給料が安い、残業代が支払われない

などが挙げられました。

また、日本で就労する上でのモチベーションダウンの原因としては

  • 職場の人間関係に対する不満
  • パワハラ・セクハラ
  • 外国人に対しての差別・偏見がある

などが挙げられているなど、受け入れ側が気をつけるべきことも多いことがわかります。

社風や人間関係などは、日本の独特な文化が関係している可能性もあります。日本は他国に比べて「空気を読む」「察する」などの文化が強く、思ったことをはっきりと口にしないことが多くありますよね。

特に日本語がネイティブでない外国人にとっては、そのような文化を感じ取るのは非常に難しく、言葉にしないがために誤解を生みやすくなってしまいます。

では、今回挙げた技能実習・特定技能外国人材の離職理由、モチベーション低下理由を踏まえ、受け入れ企業側の人事が取り組むべき内容を紹介していきます。

コミュニケーション機会を増やす

先ほどのアンケート結果にもあったように、受け入れ側の日本人が外国人に対して偏見をもっていたり、積極的にコミュニケーションをとっていく準備ができていない場合もあります。

既に働いている日本人全員が、外国人と接した経験があったり、外国に興味があったりするとは限りません。そのため、社内で日本人と特定技能外国人がうまくコミュニケーションをとれるようになる仕組みづくりが重要になります。

例えば、日本人社員に対して、外国人との接し方や、やさしい日本語の話し方の講座を行い、外国人と働く際に気をつけるべき内容を事前に知ってもらうなどです。

また、同様に特定技能外国人に対しては、日本の会社の文化や、社内の独自ルールを丁寧に研修することも重要です。

お互いに当たり前だと思っている常識も、国が異なれば通用しません。一方的に日本側に合わせてもらうというスタンスではなく、お互いが歩み寄れるような意識を持つ必要があります。

また、交流会などで日本人と特定技能外国人が話せる機会を与えるという方法もあります。普段からこのようにコミュニケーションの機会を設けておくことで、会社への信頼にもつながり、特定技能外国人にとってもより働きやすい環境になっていきます。

日本語サポート

一定の日本語能力が求められる特定技能ですが、やはり外国人にとっては日本語での業務は簡単ではありません。

スムーズな業務のための日本語力向上はもちろんのこと、日本語のサポートを行うことで、「会社からサポートしてもらっている」ということを実感します。それが会社への信頼になり、さらには業務へのやる気にもつながります。

日本語に自信がつくことで、社内でのコミュニケーションにも積極的に参加でき、孤立やコミュニケーション不足による摩擦などを防ぐことができます。

日本語の先生がいい相談相手になる場合も多いので、できれば入国前から外部の日本語レッスンサービスに委託し、継続したレッスンをしてもらうことが理想です。

評価制度を設ける

日本では、入社年数で給与が決まる会社も多いですが、海外では実力や業務内容が評価され、給与に反映されることが一般的です。

必ずしもそれができなくても、日本人と同様の形で評価し、会社と特定技能外国人の双方が同じ基準を持っていることが重要です。正しい評価基準で評価を行うことで、特定技能外国人は会社から何を求められているかを明確に知ることができ、業務へのモチベーションにもつながります。

また、将来のキャリアなど今後に目を向けた面談を行なうことで、異国での漠然とした不安から抜け出し、精神的にも安定した状態で業務に臨むことができます。離職を防ぐことにもつながるので、定期的に面談の席を設けることをおすすめします。

雇用環境の見直し

先に述べたように、特定技能ビザでは転職が可能なため、いい条件の企業が見つかった場合、転職を検討する特定技能外国人が出てくるのは当然のことです。

人材不足によりできるだけ安い給与で外国人を雇いたいというのも理解できますが、採用コストなどを考えた場合、すぐに転職されてしまうことのほうが損になります。そのため、特定技能外国人の成果や実力に見合った給与の設定が望ましいです。

また、長時間労働も会社への不満の要因になることが多くあります。

日本は世界的にも残業が多いことで有名です。一方で、外国ではプライベートの時間を重視する傾向にあり、日常的なの残業は理解されないことが多いです。残業が必要な場合、それに見合った残業代の支給や事前説明をすることが望ましいです。また、こちらについても双方の意向を確認し、小さな不満が溜まっていかないように工夫していく必要があります。

採用時の人材の見極め

こちらは実際に特定技能外国人を採用する前の話になりますが、採用の時点で特定技能外国人材を見極めることも重要です。

技能や日本語力などの採用基準を満たしている場合でも、実際に社風に合うかどうか、既存の日本人社員との相性など、あらゆる面からチェックする必要があります。

特定技能外国人を採用することがゴールではなく、採用後に継続して勤務してもらうことが最も重要です。そのため、採用に関しては慎重に行い、特定技能外国人にも事前に条件や業務内容をしっかりと理解してもらったほうがいいでしょう。

いかがでしたか。

今回は、特定技能外国人を採用した企業で、人事が行うべき内容について紹介しました。

特定技能外国人が企業に定着し、気持ちよく勤務してもらうためには、外国人にとって何が不満につながるのかという点から考えていくことをおすすめします。日本の働き方が当たり前ではないという点と、異文化で働くことは容易ではないという点も、受け入れ企業側が理解しておく必要があります。

特定技能外国人の受け入れに伴い、企業側が異文化に対応できる仕組みを作っておくことで特定技能人材の定着につながることは間違いないでしょう。